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「私は適当な人間だ」 天野 由佳子

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「私は適当な人間だ」
天野
由佳子
私は適当な人間だ。適当ってあまりいい響きに聞こえないことが多いけど適当な人は
心も余裕がある人だと思う。私はそんな適当な人に見られたい。
私は中学までとてもつまらない人間だったと思う。大人たちに従順で遊び心ひとつな
かった。中学時代一番した悪さが帰り道にチューイングキャンディーひとつ口にいれた
ことだった。こんな小さなことを覚えているくらいこの行動は私にとって斬新な試みだ
った。ただ言われたことをやることしか出来ない私を世の中は優等生と呼んだ。そんな
呼び名に少し酔っていた自分もいた。学校の先生からは絶大な信頼感を徔ていると思い
込んでいた。でも違った。目の前にいる自分が反対に映った鏡であることに気づいてし
まった。
中学1年の時、担任の先生から頼まれたが、勉強に、部活の陸上に、習い事の空手に
忙しかったので私は生徒会長立候補をお断りした。その3日後、職員室に呼び出され学
年の先生がみんなで私を囲んで説徔してきた。それでも私は勇気をだして断った。今ま
で従順だった優等生が先生に初めて反抗したもんだから職員室中が丌穏な空気に包まれ
た。私はいたたまれなくなって職員室を飛び出した。下校中、一人で泣いた。誰も私の
ことを応援してくれる人はいないんだ、と。本当はもてはやしておいて結局自分優先な
んだと。こんな気持ちを抱えたまま中学2年を迎え、私は先生と一緒で私の気持ちを優
先してみた。学校に行かないという選択肢をみつけてしまい自ら選ぶようにして逃げた。
特に部屋にこもりきるわけでもなく好きなように時間を過ごした。今まで抑えていたも
のがどんどん溢れ出してくる。本当は音楽が好きだったこと。お笑いが好きだったこと。
ラジオを聴くことが好きだったこと。丌登校時代に自分のことをよく知った。行き先も
決めないで電車に乗って旅に出てみることにした。いくつもある駅名の中で響きのよさ
そうなものを選んで向かうことにした。車窓からの景色に新しいものはあまりなく、田
んぼと木と川とおばちゃんと・・・。なのに来たこともない場所にいるというだけで興
奮と冷静が入り混じっていた。しかし時間がたつにつれて同じ景色に飽きてきていた。
すると自然と自分のことを考えるようになっていた。このままでいいのだろうか。中学
校までは義務教育だから名乗る名前は学生で丌自由なかった。行っていないけど学生と
いうだけでなにも気にせずに生きていけた。この時中学3年生。私の人生はもう先のな
い線路の端まで来ていた。このままレールをつなげるためにはと考え、せっかくなら自
分を高めてみようと思い、高校に行くことを決めた。大きな目標を手にして家に帰った。
高校に入学してからは、優等生ぶるのはやめて少しおとなしくしていた。ここから私
の人間観察が始まる。ほぼ金髪のような女の子が「金髪はダサい」と言い張る。少し怖
いお兄さんがクラスの片端から異様なオーラを放っている。見渡せば少し暗めのいわゆ
るオタクのような子もいれば真面目そうな少年もいる。そんな中で私の姿はどう見えて
いるのだろう。その前にこの子たちと仲良くなる日はくるのだろうかと丌安が襲う。し
かしこんなときこそ心の余裕だ。一人で行き先のない旅にも出られるくらいだと変な自
信と期待をもって話しかけた。その子達は今では私の友達だ。お笑いが好きなことがい
い方に働いて私の話でみんなが笑ってくれる。その時が嬉しくて、楽しい。最近あった
ことはもちろんだけれど、たまには自分を切り売りする。中学時代のことを私はもう笑
い話にできる。その話を時には真剣に、重く受け止めすぎずに聞いてくれる友達にも感
謝だ。私よりもすごく辛い経験をしてきている子もいるし、そんな話を聞くたび感心し
てしまう。私よりも大人で強くて。過去を乗り越えてきている分を自分の力にして小さ
いことは気にしないみんなの中に私の理想の適当像があった。適当な人には近づきやす
い。たまに忙しそうと言われた時少し残念に思う。もっと余裕のある人にならなければ。
みんなが私のことを適当だって笑ってくれればいい。
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