解説IS-BAO - 日本ビジネス航空協会

02/世界におけるビジネス航空 04.1.5 2:13 PM ページ1
中渓 正樹 *
の地域別機数分布を表しています。合計で 22,576
1. はじめに
機ですが、米国が圧倒的に多く 10,502 機、続い
企業等がビジネスの遂行上、貨客を輸送するた
て欧州地区の 1,196 機です。アジア中近東地域で
めに行うビジネス航空は、我国では主として大都
も 319 機が使用されています(そのうち我国は 20
市圏での空港の制約上あまり普及が進んでいませ
機程度です)。
図 2 は 1987 年以降、ビジネス用ジェット機の
んが、世界的には 1990 年代半ば以降、急激な伸
びを見せています。
年毎の新規デリバリー数ですが、2000 年以降、
本稿では世界におけるビジネス航空の現状、安
年平均約 700 機となっており、これからも総機数
全上補強を要するの領域、そしてその解決として
は増えつづけることを示唆しています。
の IS-BAO の役割や内容を解説するものです。
2001.9.11 テロの影響が僅かに見られますが、セ
IS-BAO の提唱する安全管理体制はビジネス航
キュリティー上は航空会社より優位な面もあるた
空に止まらず定期、不定期の航空会社の安全管理
め、今後はむしろ増加が助長されると見られます。
上も参考になるものです。
特に 1987 年頃からデリバリー機数の伸びが著し
くなっていますが、これは機体の分割所有制度で
あるフラクショナル・オーナーシップ・プログラ
2. 世界のビジネス航空の現状
ムが 1996 年以降急速に普及したためであること
現状の規模を示すものとして、図 1 は 2002 年
が、図 3 の年度のフラクショナル・オーナー数
度時点での世界の固定翼のタービン・エンジン機
JETS
TURBOPROPS
(正確には持ち分数)推移から読み取れます。
EUROPE
OPERATORS=1,196
ASIA & MIDDLE EAST
OPERATORS=319
NORTH AMERICA
OPERATORS=10,502
CENTRAL AMERICA
OPERATORS=456
SOUTH AMERICA
OPERATORS=977
AFRICA
OPERATORS=373
OCEANIA
OPERATORS=135
図 1 世界のビジネスジェットの機数
*Nakatani Masaki
日本ビジネス航空協会 副会長
Accredited Auditor IBAC(International Business Aviation Council)
1
航空技術 No.587〔04-02〕
02/世界におけるビジネス航空 04.1.5 2:13 PM ページ2
Source: AmDataInc. Wichita, KS, 2003
800
USA
INTERNATIONAL
700
600
500
400
AIRCRAFT
300
200
100
0
1987 1988 1989 1990 1991 1992
*Includes business jets molitary service
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
図 2 ビジネスジェットの新規デリバリー機数(1987 ∼ 2002)
Source: AmDataInc. Wichita, KS, 2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
548
1996
1995
285
158
1994
1993
110
84
1992
1991 71
1990 57
1989 51
1988 26
1987 5
1986 3
5,827
4,871
3,834
2,607
1,551
957
0
300 600 900 1,200 1,500 1,800 2,100 2,400 2,700 3,000 3,300 3,600 3,900 4,200 4,500 4,800 5,100 5,400 5,700 6,000
TOTAL FRACTIONAL SHARES SOLD AS OF 12/31/02
図 3 フラクショナル・オーナーの数(1986 ∼ 2002)
CANADA
87
ASIA
14.5
EUROPE
41.4
MEXICO
60
MIDDLE EAST
10.7
AFRICA
8.8
CARIBBEAN/C.AMERIKA
62
SOUTH AMERICA
21.7
PACIFIC
17.7
図 4 米国のビジネス機の国際運航
世界におけるビジネス航空の現状と IS-BAO の推進する安全管理体制
2
02/世界におけるビジネス航空 04.1.5 2:13 PM ページ3
機数が増えただけではなく、ビジネス機の運航
● 安全性の記録
が国をまたがって行われるようになったことも近
図 7 は 1990 年以来の、10 万飛行時間当たりの
年の特徴です。図 4 は 2002 年のビジネス機を利
Fatal(人身事故)、および Total の事故数を示すも
用している米国の会社の統計ですが、カナダへは
のです。一般には図中の“AIRLINES”の数字が
87 %の会社が運航しており、同じくメキシコ、
常識的なものとして頭にあるのですが、
60 %、ヨーロッパ、41.4 %、そしてアジアにも
“COMMUTER AIR CARRIER”(9 席以下の非ター
14.5 %が運航しています。
ボ機による定期運送)や“BUSINESS TOTAL”
このように米国を中心に機数も増え、エリアも
の数字を見ますとその 10 倍くらいになっていま
広がっているのですが、肝心のパイロットの数は
す。勿論同じ飛行時間の中で行われる離着陸回数
どうかといいますと、図 5 に見られるように米国
に違いがありますので、数字だけを横並びに比較
では年々着実に増えており需要と供給のバランス
することは出来ないまでも“多い”と言わざるを
は取れているようです。
得ません。ところが同じビジネス機の場合でも
米国では 10,000 機強のタービン機がビジネス利
“CORPORATE/EXECUTIVE”、つまり企業が管理
用されていますが、どのような空港を利用してい
して役員用等に供している場合だけに限ります
るのか?が関心事となります。図 6 はビジネス機
と、AIRLINES とほぼ同じ数字となっています。
が利用する空港のトップ 50 を挙げたものですが、
ケネディー、オヘアー、ロスアンゼルスなど馴染
みのある名前はなく定期航空輸送とは別に、その
近くにある空港をほぼビジネス機が専用していま
す。多いところで年間 32 万回、49 位の空港でも 8
3. IS - BAOとは何か
● ビジネス航空の安全向上を担う IS-BAO
図 8 は米国における安全規制と対応する安全の
万回の飛行が行われています(25NM 以上離れた
達成水準を概念的に示したものです。
2 地点間飛行の回数)。
a. Part121 は航空会社に適用される最も厳しい規
Source: FAA, 2003
266.2
264.2
262.2
260.3
261.9
247.2
250
251.6
258.7
300
200
91.7
141.7
150.6
139.7
148.6
88.6
86.0
86.9
138.2
147.9
137.5
147.1
94.4
137.6
147.0
141.6
99.1
99.2
121.9
124.3
137.6
97.7
100
122.1
134.6
PILOTS (THOUSANDS)
150
50
0
1998
F=FORECAST
1999
2000
2001
2002P
E=ESTIMATE
PRIMATE
COWMERCIAL
2003P
2004P
AIRUNE TRANSPORT
2005P
STUDENT
図 5 パイロット・リソース(1998 ∼ 2005)
3
航空技術 No.587〔04-02〕
02/世界におけるビジネス航空 04.1.5 2:13 PM ページ4
Source: FAA, 2003
Fiscal
ID
Year 2002
FACILITY NAME
VNY
DAB
FXE
DVT
APA
SFB
RVS
LGB
PDK
SNA
MMU
