「自衛隊の任務」の改正

28. 5. 14
岩田高明(幹候 29 期)
「自衛隊の任務」の改正
平成27年度末、先々月の3月29日(火)に、いわゆる「安保関連法」が施行された。
「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正す
る法律」と新規制定の「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等
に対する協力支援活動に関する法律」の二法である。前者については、自衛隊法を含めて
十本の法律(附則の改正を含めると二十本)の一部が改正された訳だが、特に、「自衛隊
の任務」を定めた自衛隊法第三条が改正されているので、この場をお借りして整理をして
おきたい。
1.第三条(自衛隊の任務)の改正
自衛隊法の第三条は、次のとおり一部改正された。
(自衛隊の任務)
第三条
自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接
侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持
に当たるものとする。
2
自衛隊は、前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない
限度において、かつ、武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において、
次に掲げる活動であって、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施することと
されるものを行うことを任務とする。
一
我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に
対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動
二
国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進
を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動
3
陸上自衛隊は主として陸において、海上自衛隊は主として海において、航空自衛隊
は主として空においてそれぞれ行動することを任務とする。
(自衛隊法)
確認のために全文を記載したが、今回改正されたところは横線で消した2箇所、つまり、
第三条第1項本文の「直接侵略及び間接侵略に対し」と、第2項第一号の「我が国周辺の
地域における」と云う文言が削除された。
近年、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している中、もはや「どの国も一国
のみで自国を守ることができない(安倍首相)」という認識の下、自衛隊の「主たる任務」
である「我が国を防衛すること」については、その対象事態を「直接侵略及び間接侵略」
に限定せず、また、「主たる任務の遂行に支障を生じない限度において」行う「(従たる)
任務」については、その地理的範囲を「我が国周辺の地域」に制限しない事となったわけ
である。
1
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以上の様に、「自衛隊の任務」は、「安保関連法」の施行により、対象事態及び地理的
範囲ともに広げられたのだが、これら任務の拡充は、どの様に考えられたのだろうか。
(1)主たる任務の拡充
自衛隊法第三条第1項から「直接侵略及び間接侵略に対し」という文言が削除されたの
は、新たに「存立危機事態」という概念が取り入れられた為である。この「存立危機事態」
については、関連法である「事態対処法1」が改正され、以下の様に定義された。
第二条
四
存立危機事態
我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これに
より我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆さ
れる明白な危険がある事態をいう。
(事態対処法)
この事態が、自衛隊の任務に、どの様に関連付けられるのか。それを知るには、自衛隊
法第三条の改正に伴い、「主たる任務」を遂行するための行動である「防衛出動」に係る
第七十六条も一部改正されているので、こちらを見ればよい。
(防衛出動)
第七十六条
内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃(以下「武力攻撃」
という。)が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認め
られるに至った[次に掲げる]事態に際して、我が国を防衛するために必要があると
認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合にお
