第13章 所得不平等 (Income Inequality)

第 13 章 所得不平等
1
• 所得不平等はどのように経済成長に影響するのか
第 13 章 所得不平等
• 所得不平等と密接に関係する経済的な移動を考察.
13.1
⋆ 講義ノートは
http://www2.asia-u.ac.jp/˜ shin/lecture/growth.html にある.
⋆ 第 2 版のスライドは
http://wps.aw.com/aw weil econgrowth 2/ → Classrom ReR Slides にある.
sources → PowerPoint⃝
⋆ 第 3 版のスライドは
http://wps.aw.com/aw weil econgrowth 3/ → Classrom ReR Slides にある.
sources → PowerPoint⃝
所得分配に関心を寄せる理由
(1) 所得分配と貧困との関係
貧困問題の原因の 1 つは所得分配にある.
所得不平等: 事実
1. 人口全体を均等ないくつかの集団に分け,グループご
との所得額を計測する.
2. 所得を均等間隔に分けて,各所得階層にどれほど人口
が入るかをみる.
第 1 の見方
Table 1
アメリカの家計所得の五分位階層, 2006 年
(2) 所得分配と経済成長
• 実証的根拠は確定していないが,ある発展段階では不
平等な所得分配は成長にプラスに働き,他の段階では
マイナスに働く.
• 経済成長は,逆に所得不平等の程度にフィードバック
第 2 の見方
を与える.
(3) 政策目標
Figure 1
アメリカの所得分布, 2006
• 不平等の軽減が政府の最も重要な政策目標の 1 つであ
る.(経済成長と所得不平等の改善)
• 国内の所得不平等はその国の住民の問題であって,国
別に見た所得格差よりももっと際立っている.人々の
幸福が,消費の絶対水準ではなく,周囲の人々との比
較により限り,国内不平等は国際間の所得格差よりも
より深刻かもしれない.
本章では,
• 所得不平等はどのように計測されるか.(第 X3 章 所
得不平等と二極化 を参照)
• 不平等の働きは歴史的に見てどう経済成長と関係して
きたか.
• 不平等の決定要因を検討
– どんな要因が影響し,またどのようなメカニズ
ムが不平等度を変えてきたか.
• 横軸: 家計所得
• 縦軸: 家計の割合
• 最も多くの家計が入る所得階層は 10,000 ドルから
14,999 ドルの区間.
• この階層には家計の 5.9%が入る.
• 平均家計所得は 66,570 ドル,メディアンは 48,201 ドル
• 所得分布が歪んでいる.右裾が長い.
第 13 章 所得不平等
13.1.1
2
所得不平等を計測するジニ係数
13.1.2
クズネッツ仮説
• 所得不平等水準を 1 人当たり所得水準の関係としてグ
ラフを描いてみると逆 U 字型になる.
ローレンツ曲線
(1) 描き方
• 家計を所得の低い順に並べ替えてから計算する.
Figure 3
クズネッツ曲線
• 所得水準が低い方から 1%の家計が得ている所得は,
その国の合計所得の何割を占めているかを計算する.
• 次に所得が低い方から 2%の家計の合計所得の割合,
などを求め,100%になるまで計算を続ける.
• 横軸: 1 人当たり所得
• こうして得たデータを図に描いて得られる曲線がロー
レンツ曲線である.
• 縦軸: 所得不平等
時系列データ
(2) 特徴
• 所得不平等があると弓形をした分布になる.
Figure 4
イングランドとウェールズのクズネッツ曲線, 1823 年-
• 所得が完全に平等分配されていれば,ローレンツ曲線
は傾きが 1 の直線になる.
1915 年
ジニ係数
• ある経済の所得分配の不平等の程度を計測する指数
• ローレンツ曲線と完全平等線で囲まれた面積と完全平
等線の下の面積との比率
• 横軸: 年度
• 完全平等ならジニ係数は 0
• 前半に所得不平等度が大幅に増大し,後半ではより大
• 縦軸: ジニ係数
幅に低下し,結果として 1823 年よりも 1915 年には所
• 完全不平等ならジニ係数は 1 ← もし 1 家計で国全体
の家計所得を得ている場合
得分布は大幅に平等になった.
• 歴史的データではクズネッツ曲線ははっきりと読み取
れる.
