3 環境融合型建築の実践

3 環境融合型建築の実践
「恐竜時代の琵琶湖を見てほしい。」
「昔の人の生活、文化を知ってほしい。」
「川の水を使っていた暮らしを思い出してほ
しい。」
「私達にとって琵琶湖は何なのか。人間にと
って自然は何なのか。考えてほしい。」
「自然(琵琶湖)となかよく暮らすためには、
どうすれば・・・・。」
そんな思いで博物館づくりがスタートし、建
築設計においても、「環境と融和し、共生する
建築」の実現をテーマとして、4つの基本方針
を掲げ、取り組んできた。
建築的な工夫により熱、光をコントロールする
ことにより、外界からの熱負荷の低滅を図ると
共に、自然エネルギーの積極的な利用により、
化石エネルギーの低滅に配慮したところであ
る。
琵琶湖博物館は、収蔵庫の除湿用再熱や水族
展示の温水飼育水槽の加熱等、年間通じて温熱
需要があり、また冷熱需要も年間通じて存在す
る。このような熱負荷特性をうまく生かすため、
熱源システムは、蓄熱槽をもつ熱回収ヒートポ
ンプを主システムとして採用している。
外界からの熱制御の手法として、屋根面には
屋上庭園を設置し、外壁面には型枠兼用の木織
セメント板を使用することで、建物の断熱性能
を高めている。
基礎枠内のピット空間に、取り入れた外気を
通すことにより、地中冷却、加温力による外気
負荷の低減を図っている。
太陽熱利用は、屋上に設置された真空式太陽
集熱器によるが、集熱効率を低下させないよう
比較的低温域で利用できる給湯負荷と暖房負荷
の一部をまかなっている。
太陽光を反射鏡により1階屋内の水族展示水
槽に導くことにより、展示効果を高めつつ、照
明への負荷の低減を図っている。
1 湖岸の景観への融和
敷地は、周辺の山並みを背景に、琵琶湖の大
パノラマが展開される烏丸半島(草津市)に位置
し、隣接のUNEP国際環境技術センターとは正
対する関係にあり、両者のまとまりのある建築
群の創出を図っている。
建物のボリュームを極力抑え、水平線を強調
したデザインとし、建築を構成する材料には、
石、土ものタイル、木などの自然の素材を積極
的に活用し、時間の経過と共にその深みが増し
ていくよう配慮した。また、湖岸側に丸子舟の
船底をイメージした三日月型の大屋根を配する
ことにより、琵琶湖との結び付きを意識させつ
つ、湖へのひろがりを表現している。
一方、エントランスを入れると、周辺の山並
みを背景に、広がる琵琶湖、その琵琶湖の雄大
な自然を大ガラス面を通して眺められる。琵琶
湖博物館のストーリーのはじまりである。
湖の自然を各所に取り込み、「湖と人間」と
の共存を絶えず意識させつつ、貴重な自然環境
を絶えず楽しむことのできるアメニティー豊か
な空間構成となるよう配慮したところである。
3 水資源の有効利用と非点源汚濁防止
への配慮
琵琶湖博物館は、「琵琶湖の環境」をテーマ
とした博物館であり、琵琶湖の水質に対するイ
ンパクトの低滅も需要な課題である。
施設から放出される排水としては、生活排水
と敷地表面から流出する雨水排水の2種類が考
えられますが、生活排水については、下水道が
完備され、それに委ねるところとなる。一方、
敷地表面から流出する雨水排水は、汚濁原因を
特定できない。いわゆる非点源型の水質汚濁の
原因となり、琵琶湖の水質への影響が大きく、
琵琶湖の環境保全上、大きな問題となっていま
す。そこで、本施設だけでの取り組みでは不十
分ではあるが、少しでも意識づけができればと
考えている。本システムについては、敷地内に
2 化石エネルギーへの依存の低減
建築活動の化石資源への依存率は極めて高
く、地球上で放出される炭酸ガスのうち約30%
近くが建築活動によるものであるという報告も
ある。今回の博物館の建築においては、建物の
性格上、多少の制約はあるが、可能な範囲で、
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雨水の一次貯留槽を設け、屋根面、敷地面の汚
濁物質が、直接、琵琶湖へ流出しないように配
慮すると共に、濾過施設により濾過した後、屋
外散水や便所の洗浄水等に中水として利用する
ことで、水資源の有効利用を図っている。
4 リサイクル材の有効利用
近年、建設工事に使用する型枠用合板の原料
である南洋材の乱伐による自然破壊が大きな問
題となっており、当博物館では、間伐材を利用
した木織セメント板を型枠兼用の断熱材として
利用することで、型枠用合板の消滅を図ってい
る。
さらには、建築材料の生産から廃棄、処分の
過程で多大のCO2を発生させるため、再生可能
な材料や再生材を積極的に利用している。建設
副産物であるコンクリート殻を活用した再生砕
石、湖底へドロ、下水汚泥スラグを骨材として
混入したコンクリート二次製品(ヒューム管、
U字溝、縁石等)インターロッキングブロック
を外構工事、排水工事に活用している。
(我孫子 三男)
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