古事記編纂千三百年記念企画展示

古事記編纂千三百年記念企画展示
展示期間 平成24年10月19日(金)~12月28日(金)
古事記といえば、言わずと知れた日本最古の歴史書です。
今年、平成24年(2012年)は、「古事記編纂千三百年」の記念すべき年にあたります。
多くの出版社がそれに合わせて古事記関係の本を出版しており、若葉図書館でもそれを記念して
企画展示「古事記の世界」を行うこととしました。
おおのやすまろ
しかし実際のところ、古事記編纂の年については、編纂者太安万侶 による序文の日付が「和銅
5年(712年)正月28日」となっていること以外、手がかりとなるものがありません。養老4
年(720年)の日本書紀の編纂については、「正史」である続日本紀にも載っていて、編纂直後
から、それを用いた「歴史教育」が行われていたことが知られていますが、古事記についての記載
はないのです。
古事記の存在が文献で確認できるようになるのは平安時代に入ってからであり、広く世間に流布
するようになるのは、さらに下った南北朝時代のことと考えられています。古事記の最古の写本で、
本居宣長が「古事記伝」の底本としたいわゆる「真福寺本」も、南北朝時代のものです。
以上のような経緯から、古事記については、「実は712年よりも後に成立したのではないか」
とか「実は日本書紀よりも新しいのではないか」といった疑いがもたれてきました。広い意味での
「古事記偽書説」ですが、このような疑いが出るのも、古事記に日付のある序文がついているから
なのです。
もちろん、序文の日付が内容の古さや真実性を証明するわけではないので、とりあえず序文は無
視して「本文」の内容のみを問題にすればいいとも言えるのですが、もし序文がついていなかった
しんやす ま ろ まを
としたら、はたして本居宣長は「古事記伝」を書いていたかどうか。「 臣 安 萬侶 言 す」で始まる
この序文(上表文)には、編纂の経緯なども詳しく述べられており、これらを無視するのは、心情
的にもとても難しいのです。
いずれにしても、考えれば考えるほど「古事記編纂千三百年」があやしくなってきますが、何は
ともあれ、このような問題についても多くの議論が行われていること自体、序文の存在も含めて、
古事記がいろいろな意味で魅力的な書であることの証拠とは言えるでしょう。
古事記・碩学のことば
さすがに論争の尽きない書物だけあって、古事記については、いろいろな人がいろいろなことを
述べています。そこで若葉図書館では、「古事記・碩学のことば」と題して、古事記に関する碩学
たちの言葉を集めて紹介しています。
ちなみに「碩学」とは、「学問のひろく深い人。大学者。」(広辞苑)のことです。したがって、
中には「この人はまだ碩学の域に達していないだろう」といった指摘(つっこみ)が入りそうな方
もいるかもしれませんので、ここではその中から、すでに鬼籍に入られた方の名前のみを紹介させ
ていただきます。生まれの早い順に、
本居宣長、津田左右吉、柳田國男、折口信夫、和辻哲郎、西郷信綱
以上の6人です(敬称略)
。6人とも全集や著作集が編まれている方たちで、
「碩学」と呼んでも
誰からも異議は出ないであろうと思います。館内では、この6人を含む合計12人の碩学の言葉を
紹介しています。本当はもっとたくさんの言葉を紹介したかったのですが、館内の展示スペースに
限りがあるため、人数をしぼらせていただきました。
古事記の中の千葉
古事記というと「中央」の歴史書ということで、「辺境」の千葉のことは何も触れられていない
ような印象を受けるかもしれませんが、注意して読んでみると、古事記の中にも千葉に関係のある
記述が散見されます。それと考古学上の成果を照らし合わせると、意外にも豊かで魅力的な古代の
千葉の様子が浮かび上がってきます。
そこで今回も、前回の企画展示「ふるさとの川」に続き、加曽利貝塚博物館の学芸員の方に、
「古
事記の中の千葉」と題してインタビューしてきました。先に紹介した「古事記・碩学のことば」と
同様、館内でご覧になれます。
展示の様子