• 0 ≤ ジニ係数 ≤ 1
Figure 2
アメリカのローレンツ曲線, 2006
横断面データ
Figure 5
1 人当たり所得と所得分布の不平等
• 横軸: 家計世帯数の累積百分比
• 縦軸: 家計所得の累積百分比
• 横軸: 1 人当たり所得,1991 年 (対数目盛)
• アメリカの家計所得データから求めたジニ係数は 0.470
• 縦軸: ジニ係数
第 13 章 所得不平等
3
• 最も不平等な国は南アフリカ
• 物的資本の所有
• 不平等の大きな国はラテン・アメリカに集まっている.
• 持っている特殊機能
• 不平等が最も小さい国はフィンランド,カナダ,または
• 運の有無
最近まで共産主義国家であったルーマニア,スロヴァ
キア共和国などの国々である.
13.2.2
• アメリカは豊かな国としては異常に所得が不平等な国
として抜きん出ている.
所得不平等の決定要因
所得を決める特性が教育年数にあると仮定する.
Figure 7
• クズネッツ仮説のような,経済発展と所得不平等の逆
U 字型関係ははっきりと示すものではない.← 最新
所得不平等の決定要因
研究では,キュービック仮説 (cubic hypothesis),多
次元仮説 (multidimensional hypothesis)
– しかし,もっと最近の統計手法を使ってクズネッ
ツ曲線を示すよい証拠があると信じている研究
者は多い.
• (a) 教育の分布
– 横軸: 教育年数
バローの推計
– 縦軸: 人口百分比
• クズネッツ曲線の頂点は 1 人当たり所得が 4,815 ドル
(2000 年のドル価格) に当たるという.
• (b) 教育と所得の関係
– 横軸: 教育年数
• クズネッツ曲線の頂点から,1 人当たり所得が 4 倍に
なる点でジニ係数が 0.05 低下するという.
■ 成長は貧乏人によいことか?
Figure 6
– 縦軸: 所得
• (c) 所得分布
– 横軸: 所得
– 縦軸: 人口百分比
1 人当たり所得と所得の最低五分位数
教育の収益が変化していく効果
Figure 8
教育の収益はどのように所得分布に影響するか
• 横軸: 1 人当たり平均所得 (対数目盛)
• 縦軸: 最低五分位の 1 人当たり平均所得 (対数
目盛)
• (a) 教育の分布
経済成長は貧困にはほとんどの場合よいのであり,成
長を目指す政策もまた貧困対策にもなる.
– 横軸: 教育年数
– 縦軸: 人口比率
• (b) 教育と所得の関係
13.2
所得不平等度の源泉
13.2.1
所得不平等が存在する理由
• (教育と健康の両面で) 人的資本
• 住んでいる場所 (都市か農村か,または一国の地理的
な違い)
– 横軸: 教育年数
– 縦軸: 所得
• (c) 所得分布
– 横軸: 所得
– 縦軸: 人口比率
第 13 章 所得不平等
4
教育分布の変化による効果
Figure 9
13.2.3
教育の分布はどのように所得分配に影響するか
近年における所得不平等上昇の説明要因
Figure 10
アメリカにおける所得不平等, 1947 年-2005 年
• (a) 教育の分布
– 横軸: 教育年数
– 縦軸: 人口百分比
• (b) 教育と所得の関係
– 横軸: 教育年数
• 横軸: 年度
• 縦軸: ジニ係数
• 不平等は第 2 次世界大戦後の 25 年間ではやや縮小し
たが,1970 年代以降,所得不平等は急速に拡大して
いる.
– 縦軸: 所得
• (c) 所得分布
– 横軸: 所得
– 縦軸: 人口百分比
クズネッツ仮説の説明
(1) 所得不平等の引き上げ
• 新技術の到来や経済構造の変化が観察される経済成長
は,最初は教育や企業者能力などの機能に対する収益
率を引き上げる.機能のある労働者は,機能のない労
働者より,新しい生産方法に適応しやすいからである.
• 同じように新技術は物的資本の収益率を引き上げる.
技術は新しい資本財に体化していることが多いからで
ある.機能と資本は所得分布の高いほうに見られるの
で,これらの収益率の上昇は所得不平等を引き上げる
キュービック (cubic) 現象
不平等の拡大は他の多くの先進国でも認められることで
ある.