TEB
ORL
BFI
MYF
POC
ADS
FFZ
CRQ
VRB
PTK
PWK
OAK
FPR
BED
DAL
FTW
PRC
SDL
ICT
SAT
HEF
CMA
GFK
DPA
HPN
FRG
PBI
SRQ
HOU
SUS
PIE
MLB
PAE
BJC
PNE
LVK
FCM
APF
RHV
Van Nuys
Daytona Beach Int’l
Fort lauderdale Exec. Int’l
Phoenix/Deer Valley
Denver/Centennial
Orlando/Sanford
Tulsa/Riverside
Long Beach/Daugherty Field
Atlanta/DeKalb Peachtree
Santa Ana/John Wayne
Morristown
Teterboro
Orlando Executive
Seattle/Boeing Field
San Diego/Montgomery Field
La Verne/Brackett Field
Dallas/Addison Field
Mesa/Falcon Field
Carlbad/McClellan Palomar
Vero Beach
Pontiac/Oakland Co. Int’l
Chicago/Palwaukee
Metropolitan Oakland Int’l
Fort Pierce
Bedford Hanscom Field
Dallas/Love Field
Fort Worth/ Meacham
Prescott
Scottsdale
Wichita/Mid Continent
San Antonio Int’l
Manassas Regional
Camarillo
Grand Forks
Chicago/Dupage
White Plains/Westchester
Farmingdale/Republic
Palm Beach Int’l
Sarasota Bradenton
Houston Hobby
Spirit of St. Louis Field
St. Petersburg-Clearwater
Melbourne/Kennedy
Everett Paine Field
Broomfield Jeffco
Northeast Philadelphia
Livermore
Minneapolis/Flying Cloud
Naples
San Jose Reid-Hillview
STATE
TOTAL
AIRPORT
OPS
ITINERANT
GA
OPS
AIR
CARRIER
OPS
AIR
CARRIER%
TOTAL
CA
FL
FL
AZ
CO
FL
OK
CA
GA
CA
NJ
NJ
FL
WA
CA
CA
TX
AZ
CA
FL
MI
IL
CA
FL
MA
TX
TX
AZ
AZ
KS
TX
VA
CA
ND
IL
NY
NY
FL
FL
TX
MO
FL
FL
WA
CO
PA
CA
MN
FL
CA
500,290
359,515
245,155
395,803
429,954
355,955
323,913
350,974
221,229
377,073
239,299
231,378
205,235
277,690
240,991
249,207
158,954
272,099
206,951
236,172
276,318
161,665
374,216
193,332
214,789
239,732
232,615
337,362
189,391
214,341
236,189
135,816
197,911
282,374
175,648
198,631
207,153
187,159
162,213
247,824
179,949
214,191
194,512
198,501
182,279
153,238
219,377
181,037
135,917
230,881
326,490
285,365
175,411
168,911
166,428
156,288
151,704
151,040
149,581
149,072
149,030
147,566
146,748
143,950
137,971
135,465
130,775
130,614
129,102
123,185
118,383
115,933
114,958
113,296
112,084
110,251
110,004
107,816
106,604
105,688
103,978
103,915
103,341
103,319
102,750
102,701
98,845
94,712
94,530
92,610
92,292
91,986
91,693
91,429
90,455
90,137
89,992
89,327
88,887
88,174
0
3,726
0
0
0
8,693
1
12,273
0
84,087
2
156
0
9,376
5
3
150
364
0
2
703
0
156,212
0
185
84,566
580
3
1
19,464
67,374
0
0
4,264
0
10,690
155
50,561
8,821
112,098
62
7,484
2,641
3,553
0
0
0
0
0
49
0.00%
1.04%
0.00%
0.00%
0.00%
2.44%
0.00%
3.50%
0.00%
22.30%
0.00%
0.07%
0.00%
3.38%
0.00%
0.00%
0.09%
0.13%
0.00%
0.00%
0.25%
0.00%
41.74%
0.00%
0.09%
35.28%
0.25%
0.00%
0.00%
9.08%
28.53%
0.00%
0.00%
1.51%
0.00%
5.38%
0.07%
27.01%
5.44%
45.23%
0.03%
3.49%
1.36%
1.79%
0.00%
0.00%
0.00%
0.00%
0.00%
0.02%
* Ranked by itinerant general aviation (GA) operations. An itinerant flight operation originates at one airport and terminates at
another airport located at least 25 miles from the origination point.
図 6 ビジネス機が利用する空港(米国におけるトップ 50)
Compuled by Robert E. Breiling Associates, Inc. 2003
DATE
GENERAL
AVIATION*
TOTAL/FATAL
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002P
7.77/1.55
7.85/1.56
7.74/1.65
8.92/1.73
8.97/1.79
8.20/1.64
7.61/1.49
7.20/1.37
7.47/1.41
6.42/1.15
6.32/1.18
6.27/1.17
6.53/1.31
AIR TAXI**
TATO/FATAL
COMMUTER
AIR CARRIERS+
TOTAL/FATAL
AIRLINES++
TOTAL/FATAL
CORPORATE/
EXECUTIVE#
TOTAL/FATAL
BUSINESS##
TOTAL/FATAL
4.76/1.29
3.93/1.25
3.86/1.22
4.16/1.15
4.58/1.40
4.39/1.41
4.44/1.43
2.65/0.48
2.08/0.45
2.36/0.36
2.25/0.62
2.27/0.57
1.93/0.56
0.641/0.171
1.004/0.349
0.942/0.300
0.606/0.152
0.359/0.108
0.457/0.076
0.399/0.036
***1.628/0.509
2.262/0.000
3.793/1.145
3.247/0.271
1.664/0.666
2.919/0.000
0.198/0.171
0.221/0.034
0.146/0.032
0.181/0.008
0.168/0.030
