色も色いろ 第19話 「陰翳礼讃」とパーソナルカラー とても結びつきそうにない 2 つを一緒にしたタイトルをつけた。 何年か前、瀬戸内海直島にある地中美術館や南寺でジェームス・タレルの作品 に触れて感動した。暗順能や色順応を芸術にしてしまったタレルの作品、色を学 ぶ者には必見の作品だ。そのタレルが新潟で作ったのが“光の舘”で、コンセプ トは谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」である。「谷崎が言う『われわれが既に失いつつ ある陰翳の世界』。それを私は、外の光と室内の光を関係づけ、光の中で生活で きる空間として実現したいと思った。」(ジェームスタレル) その言に触発されて「陰翳礼讃」を手にした。陰翳礼讃の主題はさておき、こ んな記述が目にとまった。「われわれは普通の男子の唇に惹きつけられることな 「陰翳礼讃をコンセプトに作られた光の舘」 どは有り得ないが、能の舞台では、あの黒ずんだ赤みと、しめり気をもった肌が、 口紅をさした婦人のそれ以上に肉感的なねばっこさを帯びる。・・・また子方の俳優 の頬が紅潮を呈しているのが、その赤さが、実に鮮やかに引き立って見える。私 の経験では、緑系統の地色の衣装を着けた時に最も多くそう見えるので、色の白 い子方なら勿論であるが、実を云うと色の黒い子の方が、却ってその赤味の特色 が目立つ。それはなぜかと云うと、色白な子では白と赤との対照があまり刻明で ある結果、能衣装の暗く沈んだ色調には少し効果が強過ぎるが、色の黒い児の暗 褐色の頬であると、赤がそれほど際立たないで、衣装と顔とが互いに照りはえる。 渋い緑と、渋い茶と、二つの間色が映り合って、黄色人種の肌がいかにもその所 を得、今更のように人目を惹く。私は色の調和がつくり出すかくの如き美が他に あるを知らない・・・」。 まさにパーソナルカラーアナリストのような洞察力では 「陰翳礼讃」英語版 ないだろうか?さらに「肌の白さが最高の女性美に欠くべからざる条件であるな ら」と続く。ここからはまたの機会に譲ろう。
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