説明要因
• 技術進歩
• 国際貿易の拡大
• “スーパースター”の活躍ぶり
多次元仮説 (multidimensional hypothesis)
技術の誕生や拡散過程によってサイン曲線のような複数
の逆 U 字形態が現れる.
であろう.
(2) 所得不平等の引き下げ
時間が経つと新しい諸力が作用し始める.
• 第 1 に,所得分布を決めている質の分布は,時間が経
つうちに平等化される.技術の収益率が高くなると,
未熟練労働者 (あるいはその子供たち) は教育を受け
るようになる.そして労働者は所得の低下していく地
13.3
所得不平等の経済成長への効果
13.3.1
物的資本の蓄積に与える効果
高い貯蓄率と所得
• 所得不平等が経済成長に正の効果を与える 1 つ要因
は,貯蓄率である.
域または部門から移動して急速に成長する分野に入っ
ていく.
• 第 2 に,技術が進歩し構造変化が鈍化すると,機能の
収益率が低下し始め,これがまた所得不平等を引き下
げる傾向を持つ.
• 貯蓄率が高い国は,1 人当たり正常状態水準が高く
なる.
• 貯蓄率を引き上げる国は,新しい定常状態に移行する
際に一時的な所得成長を経験する.
第 13 章 所得不平等
5
• 1 人当たり所得:
所得不平等と貯蓄率
• 個人の所得が高くなれば,貯蓄率も高くなる傾向が
ある.
• 所得分布が不平等であれば,それだけ総貯蓄も高く
なる.
というのは,不平等なほど富裕な人の所得の比率が高いか
らである.
= 30
• 国全体の総貯蓄額: 40
• 国全体の貯蓄率:
• 国全体の総貯蓄額は,すべての所得階層の貯蓄の総計
である.
150
5名
40
150
= 0.266, 26.7%
(4) 結果
不平等であれば,総貯蓄も高くなる.
階層別貯蓄率
Table 2
所得五分位階層別貯蓄率, 2003 年
例
(1) 貯蓄率
所得
貯蓄率
10
20
0%
10%
30
40
20%
30%
50
40%
• 所得が高くなるにつれ,一貫して貯蓄率は高くなる.
13.3.2
所得
貯蓄率
貯蓄額
A
B
30
30
20 %
20 %
6
6
C
D
E
30
30
30
20 %
20 %
20 %
6
6
6
合計
150
30
• 国全体の所得: 150
150
5名
30
150
所得不平等が大きくなるほど物的資本の蓄積に有利であ
るとはいえ,その事態は人的資本に関しては逆である.
• 所得が不平等なほど人的資本の蓄積は低下する.
人的資本と物的資本
• 人的資本はある特定の 1 人の人間に “備わったもの”
であり,それはその所有者が仕事をするときにのみ作
用し,他人には移転できないものである.
= 30
• 物的資本は時間が違えば別の人が使うことができるし,
また他人に売り渡すことも容易にできる.
• 国全体の総貯蓄額: 30
• 国全体の貯蓄率:
人的資本の貯蓄に与える効果
所得不平等と人的資本
(2) ケース 1: 平等の場合
• 1 人当たり所得:
その結果,生産のために他人に使われていた物的資本を,あ
= 0.2, 20%
る人がいとも容易に所有できる.
(3) ケース 2: 不平等の場合
所得
貯蓄率
貯蓄額
A
10
0%
0
B
C
20
30
10 %
20 %
2
6
D
E
40
50
30 %
40 %
12
20
合計
150
• 国全体の所得: 150
人的資本投資の制約による不平等の影響
Figure 11
物的資本と人的資本の限界生産物
40
第 13 章 所得不平等
6
• 横軸: 1 人当たりの投資量
不平等の経済成長に与える効果
• 縦軸: 限界生産物
所得の不平等は物的資本および人的資本蓄積に異なった
効果 – 物的資本には正で,人的資本には負の効果 – は,不
• 人的資本の限界生産物は投資量とともに逓減していく.
• 物的資本の限界生産物は水平である.
平等は成長段階が異なると経済成長に異なった効果を与え
ることを示唆している.