0.267/0.022
0.276/0.036
0.309/0.025
0.297/0.006
0.296/0.011
0.311/0.016
0.225/0.034
0.217/0.000
0.210/0.090
0.230/0.080
0.210/0.080
0.230/0.070
0.180/0.070
0.250/0.110
0.140/0.060
0.230/0.060
0.091/0.000
0.230/0.130
0.125/0.060
0.108/0.031
0.116/0.029
3.71/0.96
3.08/0.82
2.17/0.68
2.02/0.52
1.81/0.51
2.04/0.67
1.71/0.34
1.41/0.39
1.14/0.30
1.40/0.40
1.28/0.37
1.06/0.23
1.08/0.36
図 7 事故発生率の記録 1990 ∼ 2002(100 飛行時間当たり)
世界におけるビジネス航空の現状と IS-BAO の推進する安全管理体制
4
02/世界におけるビジネス航空 04.1.5 2:13 PM ページ5
達
成
レ
ベ
ル
達
成
レ
ベ
ル
高
達
成
レ
ベ
ル
低
規制レベル:FAR Part 121
・Domestic ・Flag ・Supplemental
規制レベル:FAR Part 135
・Commuter ・On-Demand
向上が望まれる
規制レベル:FAR Part 91
・General Aviation
図 8 安全規制と対応する安全の達成水準
制ですが、その安全の達成水準の平均は図 7 に
示すように最もよいものとなっています。
b. Part135 はコミューターやチャーター運航に適
(International Civil Aviation Organization)におい
ても Designated Representative として参加してい
ます。
用される Part121 よりやや緩やかな規制ですが、
その安全の達成水準の平均は“COMMUTER
AIR CARRIER”で示されるように、より低い
ところにあります。
c. Part91 は GENERAL AVIATION に適用される更
に緩やかな規制ですが、その安全の達成水準は
● IS-BAO には何が書いてある
ビジネス機を主な対象とする、国際的に適用で
きる運航基準であり、IBAC により設定管理され
ているものですが、そこでは以下各項“に関する
基準”が記されています。
図 7 の“GENERAL AVIATION”で示されるよ
1 従事する者に必要な訓練・資格とその管理
うに最も低いところにあります。しかし同じ
2 飛行の計画と実施
Part91 の規制の下でも、CORPORATE /
3 航空機およびその装備
EXECUTIVE の場合は AIRLINE と同等あるいは
4 整備
それ以上の実績を残しているわけですから、全
5 緊急事態への対応
体として向上の余地は十分あると言えます。こ
6 ハイジャック対応
れは安全管理をどう効果的に行うかにかかって
7 危険品輸送
おり、 IS-BAO(An International Standard for
8 安全管理体制
Business Aircraft Operations)はそれを目指すも
のとして 2002 年初めに IBAC(International
多くはビジネス機運航に合わせ ICAO
Business Aviation Council)により設定されまし
ANNEXES およびその付属書等から必要な部分を
た。
抜粋し、編集したものと言えますが、運航全般に
係わる“安全管理体制”には ISO 9000s の“品質
● IBAC とは
IBAC は全米や全欧をはじめ日本を含む世界の
11 のビジネス航空協会を代表して、ビジネス航
管理体制”のアプローチを採り入れた、従来から
は一歩踏み込んだ取り組みであり、これがいわゆ
る“目玉”となっています。
空の発展を促し、かつ航空に係わる法制度におい
基準に則り運航がなされるには、それを反映し
てその権益を正当に確保するために 1981 年に設
た従事者の作業手順であるマニュアルが設定され
立された NPO です。国連の特別機関である ICAO
なければなりません。APPENDIX として、その
5
航空技術 No.587〔04-02〕
02/世界におけるビジネス航空 04.1.5 2:13 PM ページ6
際のガイドとなる AMC(Acceptable Means of
則ることで均質で安全な運航を目指そうではない
Compliance)が記されていますが、そこでは必要
かと言う主旨で、その為の基準として IS-BAO が
に応じて基準がかなり詳細にブレーク・ダウンさ
生まれました。
れており、かつ推奨事項なども含まれています。
単なる自主的なものだと怠に流れることもあり
更に基準に則ったマニュアルの 1 例として
得ますし、また搭乗者や保険会社などからの信用
GCOM(Generic Company Operations Manual)が
を確実にするためにも、IS-BAO に則る者にとっ
付されています。これは汎用のオペレーション
ての選択肢として IBAC による認定登録制度が設
ズ・マニュアルであり、自己の運航に合わせたマ
けられました。この限りでは ISO 9000s と制度は
ニュアルを作成する場合は、これを雛型として利
同じです。
用できるようになっています。
一方米国ではフラクショナル・オーナーシッ
つまり IS-BAO は本文である基準と、その
プ・プログラム・オペレーションを行う場合、規
APPENDIX である AMC、および GCOM から成っ
程の設定は(“自主”ではなく)法的要件となり
ています。
ました。即ち 2003 年 9 月 17 日付けで発効した
FAR Part-91 Subpart-K により FAA の管理の下で
● IS-BAO の狙い
有償で人や物を運送する者(例えば航空会社)
には各国の航空法に従って“事業認可”を取得し、
更に“規程体系”を当局の認可の下に設定して、
“Program Operations Manual”設定が求められるこ
とになりました。
I-BAO の基準に則り設定した規程はこの新しい
FAR の要件を満たす上でも有用となります。
それに従い運航を行うことによって安全な運航が
確保されています(ICAO ANNEX 6 Part I)。
しかしジェネラルアビエーション(ビジネス航
● IS-BAO の特徴は
IS-BAO の特徴として以下の 2 点が挙げられま
空もそうですが)は、そもそも運送を事業とはし
す:
ていないので、“事業認可”対象ではないし、ま
1 規程の作成において、それがカバーする範囲
た“認可規程体系”の設定も要求されていません
や深さ、および重点の絞込みにおいて、夫々
(ICAO ANNEX 6 PartII)。
の運航の規模や特性に応じた、柔軟な選択が
即ち基本としては;
できるようになっていること(小は小なりに、
1 耐空性がある航空機を、
大は大なりに規模に応じて設定できる)。
2 適切なパイロット・ライセンスを所持するも
のが、
3 空の交通規則を遵守して、
2 ISO9000s の品質管理体制の考えを取り入れ、
安全管理体制の構築に重きをおいている。
即ち安全管理はパイロットや整備従事者のみ
によりなされるのではなく、トップを頂点と
飛行を実施し、“安全は自己の問題”としてき
ちんと管理して下さいと言う事なのです。
しかし近年の機材の高性能化や、それに伴う飛
する会社全体の取り組みで初めて実現出来、
かつ弛まない向上が図れるものとしている。
この点は“規程”の原点である ICAO
行の国際化、更にはフラクショナル・オーナーシ
ANNEX より一歩踏み込んだ取り組みであり、
ップ・プログラム・オペレーション等の新しいタ
従って既存の航空会社の“規程体系”とはひ
イプのビジネス航空に対応するにはそれで良いの
と味異なっている。
かという反省があります。
現実にオペレーションの品質に上述のようにバ
● ビジネス航空を含むゼネラル・アビエーション
ラツキがあるので、そこで少なくともビジネス
にどんなメリットがあるのか
運航を行う者は“自主的”に規程を設け、それに
