新しい人道主義 ―国際管理と統治の手段としての人道支援― New Humanitarianism: Humanitarian Assistance as Political Instruments for Global Security Management and Governance 上野友也 Tomoya Kamino 岐阜大学 Gifu University 【連絡先】 上野 友也 【プロフィール】 上野 友也(かみの ともや) 岐阜大学教育学部 准教授 □略歴 東北大学法学部卒業。東北大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程前期修了。ウェールズ大学 アベリストウィス校国際関係理論コース修士課程修了。東北大学大学院法学研究科トランスナショ ナル法政策専攻博士課程後期修了。博士(法学) (東北大学)。日本学術振興会特別研究員(PD) (神 戸大学)。ひょうご震災記念 21 世紀研究機構 人と防災未来センター研究員を経て現職。 □専攻分野 国際政治学 □研究テーマ 国際人道支援、国際安全保障、防災行政 1 新しい人道主義 ―国際管理と統治の手段としての人道支援― Rwandan refugee camps in 1994 were a military base controlled by ex-Rwandan government and militias. The failure of humanitarian assistance was a turning point to reconsider humanitarian principles: humanity, impartiality and neutrality. Since these principles separate humanitarian assistance from politics, humanitarian aid has been provided without considering these harmful effects on armed conflicts. Some of practitioners and researchers suggest that humanitarian assistance should be integrated with conflict resolution so as to make humanitarian operations more efficient and harmless. The new idea is called “New humanitarianism.” While the new humanitarian concept is rejected by the International Committee of the Red Cross (ICRC) and Médecins sans Frontières (MSF), some American NGOs support the new proposal and practices. The new humanitarianism not only unites humanitarian operations and conflict resolutions, but also makes humanitarian assistance as political instruments to pursue European and US foreign policy and to justify international control over failed states. NEW HUMANITARIANISM, HUMANITARIAN ASSISTANCE, HUMANITARIAN SPACE NEUTRALITY, IMPATIALITY 1.序論 1994 年のルワンダ難民支援は、人道支援の歴史に重大な汚点を残す結果となった。ジェノサイドの首 謀者である旧政府関係者が、難民を徴用して軍事教練を行い、難民に配給された援助物資を収奪するこ とにより、ルワンダ本国への進軍を準備した。人道支援が行われた難民キャンプは、ルワンダ侵攻の前 線基地になったのである。人道支援活動は新政府と旧政府勢力との新たな争点となり、アフリカ大湖地 域に政治的な不安定をもたらすことになった。 2 人道支援に対する国際的非難が高まるなか、人道支援の実務家や研究者の中から、それまでの人道支 援に対する反省が促され、新たな人道支援のあり方が提起されるようになった。人道と政治を区別し、 人道支援は中立原則や公平原則に基づいて提供されるべきである。そのような伝統的な人道主義に基づ いて、人道支援は武力紛争に与える効果を考慮することなしに行われた。