3 省エネルギーへの取り組み より地球環境への負荷が少ない輸送システムの 構築に努めています。 JR 東海は、エネルギー効率の高い車両の投入など、 より地球環境への負荷が少ない輸送システムの構築に努めています。 また、新エネルギーや高効率システムなどの開発・導入にも 取り組んでいます。 よりエネルギー効率の高い車両の開発・投入 東海道新幹線における取り組み ■ 東海道新幹線の車種別電力消費量 鉄道は鉄輪・鉄レールで走行するため、走行時のエネ この場合でも、300 系は 91%、700 系は 84%、N700 系は ルギー損失が非常に少なく、渋滞もないなど、極めてエ 68%と顕著なエネルギー消費の改善を示しており、速達 ネルギー効率の高い輸送機関です。当社はこの特性をさ 性と省エネルギー性の両立を実現しています。 △ 32% 220km/h らにブラッシュアップするため、効率の高い △ 49% 270km/h 100% 電力制御変換方式の導入などによるエネルギ 91% ー効率の高い車両の開発やその投入に努めて 84% 79% 73% います。 68% 66% 東京∼新大阪を走行した場合のシミュレー 51% ションにより電力消費率を比較すると、初代 の 0 系に対して、同一条件の場合で、300 系 は 73%、700 系は 66%、N700 系は 51%となり 0系 300 系 700 系 N700 系 東海道新幹線の車種別電力消費量の比較 ます。さらに、300 系以降の車両は 0 系に対 して最高速度が 50km/h 向上していますが、 100 系 ※東京∼新大阪下りを最高速度 220km/h または最高速度 270km/h で走行した場合の シミュレーション ■ 省エネ型車両の投入(東海道新幹線) JR 東海は、地球環境保全の観点からも積極的に省エ [%] 120 エネルギー エ 消費原単位 ネ 省エネ型 車 3,000 ル 100 1990年度比 種 ギ 19%改善 別 ー 保 2,500 消 有 80 費 車 原 両 単 80 16 16 16 16 80 数 2,000 16 位 240 336 432 ︵ 176 384 60 576 90 599 720 912 775 年 1,500 832 912 967 967 967 976 度 871 912 976 912 40 を 912 基 976 912 1,000 準 976 848 と 800 976 1071 1012 20 し 800 500 905 782 た 976 976 976 976 764 608 674 549 比 404 416 率 260 103 208 7 7 0 ︶ 0 1990 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06(年度) 3,500 [両] ネ型車両の投入を進めています。東海道新幹線について は、2003 年 10 月の東海道新幹線品川駅開業時には、す べての車両を 700 系・ 300 系の高速・省エネ型車両に統 一しました。省エネ型車両の投入により、エネルギー消 費原単位を着実に改善してきており、2006 年度は 1990 年度比で約 19 %改善しました。今後も 2011 年度までに N700 系 80 編成を集中的に投入するなど、東海道新幹線 の環境優位性をより一層高めていきます。 100系 300系 700系 N700系 ⎫ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎬ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎭ 0系 東海道新幹線の車種別保有車両数、エネルギー消費原単位の推移 ※数値は各年度末(3 月)時点の車両数。保留車および新幹線電気軌道総合 試験車を含む 13 在来線における取り組み ■ 在来線電車の車種別電力消費量 ■ 在来線気動車の車種別燃料消費量 在来線電車においても新幹線と同様、ブレーキ時にモ 気動車についても、車両重量の低減をはじめ、燃費が ーターを発電機として使用して発電する電力回生ブレー 良く軽量な新型ディーゼルエンジンの導入など、よりエ キや、より効率の高い電力制御変換方式の導入、車両重 ネルギー効率が高い車両の投入に努めています。 