ビジネス航空を含むゼネラル・アビエーション
世界におけるビジネス航空の現状と IS-BAO の推進する安全管理体制
6
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を行う者にとって、自己の運航の規模や特性にあ
わせた規程が作成できて、それで運航の質の向上、
ことで目的を達することが出来ます。
こうしたメリットは米国の Part 135 で事業認可
ひいては安全性の向上を図れると言うメリットが
を受けた事業者にとってより享受されると考えら
あります。これが自主的に行えると言うのも肩の
れます。
凝らない事ですし、必要であれば IBAC の Audit
しかし“事業認可にかかわる法的要件は満たし
を受けた上で認証を受け登録を行うことが出来る
ているが、よりよい安全管理を目指す”と言う姿
訳です。
勢がない限り、すでに事業認可を取得している者
規程作成の際に IS-BAO は雛型として、あるい
にとってのメリットは感知できないものです。
はチェックリストとしても利用できます。
● 認定登録とは
● すでに事業認可を取得している者にとっての
認定登録は IBAC の要件を満たすことが確認さ
メリット
れれば、IBAC により為されます。有効期限は 2
すでに航空運送事業認可を取得し“規程体系”
年で、要すれば更新されます。
を維持している者にとっても、安全管理体制の面
この IBAC の要件とは GCOM に代表される IS-
で、目新しい部分があります。多角的に安全に係
BAO 流儀の規程の設定ではなく、その狙いであ
わる問題が看視され、必要な是正処置がとられ、
る“安全管理体制が適切に当該企業に組み込まれ、
それが繰り返えされる、そして、それが従事者の
かつ機能しているか?”であり、その確認を柔軟
みでなく、経営トップを含め、組織全体の取り組
に行うことで現存する数多くの運航形態への対応
みにおいてなされる一連の手法は参考に値するも
がなされます。
のであり、その導入は安全管理に関する企業風土
このために IBAC は資格要件を定めて
の醸成をもたらすでしょう、又その行う運航に特
“Accredited Auditor”を任命しています。要件充
有なリスクを最初に明らかにし、大きなものから
足の可否判断の為の作業はこの Auditor によりな
軽減策を施してゆく一連の手法は資源の効果的配
され、その作業内容および可否判断が IBAC に報
分と安全性の向上に役立つと考えられます。
告され、それをもとに最終決定がなされます。現
また航空会社の“規程体系”は通常、運航、整
在 Accredited Auditor は 39 名(米国 30、UK 4、オ
備、運送、等専門分野の多種の規程で構成されて
ランダ、カナダ、ロシア、南ア、日本 各 1)任
いますが個々の横のつながりやオペレーションの
命されており、認定登録を希望するものは
全体像が見えにくくなっています。IS-BAO の場
Auditor を定めて契約を交わし Audit を受けます。
合コンパクトに全体がまとめられていますので、
それを理解する中で、安全な運航に必要な業務要
素としてどう言うものがあるのか、それらの要素
は互いにどう係わり合っているのか、そしてその
全体像を個々の従事者にとって把握が容易になる
4. IS - BAOの構成
以上が IS-BAO の輪郭ですが、以下に順を追っ
てその内容について説明します。
と言うバイ・プロダクトもあります。
更に事業認可とは別途 IBAC の認定登録をして
おくことも無意味ではないと考えられます、即ち、
● IS-BAO の章立て
IS-BAO 本文の章立ておよび APPENDIX である
利用者や保険会社等、外部の信用が補強されるこ
AMC との関係は以下のようになっています。
とにより、ビジネス的にも有意に作用する可能性
3.0 安全管理体制(補足: AMC 3.2 安全管理体
があります。
この場合 IS-BAO 流に新しい規程を設定するの
ではなく現行規程体系に不足があれば付け加える
7
制)
4.0 組織と要員に係わる要件(補足: AMC 4.1
組織と要員の配置)
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ポリシーと戦略−Plan
管理体制−Do
評価と処置−Ckeck & Act
安全ポリシー
技術管理体制
リスク分析
阻害要因の特定と追跡
運航安全レビュー
安全管理の戦略
変更管理手順
管理体制の監査
図 9 安全管理体制の概要
5.0 訓練と技倆(補足: AMC 5.1 訓練プログラ
ム、および AMC 5.5 パイロットの技能証明)
6.0 フライト・オペレーション(補足: AMC 6.1
航空機運用規程、および AMC 6.15 飛行時
間、勤務時間の制限)
7.0 國際空域の飛行(補足: AMC 7.0 國際空域
の飛行)
ーションに関する“リスク分析”を行い、それに
基づく具体的かつ効果的戦略を策定します(以上
が Plan)
。
策定された戦略に基づき、安全管理のための具
体的体制を構築します。“技術管理体制”とはそ
のために必要な組織、人員、職務分掌、施設、を
定める、そしてそれらを動かす OS(operational
8.0 航空機の装備要件
software)とでも言うべき規程体系を指します。
9.0 整備に係わる要件(補足: AMC 9.1 整備管
現実の運航で発生した、あるいは発生し得る安全
理体制、および AMC 9.3 オペレーターの整
の阻害要因を特定し、その根本原因を追跡して根
備評価プログラム)
絶する体制が“阻害要因の特定と追跡”であり、
10.0 会社の運航規程(補足: AMC 10.0 会社の
更に過去に経験のない運航の実施、新機材の導入
運航規程)
など何らかの変更が行われる場合、それに伴い発
11.0 緊急対策 生が予想されるリスクを前以て軽減する体制が
12.0 環境対策 13.0 職業疾病と作業安全対策 “変更管理手順です(以上が Do)
。
このように計画(plan)され実行(do)された
14.0 危険品の輸送 結果はその実績が評価され、必要な処置がとられ
15.0 保安対策(補足: AMC 15.0 保安対策プロ
なければなりません。まず経営層も加わって総合
グラム)
的かつ具体的にレビューして必要な対策を促進す
るのが“運航安全レビュー”であり、一方“管理
● 安全管理体制の概要
IS-BAO の中核である安全管理体制について、
体制の監査”では体制そのものの有効性や効率を
中心に監査が行われ、提言がなされます。このよ
3.0 安全管理体制、および AMC 3.2 安全管理体制
うな評価の結果が管理体制に、あるいは“リスク
に例示を含めた詳細が記載されていますが、その
分析”や“安全管理の戦略”に遡って見直しを要
概要は図 9 の通りです
求する可能性があります。
最初に“安全ポリシー”を明確にして、“安全
(つづく)
管理の戦略”をたてますが、その前に当該オペレ
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中渓 正樹 *
5. IS - BAOの各章
前編ではビジネス航空の現状と IS-BAO の目的
やその概要について述べました。ここでは ISBAO に書かれている内容のあらましを各章毎に
証明します。
−運航が適合すべき法規の全てを満たし遂行さ
れていることの確認
−会社の安全管理体制の管理
−安全リスク管理上の問題点について、適切か
つ適時に明らかにし、必要な修正を行う。
その為に運航乗務員が果たすべきことは、
(記述略)
その為に整備管理者が果たすべきことは、
(記述略)
● 3.0 安全管理体制− 1 安全ポリシーの設定
その為に整備従事者が果たすべきことは、
(記述略)
安全管理体制は従事者、管理者、経営トップの
全員参加によりその効果が発揮されるものですか
ら、まずその為に全員が共有するポリシーが必要
です。そこで述べられるべきことの例を以下に述
べます;(イタリック字体)
我々の目的は先行的、かつ効果的に安全を管理
することであり、それは、
−航空機とそれを運用する者のパーフォーマン
スを常に、最適に保つことにより、
−我々の運航に特有な安全リスクを把握し、そ