このような認識に替わって、 人道と政治を区別することなく、人道支援と紛争解決を一体的に進めるべきであるという主張がなされ ることになった。このように提唱されたのが、「新しい人道主義(New humanitarianism)」である。 本稿では、 「新しい人道主義」がどのような経緯で主張され、どのように議論が展開してきたのかを論 ずる。当初、 「新しい人道主義」は、人道支援が武力紛争の激化・長期化をもたらすおそれがあることか ら、人道支援と紛争解決の統合を目的にして提唱された。しかし、これは、人道危機や武力紛争を解決 するために、国家、国際機構、非政府組織の協働を促進する規範的根拠としても利用されることになっ た。「新しい人道主義」は、被災者支援における「新しい公共(New Public)」の理論的基盤を提供した のである。本稿では、 「新しい人道主義」が人道支援機関の援助政策と欧米諸国の安全保障政策を結合さ せる機能を果たし、それにより、人道支援が欧米諸国の国際統治や国際管理の手段として位置づけられ たことを明らかにする。 2.人道支援の基本概念 (1)人道支援の定義 人道支援は、自然災害・人為的災害・武力紛争の被災者に対する援助と保護を意味する。援助には、 医療支援、公衆衛生支援、食糧・栄養支援、避難所や被災者の生活支援などが挙げられる。保護には、 暴力的行為からの物理的保護、法的権利の尊重、難民の受入と資格認定、難民の恒久的解決(自発的帰 還、庇護国定住、第三国定住)などが挙げられる。 (2)人道支援の主体 このような人道支援活動を展開する主体は、外国政府・地域機関、国際機関、非政府組織、個人に区 別できる。外国政府や地域機関による人道支援は、援助国(donor)が他国の被災者に対して行う人道支 援である。援助国が主導する人道支援において主要な機能を果たしている機関が、アメリカ開発援助庁 ( United States Agency for International Development; USAID )、 ヨ ー ロ ッ パ の 欧 州 連 合 人 道 問 題 局 (European Community Humanitarian Office; ECHO)、日本の国際協力機構(Japan International Cooperation Agency; JICA)などである。これらの組織は、被災地に直接職員を派遣して被災者救援を実施すること もあるが、一般に現地で活動する赤十字社、国連機関、非政府組織などに対して人道支援の事業委託や 3 補助を提供することで、間接的に被災者支援を実施している。 人道支援を行う非国家主体は 3 つに分類できる。第一は、赤十字社である。各国に設立されている赤 十字社・赤新月社、それらの赤十字社と赤新月社の連合体である国際赤十字・赤新月社連盟(International Federation of the Red Cross and Red Crescent Societies; IFRC)、これらの赤十字組織から独立して活動する 赤十字国際委員会(International Committee of the Red Cross; ICRC)がある。 第二は、国際機関の援助機関である。国連難民高等弁務官事務所(United Nations High Commissioner for Refugees; UNHCR)、国連児童基金(United Nations Children’s Funds; UNICEF)、国連世界食糧計画(World Food Programme; WFP)、国際移住機関(International Organization for Migration; IOM)、世界保健機関(World Health Organization; WHO)などの組織が含まれる。 第三は、非政府組織である。国境を越えて活動する国際 NGO と、特定の国家や地域で活動する現地 NGO に分けられる。代表的な国際 NGO には、セーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)、ケア(CARE)、 オックスファム(OXFAM)、国境なき医師団(Médecins sans Frontières; MSF)などの組織が挙げられる。 また、宗派系 NGO としては、国際カリタス(Caritas International)、ワールド・ヴィジョン(World Vision)、 カトリック・リリーフ・サービス(Catholic Relief Service; CRS)などの組織がある。 これらの人道支援を専門とする非国家主体を「人道支援機関(humanitarian organizations; humanitarian agencies)」と呼び、これらの人道支援機関の集合体を「人道コミュニティ(humanitarian community)」 ということにする。 (3)人道主義の行動規範 人道主義の行動規範とは、人道支援機関が援助や保護を行う場合に遵守するべき規範である。一般的 に、人道支援の行動原則として認識されているのは、人道(humanity)、公平(impartiality)、中立(neutrality) の 3 つの原則である。 人道主義の諸原則は、赤十字国際委員会や各国赤十字・赤新月社の人道支援の経験を踏まえて醸成さ れてきたものであり、正式には赤十字国際会議で承認されたものである。これらの原則は、国連総会に おいて人道支援の調整に関する指針の中で確認され(UN, 1991)、国際赤十字・赤新月社連盟と主要な非 政府組織(国際カリタス、カトリック・リリーフ・サービス、セーブ・ザ・チルドレン、オックスファ ムなど)が策定した「人道支援に関する行動規範(Code of Conduct)」でも受け入れられている(IFRC, 1994)。以下、人道支援の行動原則は、赤十字基本原則の定義が参照されるのが一般的であるので、これ に基づいてこれらの原則の意味を明らかにしておく。 人道原則は、人道支援を道義的に基礎づける規範である。具体的には「人間の苦悩を除去・緩和し、 4 生命や健康を保護し、人格の尊重を保障し、人類の相互理解、友情、協力、永続的な平和を促進する(日 本赤十字社訳)」。公平原則は、人道支援機関と紛争被災者との関係を規定する規範である。 「国籍、人種、 宗教的信条、階級・政治的主張による差別をしない。もっぱら被災者の必要に応じて個人の苦悩を緩和 し、最も切迫した被災に対して最優先で取り組む(同上)」。これは、被災者が支援を受けられる機会を 平等にする一方で、被災に応じて人道支援の内容に差異を設けることで実質的な平等を図ろうとする原 則である。中立原則は、人道支援機関と紛争当事者との関係を規定する規範である。 「紛争当事者の一方 に付いたり、政治的・民族的・宗教的・イデオロギー的性質を有する論争に巻き込まれたりしない(同 上)」。これは、人道支援機関が紛争当事者の一方だけを支援することで、自らを紛争当事者にしないこ とを意味する。 (4)人道的空間 人道的空間(humanitarian space)は、人道支援機関が活動する物理的場所を意味するのではなく、 「人 道支援活動を円滑に行うための環境を確立し、維持するのに重要な要素である。これは、人道支援の基 本的原則である中立原則と公平原則を忠実に堅持するものである」(Reliefweb, 2008)。人道的空間は、 人道支援の行動原則を維持しながら、人道支援機関が活動できる自由裁量の余地を意味する。 3.ルワンダ難民キャンプでの人道支援 冷戦終結以降、それまでのイデオロギーの対立を起因とした国際紛争や地域紛争から、アイデンティ ティの対立に基づいた武力紛争が増加してきたと指摘されるようになってきた。国際政治学者メアリ ー・カルドー(Mary Kaldor)は、著書『新戦争論(New & Old Wars)』のなかで、「新しい戦争」の特徴 を挙げ、紛争当事者が人道支援を戦闘遂行のための外部資源として利用していることを指摘した(Kaldor, 2006: 107-113)。このことが戦争の激化・長期化の一因となっているという国際的批判が高まり、それが 頂点に達したのが、ルワンダ難民キャンプでの人道支援であった。 1994 年 4 月 7 日、ルワンダのハビャリマナ(Habyarimana)大統領の暗殺を契機として、武装集団イ ントラハムウェ(interahamwe)やインプザムガンビ(impuzamugambi)が中心となり、ツチ族住民に対 するジェノサイドを開始した。この動きに対して、ツチ族主体のルワンダ愛国戦線(Rwandan Patriotic Front; RPF)が、ルワンダの首都キガリに向けて武装蜂起を開始した。この攻勢を受けて、ジェノサイド に加担した旧政府関係者や武装集団が、フツ族住民を引き連れて隣国のザイールとタンザニアに避難す ることになった。ルワンダ・ジェノサイドに際しては、多くの人道支援機関が治安の悪化を理由にして 支援を停止した。一方、ルワンダ難民キャンプでは、国連難民高等弁務官事務所、国連児童基金、国連 5 世界食糧計画などの国連人道機関だけでなく、赤十字国際委員会や国境なき医師団などの 50 以上の NGO が人道支援活動を実施した(MSF, 1994: Ch. II)。 ルワンダ難民支援における最大の問題は、ジェノサイドの首謀者である旧政府関係者が難民キャンプ を管理して、ルワンダ本国への攻撃を企てたことに対して、人道支援機関が有効な手立てを打てなかっ たことにある。