いては、武力攻撃事態等[及び存立危機事態]における我が国の平和と独立並びに国
及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号)第九条の定めると
ころにより、国会の承認を得なければならない。
[一
我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は我が国に対する外部か
らの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態]
[二
我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国
の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される
明白な危険がある事態]
2
内閣総理大臣は、出動の必要がなくなったときは、直ちに、自衛隊の撤収を命じなけ
ればならない。
横線を引いた処がこの度削除され、[
(自衛隊法)
]内が新たにつけ加えられた処である。第1項の
主文中に記述されていた「武力攻撃事態 2」が同項第一号に移され、第二号に「我が国と
密接な関係にある他国に対する武力攻撃・・・」云々という「存立危機事態」が新たに追加
1
武力攻撃事態等[及び存立危機事態]における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関す
る法律(平成 15 年法律第 79 号)
2 武力攻撃事態 武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められる
に至った事態をいう。(武力攻撃 我が国に対する外部からの武力攻撃をいう。)
2
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された。従来、自衛隊の「主たる任務」のための防衛出動は、「武力攻撃事態」において
発令されるものであったが、今回の「安保関連法」の施行により、「存立危機事態」に際
しても命ぜられることになったのである。
この「存立危機事態」の定義は、先に示したが、よく言えば柔軟な、悪く言えば冗長な
表現となっており、はなはだ分かりにくい。「我が国と密接な関係にある」とは具体的に
どういうことなのか判然としないが、要は、
「他国に対する武力攻撃3が発生」した場合に
あっても、
「我が国の存立が脅かされ、・・・・・明白な危険がある」事態であれば、防衛出動
の対象となるということであり、昨年来の安保法制に係る国会審議において最大の論点と
なった「集団的自衛権の容認」に該当する改正箇所である。これによって、自衛隊の「主
たる任務」については、対象事態の概念が拡充され、集団的自衛権を行使するための法的
裏付けが整ったわけである。
(2)(従たる)任務の拡充
次に、自衛隊法第三条第2項の「(従たる)任務」の拡充であるが、これについては、
前述したように「我が国周辺の地域における」という地理的制約が外された。
グローバル化や技術革新の急速な進展により国家間の相互依存関係が強まり、テロや
ISIL(Islamic State of Iraq and the Levant)などの一地域で生じた混乱が、直ちに国際
社会全体の課題や不安定要因に拡大するリスクが高まっている現状において、「(従たる)
任務」を「我が国周辺の地域における」任務のみに限定するのは非現実的であることから
行われた改正である。この第2項に係る事態は、今までは「周辺事態」と呼ばれていたが、
地理的な縛りがなくなったことから、「重要影響事態」と云われることになった。
関連法である「周辺事態安全確保法4」の第一条は、次のとおり改正されている。
(目的)
第一条
この法律は、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそ
れのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を
与える事態(以下「周辺事態[重要影響事態]」という。)に対応して我が国が実施
する措置、その実施の手続きその他の必要な事項を定め[に際し、合衆国軍隊等に
対する後方支援活動等を行うことにより]、日本国とアメリカ合衆国との間の相互
協力及び安全保障条約(以下「日米安保条約」という。)の効果的な運用に寄与し[寄
与することを中核とする重要影響事態に対処する外国との連携を強化し]、我が国の
平和及び安全の確保に資することを目的とする。
(周辺事態安全確保法)
同法条項の「周辺事態」と云う言葉は、すべて「重要影響事態」に置き換えられ、併せて、
「後方地域支援」が「後方支援活動」に、「後方地域捜索救助活動」が「捜索救助活動」
3
この際の武力攻撃を「存立危機武力攻撃」という。
存立危機武力攻撃 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃であって、これにより我が国の存