れを管理することにより、
−積極的に参加者からのフィードバックを求
● 3.0 安全管理体制− 2 リスク・プロファイル
によるリスク分析
持てる資源を活用し効果的に運航の安全を管理
するには、その運航に特有な安全リスクは何かを
明らかにして重点的に取り組む必要があります。
その為に最初のステップとして、IS-BAO の定め
る方式に従ってリスク・プロファイルを作成する
ことでリスク分析を行います。
−即ちリスク要因が存在する可能性があるとし
て定められた項目(例えば飛行場施設、運航
乗務員の資格、エンジンの形式等)ごとにリ
め、それを以って会社の安全管理活動を弛
スクの格付け(“低”、“中”、または“高”)
まなく改善する事により、達成されるもの
を行う事で そのオペレーターが遭遇する可
である。
能性の高いリスクの領域を示すと共に、
その為に経営者が果たすべきことは、
−安全な運航が推進される上で必要な企業風土
の醸成と定着、
−“中”、または“高”以上のリスクに対する
軽減策をたて、これを実行することで効果的
な安全管理を目指します。
−安全な運航に必要なリソースの提供、
−会社の安全管理体制に対する積極的なサポー
トである。
その為に運航部門の管理者が果たすべきことは、
こうして作成されたものが安全リスク・プロ
ファイルですがこれは夫々のオペレーターに独
特のもので、また同じオペレーターでも運航す
る地域や方式が変わったり、新機材が追加され
*Nakatani Masaki
日本ビジネス航空協会 副会長
Auditor for ISBAO accredited by IBAC
1
たりすれば、それに応じて変更されるべきもの
です。また乗員は飛行毎に新たに発生するリス
航空技術 No.588〔04-03〕
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会社
Blue Sky Limited
評価者
オリジナル 改訂版
Joe Checker/auditor
日時
Oct 30 2003
改訂理由:
リスク度合
影響度−会社の損害の程度
軽減策
低
中
高
影響する要因
運航上の要因
航行援助−ルート上
航行援助−ターミナル
進入着陸援助施設
気象情報
飛行場
技術的な要因
エンジンの形式
エンジンの数
与圧システム
サービス及び整備施設
ヒューマン・ファクター上の要因
運航乗務員の資格
運航乗務員の数
運航乗務員の経験
慣熟度−機材
慣熟度−ルート
企業風土
運航乗務員休憩施設
“影響する要因”全般
想定事故環境
ERS
支配的な運航
運航の行われる場所
悪天候
飛行中の乱気流
“想定事故環境”全般
表 1 安全リスク・プロファイル
クについて、それがリスク・プロファイルへの
す。表の中でイタリック字体で記入された部分は
記載対象であるか否かを常に認識していなけれ
Blue Sky Limited に特有の記述ですが、それ以外
ばならない、そう言った意味で“生きたドキュ
はリスク・プロファイルのフォーマットの一部と
メント”なのです。
して記載されているものです。Blue Sky Limited
また安全リスク・プロファイル は企業の幹部、
は国際的なコングロマリットで、航続距離の長い
監査人、保険業者、その他の関係者にも運航にお
双発のターボジェット機を欧米をはじめアジア、
いてどのような安全リスクの存在が想定され、そ
アフリカ、東欧地域に複数機を運航しているとい
れがどう管理されているかが理解できるようにド
う前提で、以下にそのリスク・プロファイルにつ
キュメント化されている必要があります。
いて、そのフォーマットの上部から順を追って説
表 1 はリスク・プロファイルの具体例を示すも
ので、Blue Sky Limited(仮名ですが)のもので
明しますと;(これ以降のイタリック字体は
Blue Sky Limited に特有の記述)
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“影響度”
スク度合”を“低/中”としています。“軽減策”
“影響度”は事故が発生した場合、それによる
として FMS,EGPWS,GPS を装備し、かつオペレ
損失が会社、および第三者におよぼす影響の度合
ーションの手順や、訓練プログラムの設定におい
いであり、会社の安全管理体制の在り方を定める
てこの関連を強化しています。
上で重要なものです。
Blue Sky Limited の場合は乗客のほとんどが上
“運航上の要因”、“飛行場”
級役員である為、場合によってはコングロマリ
飛行する空港の内ロンドン・シティーとスペイ
ットの存亡に係わることから“リスク度合”を
ヤーでは特別な procedure が要求され、その他の
“高”としています。リスクの“軽減策”として
アジア、アフリカ、東欧の一部でも同様なところ
は、安全管理体制を手厚くすることですが、リ
があり、加えて地形や気象条件が厳しい場合があ
スクの高い運航には分散して搭乗するポリシー
るので“リスク度合”を“中”としています。
を設定しています。
“軽減策”としてこれらの空港ごとに特化したオ
ペレーションの手順や、訓練プログラムの設定を
“影響する要因”
行うこととしています。
事故発生のリスクは“運航上の”、“技術的な”、
あるいは“ヒューマン・ファクター上の”要因に
“技術的な要因”
影響されます。こういった要因を、フォーマット
信頼性の高いジェットエンジンを 2 基装備した
の分類に従って自己の運航にあてて分析し、“リ
客室与圧機であるのでこれら機材に上の“リスク
スク度合”が“中”以上の項目に対しては“軽減
度合”は“低”いです。しかしアジア、アフリカ、
策”を施します。
西欧、東欧の一部の飛行場では施設やサービスに
限界があるので“サービスおよび整備施設”の
“運航上の要因”、“航行援助 - ルート上”
アフリカや旧 USSR などで非管制空域を飛行す
ることがあるので“リスク度合”を“中”として
“リスク度合”を“中”としています。“軽減策”
として実際の運航に際しては整備技術者が乗務員
に加えて搭乗することとしています。
います。“軽減策”として全機に TCAS と GPS を
装備し、またリスクの高い空域の飛行には熟練運
航乗務員を指名することとしています。
“ヒューマン・ファクター上の要因”
PIC として経験豊富で ATPL 資格を有するパイ
ロットが指名されるので、機材への慣熟度を含
“運航上の要因”、“航行援助 - ターミナル”
トラフィック密度の高い北米および欧州や、ま
め運航乗務員に係わるリスク度は“低”いです。
しかし運航する領域は時として馴染みの浅い、
たアフリカなど管制効率や言語上の問題があるタ
あるいは全く未経験な場合があるので“慣熟
ーミナル・エリアを飛行するので“リスク度合”
度−ルート”の“リスク度合”を“中”として
を“中”としています。“軽減策”として全機に
います。“軽減策”として馴染みの浅い領域への
TCAS を装備し、またオペレーションの手順や、
飛行計画の作成には十分すぎるほどのリソース
訓練プログラムの設定には、例えばメトリック高
を投入すること、また未経験な領域の飛行には
度計の使用等、地域の特異性を反映するものとな
経験豊富なパイロットを指名することとしてい
っています。
ます。Blue Sky Limited の安全運航にかかわる
“企業風土”は十分醸成されています。
“運航上の要因”、“進入着陸援助施設”
アジア、アフリカ、東欧の一部の地域では、厳
しい地形で非精密進入を行う場合があるので“リ
3
“想定事故環境”
“想定事故環境”は事故が発生した場合の搭乗
航空技術 No.588〔04-03〕
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者の生命の安全を確保する上でのリスクの度合い
を推定し、必要なリスクの軽減策を講じる上で使
われます。
Blue Sky Limited の運航は過疎地域で、あるい
な透明性が要求されます。
この最初の項目について前項同様 Blue Sky
Limited のものをイタリック体で例示したものが
以下です(なお 2 番目の項目は“3.0
安全管理
は北極やアフリカのように厳しい地勢の地で、あ
体制− 2 リスク・プロファイルによるリスク分