奥の展示板、赤い紙に張ってあるのが、「古事記・碩学のことば」です。
くすのき
地名説話に出てくる 楠
風土記逸文にいわく、
『総は木の枝をいう。昔、この国に
大きな楠が生えた。長さは数百丈に
及んだ。時の帝がこれを不思議に思
って占わせ給うと、神祇官の役人は
「天下の大凶事である」と奏上した。
よってこの木を伐ると、南方に倒れ
た。上の枝の方を上総といい、下の
枝の方を下総という。
』
その楠をイメージして作りました。
が、実は「総」は「麻」だという説
が有力です。
キトラ古墳の壁画
彩色壁画で有名な奈良県明日香村
のキトラ古墳は、西暦700年前後
に造られたと考えられています。
ということは、古事記編纂と同時代、
ということで、石室に描かれた天文
図と四神(玄武・朱雀・青龍・白虎)
で飾ってみました。
カラゴコロ
本居宣長翁が見たら、
「漢 意 ナリ!」
と一喝されてしまいそうです。
↓左から、玄武・朱雀・青龍・白虎です。
『古事記の中の千葉』
加曽利貝塚博物館の学芸員の方に
お話をうかがってきました。
鹿島神宮と香取神宮
階段の踊り場では、鹿島神宮と香取神宮の写真を展示しています。
この高名な二つの「一の宮」の間には、今は利根川が流れていますが、
古代には巨大な内海(香取の海)がありました。
若葉図書館 『古事記の世界』 ブックリスト
平成24年10月19日(金)~12月28日(金)
№
書 名
著 者
1 日本思想大系 1 古事記
出版者・出版年月
記号
資料番号
岩波書店 1982.2
121
5101425269
2 倭王卑弥呼と天照大御神伝承
安本 美典/著
勉誠出版 2003.6
210.2
5180191119
3 邪馬台国と高天の原伝承
安本 美典/著
勉誠出版 2004.3
210.2
5180191128
4 邪馬台国と出雲神話
安本 美典/著
勉誠出版 2004.11
210.3
5180191137
5 大和朝廷の起源 邪馬台国の東遷と神武東征伝承
安本 美典/著
勉誠出版 2005.7
210.3
5180191146
6 古事記の証明 ワカタケル大王と太安万呂
毎日新聞社/編
毎日新聞社 1979.6
210.3
5100667470
7 日本国家の起源
井上 光貞/著
岩波書店 1979
210.3
5100668084
8 古事記の世界
西郷 信綱/著
岩波書店 1979
210.3
5100667588
9 「古事記」と「日本書紀」の謎
上田 正昭/[ほか]著
学生社 1992.9
210.3
5101054554
10 日本武尊
上田 正昭/著
吉川弘文館 1986.1
210.3
5100668745
11 白鳥伝説
谷川 健一/著
集英社 1986.1
210.3
5100668253
12 青銅の神の足跡
谷川 健一/著
集英社 1979.6
210.3
5100668594
13 地名の古代史
谷川 健一/著
河出書房新社 2012.1
210.3
5101952924
№
書 名
著 者
出版者・出版年月
記号
資料番号
14 古田武彦・古代史コレクション 1 「邪馬台国」はなかった 古田 武彦/著
ミネルヴァ書房 2010.1
210.3
5101959030
15 古田武彦・古代史コレクション 2 失われた九州王朝
古田 武彦/著
ミネルヴァ書房 2010.2
210.3
5101958721
16 古田武彦・古代史コレクション 3 盗まれた神話
古田 武彦/著
ミネルヴァ書房 2010.3
210.3
5101959040
17 関東に大王あり 稲荷山鉄剣の密室
古田 武彦/著
創世記 1979.11
210.3
5100667309
18 銅剣・銅鐸・銅矛と出雲王国の時代
松本 清張/編
日本放送出版協会 1986.9
210.3
5100668020
19 葬られた王朝 古代出雲の謎を解く
梅原 猛/著
新潮社 2010.4
210.3
5180169753
20 古事記及び日本書紀の研究
津田 左右吉/著
毎日ワンズ 2012.8
210.3