立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるもの
4 周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律(平成 11 年法律第 60 号)
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に修正された。これに伴い、同法そのものも、
「重要影響事態安全確保法 5」と呼称される
ことになった。「重要影響事態」に地理的制約はなくなったが、外国の領域における対応
措置については、当該外国の同意がある場合に限り実施するものとされている。
なお、ここで注意を要するのは、「周辺事態安全確保法」の改正は、地理的制約の削除
のみではないと云うことである。前記、同法第一条の改正箇所をみると、「合衆国軍隊等
に対する後方支援活動等・・・」や「重要影響事態に対処する外国との連携を強化し」とい
う言葉が追加されている。つまり、今までの「周辺事態」に際しての後方地域支援の対象
は、合衆国の軍隊のみであったのだが、改正された「重要影響事態」の「後方支援活動等」
では、その対応が「外国の軍隊その他これに類する組織」にも広げられている。自衛隊の
「(従たる)任務」は、地理的に拡充されたのみならず、支援対象国の範囲 についても
拡充されたのである。
2.自衛隊の任務と行動
前項で述べてきたように、
「自衛隊の任務」は、出動事態の概念及び活動の地理的範囲、
そして、後方支援活動等の対象国についても拡充されたわけだが、これらをより具体的に
整理するため、自衛隊法第三条の「自衛隊の任務」を第六章の「自衛隊の行動」に対比さ
せてみる。これを整理し表にしたものが別紙「自衛隊の任務と行動」であり、自衛隊法の
改正経緯に基づき纏めた。「自衛隊の行動」に係る主な変更は、以下のとおり。
(1) 我が国を防衛すること
主たる任務である「我が国を防衛すること」に関しては、「存立危機事態」と云う概念
的な拡充があったが、そのための防衛出動等、「自衛隊の行動」についての追加はない。
但し、「防御施設構築の措置」及び「海上保安庁の統制」については、従来の「武力攻撃
事態」に係る部分に限るものとされ、「存立危機事態」では実施されない。
また、自衛隊法の改正に伴い、
「事態対処法」の一部が改正されたことは既に述べたが、
同法以外に、以下の法律も改正されている。
○「米軍行動関連措置法 6」→「米軍等行動関連措置法」に変更
○「特定公共施設利用法 7」
○「海上輸送規制法8」
○「捕虜取扱い法9」
5
重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律
(平成 11 年法律第 60 号)
6 武力攻撃事態等[及び存立危機事態]におけるアメリカ合衆国[等]の軍隊の行動に伴い我が国が実施す
る措置に関する法律(平成 16 年法律第 113 号)
7 武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律(平成 16 年法律第 114 号)
8 武力攻撃事態[及び存立危機事態]における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律
(平成 16 年法律第 116 号)
9 武力攻撃事態[及び存立危機事態]における捕虜等の取扱いに関する法律(平成 16 年法律第 117 号)
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これらの法律改正により、我が国を防衛する上で実施できる措置等が変更されているので、
主なところを、簡単に記しておく。
(米軍等行動関連措置)
・武力攻撃事態等に加え、存立危機事態における合衆国の軍隊への支援活動を追加
・武力攻撃事態等及び存立危機事態における外国軍隊への支援活動を追加
(特定公共施設利用)
・武力攻撃事態等における外国軍隊の行動を特定公共施設等の利用調整対象に追加
(海上輸送規制)
・存立危機事態における海上輸送規制の実施
(捕虜取扱い)
・存立危機事態における捕虜取扱い法の適用
(2) 公共の秩序の維持
必要に応じて当たるものとされる「公共の秩序の維持 10」に係る行動については、
「在外
邦人等の保護措置」が新設された。これは、過去に生起した邦人殺害事件に対処するため
の改正である。また、自衛隊法の一部改正により、武器等防護の対象に合衆国軍隊等の
部隊の武器等が追加され、更に、平時における合衆国軍隊に対する物品又は役務の提供が
拡充されている。それぞれ以下のとおり。
(在外邦人等の保護措置)
・外国における緊急事態に際して生命又は身体に危害が加えられる惧れがある邦人の保護
措置を自衛隊の部隊が行うことができるようになった。この際、いわゆる任務遂行型の
武器使用が可能であり、危害許容要件は、正当防衛と緊急避難である。一定の条件の下、
邦人以外の外国人を保護することも可能
(合衆国軍隊等の部隊の武器等の防護)(自衛隊法第九十五条の二 新設)