るいはヒマラヤのように厳しい気象に遭遇するよ
析”での“中”、または“高”以上の安全性に影
うな地で行われるので、“運航の行われる場所”
響する要因とその軽減策を詳細に述べたものであ
での“リスク度合”を“中”としています。リス
り、3 番目の項目については後で触れる事にしま
クの“軽減策”として、そうした地域への運航に
す)。
際してはサバイバル用機具や ELT(Emergency
Locator Transmitter)が搭載されます。
安全は全ての Blue Sky Limited のフライト・オ
ペレーションにおいて最優先事項であり、それに
従事する全ての者が連帯してその責任を負うもの
以上が安全リスク・プロファイルの 1 例を示す
である。目標は管理すれば防止できる筈の怪我や
ものですが、作成後に運航環境等の変化があれば
損失をゼロとすることであり、以下の方針を以っ
それに応じて見直されます(その場合は改訂理由
てこの目標を達成する。
が該当欄に記入される)。また“AMC 3.2 安全管
−安全は従事者と管理者により等しく認識され
理体制”には各項目について、どのような状況に
るべきであり、如何なる業務にも最優先要素
対してどのようにリスク度合を評価するか、に関
として織り込まれていなければ成らない。
する基準が詳細に記載されています。例えば“企
−フライト・オペレーションに係わる業務につ
業風土”については次のように記載されています。
−リスク要因が最も“低”いとされるのは、会
いて安全の直接責任は夫々の部門責任者が負
うが、飛行中においては PIC が負う。
社の経営者も乗客も運航の安全が最重要で、
−各々の従事者はその業務の遂行に当たって、
これについての運航乗務員の決定に聊かの疑
自己の安全と同様に会社の同僚、および顧客
問をもたない場合で、最も“高”いとされる
やその財産の安全に最大の関心を以って当た
のは会社の経営者も乗客も何かと要求が多
く、遅延に対する許容性が無く、運航乗務員
に直接、間接に圧力を感じさせる場合である。
らなければならない。
−PIC およびその他の乗組員は飛行の実施およ
び継続の可否について、オペレーションズ・
マニュアルやフライト・マニュアルの基準に
●安全管理体制− 3 安全管理の戦略
照らし、機材や気象等の全ての要素を勘案し
安全管理の戦略とは安全管理の方針や活動の概
て判断を下さなければならない。PIC は安全
要を述べたドキュメントであり、以下のような事
あるいはセキュリティー上の理由で飛行を中
柄が記述されます。
止することに最終的な権限を有する。
−安全の達成水準の目標、および達成のための
活動方針;
−安全リスク・プロファイルで明らかになった
安全リスクとその軽減策の内容;
−達成された水準をモニターし、安全管理体制
の実効を評価するための仕組み;
このドキュメントには顧客、監督官庁(または
更に Blue Sky Limited では安全を阻害する要因
の芽を未然に摘みとるべく、全ての機材、全ての
業務に安全管理体制の下になければならない、そ
の達成には以下が重要である。
−すべての運航従事者および利用者が安全管理
体制の枠組みの下にあることを認識するこ
と。
その代理機関)、保険業者、その他の社外の関係
−従事者の自覚、規程の遵守、検査、調査、
者にとって会社の安全達成水準が評価できるよう
および教育訓練が全てのオペレーションに
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係わる業務の側面として採り入れられてい
極めて原始的なものであるかもしれませんが、こ
ること。
の体制を有していなければならないことには変わ
−全ての社員は安全を阻害する要因を特定し、
報告して、その絶滅に努力すること。
−全ての報告された危険事象は調査の上その根
本原因を突き止めること。
りはありません。この体制の運営は運航部門の管
理責任者の責任においてなされるものです。
“阻害要因を特定するプログラム”は安全に関
して起こる可能性がある問題を前以て見出し、
−新しい運航、手順、機材、設備、の企画に際
特定することです。それは自発的あるいは内密
しては安全に関する影響を検証すること。
な報告制度や会社のデータ収集システムの分析
−全ての従事者は適用ある法規に適合している
ことを確認すること。
によって行われますが、更には安全管理体制の
“監査”と“安全性のレビュー”の活動の中でも
行われるものです。また適時そのために行うブ
● 3.0 安全管理体制− 4 技術管理体制
技術管理体制とは以下を指します。
−適用を受ける全ての法律、規則、基準、標準、
レインストーミングも有効なものとしてプログ
ラムに含まれます。
このようにして特定された問題については、
および取得した認可、承認、適用除外、認可
その内容に応じて、該当する職務をつかさどる
された例外、などを明確化し、整備する体
人、または組織により改善処置が立案され実行
制;
されます。
−運航部門(整備を含む)の従事者の安全に係
“安全性の阻害要因の追跡体制”とはこの改善
わる任務と責任(誰が何をやるのか)につい
処置がタイミングを得たもので、有効であったか
て明文化したドキュメントを設定する体制
について追跡評価する仕組みであり、通常は運航
(職務分掌)、
−および基準の適用除外や、基準からの認可さ
れた逸脱の適用手順等を明文化したドキュメ
ントを設定する体制;
−運航部門の従事者が任務を遂行する上で必要
部門の管理責任者(あるいはこれについて委任さ
れた者)が行いますが、専門の会議体を設け四半
期ごとにレビューすることも有効です。
特定された阻害要因に対するアクションは、会
社の安全リスク・プロファイルに示されるリスク
な資格、熟練度、技倆、教育、必要な機器、
のレベルに応じて、その優先度が決められている
およびツール類を明確にし、整える体制;
ことが重要です。例えば整備が会社のリスク・プ
−以下を設定する体制:
a. 運航(航空機運用操作手順を含む)および
航空機の整備についての規程や SOP
ロファイルでクリティカルな領域であることが判
明しているときは、整備に係わる懸念は高い優先
度を持って処理されなければならないし、かつ追
b. 要員の訓練プログラム
跡体制では即時のフォローアップと評価が行われ
c. 航空路など、航行に必要な情報やチャート
なければなりません。
安全の阻害要因の特定と追跡体制は様式を定め
● 3.0 安全管理体制− 5 安全性の阻害要因の特
定と追跡体制
これは特定された阻害要因をドキュメントに記
録し、その改善処置の効果を追跡・評価する仕組
みのことですが、全てのオペレーターに必須のも
て記録を残して運営されますが、手作業により、
あるいはコンピューターを使用して運用されるこ
ともあります。その場合の概要は;
−阻害要因の可能性を察知した者はコンピュー
ターに記入(インプット)する。
のです。その内容は運航部門の規模や運航の性格
−運航部門の管理責任者(あるいはこれについ
によって異なり、例えば数人による小さな運航部
て委任された者)は改善処置の必要性の有無
門で、かつリスクの低い運航環境にある場合は、
を決定し、担当組織(または人)を指名し、
5
航空技術 No.588〔04-03〕
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記入する。
−担当組織(または人)は改善処置についてそ
の内容と実施時期について記入する。
−追跡体制による改善処置の評価および、更な
る処置が必要な場合、その内容が記入される。
−最終的なケース・クローズは運航部門の管理
責任者(あるいはこれについて委任された者)
により判断され記入される。
−これらの経過については社内にオープンに
について委任された者)により策定されます。
−以下に関する見直しの必要の有無と必要な場
合、その内容と実施計画
a.運航および整備の処置や手順
b.訓練および資格
c.オペレーションズ・マニュアル(会社の運
航規程)
d.整備管理規程または整備手順マニュアル
e.航空機運用規程とその他 SOP
され、いつでも誰でもアクセスすることが
−航空機装備の変更
できる。
−変更実施に関する具体的計画
● 3.0 安全管理体制− 6 変更管理手順
