AHP によるペットボトルの形状デザイン評価 ○酒井浩二,能勢文香(京都光華女子大学) 1.はじめに 4.考察 日経新聞(2006)によれば、ペットボトルの形状の種類が 3 つの評価基準のうち、 「持ちやすさ」が最も高いウェイ 増えた理由は以下の 2 つである。第一に、膨大な種類のペ トとなった。梁瀬(1978)によれば、カップは日常身近に ットボルの陳列から選択されるために、容器の形で目立つ 使うものであるため「快さ」や「親しみ」を感じさせるデ 必要がある。第二には、飲み方による変化であり、缶飲料 ザインが要求され、それがカップとしての良さや好ましさ はその場で飲みきったが、ペットボトルは何度も開け閉め に通じる。ペットボトル飲料は持ち運ぶという携帯性のた して持ち運ぶため、感触や形が重要になる。また、コーヒ め、持ちやすさを配慮したうえで、ユニークさや高級感な ーカップの外観デザインの因子分析により、快適さ、趣味 どのデザイン性を検討するのが重要と解釈できる。今後、 性、愛らしさ、華やかさ、機能性の 5 因子が抽出されたが、 飲料の内容に似合う形状、陳列から目につきやすい形状、 快適さと機能性は形の影響が強かった(梁瀬、1978) 。見 ラベルデザインなどの検討が必要とされる。 ためがよく使いやすいペットボトルの形状の検討は、ペッ トボトルの販売促進に非常に重要であるといえる。 本研究では、AHP(Analytic Hierarchy Process; 階層 分析法)によるペットボトルの形状デザインの感性評価に ついて検討する。形状に対する複数の評価基準を設定し、 どの基準が重視されるか、また特定の基準でどのペットボ トルが高く評価されるかなどを検討する。 図 1.本評価実験での AHP 階層図 2.方法 回答者は女子大学生 8 名、調査時期は 2006 年 12 月。 図 1 は本研究で設定した AHP 階層図である。 評価基準「高 級感」 「ユニークさ」が見ための基準、 「持ちやすさ」が機 能性の基準に相当する。代替案は図 2 の 6 つのペットボト ルの写真を用いた。形状のみを検討するため、ペットボト ルのラベルをはがし、飲料の種類も教示しなかった。 手続き:図 1 の 3 つの評価基準の一対比較(計 3 対)と、 評価基準ごとの代替案 6 種の一対比較(評価基準 3 種×15 対=計 45 対)を行った。一対比較は、 「同程度に重要」 「若 干重要」 「重要」 「明らかに重要」 「絶対に重要」の 5 段階 で評定し、それぞれの回答を 1 から 5 で数値化した。 図 2.評価実験で用いた 6 種のペットボトル 分析:評価基準のウェイト、評価基準ごとの代替案のウ 0.3 持ちやすさ ユニークさ 高級感 ェイトを計算し、これらを掛け合わせて総合評価を求めた。 0.2 評価基準のウェイトは、持ちやすさは 0.529 と高かった が、高級感は 0.204、ユニークさは 0.267 と低めであった。 ウェイト 3.結果 0.2 0.1 図 3 は、評価基準ごとの代替案、および総合評価におけ る、回答者 8 名のウェイトの平均を示す。B は高級感が最 も低かったのに対して、ユニークさと持ちやすさが高く、 総合評価は高かった。C はユニークさがやや低かったが、 0.1 0.0 A B C D E F 3 つの評価基準のバランスが一番良かった。E は持ちやす 図 3.AHP での評定実験結果のウェイト さ以外の 2 つの評価基準の評価は、B や C と大きな差はな 引用文献:日経新聞 2006 年 10 月 7 日 NIKKEI プラス 1「ペ かったが、持ちやすさの評価が顕著に高く全ウェイトの 6 ットボトル見た目主義」朝刊 15 面 割強を占めた。F はもっとも総合評価が低く、一番高かっ 梁瀬度子 1978 「コーヒーカップのデザインの心理評価に た E の総合評価は F の 2 倍強であった。 関する研究」人間工学, Vol.14, pp.327-334 〒615-0882 京都市右京区西京極葛野町 38, Tel.075-325-5336. /Fax.075-325-5339, E-mail :[email protected]
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