旧政府関係者は、難民を徴用して軍隊を強化する必要があったので、ルワンダへの帰還 を希望する難民を暴力で威嚇して阻止し、一部の難民をルワンダ愛国戦線の協力者であるとして処刑し た(MSF, 1994: Ch. IV; Adelman, 1996: Ch. 6.1; Ogata, 2005: 195)。そのため、国連難民高等弁務官事務所 は、難民の自発的帰還を促す支援を一時停止せざるをえなくなったという(African Rights, 1995: 1098; MSF, 1994: Ch. IV)。また、旧政府関係者は援助物資の配給の権限を握ることにより、特定の支持者には 物資を配給する一方、それ以外の難民には一部しか配給しなかった(Jaspars, 1994: 27-29)。彼らは難民 に対して、援助物資を売却してでも資金を調達し、それを月々の献金として供出するように要求した (Ogata, 2005: 200-201)。さらに、援助物資を効果的に調達するために、難民数を水増しして申告し、人 道支援機関からより多くの援助物資を引き出そうとした(MSF, 1994: Ch. V)。このようにして、ルワン ダ難民キャンプは、ルワンダ本国を攻撃する前線基地として利用されることになったのである。 このような難民キャンプの軍事化に対して、一部の人道支援機関が武装勢力を批判し、人道支援活動 を停止させることになった。1994 年 11 月 7 日、国境なき医師団・フランスは、ジェノサイドを指揮し た政治的指導者が人道支援を配給し、祖国への帰還を求める難民を人質にしており、人道支援の基本的 原則に違反すると非難した。国境なき医師団・フランスは難民キャンプを撤退し(MSF, 1995: Ch. 1.1; Borton, 1996: Ch. 3.2)、ケア・カナダも治安の悪化を理由にして難民キャンプを去った(MSF, 1995: Ch. 1.1)。それ以外の国連人道機関や国際 NGO は人道支援を継続したが、その後、難民キャンプの閉鎖と難 民の自発的帰還が争点となり、新旧ルワンダ軍がキベホ(Kibeho)避難民キャンプで軍事衝突して多数 の死傷者を出した(UN, 1995)。 4.「新しい人道主義」 (1)人道支援に対する国際的批判 ルワンダ難民キャンプでの人道支援は、ジェノサイドに加担した旧政府関係者や民兵集団を利するも のであり、アフリカ中部での武力紛争の激化と長期化をもたらしたと国際的に非難された。このような 事 態 に 対 し て 、 イ ギ リ ス の 主 要 な 非 政 府 組 織 か ら 構 成 さ れ る 災 害 緊 急 委 員 会 ( Disaster Emergency Committee; DEC)や、人道支援や開発支援のシンクタンクである海外開発研究所(Oversee Development Institute; ODI)が中心となり、1998 年 2 月に『裸の王様―人道原則の崩壊(The Emperor’s New Clothes: The 6 Collapse of Humanitarian Principles)』という主題でセミナーを開催した。ここでの報告内容は、学術誌 Disasters の特集号に掲載されることになった(Hendrickson, 1998: 284)。 このなかで、海外開発研究所のジョアンナ・マクレー(Joanna Macrae)は「人道主義は死んだのか」 という論稿を寄せ、人道支援に対する批判を 4 つの立場に整理している(Macrae, 1998: 309-317)。以下、 これらの見解を考察することにより、人道支援における昨今の課題を明らかにできるであろう。 第一は、反帝国主義者(the Anti-imperialists)である(Ibid. 310-311)。タフツ大学フレッチャースクー ルのアレクス・ドゥ・ウォール(Alex de Waal)らの立場である。ドゥ・ウォールは、人道支援機関がル ワンダのジェノサイドの被害者をほとんど支援しなかったのに対して、ジェノサイドを遂行した旧政府 関係者と民兵組織を援助してきたと指摘し、これに関して人道支援機関は説明責任を果たしていないと 非難した(de Waal, 1997: 197, 202-203; de Waal, 2000: 228-229)。また、人道支援機関は普遍的な人道主義 や人権規範を掲げているが、それは、外国の国内政治に介入する正当化の根拠にすぎないと主張してい る(de Waal, 1997: 66)。 第二は、現実主義者(the Realpolitikers)である(Macrae, 1998: 311-312)。これは、国際政治の基本的 原則である国家主権を支持し、内政不干渉義務の徹底を主張する立場である。この立場によれば、ルワ ンダやザイールのように大規模な人権侵害が発生したとしても人道的介入や人道支援には消極的である。 それは、そのような対外政策は国益に適う場合にしか正当化できないからである。