海外インターンシップ体験報告記 10

平成24年11月1日
(Year/Month/Day)
工学系教育研究センター長
(To: Director of CEED)
専攻・学年:材料科学専攻・博士課程1年
氏
名 : 若杉剛伸
インターンシップ体験報告書(Internship Report)
(1) インターンシップの概要(派遣先・派遣期間・指導員など)
■派遣先:Wisconsin 大学-Madison 校
■派遣期間:2ヵ月
■指導員:Lingfeng He (Prof. Todd R. Allen)
(2) 研修内容(テーマ・成果概要など)
テーマ:Microstructure characterization by using advanced TEM
概要:従来型の TEM が持つ球面収差等による分解能低下を自動補正し、よ
り正確に原子構造を目視観察できる TEM が開発された。これを用いて原子
力材料を始めとした材料の原子配列及び欠陥等を観察した。従来型 TEM と
の結像原理等の違いや類似点を比較し理論と実験結果を照らし合わせるこ
とにより、TEM に対する理解度が格段に深まった。
(3) (2)項以外で学んだこと・後輩等に伝えたいこと
■結果を出すためには自分で抱え込まず積極的にディスカッションすること。
日本人は勤勉すぎて、自分自身で解決することへの執着が強いように感じた。
故に仕事が個人の能力律速で遅い。研究分野を超えてディスカッションが絶え
ないアメリカは仕事が早い。他者に対して非常に OPEN、かつ積極的。自分は
前者の傾向が強い人間である。自分の研究に人を巻き込み、その中でリーダー
シップを発揮することに良い結果をスピーディに導く鍵がある。今後実践して
いきたい。
■自分から行動しないと何も起こらない。
前述の補足になるが、日本のようにテーマでも実験でも、何か与えてもらえ
るという環境はない。
(4) その他
■実験装置使用管理システムを北大(材料科学専攻)にも取り入れたい。
実験装置のトレーニング、テスト合格を経て装置使用 ID を獲得、その後 ID
獲得者には装置利用の権利はもちろん、装置に空きができた段階(突然の予約
解除、予約時間内での早期実験終了等にも対応して)でその旨が利用可能者全
員に自動送信されるシステム。
以下の利点がある
① 使用者の理解不足による装置故障頻度の低減
② 装置空き時間の有効活用
【生活】
Wisconsin 滞在中は、Hiroko Yamada さん宅にホームステイさせて頂い
た。他に Marian, Crystal の計4名で生活していた。朝・昼・晩の食事
は基本自炊。調味料等(日本の調味料もほとんど揃っていた)は家に
あるものを使わせて頂き、全員分作ることもあれば、ご馳走になるこ
ともあった。基本皆帰りが遅いので、先に帰ってきた人が作る流れに
なっていた。晩御飯はいつも4人そろって居間でしゃべりながら食べ
ていた。この生活でだいぶ英語が鍛えられたと思う。自分の部屋は4
畳一間にベッドが一つ置いてあるだけの部屋。シャワートイレ、洗面
所は共同。家賃(高熱費、水道代込)は固定ではなかったが大体月々
$150 と格安。
大学まではバスで 20~25 分と決して近くはなかったが、
その分歩いたり乗り換えを繰り返したおかげで大分 Madison 市内のお
店や道、交通事情に精通することができた。ちなみにバスは大学関係
者ならフリーパスがもらえ市内の移動は無料。物価も低く、普通に生
活するだけなら経済的にも住みやすい街だと思う。
ホームステイ先でお世話になった3名
【旅行】
週末に高速バス、Amtrak(長距離
電車)
、
各都市市内バスを乗り継い
で 五 大 湖 近 郊 の 都 市 ( Niagara
Falls, Chicago, Milwaukee)を訪
れた。時間に関して非常にルーズ
なアメリカの交通事情に振り回さ
れることが多々あった。時刻表を
見て計画を立てる時は、3パター
ン程ルートを用意おくか、各種時
刻表を手に入れて持ち歩いた方が良い。Amtrak は乗る車両によって途
中停車駅で切り離されることもあるので注意が必要。自分は目的地着
前に切り離された車両中に取り残されそうになった。Amtrak 利用の際、
パスポートは持ち歩いた方が良い。アメリカ人以外は降車駅で提示を
要求される。自分は Wisconsin 大学の学生証提示と 10 分間程問責を受
けてその場はよしよされた。
■Niagara Falls (ナイアガラの滝)
■Chicago
デザイン性に富んだ様々な高層ビル(石造り、ガラス張り、曲線状等
, )の合間に様々なオブジェが配置されていたためか、街全体がまる
で美術館のようで歩いていて楽しい気分になれた。大地震が多い日本
では石造りの高層ビルなどは見かけられない。
今回の Chicago 訪問で、
日本は様々な制限の中で生活し、またそれを打破するための工夫によ
って生きているのだということを再認識した。
【交流】
交流】
9月初めに留学生歓迎企画(International
Picnic)が開かれたので、参加してきた。ホス
トは Madison 市内で働く一般の方々で、参加
留学生の 8 割は中国、インドからの方々で占
められていた。全体では 200 人規模。ここで
かなりたくさんの友人ができた。
Madison 市内に日本人学生は非常に少ない。
Madison 日本人会主催の集まりが年に 3 回程
あるので、そこで日本人の方とコンタクトを
取ることができる。Madison 滞在の後半は、
ここで知り合った友人達とよく飲みに行った。
Madison 滞在最終週、お世話になった人を招待して Thank you Party
を開いた。内容はそれまで何度か好評の声を頂いた焼き鳥 Party。アメ
リカには寿司屋等の日本食レストランやカラオケ等の日本的娯楽施設
があるが、居酒屋がない(当然だが)
。というわけで居酒屋を再現して
みた。市内に何店舗かあるオリエンタルショップで日本食材(もちや
刺身用切り身等)を手に入れることができる。焼き鳥(とり精、ぶた
精、もちベーコン)、さんま(大根おろし付)、りゅうきゅう(地元大
分の郷土料理)をふるまった。
【総評】
『目的意識を持って臨む』
アメリカで暮らす人達は皆(アメリカ人、日本人、その他の外国人も)
、
アメリカで暮らす目的意識がはっきりしていた。故に、皆行動は積極
的で他人任せにすることはない。自分のやりたいことを実現させるた
めにも自分のことは自分でするという気概がはっきりしていた。日本
に生まれ当たり前のように日本に住んでいた自分にとって“何故日本
で暮らすのか?”という疑問を自分自身に問うことはこれまでなかっ
た。目の前の仕事に没頭していて、自分がやりたいことが一番できる
場所は日本であるという確証なしにこれまでやってきた。目的意識の
薄さを痛感した。まだ誰かに与えられた環境の中で生活している甘さ
を痛感した。猪突猛進で仕事に没頭するところが自分の長所であり、
短所でもある。この度のインターンシップ参加で、猛進する前に今一
度世界規模の視野を持ち、その地に臨むはっきりとした目的意識を持
つ大切さに改めて気付くことができた。