・自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事している合衆国の軍隊その他の
外国の軍隊その他これに類する組織の部隊の武器等を防護するための武器使用を追加
(合衆国軍隊に対する物品又は役務の提供)(自衛隊法第百条の六 改正)
合衆国軍隊に対して、自衛隊が物品又は役務の提供を実施できる活動等に以下を追加
・自衛隊の施設等の警護出動
・海賊対処行動
・弾道ミサイル等に対する破壊措置
・機雷等の除去
・在外邦人等の保護措置
・船舶又は航空機による情報の収集のための活動
10「公共の秩序の維持」を「第1項の従たる任務」と表現することもあるが、本稿では、自衛隊法第三条の
文面に従い、「必要に応じ当たる任務」と捉えている。
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(3) 我が国の平和及び安全の確保に資する活動
主たる任務の遂行に支障を生じない限度において行う「(従たる)任務」の内、第一号
に係る本件に関しては、「周辺事態」から地理的制約が外され「重要影響事態」とされた
ことに合わせ、
「後方地域支援等」の枠組みからも「地域」が削除され「後方支援活動等」
に変更された。また、以下の関連法についても一部改正が行われている。
○「周辺事態安全確保法」→「重要影響事態安全確保法」に変更(前述)
○「船舶検査活動法11」
これらの変更に伴い、
「
(従たる)任務」の地理的拡充が、その行動についても修正され
たが、第1項で述べたように、支援対象国も拡充され、「日米安保条約の目的の達成に寄
与する活動を行うアメリカ合衆国の軍隊」だけでなく、「その他の国際連合憲章の目的の
達成に寄与する活動を行う外国の軍隊その他これに類する組織」に対しても後方支援活動
等が実施できることになった。
対応措置ごとの主な変更点は、以下のとおり
(後方支援活動)
・外国の領域おける対応措置が可能(当該外国の同意がある場合に限る)となったが、
現に戦闘行為が行われている現場では実施しないことを明記
・物品及び役務の提供の種類について、既存の「補給、輸送、修理及び整備、医療、通信、
空港及び港湾業務、基地業務」に加え、
「宿泊」、
「保管」、
「施設の利用」及び「訓練業務」
を追加
・物品及び役務の提供に「武器の提供を含まない」ことは従来のとおりであるが、
「弾薬」
の提供と「戦闘作戦行動のために発信準備中の航空機に対する給油及び整備」は実施可能
(捜索救助活動)
・後方支援活動と同じく、外国の領域での措置が可能。現に戦闘行為が行われている現場
では実施しないとされているが、例外規定があり、「既に遭難者が発見され、自衛隊の
部隊等がその救助を開始しているときは、当該部隊の安全が確保される限り、当該遭難者
に係る捜索救助活動を継続すること」が可能
(船舶検査活動)
関連法規の改正は、「周辺事態」が「重要影響事態」へと拡充されたことに伴う文言の
修正が主であり、その内容に大きな変更はないが、「船舶検査活動」は「重要影響事態」
に際してだけではなく、「国際平和共同対処事態」においても実施可能となった。なお、
このことは、本(3)項に関することではなく、次に述べる(自衛隊法第三条第2項)
第二号の任務に関連する変更である。
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周辺事態[重要影響事態]に際して実施する船舶検査活動に関する法律(平成 12 年法律第 145 号)
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(4) 国際社会の平和及び安全の維持に資する活動
第二号任務に係る事項については、次の二法が改正又は新設された。
○「国際平和協力法12」
○「国際平和支援法13」(新設)
これにより、本件活動の「国際平和協力業務」の内容に変更が行われ、また、新しく、
諸外国の軍隊に対する「協力支援活動等」が追加された。「国際緊急援助活動等」につい
ては、特に変更はなく、関連法の「国際緊急援助隊法(JDR 法)14」も改正されていない。
業務又は活動ごとの追加・修正事項は以下のとおり。
(国際平和協力業務等)
PKO 法といわれる「国際平和協力法」の協力業務は、
「国際連合平和維持活動、人道的
な国際救援活動及び国際的な選挙監視活動」であったが、これに「国際連携平和安全活動」
が追加された。「国際連携平和安全活動」の定義は極めて繁雑であり記述を避けるが、
在来の国際連合が実施する活動だけでなく、非国連統治型の国際的な平和協力活動にも
従事できるようになったと云うことである。また、業務内容も拡充され、停戦監視や被災
民救援等に加え、いわゆる安全確保業務や駆け付け警護、司令部業務等が追加されている。
更に、
「自衛官の国際連合への派遣」も新設され、
「国際連合平和維持活動」に係る統括
業務のために、自衛官を国際連合へ派遣する道が開けた。
(諸外国の軍隊に対する協力支援活動等)