5101959353
21 「日本=百済」説 原型史観でみる日本事始め
金 容雲/著
三五館 2011.4
210.3
5180253580
22 古代出雲を知る事典
瀧音 能之/著
東京堂出版 2010.8
217.3
5101905595
291
5101956988
748
5101957760
23 出雲国歴史読本
新人物往来社 2012.8
上田 正昭/文 青幻舎 2012.7
24 八雲立つ出雲 植田正治、上田正昭が歩いた神々のふるさと 植田 正治/写真
25 古事記不思議な1300年史
斎藤 英喜/著
新人物往来社 2012.5
913.2
5101954123
26 直木孝次郎が語る 古事記物語
直木 孝次郎/著
平凡社 1984.6
913.2
5100280256
27 古事記の起源 新しい古代像をもとめて
工藤 隆/著
中央公論新社 2006.12
913.2
5101850915
28 古事記の読み方 八百万の神の物語
坂本 勝/著
岩波書店 2003.11
913.2
5101812683
№
書 名
著 者
出版者・出版年月
記号
資料番号
29 口語訳古事記 完全版
三浦 佑之/訳・注釈
文芸春秋 2002.6
913.2
5101796070
30 古事記講義
三浦 佑之/著
文芸春秋 2003.7
913.2
5101861507
31 古事記を旅する
三浦 佑之/著
文藝春秋 2007.4
913.2
5101861150
32 あらすじで読み解く古事記神話
三浦 佑之/著
文藝春秋 2012.5
913.2
5101954105
33 古事記注釈 第1巻
西郷 信綱/著
平凡社 1977
913.2
5100280040
34 古事記注釈 第2巻
西郷 信綱/著
平凡社 1976
913.2
5100280158
35 古事記注釈 第3巻
西郷 信綱/著
平凡社 1988.8
913.2
5101444040
36 古事記注釈 第4巻
西郷 信綱/著
平凡社 1989.9
913.2
5101444086
37 古事記の暗号 神話が語る科学の夜明け
藤村 由加/著
新潮社 1997.11
913.2
5101149765
38 日本古代文化の探究 古事記
上田 正昭/編
社会思想社 1977
913.2
5100609619
39 日本古典文学大系 1 古事記
岩波書店 1978
918
5100100788
40 日本古典文学大系 2 風土記
岩波書店 1977
918
5100051370
41 日本古典文学大系 3 古代歌謡集
岩波書店 1978
918
5100100714
42 天皇家の“ふるさと”日向をゆく
梅原 猛/著
新潮社 2005.7
B164
5180159040
43 古事記日本書紀に出てくる謎の神々
『歴史読本』編集部/編
新人物往来社 2012.7
B172
5101956979
№
書 名
著 者
出版者・出版年月
記号
資料番号
44 物語による日本の歴史
石母田 正/著
筑摩書房 2012.7
B210.3
5101957161
45 消された大王饒速日
神 一行/[著]
学研 2000.9
B210.3
5101510261
46 完本聖徳太子はいなかった
石渡 信一郎/著
河出書房新社 2009.9
B210.3
5180191191
47 房総の古墳を歩く
「房総の古墳を歩く」編集委員会 芝山町教育委員会 1998.5
C202
5101199032
48 房総の古代史をさぐる
麻生 優
築地書館 1992.6
C202
5100896375
49 古代房総文化の謎
石井 則孝/著
新人物往来社 1977
C202
5180118843
50 口訳常陸風土記 その歴史と文学
根本 亮/著
崙書房 1986
C251
5100902131
51 東国の古代 産鉄族オオ氏の軌跡
柴田 弘武/著
崙書房 1980.3
C251
5100942315
52 常陸国風土記をゆく
柴田 弘武/文
崙書房 2000.6
C295.1
5101299270