量の低減などにより、車両のエネルギー効率の向上に努 従来エンジン 搭載車 めています。 100 (基準) 従来型 113系 (100km/h) 省エネ型 313系 (120km/h) 100 (基準) 新 型エンジン 搭載車 71 在来線気動車の車種別軽油消費量の比較 68 ※キハ 40 系に新・旧エンジンを搭載して走行した場合の実績による (従来エンジン: DMF15HS 型、新型エンジン: C-DMF14HZ 型) 在来線電車の車種別電力消費量の比較 ※名古屋∼中津川(各駅停車往復)を従来型は 113 系、省エネ型は 313 系で走行 した場合のシミュレーション(313 系の有効回生率は、実績から 75 %を使用) ■ 省エネ型車両の投入(在来線・気動車) 会社発足以来、気動車についても省エネ型車両を積極 ■ 省エネ型車両の投入(在来線・電車) 的に投入するとともに、既存の車両についても高性能か JR 東海は会社発足以来、省エネ型車両を順次投入して つ省エネルギー性に優れた新型エンジンへの取り替えを きています。2006 年度は新たに 204 両の新製車両を投入 進め、2006 年度末では 97 % ※ が新型エンジン搭載車両 し、77 %が省エネ型車両となりました。 となっています。 ※保留車(保存車両)を除く営業車両については、すべて新型エンジンへの取 り替えが完了しています 省エネ型 [両] 1,200 345 345 345 345 351 393 従来型 658 664 664 664 664 664 664 868 463 463 554 [両] 300 95 120 車 両 600 数 0 0 1990 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06(年度) 139 149 163 176 221 223 223 221 221 221 221 224 223 174 153 139 139 497 467 424 420 420 419 402 266 従来エンジン搭載車 124 136 車 両 150 数 814 783 780 779 774 757 669 666 642 14 新型エンジン搭載車 103 93 79 67 56 20 13 8 6 6 6 6 6 1990 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06(年度) 在来線電車の車両数の推移 在来線気動車の車両数の推移 ※数値は各年度末(3 月)時点の車両数。保留車を含む ※数値は各年度末(3月)時点の車両数。保留車および試験車を含む 313 系 キハ 85 系 省エネルギーに貢献する技術 ■ 車両重量の低減 車両重量の低減は、省エネルギー性能の向上に大きく 寄与します。 300 系以降の 700 系、N700 系では、よりシンプルな構 造のボルスタレス台車を採用したことに加え、車体の素 材については、0 系、100 系が鋼製だったのに対し、より 軽量なアルミ合金製を採用しています。さらに、モータ ーについても、0 系、100 系では直流モーターを使用して いたのに対し、半導体技術の向上などにより、300 系か らは高性能かつ小型の交流モーターを採用しています。 これらの取り組みにより、300 系以降の車両では、初 代の 0 系と比べて重量を 250 トン以上低減しています。 省エネルギー性能をより一層向上させた N700 系 ■ 走行抵抗の低減 N700 系では、走行抵抗の低減のため、新たな先頭形 状を開発しました。この先頭形状は、コンピュータによ るシミュレーションを約 5,000 回繰り返し、さらに模型 による風洞実験を重ねることによって開発し、最適な空 力特性を備えた形状となっています。その形状は、あた かも鳥が翼を広げて飛翔する姿に似ていることから、 「エアロ・ダブルウイング形」と名付けました。また、 全周ホロの採用、台車スカートの改良など、車体や床下 の徹底的な平滑化を行いました。これらの取り組みの結 果、700 系と比較して、さらに約 20 %の走行抵抗の低減 先頭形状風洞実験 を実現しました。 ■ 電力回生ブレーキ 電力回生ブレーキとは、ブレーキ時にモーターを発電 機として働かせて、運動エネルギーを電気エネルギーに 力回生ブレーキで賄う方式にすることで、新幹線の一層 の省エネルギー化に貢献します。 