また、人道支援が紛 争当事者により戦争遂行に利用されるのであれば、当然に人道支援の提供を差し控えるべきであると考 える。 第三は、古典派開発主義者(Orthodox developmentalists)である(Ibid. 312-313)。人道支援は一般に無 償で提供されるために、被災者の援助に対する依存を生み出し、被災した共同体の能力(capacity)を減 退させる効果をもつと考える。具体的には、人道支援は被災地に食糧などの生活必需品を提供する一方 で、現地の農民らの生産意欲を削ぎ、市場機能の減速をもたらすおそれがある。その結果、被災者が援 助なしの生活に戻ることを妨げる。それゆえ、人道支援は短期的な視野から行われるべきではなく、中 長期的な復興開発支援との連続性を考慮した上で実施されるべきであると主張する。 第四は、新平和主義者(Neo-peaceniks)である(Ibid. 313-314)。これは、開発経済学者メアリー・ア ンダーソン(Mary Anderson)らの立場である。アンダーソンは、人道支援が戦争の激化や長期化を促進 するのであれば、戦争を鎮静化させるために人道支援を活用できると考える(“Do No Harm”アプローチ)。 それまでの人道支援は政治的関与を回避してきたが、戦争の要因を分析した上で、紛争地域に中長期的 な平和をもたらす人道支援を提供するべきであると主張する。具体的には、対立する勢力間の融和を図 るための事業計画に資金と労力を投入することにより、人道支援が平和の構築に寄与することを求めて 7 いる(Anderson, 1999: 67-69)。 これらの人道支援に対する国際的批判の多くは、人道支援の効果を高めることで、より多くの被災者 の生命と健康を守ろうと提起されたものである。このような批判を受けて、人道支援は漸進的に改善さ れてきたが、より根本的な改革が必要であると主張されるようにもなった。被災者の生命や安全を守る ためには、人道危機の原因である武力紛争の解決が当然に求められる。それゆえ、人道支援は紛争解決 と一体で進めるのが望ましく、人道と政治を分断する中立原則と公平原則は乗り越える必要がある。人 道と政治を接合し、効果的な人道支援を実現する。このように人道支援に本質的な変革を求めて登場し たのが、「新しい人道主義」である。 (2)「新しい人道主義」の台頭 赤十字国際委員会は、1998 年 6 月にヴォルフスベルク・センター(Wolfsberg Center)において人道支 援フォーラムを開催した(ICRC, 1998)。人道支援活動に関わる赤十字社、国連機関、非政府組織の関係 者や研究者が集まり、人道支援と紛争解決との関係や人道支援の行動規範が討議された。ここでの議論 が契機となり、Ethics and International Affairs 特集号では、国際政治学者トマス・ワイス(Thomas Weiss) の「新しい人道主義」に関する論文と、これに対する論評が寄せられた。 ワイスは、人道支援と政治との関係について二つの立場を明確に分けている。一つは、人道と政治の 領域は区別できるし、区別するべきであるという伝統的な立場である。ワイスは、この立場を「古典派 (Classicists)」と名づけ、その代表的な組織として赤十字国際委員会を挙げている。 「古典派」人道主義 は、中立原則と公平原則を堅持し、紛争当事者間の論争に関与せず、政治的理由による紛争被災者の差 別を容認しない立場である。また、人道支援の円滑な運営のために、紛争当事者からの同意を得て人道 支援活動を展開することを原則としている(表 1 参照)(Weiss, 1999: 2-4)。ところが、ルワンダ難民支 援で見られたように、人道支援機関が中立原則と公平原則を遵守しようとしても、紛争当事者は人道支 援を中立や公平であると見なすと限らない。とくに、紛争当事者が人道支援を戦争遂行に利用しようと する場合には、人道支援自体が武力紛争の争点となり、人道支援と政治の分離は不可能になる。 もう一つは、人道と政治の領域は分離できないし、分離すべきでもないという立場である。ワイスは、 この立場を「政治的人道主義(Political humanitarianism) (のちに「新しい人道主義」といわれる)」と呼 んでいる。「新しい人道主義」は、それまでの人道支援に紛争解決との一貫性(coherence)がなかった ことから、紛争解決を促進するために人道支援を用いるべきであると考える(Ibid. 4)。そのなかでも、 「連帯派(Solidarists)」は、人道危機を早期に収束させるために、和平プロセスに積極的な紛争当事者 に人道支援を提供する一方、消極的な紛争当事者を批判して人道支援を停止する。それゆえ、彼らは中 8 立原則や公平原則を放棄し、紛争当事者からの同意がなくても活動しようとする(表 1 参照)。