資料 No.4-2 エキスペリエンスクラブ 11 月例会報告 発行日 2007 年 11 月 15 日 エキスペリエンスクラブ To-Be クラブ 大塚 陽子 エキスペリエンスクラブ 11 月例会が以下のように開催されましたので、報告いたします。 1.11 月例会概要 日時:2007 年 11 月 15 日(火) 19:00∼(18:30 受付開始) 場所:株式会社ヒューマンシステム 9F会議室 テーマ: 「改革のためのプロジェクトガバナンスとは −迷走するプロジェクトを救い成功に導く為に−」 スピーカー: 株式会社コーポレート・インテリジェンス 代表取締役 参加者数: 20 名 + 武富 為嗣 氏 スタッフ 2 名 2.改革のためのプロジェクトガバナンスとは −迷 走するプロジェクトを救い成功に導く為に− ①開会のあいさつ ワンポイントP2M ②改革のためのプロジェクトガバナンスとは −迷走するプロジェクトを救い成功に導く為に− 1.プロジェクトガバナンスとは? 2.プロジェクトガバナンスの仕組み 3.プロジェクトガバナンスの強化 ③質疑応答 ④おわり 3.内容について ワンポイント P2M では、ヒューマンシステムの湯野川から、国際 P2M 学会入会のお知らせと 12 月 8 日のメンバーズサロンについて簡単にご説明させていただき、続いて武富先生のお話が始まった。 従来の「プロジェクトマネジメント」という概念に関連して、「プロジェクトガバナンス」という新 しい考え方がある。では、その「プロジェクトガバナンス」とは どのようなものであろうか? プロジェクトガバナンスは、プロジェクトのオーナー、つまりプロジェクトにお金を出している人(社 長や部長など)のための概念である。プロジェクトマネージャーとは違い、実際に現場には携わらない 彼らが、いかにマネージメントするか、いかにリスクを低減させるかという手法であり、植民地経営に 端を発する。 1 資料 No.4-2 プロジェクトガバナンスでは、利益だけでなく効用を監視することが重要である。「テニスコートの つもりでいたら、オリンピックスタジアム並みのシステムが出来上がってしまった」という例えがある。 もし初めからオリンピックスタジアムだと思っていたら、オーナーはお金を出さなかったであろう。つ まり、たとえ 100 人のニーズに答えて 100%の顧客満足度を得られても、100 倍のお金が掛かっていた ら、費用対効果の点からは そのプロジェクトは失敗である。ゆえにプロジェクトを「見える化」し、 チェックをかける必要があるのである。 では具体的に、どのような仕組みになっているのだろうか。プロジェクトは、実際にはプロジェクト マネージャーが実施するものである。スポンサーが心血を注いだところで、プロジェクトが終わるとい うものではない。そこで、プロジェクトガバナンスでは、スポンサーがプロジェクトマネージャーを監 視する。定期的にチェックをし、「ここまでは許せる」というリスクの許容範囲を定めて、予算を出し たり止めたり、あるいは放置したりしながらプロジェクトの成功を担保する。ガバナンスを機能させる ためには、プロジェクトの三段階(構想→開発→定常状態)全てにおいて監視とリスク許容範囲の設定 を行う必要がある。 しかし、リスクとは予想できないことが往々にしてある。当初の予定から品質を下げてプロジェクト を完了させようとする事例は よく見られるが、スポンサーにとってこれは問題である。このような問 題をクリアするためには、投資収益(財務)評価を行ってからプロジェクトをスタートさせることが必 要である。プロジェクト完了後の見返りやどこまでのリスクがあるかに気を配るのがスポンサーである から、どこまでリターンがあるか、と同時に、どんなリスクがあるか、までを見るのである。(NPV) ではこのようなプロジェクトガバナンスは、強化する必要性があるのだろうか。昨今は、インターネ ットの普及に伴い、開発においてもグローバル化が急速に進んでいる。そのような中で、投資した国と は別の国で開発が頓挫した場合、プロジェクトマネージャーは責任とって辞めてしまう。それでは意味 が無い。そこで、会社内でプロジェクトマネージャーを統治する人間をどのポジションに置くのか決め る、ガバナンスを強化する必要が出てくるのである。そのためには、アクティビティを分解して、進捗 管理、コスト管理をプロジェクト内で行い、その様子が外部から見えるようにする機能を設ける事が肝 要である。 4.受講者からの質問・感想 「プロジェクトガバナンス」とは誰が行うのか?ピンボックの世界でどういう異論があるのか? (岩下氏) →ピンボックでは、プロジェクトマネージャーが行うこととされている。