VEで全体最適化の 企業文化を創出

VALUE ENGINEERING No.257(2010.3)
巻頭言
VEで全体最適化の
企業文化を創出
株式会社日立国際電気
取締役会長
長谷川 邦夫
当社は、2000年10月に日立グループの関連会
サポート部門全てが取り組み、VEを共通の言語、
社3社を合併し誕生しましたが、合併後も社員一人
共通の価値観として活用するよう、グループ全体に
ひとりが持つ価値観や、言語・行動パターンなど、
メッセージを発信し、促進してきました。
それぞれが長い間に培ってきた企業文化も異なり、
同時に中期経営計画では、一歩先を行く製品づ
個々の事業部や過去のやり方を重視しがちで、会社
くり実現のため、①全体最適化へのあくなき追求、
全体を総体的に見渡す視点が十分でなく
「部分最
②軽量化運営の徹底、③新会社らしい製品づくり
適」の状態が散見されていました。
を目標に掲げ、この経営ビジョンを効率的に実現す
このため、新しい企業文化の創出と合併のシナ
るべく、実践していくこととしました。事業部や組織
ジー効果をいかに効率よく上げていけるかが緊急の
がバラバラに動くのではなく企業が一貫した理念を
課題でもありました。ちょうど日立グループでは、VE
持ち、全体最適化を目指し効率を上げていく上で、
手法の普及とコスト意識の醸成を図り、人材の裾野
VEは非常に重要な活動であり、VEリーダーがそ
を拡大することを目的に「VEリーダー資格取得一
の活動を支えてくれていると思っています。VEリー
万人計画」の全社運動を計画しており、当社も上記
ダーは2009年末で、当社グループ5,
000人のうち
課題解決のための施策として、本スタートと同時に
2,
000人以上が既に資格を取得しました。
この運動に参画し、2007年から3年間で1,
500人
同じ言葉、同じモノサシ、同じ価値観を持ったチ
のVEリーダーの資格取得を目標に「VEリーダー
ームデザインの業務推進により、組織の壁、心の壁
1,
500人計画」を推進していくことにしました。
を取り除く風土が徐々にではありますが醸成されて
きたのではないかと感じています。
「VEとは、最低のライフサイクルコストで必要な機
経営層から実務担当者まで社員全員が、それぞ
能を確実に達成するために、製品やサービスの機
れの職務を遂行する過程で、お客様の目線に立ち
能的研究に注ぐ組織的努力である」
と定義されてい
VEという観点で判断し行動する土壌作りが進み、
ますが、VEはムダを無くすための考え方と行動の仕
やっと種蒔きが終り、価値追求の企業文化の芽が
方であり、同時に本質的に考える力を備えるための
出始めてきたところです。
ステップであると言えます。そのため、①「広く考える」
ことにより、組織全体にとっての最適解を求める、②
今後は、VEリーダー本来の目的でもあるお客様
「前向きに考える」ことにより、守りに入らず攻めの姿
に満足いただける価値の高い製品を世に送り出し
勢を大事にする、③「本質的に考える」ことにより、
ていくために、VEリーダーが率先して、信頼される
目先や表面にとらわれず正しいことは何かを考える、
製品づくりに向け、お客様の立場で本質的に物を
以上の3点が重要であり、VEリーダー資格取得の
考え行動していって欲しいと考えています。
対象者も設計や工場部門だけでなく、営業や経営
(筆者は当会理事)
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