(1) 物的資本の蓄積による成長
物的資本と人的資本の選択
∗
• ある人の投資が人的資本の I より小さければ,人的資
本の限界生産物は物的資本の限界生産物より大きい.
• 人的資本に I ∗ より多く投資すると,人的資本の限界
生産物は物的資本の限界生産物より小さくなる.
• ある人がわずかな資本しか持っていなければ,物的資
19 世紀の経済成長の駆動力は物的資本の蓄積であった.
例えば,この時代の新技術の多くは,物的資本のより有効
な使用に向かっていた.つまり,よりよい機会を作ること
が主眼であった.

物的資本には正
• 不平等 →
人的資本には負
→ 経済成長に正
本よりも人的資本に投資する.
• 投資資金が I ∗ より少なければすべてを人的資本に I ∗
を投じ,資金が残れば物的資本に投資するだろう.
(2) 人的資本の蓄積による成長
過去数年間の経済成長は,少なくとも先進国の中では,物
的資本よりも人的資本の蓄積によってもたらされた.こう
物的資本と人的資本の不平等
• 人的資本は物的資本よりはるか平等に分布するだろう.
• 多数のより貧しい人々は投資のすべてを人的資本に振
り向け,そのためになんらの物的資本も所有せず,多
数の裕福な人々はその資産のほとんどすべてを物的資
した状況では不平等は経済成長に有害なものである.

物的資本には正
• 不平等 →
→ 経済成長に負
人的資本には負
13.3.3
所得不平等,所得再分配,および経済
効果
本の形態で所有している.
不平等と効率
アメリカでは物的資本の不平等度は 0.78 であり,教育年
数については 0.14 となっている.
• 物的資本の所有は確かに人的資本の所有より不平等で
ある.
税制は不効率をもたらす.
税金と生産性
税の回避は企業の二重帳簿 (租税回避の非合法的手段),
働くよりも家に引きこもる (合法的租税回避) 行為を引き起
所得再分配
こす.
もし,富裕層から貧困層へ再分配されるなら,2 つのこと
が起きる.
1. 人的資本蓄積は上昇する.
• なぜなら,貧しい人は追加資金を人的資本に投
資するからである.
2. 生産物総額は上昇する.
• なぜなら,貧しい人が投資する人的資本の限界
生産物は,富裕者が投資した物的資本の限界生
産物より多いからである.
分布の歪みと中心の特性値の関係
• 分布が右側に引っ張られた (右にゆがんでいる) 場合,
モード < メディアン < 平均
という大小関係になる.
• 分布が左にゆがんでいる場合は,
モード > メディアン > 平均
という大小関係になる.
第 13 章 所得不平等
7
• 分布がほとんど左右対称な場合は,
Figure 13
所得不平等の拡大がどのように意図した税率に影響す
モード = メディアン = 平均
るか
になる.
中位数投票者
• 課税前所得が中位数 (median) にある所得を持つ投票
者にとって,最適な税率になる.
• 横軸: 課税前所得
• 選べれる税率は課税前所得が中位数にある人が望ま
しいと思う税率であって,彼はしばしば中位数投票者
(median voter) と呼ばれている.
• 縦軸: 意図した税率
不平等が大きくなると,より大きな再分配の道を開き,税
金も大きくなる.効率はより低い水準になっていく.不平
等は平均所得水準を低下させる.
所得不平等と税率
Figure 12
所得不平等と意図した税率の関係
• 所得不平等 → 課税の拡大 → 非効率と非生産性 → 平
均所得水準の低下
13.3.4
所得不平等に反対する社会政治的不安定
再分配の圧力はいくつかのやり方で現れる.
• 横軸: 課税前所得
• 縦軸: 意図した税率
政治的不安定
• 中位数の所得は必ず平均所得未満である.
• かくして,中位数所得の投票者が選択する税率はゼロ
異なるグループが政治権力を競い合う政治的不安定を通
じて
より大きい.
所得不平等の拡大と税率
• 所得の不平等が拡大する.
社会的不安定
再分配の圧力が犯罪を通じて
• 所得分布の裾野が広がる.
• 課税前所得の中位数水準は平均より遠ざかる.
– メディアンは不変,平均は右にシフト → メディ
アンと平均の距離は遠くなる.