変換(発電)し、発電した電力を架線に戻して他の列車 で再利用できるようにするシステムです。このように、 エネルギーのリサイクルを行うことにより、省エネルギ ー化が可能となります。 JR 東海は、新幹線で初めて電力回生ブレーキを実用 化し、300 系とその後の 700 系、N700 系に搭載しました。 ブレーキ(発電) 力行(電力消費) N700 系では、1 編成で通常必要なブレーキ力をすべて電 15 新エネルギーや高効率システムの開発・導入 JR 東海は、大規模な太陽光発電システムの導入試験をはじめ、コジェネレーションシステムの導入など、新エネル ギーや高効率システムの開発・導入に取り組んでいます。 太陽光発電システム ■ 東海道新幹線京都駅の太陽光発電システム ■ 小牧研究施設の太陽光発電システム 1997 年より、東海道新幹線京都駅ホームの屋根上に、 2002 年に開設した小牧研究施設にも、最大発電電力 約 800m2 という広大な面積(3.6m × 112m × 2 列)の太 50kW の太陽光発電システムを設置しています。この太 陽光発電システムを設置しています。最大発電電力は 陽光パネルの一部(10kW 相当)には、シリコン層の厚 100kW で、京都駅新幹線ホームのすべての照明がまか さが既存の 1/100 で、コストダウンが期待される最新の なえる量に相当し、年間約 60 トンの CO2 排出量を削減 「薄膜シリコンハイブリッド型太陽電池」を従来型との しています。 比較検証のため 太 陽 電 池 パネル 導入しました。 京都駅の太陽電池パネル 小牧研究施設の太陽電池パネル これらのシステムは、当社と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共同研究事業により設置したもの で、この研究により得られたデータを、今後の太陽光発電システムの開発に活用していきます。 コジェネレーションシステム ■ JR セントラルタワーズのコジェネレーションシステム ■ 小牧研究施設のコジェネレーションシステム 1999 年に完成した JR セントラルタワーズでは、発電 小牧研究施設においても、ガスエンジンによる発電を 時に発生する排熱を周辺地域の冷暖房などに有効利用す 行い、その排熱を冷暖房などに有効利用するコジェネレ るコジェネレーションシステムを導入し、エネルギー効 ーションシステムを導入しています。出力は合計 560kW 率の向上と CO2 排出量の削減を図っています。 で、ガスエンジンのエネルギー効率が通常約 40 %のと ころ、コジェネレーションシステム全体のエネルギー効 率は約 76 %に達しています。 名古屋セントラル病院の環境への配慮 2006年7月に開院した名古屋セントラ 16 しています。 ル病院では、最先端医療機器を備えた高 具体的には、燃料電池発電設備とガス 度先進医療の提供、救急医療体制の充実 エンジン発電設備による複合コジェネレ を図るなど、地域への一層の貢献を果た ーションシステムを採用しています。こ すことのできる病院を目指しています。 れらは、発電効率が高く、さらに発電時 名古屋セントラル病院では、屋上緑化 の排熱を空調機器や給湯用熱源として有 を行うとともに、省エネルギーにつなが 効に活用するため、CO2 などの排出量を る機器を導入するなど、地球環境に配慮 大幅に削減できます。 名古屋セントラル病院 電力貯蔵装置などの開発 ■「電気二重層キャパシタ」(車両側で電力を蓄える装置) JR 東海が保有する在来線電車の多くは、電力回生ブレ の在来線では、車両側の電力貯蔵装置として、高速充放 ーキの技術を活用することでエネルギーを効率的に利用 電特性に優れ、長寿命であり、メンテナンスフリー化も しています。ただし条件によっては電力が架線に戻ら 期待できる電気二重層キャパシタに注目して開発を進め ず、エネルギーのロスや空気ブレーキの使用による車輪 ており、2005 年 1 月には実際に電車に装置を搭載して基 の摩耗などが生じます。そこで、ブレーキ時に生じた電 本性能を確認しました。今後はさらなる電力貯蔵容量の 力を車両側で貯蔵し次の加速時に使用する技術を確立で 増大、低コスト化などの改良を行い、耐久試験による信 きれば、エネルギーの有効活用が可能になります。