超巨大ブラックホール周辺の電離状態から探る 降着円盤と

筑波合宿(10/17-19)
超巨大ブラックホール周辺の電離状態から探る
降着円盤とジェットの関係
川勝 望(国立天文台・理論部 学振PD)
共同研究者
長尾 透(愛媛大学)
Jong-Hak Woo (UCLA)
第9回高宇研究会「宇宙ジェットの多様性と普遍性」@愛媛大学 3月16日‐18日
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内容
1.イントロダクション
2.超巨大BH周辺の電離状態から探る降着円盤の性質
2.1 降着円盤の性質を探る方法:∼輝線比に注目∼
2.2 若い電波銀河の降着円盤
3.相対論的ジェットと降着円盤の関係
4.まとめ
相対論的ジェットを持つブラックホール天体
サイズ 中心天体
活動銀河核(AGN)ジェット pc-Mpc 超巨大BH
系内ジェット(XRBs) 100AU-100pc
星質量
BH
AGNジェット 系内ジェット
AGNジェットと系内ジェットの類似性
“共通の物理”
全てのブラックホール天体が相対論的
ジェットを持つわけではない。
どのような降着円盤のときに相対論的
ジェットが形成されるのか?
Mirabel & Dodriguez (1998)
これまでの研究:降着円盤とジェットの関係
1.巨大ジェット(> 100 kpc)を持つ電波銀河に注目した研究が多数
⇒ ジェット形成して106-8年ほど経っている降着円盤の性質
2.降着円盤の性質(放射スペクトル:SED)を調べた研究はほとんどない。
∼60 kpc
若い電波銀河
年老いた電波銀河
「降着円盤とジェット関係」を明らかにするために、 若い電波銀河の持つ
降着円盤の性質(特にSED)を調べることが重要である。
‐本研究の目的‐
若い電波銀河の持つ降着円盤の性質を調べることで、
どのような降着円盤で相対論的ジェットが形成されるの
か明らかにする。
3C 84
~10 pc
Radio
若い電波銀河
どのような降着円盤?
降着円盤の性質(SED)を引き出す方法
光電離
冷たいガス
1.降着円盤からの直接光(UV- X線)
○ 直接的な方法
× 邪魔するものが多い
ジェット
(輝線、ジェット成分、吸収、など)
降着円盤
2. 冷たいガスからの輝線
ダストトーラス
降着円盤からの光で電離
× 間接的な方法
○ 邪魔するものが少ない
銀河中心領域の構造(模式図)
冷たいガスからの輝線
フラックス
NGC1667
(セイファート銀河)
高電離輝線
[OIII]λ5007
低電離輝線
[OII]λ3727
[OI]λ6300
Peterson 1997
4000
5000
6000
波長(A)
これらの輝線を用いて、降着円盤のSEDを引き出す。
SEDと電離構造の関係
黒体放射スペクトル
(標準円盤
Optical-UVにピーク
)
中性領域
べき型スペクトル
(RIAF)
[OIII]
中性領域
完全電離
領域
完全電離領域
高電離輝線(e.g., [OIII])
部分電離領域
低電離輝線(e.g., [OI])
べき型スペクトルの方が輝線比[OI]/[OIII] は大きくなる。
SEDと電離構造の関係:理由
電離光子の断面積 σ(H) ∝ (ν/ νL)-3 νL:ライマン端の振動数
高いエネルギーを持つ光子ほど平均自由行程が長い。
べき型スペクトル
ν > νL
黒体放射スペクトル
ν~νL
[OIII]
完全電離領域
[OIII]
完全電離領域
[OI]
部分電離領域
中性領域
全ての電離光子が吸収
中性領域
サンプル
■ 若い電波銀河(コンパクトなジェットを持つ)
* 差し渡しの平均: 3 kpc
* 冷たいガスからの輝線(可視域)
⇒ 20天体
■ セイファート銀河(ジェットを持たない)
* 冷たいガスからの輝線(可視域): high S/N >10
⇒ 624天体
# どちらも2型活動銀河核
若い電波銀河 vs. セイファート銀河
SEDの違い
べき型
●:若い電波銀河
黒体放射
x: セイファート銀河
⇒個数密度の違い
若い電波銀河は[OI]/[OIII]比が大きい。
[OI]/[OIII]のヒストグラム
セイファート銀河
若い電波銀河
K-S テスト
同じ分布の確率
=1.0x10-4
統計的に両者の分布は異なり、若い電波銀河の[OI]/[OIII]比は大きい。
[OI]/[OIII]の違いはSEDの違いか?