• つまり,もし,2 国の平均課税前所得が同じならば,
課税前所得の中位数の所得は,不平等な所得分布を持
つ国ではより低くなる.
• 課税前所得の中位数がが下がるとき,中位数投票者が
望む税率は上昇する.
13.3.5
経験的証拠
全般
• 所得不平等は成長を引き上げるかそれとも引き下げ
るか?
– 不幸にも利用可能な統計データはこの質問には
答えられない.
第 13 章 所得不平等
8
個々の要因
機会の平等
• 所得分布がより不平等な国では教育による人的資本の
蓄積が低くなる.
世代間移動は機会の平等を言われることが多い.
• 世代間移動が高いことは,貧しい親の子供が裕福な親
• 所得不平等が大きければ大きいほど出生率は高くなる.
これは,所得不平等が成長に有害となる.
• 所得平等が少なくなるほど不安程度は高くなっていく.
個々の要因が経済成長に与える効果については分かって
いるが総合的な効果は分からない.
Figure 14
所得不平等と社会政治的不安定の関係
の子供と同じ見通しをもつことを意味している.
• 世代間移動が低いところでは,子供たちはその両親と
同じ所得分布の地位に留まることが多い.
推移行列
一定の時間内に,ある世帯が一所得グループから他の所
得グループへ移動する確率を示す表
Table 3
カナダの世代間所得移動性
• 横軸: ジニ係数
• 縦軸: 社会政治的不安定指数
• 社会政治的不安定指数 =-17.8+33.2× ジニ係数
• 対角線に沿ったセルの数字は親がいた所得階層と同じ
所得階層にその子もいる場合を表す.
このデータは移動がかなりの程度あることを示している.
例えば,父は最低の 4 分位にいた人が最上位 4 分位に行く
確率は 17%である.また,上位 4 分位にいた人が底辺 4 分
13.3.6
その他
位になる機会は 20%ある.
勤労欲働
経済的移動性と経済成長
• 平等 → 所得移転 → 勤労欲働の低下
13.4.3
• 不平等 → 経済成長に正の効果
才能の利用
経済的移動性が高い社会では,すべての市民の才能を利
経済活動に参加
• 不平等 → 貧困人口 → 経済活動に参加できない人口
が多い.
• 不平等 → 経済成長に負の効果
用できる傾向にある.
政治
• 経済的移動性の程度は所得再分配への願望を緩和でき
るだろう.
• 所得の移動性は階級闘争の減退に役に立つ.
13.4
所得分配を超えて: 経済的移動性
13.4.1
経済的移動性
– アメリカが西欧の先進国より階級闘争指向の政治
戦略が少ない理由は,1 つにはアメリカ人がヨー
ロッパ人より階級間の移動性が高いと受け取って
いるからである.
所得分布のある階層から別の階層への人々の移動を指し
ている.
13.4.4
13.4.2
世代間移動
世帯がある世代から別の世代に移ったときの経済的地位
の変化を検討する.
経済的移動性の決定要因
教育へのアクセス
教育は貧困者の子供にとって,所得分布の上方移動への
道を開く.
第 13 章 所得不平等
9
政府と制度の性質
13.6
基本用語
• distribution of income (所得分配)
富裕層が経済政策を決めるほど,移動性を促進する政策
が実現しないようになりがちである.
• mode (最頻値,モード)
• mean (平均)
• median (中位値)
結婚の状況
• skewed distribution (歪んだ分布)
もし人々が彼ら自身と同じ経済的社会的階級の人と結婚
するなら経済的移動性を妨げられる.
• Gini coefficient (ジニ係数)
• Lorenz curve (ローレンツ曲線)
• 似た者結婚
• Kuznets curve (クズネッツ曲線)
• lump-sum transfer (定額移転)
人種差別
• pretax income (課税前所得)
民族または人種差別も経済的移動性を引き下げる.差別
されるグループの子供たちは,親と同じように差別される
• disposable income (可処分所得)
だろう.
• median voter (中位数投票者)
• economic mobility (経済的移動)
13.5
• intergenerational mobility (世代間移動)
結論
⋆ memo
• transition matrix (推移行列)
• assortative mating (似たもの婚)
13.7
問題
1, 2, 3, 4, 5