今回施行された「安保関連法」二法の一つ、「国際平和支援法」の新設による変更で
ある。本法では、新たらしく「国際平和共同対処事態」という概念が取り入れられた。
同法の目的は、次のとおりとなっている。
(目的)
第一条
この法律は、国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去
するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、
我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの
(以下「国際平和共同対処事態」という。)に際し、当該活動を行う諸外国の軍隊等に
対する協力支援活動等を行うことにより、国際社会の平和及び安全の確保に資すること
を目的とする。
(国際平和支援法)
これまた冗長な表現であるが、本件の協力支援活動等は、従来「テロ特別措置法」や
「イラク特別措置法」等、事案が発生する度に制定してきた時限立法を恒久法化し纏めた
ものである。この活動における対応措置は、以下のとおり。
12
国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(平成 4 年法律第 79 号)
国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律
(平成 27 年法律第 77 号)
14 国際緊急援助隊の派遣に関する法律(昭和 62 年法律第 93 号)
13
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岩田高明(幹候 29 期)
・協力支援活動(諸外国の軍隊等に対する物品及び役務の提供)
・捜索救助活動
・船舶検査活動(前述の「船舶検査活動法」の一部改正による。)
3.新たな任務への備え
本稿で整理してきた様に、今回の「安保関連法」の施行により、「自衛隊の任務」は、
その行動や権限等について、かなり多くの変更が成された。細部に亘るまで纏めることは
困難であったが、その「鍵」となる言葉は、以下の三つの事態である。
・存立危機事態
・重要影響事態
・国際平和共同対処事態
これら変化への対応について、どのように備えていくべきなのだろうか。
最近、防衛省関係者の講話等に参加すると、よく耳にするのが「働き方改革」に関する
話しである。なるほど、これは大変に重要で、すぐに措置しなければならないことなので
あるが、環境変化に伴う作戦能力の向上やそのための防衛力整備の方向、更に、海賊対処
行動や震災派遣等の実オペレーション等について、余り言及されなくなったことを筆者は
些か懸念している。「安保関連法」の施行に伴う準備は万端なのだろうか。
安部内閣総理大臣は、法が施行された当日の記者会見において、
「自衛隊には正に今日、
新たな任務が付与された」と述べ、更に、「駆けつけ警護を含め、新たな任務を、安全を
確保しつつ適切に遂行するためには、あらゆる方面で万全の態勢を整え、そして教育訓練
を含め、時間をかけて周到な準備をしなければなりません。・・・正に今日から安全を確保
するため、日本を守るために周到な準備、そのための訓練が始まるということであります」
と強調した。防衛省・自衛隊の奮起や如何に。(了)
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別 紙
自衛隊の任務と行動
第一章 総
則 (自衛隊の任務)第三条
第六章 自衛隊の行動
第1項
「我が国を防衛すること」
<武力攻撃事態>
<存立危機事態>
・防衛出動(76)
・防衛出動待機命令(77)
・防衛出動下令前の行動関連措置(77-3)
・防御施設構築の措置(77-2)
・海上保安庁の統制(80)
―
「公共の秩序の維持」
・国民保護等派遣(77-4)
・命令による治安出動(78)/・海上保安庁の統制(80)
・治安出動待機命令(79)
・治安出動下令前に行う情報収集(79-2)
・要請による治安出動(81)
・自衛隊の施設等の警護出動(81-2)
・海上における警備行動(82)
・海賊対処行動(82-2)
・弾道ミサイル等に対する破壊措置(82-3)
・災害派遣(83)
・地震防災派遣(83-2)
・原子力災害派遣(83-3)
・領空侵犯に対する措置(84)
・機雷等の除去(84-2)
・在外邦人等の保護措置(84-3)
・在外邦人等の輸送(84-4)
第2項
第一号
「我が国の平和及び安全の確保に資する活動」<重要影響事態>
・後方支援活動等(84-5 1/1・2、2/1・2)
第二号
「国際社会の平和及び安全の維持に資する活動」
・<国際連合平和維持活動等> 国際平和協力業務等(84-5 1/3、2/4)
・<国際平和共同対処事態> 協力支援活動等(84-5 1/4、2/5)
・<国際緊急援助隊の派遣>
国際緊急援助活動等(84-5 2/3)
*(
)内数字は、自衛隊法の条項[例(84-5 1/1・2)
:第八十四条の5 第 1 項 第一号及び二号
9