しかし、コンサルティング の実体験からして、プロジェクトマネージャーではない、「自分は手を出さずにうまくやらせる立 場」という存在が必要なのではないか。「プロジェクトガバナンス」はまだ新しい言葉であるが、 今後、 「いかにプロジェクトを失敗させないか、回していくか」という考えは必ず出てくるだろう。 IT ガバナンスという、政治的意味合いを持つ言葉はこれまでも存在していた。また、ステアリングコミティーと いう考え方も大規模なプロジェクトには必ずある。言葉は違っていても、同じように、監視の結果によって予算 2 資料 No.4-2 を止める等の考え方はあった。それを「プロジェクトガバナンス」と呼んでいるのか?(白井氏) →例えば期間と予算が2倍になっても、お客様が 2 倍払って下さるなら、プロジェクト大成功である。しかし、 プロジェクトオーナーにしてみれば、2倍になってしまうのは失敗なのである。つまり、「お金を出す側が失 敗しない」ための考え方という意味で視点が違うのである。 建設の世界では、1億で始まったものが10億になることはありえない。常にお客様と話し合い、予算と付加 価値についての進言こそするが合意の上で行う。工程が変わることはありえない。IT 業界はそういう事が起こ りうるのか?(田中氏) →図面では出てこない、紙に出てこないお客様のご要望を実装していくと、予算は高くなる。「人がつくる」点 で どうしても曖昧になりがちであり、予算不足が発覚するのも後の工程になってからである。そうなると、 かなり前の工程まで遡らなければならない。人の目には見えないもので、大きなプロジェクトほど「成功のイ メージ」を形で表現するのは難しい。(白井氏) 人が間に挟まったり、仕様書が決まらないうちにプロジェクトがスタートすることがある。品質が人の技術に よって まちまちで、基準もない。下請けに依頼すると図面自体に問題がある事もある。お客様の新たな要 望があれば追加工数が発生してしまう。お客様の要望を全て飲んでいたら赤字になってしまうが、拒否で きずに沈んでしまうという実態がある。 ユーザーの素人性がお金の吊り上げの原因になっている。ガバナンスではそこは見えてこない。プロジェク トがスタートし、お金を払って外部からプロを入れても駄目であった。どうしたらいいのだろうか?(種村氏) →つぎこんだ金額の分だけリスクが減るとは限らない。 5.懇親会 今回の懇親会は、セミナーを行った会場から場所を移 して一橋大学山本教授の乾杯の挨拶で始まった。セミナ ーでの活発な議論の熱気は冷めやらず、更に白熱した意 見交換が あちらこちらで見られ、エキスペリエンスク ラブ 1 周年にふさわしい盛会であった。当日、学会の申 し込みの宣言が合計5名もあった。 今回の懇親会のワインリスト ボジョレー・ヌーヴォー ドメーヌ・サンダー [2007]<赤> ボジョレー・ヌーヴォー・プロ[2007]年・ジョルジュ・デュブッフ<赤> ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー セレクション プリュス ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー CH.ガイヤール[2007]<赤> ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー ドメーヌ・デ・リス・サクレ[2007] <赤> ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー・ヴィエイユ・ヴィーニュ[2007]年・ドメーヌ・デュ・ シャピトル<赤> ボジョレー・ヌーヴォー アントワーヌ・シャトレ[2007]<赤> アルザス・ゲヴェルツトラミネール [2005]<白> 3 資料 No.4-2 6.所感 今回は様々な業種の皆様にご参加いただき、異業種間の考え方の違いの大きさに驚かされた。 講師の武富先生や参加者の皆様の活発な議論は、時間が経つのも忘れて聞き入ってしまう程、刺激 的であった。 「プロジェクトガバナンス」という新しい概念を分かりやすくご説明いただき、とても興味深く感 じた。 7.次回はメンバーズサロンと合同の例会 日時:2007 年 12 月 8 日(土)13:30∼ 場所:日本工業大学大学院 (13:00 開場) 神保町キャンパス テーマ:「改革をめざした企業提携マネジメント −実践的な知識の流通と共有手法−」 スピーカー: 一橋大学大学院商学研究科教授 山本秀男 氏 東京工業大学大学院総合理工学研究科連携教授 吉川厚 氏 以上 4
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