こうして必要な変更管理計画が策定されます
変更管理手順はオペレーションに重要な変更が
と、それが実行に移される前に次項で説明する
なされる場合に活用される、ドキュメント化され
“運航安全レビュー”(あるいは“安全管理体制の
た戦略であり、目的はその変更に伴い発生し得る
監査”)にて検証が行われます。また変更を実施
安全リスクを変更の実施に先立って特定し軽減し
した後も、運航部門の管理責任者は定期的に変更
ておくことにあります。小規模で常に低いリスク
に係わる安全の達成水準をレビューし、もし変更
環境での運航の場合、こうした手順を維持する必
管理手順の効果に疑問がある場合は、更に必要な
要はありませんが、大規模で複雑、かつ頻繁に重
追加処置を立案し、検証を経て実施に移されます。
要な変更が行われるような運航には有用なもので
す。このような変更管理手順の適用が必要とされ
るであろう場合として;
● 3.0 安全管理体制− 7 運航安全レビュー
運航安全レビューは運航のクリティカルな側面
−新機種の導入、
に関する管理が、効果的に行われていることを確
−運航の性格に係わる重要な変更(例:ダイナ
かめるために、運航部門からは独立して行われる
ミックな事業の成長、新しい運航環境、など)、
−雇用形態、あるいは乗務割などに係わる手順
の変更、
安全リスク評価であり、経営層レベルも加って行
われるものとして重要な意義をもつ活動です。
まず実際に起きた、あるいは起こる可能性のあ
−組織構造の変更、
る問題が、そのオペレーターの安全管理体制にお
−整備契約に関する重要な変更、などが挙げら
ける諸プログラムや手順により効果的に特定でき
れます。
なかった場合に行われます。また運航安全レビュ
ーは運航に変更を加えるに際し、それに関して提
変更管理手順では吟味を必要とする変更のタイ
案されている安全管理が効果的かどうかを確認す
プが特定されており、それに係わる危機やリスク
るために“変更管理手順”の一環として行われる
を軽減する為の戦略を立て、文書化し、評価する
ものでもあります。更には運航のうちリスクの高
一連の手法がドキュメント化されていなければな
い領域(例えば出発の可否の判断手順など)に関
りません。
して、リスクの存在の有無にかかわらず、随時運
即ち変更の決定が為されれば、直ちに安全リス
ク・プロファイルの見直しが行われ、その結果、
航安全レビューを行うことで、安全達成水準を向
上させる、そうした活用方法もあります。
およびその他の情報に基づき、以下に述べる変更
その所見については検討対象に関する“安全リ
管理計画が運航部門の管理責任者(あるいはこれ
スク・プロファイル”のリスクの度合に応じた優
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先度で処置がとられ、かつその効果が“阻害要因
の追跡”体制で追跡されることになります。
評価され、また“安全リスク・プロファイル”や
“安全管理戦略”の変更におよぶことがあります。
“安全リスク・プロファイル”および“安全管
理の戦略”もまた運航安全レビューの結果を受け
● 4.0 組織と要員に係わる要件 て変更される場合もあります。
組織と要員に係わる要件については AMC 4.1
組織と要員の配置で補足されていますが、最低必
● 3.0 安全管理体制− 8 安全管理体制の監査
要な組織機能として以下としています。
安全管理体制の監査は安全管理体制からは独立
とりわけ運航部門管理責任者、チーフ・パイロ
した評価体制であり、その主たる目的は安全の達
ット、整備の責任者を重要エレメントとしてその
成水準が更に向上され得る領域を見出すことにあ
任務と責任および資格について詳述しています。
ります。監査には“変更管理手順”等に対応して
中でも重要な運航部門管理責任者の任務を下図と
随時行われるものと、定期に行われるものがあり
しています。
ますが、後者の場合の繰り返し期間としては、十
a. 以下につき組織、人事を適切に行い、その指
分な実績がある場合で 3 年、新しい会社の場合は
揮をとる:
1 年が目安ですが、一旦万全な安全管理体制の下
i. フライト・オペレーションズ(整備を含む)
で、目標達成水準を実証すれば延長されます。
ii. 客室安全
iii. 乗務員のスケジュール
監査活動は;
iv. および訓練プログラム
−訓練と技倆複数の運航の現場を訪れ調べる。
−運航部門の管理者、スタッフ、社外関係者を
b. 運航基準を管理し、それに基づいて、全ての
インタビューする。
航空機の運航を管理する。
−ドキュメント類を調べる(例えば完全性、有
c. 運航の重要機能の管理(例えば、整備、乗員
効期日、適切性について)。
スケジュール、重量管理、機材スケジュール
−会社のオペレーション全般を観察する。
−使用されている会社の安全管理用ツールの評
など)。
d. 安全管理体制の設定と実行。
e. 会社の運航規程の設定と維持。
価を行う、等で行われます。
f. 運航に係わる全ての事項についての、行政当
監査の所見は、会社の“安全リスク・プロファ
イル”に記載のリスク度合に応じた優先度で処置
局との連携。
g. 航空機の運航に係わりのある外部の諸機関
され、その効果が“阻害要因の追跡”体制で追跡
との連携。
オーナー CEO
運航部門管理責任者
チーフ・パイロット
整備の責任者
運航乗務員
整備従事者
セーフティー
オフィサー
図 組織機能の基本エレメント
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航空技術 No.588〔04-03〕
03/世界におけるビジネス航空 04.1.21 4:30 PM ページ8
h. 国および国際的な法規、基準、あるいは会
社の運航・ポリシーに基づいて運航が行わ
れている事を確保する。
i . 乗務割が勤務時間、乗務時間に関する制限
内である事を確保する。
j . 全ての乗務員に法規や運航基準に関わる変
更が周知されていることを確保する。
k. 運航の安全に影響する航空関連情報を収集
し、必要なアクションを行う。
l . 社内外に航空安全情報を敷衍する。
m.運航乗務員の資格が有効である事を確保する。
● 7.0 国際空域の飛行
本項については“AMC 7.0 国際空域の飛行”で
補足されているものですが、IS-BAO がこれまで
ビジネス機ではあまり行われなかった国際空域の
飛行の基準や手順をカバーすべき項目として重視
している為
−MNPS/RNP 空 域 ( Minimum Navigation
Performance Specification / Required Navigation
Performance)
−RVSM 空域(Reduced Vertical Separation
Minima)
n. 最新の運航に関する資料を維持する。
の飛行に要求される航空機器のシステム要件、お
o. 運航部門従事者の福祉を管理し、向上を図る。
よび運航手順、操作手順の実践可能なレベルの詳
細が記載されています。
● 5.0 訓練と技倆審査
本項については“AMC 5.1 訓練プログラム”、
および“AMC 5.5 パイロットの技能証明”で補足
されているものですが、
−模擬飛行訓練装置により可能な訓練
● 8.0 航空機の装備要件
本項では ICAO ANNEX 6 Part II“International
General Aviation-Aeroplanes”に準じた要件が記載
されています。
−訓練シラバスの内、RNAV,MNPS,RVSM お
よび GPS 計器進入方式に係わるもの
−パイロットの技量審査項目(様式を含む)
● 9.0 整備に係わる要件
本項については“AMC 9.1 整備管理体制”、お
については、実践可能レベルまで詳細に記述され
よび“AMC 9.3 オペレーターの整備評価プログラ
ています。
ム”で補足されているものですが、ICAO
ANNEX 6 Part II からかなり踏み込んだ要件とな
● 6.0 フライト・オペレーション
っており、更に航空会社などに適用される ICAO
本項については“AMC 6.1 航空機運用規程”、
ANNEX 6 Part I“International Commercial Air
および“AMC 6.15 飛行時間、勤務時間の制限”
