経済学基礎理論A 10:所得不平等 所得不平等と貧困 大竹文雄(2005)「日本の不平等」 :日本の所得不平等と貧困について 第一章 所得格差は拡大したのか 1 日本は不平等化が進んでいるのか 不平等に関する 8 つの議論 ①経済全体として所得格差が拡大してきたという統計的な事実がある ②失業率が上昇したこと、そして失業層は貧困であるという考え方がある ③企業の中で成果主義的な賃金制度が 1990 年後半から導入された ④企業間の賃金格差 ⑤90 年代終わりのネットバブル ⑥生活保護需給世帯が増加しているのではないか ⑦世代を超えた階層間の固定化が進んできているのではないか ⑧コンピューターが使える人と使えない人との所得格差 2 所得格差は拡大したのか ジニ係数(図 1-1):0に近づくほど平等、1に近づくほど不平等 ローレンツ曲線:累積人員、累積所得を1で基準化した曲線 図 1-2:ジニ係数「家計調査」 図 1-3:ジニ係数「国民生活基礎調査」 図 1-4:世帯所職のジニ係数 表 1-1:世帯所得不平等度の推移 3 日本はアメリカよりも不平等か 1980 年代後半や 1990 年代前半でみると、わが国は先進諸国のなかでも最高の不平等度で ある。資本主義国の中でも最も貧富の差が大きいイメージでとらえられているアメリカの 所得分配不平等度よりも当初所得でみてわが国のジニ係数のほうが高いという事実はにわ かに信じ難いほどの不平等度である 橘木俊詔(1998)「日本の経済格差-所得と資産から考える」岩波書店 1989 年:日本 0.43 アメリカ 0.40 正しくない国際比較! 表 1-2:正しく再計算したジニ係数 1 経済学基礎理論A 10:所得不平等 4 生活保護世帯は増えているのか 図 1-5:総世帯数に締める生活保護世帯の比率 図 1-6:貧困率 5 世帯構造の変化による見せかけの不平等 図 1-7:世帯人員数比率の推移 三世代同居(年収 1700 万円) 親 300 万円 子 1000 万円 孫 400 万円 それぞれが独立すると、不平等度が上がったかのように見える。 6 女性の社会進出が不平等をもたらす? 高学歴女性がフルタイムで働きながら高学歴男性と結婚する比率が高まっているなら、 世帯レベルでの不平等度は高くなる。 図 1-8:夫の所得階層別、妻の有業率 7 生涯所得の格差を測る 図 1-9:対数所得分散と対数消費分散の推移 8 不平等度上昇は人口高齢化によって引き起こされたのか ■所得獲得のタイミングが不平等度を変える ■年齢が高いほど同一年齢内での所得格差は大きい 図 1-10:世帯主の年齢分布の変化 図 1-11:年齢別ジニ係数 図 1-12:年齢階層別“所得”不平等度の推移 図 1-13:年齢階層別“消費”不平等度の推移 図 1-14:年齢階層別貧困率 図 1-15:対数等価“所得”分散の推移 図 1-16:対数等価“消費”分散の推移 図 1-17:対数等価“食費”分散の推移 9 資産格差は増大したのか 結論 日本の所得格差の変化の特徴:主要要因は人口高齢化 若年層 2
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