2部 18 対州馬にみられたエンドファイト中毒を疑う症例 対馬家畜保健衛生所 ○山﨑 邦隆 中央家畜保健衛生所 横山 竜太 エンドファイトとは植物体内で共生的に存在する菌類であり、植物に耐病虫性等の有用 形質を付与するいっぽう、摂取した動物に中毒症状を引き起こす生理活性物質(ロリトレ ム B 等)を産生する。今回、日本在来馬の一種である対州馬を飼養する対馬市内農場にお いて、輸入乾草給与によるエンドファイト中毒を疑う症例がみられたので、その概要を報 告する。 1 発生状況 当該農場は対州馬 3 頭と褐毛和種繁殖牛 3 頭を飼養し、2011 年 11 月から輸入乾草を給 与していたが、2012 年 2 月末、新たに購入した同種乾草の給与を開始したところ、対州馬 2 頭が振戦、歩様そうろうを呈した。飼料や栄養管理の失宜が原因として疑われたため、 抗生物質およびビタミン剤の投与後、2 頭を他の飼養施設へ輸送した。移動後、飼料内容 を変更し経過観察したところ、症状は漸次改善し、3 日後には 2 頭とも回復した。 2 検査成績 (1) 血液生化学検査 発症馬 2 頭について、血液生化学的検査を実施したところ、重症の 1 頭が GOT および CPK の高値を示し、軽症の 1 頭が CPK の高値を示した。 (2) 輸入乾草の検査 給与されていた輸入乾草はペレニアルライグラスと判明し、種子中にエンドファイト菌 糸が確認された。乾草中のエンドファイト毒素の定量では、ロリトレム B 濃度は 1,600ppb であった。なお、硝酸態窒素濃度は 1,000ppm 以下であった。 3 まとめ 今回の症例では、乾草中のロリトレム B 濃度は米国の毒性許容値(1,800ppb 以上)より 低濃度であったが、給与された乾草にエンドファイト菌糸が確認され、乾草の給与中止に より症状が回復したこと、また 2 頭の症状の程度には差があり、乾草の摂食量に比例して 重症となる傾向が認められたことから、輸入乾草によるエンドファイト中毒が疑われた。 現在、当該乾草の対州馬への給与を停止し、管内牛飼養農家に対しては単味での給与をし ないよう注意喚起を行っており、これまでのところ牛での中毒はみられていない。馬での エンドファイト中毒疑いの報告は少ないが、在来馬や個人飼養では牛と同様の飼料給与が 行われる場合があるため、今後も注意、啓発が必要である。 - 24 -
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