Transport”をも超えている部分があります。その
で補足されているものですが、
観点では“ICAO ANNEXES 等から必要な部分を
−航空機運用規程に記載すべき事柄
抜粋したもの”ではありません。即ち安全管理体
−飛行計画の作成の詳細
制の一部となる整備管理体制を確立し、そこで行
−最低気象条件の詳細
われる業務内容と手順を記載した規程を設け、そ
−乗客への安全ブリーフィングの詳細
れをオペレーションズ・マニュアル(会社の運航
−飛行時間と勤務時間の制限
規程)の一つの章(以下:整備規程)とします。
等が記載されています。飛行時間と勤務時間の
そこでは以下が定められます。
制限については実践可能なサンプルが記載されて
−整備管理体制における責任と権限について
いますが、横切る時差帯の数を考慮した新しい概
a. 整備管理体制の責任者を明確に定め、法規
念が採り入れられており、この点では 2003 年 9
に認められる範囲で他に責任・権限の一部が
月 17 に発効したフラクショナル・オーナーシップ
委譲される場合はその内容を整備規程に明
に係わる FAR Part 91, Subpart-K Section 91.1057 と
示する。
類似しています。
b. 整備管理体制の責任者は、法規に定める
世界におけるビジネス航空の現状と IS-BAO の推進する安全管理体制
8
03/世界におけるビジネス航空 04.1.21 4:30 PM ページ9
要件に合致しない、あるいは安全に係わる
リスクゆえに、航空機を運航から除外する
事が適切と認める場合、その責任・権限が
こと、
d. 修理持ち越し基準に係わる全ての手順が踏
まれ、要件が満たされていること、
認められる。
e. 適用ある AD(Airworthiness Directive)が
−整備計画ついて
実施されているなど国の民間航空法規およ
認可された整備計画の設定
−整備の実施ついて
サービシング(給油など)、基本整備作業
(飛行前点検や簡易な保守)、および整備作業は
a. 資格ある従事者(所定の手続きで認められ
た社外の従事者を含む)により、
b. 航空機製造者の仕様を含む、法規に適った情
報や技術データ、および手順に従って、
c. 法規の要件に適う部品、材料のみが使用さ
れて、
行われなければならない。
認可された例外については整備規程に定めな
ければならない。
−不具合の報告と修復およびそれらの記録につ
び基準に合致していること。
−法規の要件に従った空虚重量・重心位置を記
録をする手順について
−整備の管理業務(間接業務)を以下に定義し、
そのためのリソースの配分について
a. 整備規程の設定および改訂
b. 整備計画の設定とその実施計画の策定
c. AD(Airworthiness Directive)に適合する為
の計画
d. 適用あるサービス・ブレティンなどの情報
を技術評価し必要に応じた措置
e. 不具合に関連し、航空機の出発の可否に関
する適切な技術的指示をおこなう
f. 整備従事者に必要な訓練と資格の管理
いて
a. 航空機の運航中、および整備作業中に発生
した不具合は確実に探知され所定の方式で
記録されること。
整備管理体制においては“整備規程”に加え
“整備評価プログラム”を柱に加えています。
このプログラムは整備管理体制における業務
b. とりわけ繰返し発生する不具合を特定する
活動を評価するもので、整備管理体制の責任者
手順と、それをハイライトして航空日誌に
の管理下で行われます。プロダクトの最終検査
記入する手順が必要である(目安として
としてではなく、業務活動が整備規程に適合し
15 飛行セグメントで 3 回以上発生するも
ていることを証明する為に、そして整備規程の
の)。
妥当性をも含め確認する目的で定期的に行われ
c. 不具合の修復は速やかに法規に適った、航
空機製造者の推奨する手順に従って行われ
なければならない。
d. 修復が持ち越される場合は、修理持ち越し
るもので、通常は年に 1 回としています。
またこのプログラムは当該オペレーターの運
航に何らかの変更が行われた場合、それに伴う
整備管理体制の変更改訂の要否に関するチェッ
基準(MEL)に定める許容期間内に修復で
ク機能として(“3.0 安全管理体制− 6 変更管
きることを確認しなくてはならない。
理手順”の一部をなす)随時実施されます。
−整備が行われた航空機が飛行に供し得るか否
かの技術的判断の要件ついて
このプログラムはきめ細かいチェックリスト
を用いて行われます。
a. 技術的判断を行う者の氏名と職務が明示さ
れること、
b. 航空機には適切な装備がなされ、構成がなさ
9
●10.0 会社の運航規程(AMC 10.0 会社の運航
規程で補足されている)
れ、使用目的に従って整備されていること、
運航規程は行われるオペレーションの規模や性
c. 航空機は整備規程に従って整備されている
格によって内容とそのきめは大きく異なります内
航空技術 No.588〔04-03〕
03/世界におけるビジネス航空 04.1.21 4:30 PM ページ10
容とそのきめ密度は大きく異なります
が、最低含むべき事項を以下としています;
−航空機への給油や除氷、防氷処置を含む地上
作業
a. 目次
−廃棄物の処理
b. 改訂履歴、有効頁一覧
−オペレーターの格納庫および他の設備の構築
c. 任務、責任および管理者から作業要員への権
および運用
限の委譲
d. 会社の安全管理体制
e. 運航管理
● 13.0 職業疾病と作業安全対策
オペレーターは作業の安全、衛生や、火災防止
f . 修理持越し基準とその適用(適用ある場合)
などにかかわる国および地域の健康と安全に係わ
g. 通常運航
る法規および要件を明確に認識し、これに従わな
h . 航空機運用規程
くてはならないとして、それらを列挙しています。
i . 気象による制限
j . 飛行時間および勤務時間制限
k . 緊急時の運航
● 14.0 危険品の輸送
危険品の輸送は、“ICAO の危険品の安全輸送
l . 事故/インシデントへの備え
のための Technical Instructions”、または“IATA
m. 要員の資格と訓練
の Dangerous Goods Regulations”に準じている
n. 記録の保持
として認可を受けた、体制と手順で行わなければ
o. 整備管理体制に関する記述
ならないとして、その対応を具体的に記載してい
(一般的にはこれに“保安対策・プログラム”およ
ます。
び“危険品の輸送”が加わる)
● 15.0 保安対策 (AMC 15.0 保安対策プログラム)
● 11.0 緊急対策
航空機の重大な損傷、あるいは乗客、乗務員や
地上従事者の傷害を招くような事故、インシデン
ビジネス機は保安上の理由で利用されることも
あり、また運用される環境も航空会社とは異なる
面が多いので、
ト(飛行中の乗客あるいは乗組員の傷害や深刻な
−運航に先立つ現地調査、
病気などを含む)に備えて、そのときに必ず従う
−航空機や施設の立ち入り制限、
べき基本的対応手順を定めています、それは
−警備員の配置などの防禦対策、
−便名、機番、発生場所、時刻など基本情報の
確認、
−2 次災害を防ぐ、援助を求める、あるいは現
−ハイジャックや爆発物脅迫が行われた場合の
乗員および地上側の対応、について詳細にチ
ェックリストとして記載されています。
場を保存する等の当面の処置や、
−通報・報告の手順等ですが、
定期的な訓練を行うことで、その実行性が定期的
に検証されるべきとしています。
6. おわりに
安全を守るには“基本を大切に”といわれてい
ます、その通りですが、その基本の全体像がだん
● 12.0 環境対策
だん見えにくくなっています。IS-BAO はそれ自
オペレーターは以下に関して、国および地域の
体、決して新規なイノベーションではありません
環境に係わる法規および要件を明確に認識しそれ
が、“基本とは何か?”をコンパクトに網羅して
に従わなくてはならないとしています。
くれるものです。
−騒音軽減飛行方式の励行や夜間の飛行制限な
(おわり)
どの地域騒音対策
世界におけるビジネス航空の現状と IS-BAO の推進する安全管理体制
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