当社 頼性向上を図り実用化を目指していきます。 回生失効 制御装置 他に電力を消費する車両がないと、 電力回生できない キ ャ パ シ タ 空気ブレーキを多用 キ ャ パ シ タ 制御装置 制御装置 エネルギーのロスおよび車輪などの摩耗 電力回生できないときはキャパシタへ 電力を貯蔵 制御装置 力行時は貯蔵エネルギーを活用 電力貯蔵装置 搭載された試験装置 ■「超電導フライホイールシステム」 (地上側で電力を蓄える装置) JR 東海では、超電導リニアの技術開発を進めるととも に、その技術の他分野への応用に向けた研究にも積極的 での大型化が可能となり、貯蔵できるエネルギー量が飛 躍的に大きい点が特徴です。 に取り組んでいます。新エネルギー・産業技術総合開発 機構(NEDO)の開発テーマ「超電導フライホイールシ 超電導磁石 ステムの開発」の公募に際し、当社の超電導技術の研究 をベースにした提案を行ったところ、NEDO により採択 フライホイール (約25t) され、開発を進めています。 このシステムは、電気エネルギーを回転エネルギーに 変換することにより、電力を貯蔵するものです。超電導 固定鉄心 回転鉄心 発電電動機 超電導スラスト軸受 磁石を軸受に用いて非接触で回転させることで、低損失 17 未来を創造する研究開発を目指して JR 東海は 1987 年の会社発足以来、技術開発を積 小牧研究施設 極的に推進し、安全・安定輸送、速達化、サービス 向上、省エネルギー化など、数々の成果をあげてき ました。2002 年に開設した小牧研究施設(総合技 術本部技術開発部)において、地球環境保全の面で 優れた鉄道の特性にさらに磨きをかけるとともに、 鉄道分野を超えた新しい分野に幅広く取り組んでい ます。 ■施設概要 ・敷地面積 用地面積 約 73ha 利用面積 約 20ha ■主要施設 ・研究棟、実験棟 3 棟、実験線、太陽光発電システム、コジェネレーションシステム、氷 蓄熱式空調システムなど 機能材料への取り組み 小牧研究施設では、藤嶋昭氏(東京大学特別栄誉教授)の 指導のもと、環境保全分野への適用が期待されている光触媒 技術の研究開発を行っています。一例として、光触媒の持つ 物質分解機能により悪臭物質や細菌などを分解する脱臭装置 を開発しました。開発した脱臭装置は、2007 年 7 月に営業運 転を開始した N700 系の喫煙ルームに設置しています。なお、 この技術は一般販売向けの空気清浄機にも適用されています。 N700 系に設置した光触媒脱臭装置 一般販売用の空気清浄機 技術開発部における ISO14001 の認証取得 総合技術本部技術開発部で 地球環境保全に資する研究開発 は、2004 年 5 月に環境マネジメ を一層推進するとともに、省エ ントシステムの国際規格である ネルギー、省資源、廃棄物の抑 ISO14001 の認証を取得してい 制などに配慮した質の高い事業 ます。研究開発活動において、 活動を展開しています。 認証登録証 技術開発部の環境方針 ■ 基本理念 東海旅客鉄道株式会社 総合技術本部技術開発部は、地 球環境保全の面で優れた鉄道の特性にさらに磨きをかける ①地球環境保全に資する研究開発を推進する。 ②研究開発活動および施設運営にあたっては、省エネルギ とともに、鉄道を超えて新しい分野にも挑戦する研究開発 ー、省資源、廃棄物の抑制等に十分配慮するとともに、 機関として、これらの推進を通じて地球環境保全に貢献し 環境汚染の予防に努める。 ていく。 特に、環境の世紀といわれる 21 世紀において、地球環 ③当部に適用される環境関連の法規類、および当部が同意 したその他の要求事項を遵守する。 境への負荷の少ない輸送機関である鉄道の果たすべき役割 ④本環境方針に基づく目的および目標を設定し、全部員に が今後ますます重要になるとの認識に立ち、この鉄道がよ 周知する。また、これらについての見直しの枠組みを設 り多くのお客様から選択されるための魅力ある輸送システ けて環境保全活動を推進するとともに、環境マネジメン ムの構築に向けた研究開発、ならびに鉄道の特性を一層向 トシステムの継続的改善に努める。 上させるための研究開発を促進するものとする。 18 ■ 行動指針
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