光電離モデル(CLOUDY)
Ferland 1998
基礎方程式: 電離平衡の式+熱平衡の式
光
物理パラメータ:
ガス雲
1.水素の個数密度(nH):102 - 105 [cm-3]
・電離構造
2. 電離パラメータ: U = Q/nHr2 Q: 電離光子の数
3. 降着円盤からの放射スペクトル(SED)の形
αPL =0.89
・放射フラックス
RIAFのスペクトル(破線)
傾きαPLのべき型
標準円盤のスペクトル(実線)
TBB=4.9x105 K
温度TBBの黒体放射が卓越
(Ryd=13.6eV;1 eV=1014 Hz)
標準降着円盤 vs. RIAF
標準降着円盤
RIAF
●:若い電波銀河
x: セイファート銀河
若い電波銀河の中心にはRIAF的なSEDを持つ降着円盤が存在する!
降着円盤とジェットの関係
3C 84
~10 pc
若い電波銀河
Radio
べき型のハードなスペクトル
(RIAF?)
物事はそう単純ではない!
若い電波銀河は電波で明るい(=巨大電波銀河に匹敵)
⇒ジェットパワーが大きい
RIAFで説明できる?
⇒ある程度大きな降着率必要(重力エネルギーの一部が転換)
RIAFの最大光度
LRIAF
& # 2
& M
2 LEdd
&
&
$
!
' 0.1$
Mc : M max " 3!
2
!
&
M
c
% max "
制動放射∝密度の2乗
$ L RIAF,max # 3 "10 %3 L Edd for ! = 0.1
Log(質量降着率)
! < 0.1 (MRI)
&
M
max
(Balbus & Hawley 1991: Machida et al. 2000)
+
Qvis
= Qadv
+
Qvis
= Qrad
& "!
M
& " !2
M
Log(面密度)
cooling instability
! max
若い電波銀河の降着円盤光度
降着円盤の光度(若い電波銀河)
観測量
<Lbol,obs > ~ 1045 erg/s (from <Lbol,obs >=250* <L[OIII]> )
~ 0.01 LEdd for MBH=109Msun (BHの最大質量)
-3 L
>
3
X
10
Edd =LRIAF,max (粘性パラメータα=0.1を仮定)
RIAFの最大光度を上回っている。
べき型のハードなスペクトルを持ち、明るい降着円盤が必要
!
古典的なRIAFや標準円盤では説明できない。
系内ジェット(GX 339-4)
光学的に厚く、
低温円盤
黒体放射
X線光度(降着円盤)
ジェットなし
標準円盤
ジェットあり
Remillard 2005
L ~ 0.1 LEdd
若い電波銀河の
性質と類似
光学的に薄く、
高温円盤
RIAF
べき型
ソフト (スペクトルの形) ハード
相対論的ジェットは、明るく&ハードなスペクトルを持つ円盤のとき形成?
まとめ
超巨大ブラックホール周辺の電離状態から、ジェット形成して間も
ない若い電波銀河の持つ降着円盤の性質を調べた。
・ 降着円盤のSEDはべき型のハードなスペクトル(RIAF的)
・ 降着円盤の光度は明るく、古典的RIAFで説明するのは困難
NK, Nagao & Woo 2009, ApJ, 693, 1686
類似した性質を持つ星質量ブラックホール天体は多数発見
相対論的ジェットは一般に明るく&ハードなスペクトルを持つ円盤で形成?
理論: 磁気圧優勢円盤?(小田さんの講演)
観測: 硬X線の情報(スペクトルの傾き、カットオフエネルギーなど)
どうもありがとうございます!