その代表 的な組織として挙げられているのが、国境なき医師団である。国境なき医師団は、ルワンダ難民キャン プにおいて武装勢力が人道支援を戦闘準備に利用していると非難し、人道支援活動を停止した。ワイス は、この行動を評価した上で、人道支援が行動規範に束縛されることで武力紛争の激化・長期化をもた らさないように、行動規範を放棄してでも武力紛争の解決を促進するべきであると主張した。 ( 表 1) ) 「古典派」人道主義と「連帯派」人道主義の位置づけ 中立 公平 同意 古典派 Classicists 紛争当事者間の紛争に関与しな い。 被災者を差別せずに、被災に応 じて支援する。 紛争当事者からの同意を必要条 件として追求する。 連帯派 Solidarists 紛争当事者の一方を支持し、紛 争に関与する。 特定の被災者集団にのみ支援す る。 必要であれば国家主権を反故に して、同意を得ない。 (3)「新しい人道主義」に対する批判 このようなワイスの見解に対して、赤十字国際委員会は批判を加えている。赤十字国際委員会のコル ネリオ・ソマルガ(Cornelio Sommaruga)委員長は、人道支援機関が政治的影響から完全に自由になれ ると考えているわけではないと指摘した上で、人道・政治・開発の各分野は相互に関連して重複するが、 それらは代替的ではなく、その境界は消滅したわけではないと述べている(Sommaruga, 1999:24)。その ような人道と政治の領域を区別するのが、人道支援の行動規範である。中立原則は無関心や受動性を意 味するものではなく、紛争当事者の一方に荷担しないことを意味する。それゆえ、中立原則を放棄すれ ば、一部の紛争被災者の利益を達成できるかもしれないが、すべての紛争被災者の利益を追求すること は困難になる。また、公平原則を破棄すれば、政治的理由から一部の紛争被災者にだけ支援を行い、そ れ以外の紛争被災者を支援しないことも可能になる。このような人道支援の行動規範は、すべての紛争 被災者の権利を擁護するばかりか、人道支援機関が政治的影響を受けずに自由と独立を維持するのに不 可欠な要素でもある(Ibid. 26)。 一方、国境なき医師団アメリカの事務局長ジョエル・タンギ(Joelle Tanguy)と国境なき医師団オー ストラリア会長フィオナ・テリー(Fiona Terry)は、人道と政治の関係について、以下のように主張し ている。国境なき医師団は人道に政治を持ち込み、人道支援の行動規範を放棄した「連帯派」に位置づ けられているが、それは誤りである(Tanguy and Terry, 1999: 19)。国境なき医師団は、赤十字国際委員 会などの人道支援機関と同様に公平原則や中立原則を支持し、これらの原則を憲章にも掲げている。た だ、国境なき医師団は、赤十字国際委員会とは異なり、大規模な人権侵害や人道支援の戦争利用を行っ ている紛争当事者を国際世論に告発し(témoignage)、抗議のために紛争被災地での活動を停止すること 9 もある。しかし、これらの行動は中立原則からの逸脱ではない。このような人権侵害の告発や人道支援 の停止は、国際人道法に違反して人権侵害を繰り返す紛争当事者を非難するために行われるのであり、 紛争当事者の一方を政治的に支援するためではない(Ibid. 31-32)。人道と政治とは無関係ではないにし ても、人道支援と紛争解決の一貫性を図ることは、人道的空間を脅かすものであると否定的に捉えられ ている(Ibid. 33)。 (4)「新しい人道主義」——人道コミュニティ内での意見の相違 ワイスの「新しい人道主義」は、赤十字国際委員会や国境なき医師団から批判を受けたのであるが、 このような見解を肯定する人道支援機関がないかといえばそうではない。人道支援の代表的論者の一人 であるディヴィッド・リーフ(David Rieff)によれば、ワイスは人道支援機関と紛争当事者の関係を中 心に考察する一方で、人道支援機関と援助国政府との関係を十分に論じられていないという(Rieff, 1999: 40)。後者の関係をみることにより、赤十字国際委員会と国境なき医師団の見解には大きな相違はなく、 むしろヨーロッパとアメリカの人道支援機関との間に意見の相違があることがわかる。 ヨーロッパの人道主義とは、赤十字国際委員会や国境なき医師団を代表とする立場であり、援助国政 府からの人道支援機関の独立を求め、人道支援の行動規範を支持するものである。それゆえ、人道と政 治の統合には慎重である。一方、アメリカの人道主義は、アメリカの非政府組織ケアを代表とする立場 である。彼らは、援助国政府と人道支援機関との協働を推進し、人道支援の行動規範よりも人道支援の 実効性を重視するために、 「新しい人道主義」と親和的である。ニューヨーク大学のアビー・スタッダー ド(Abby Stoddard)も、前者を「デュナン主義(Dunantist)」、後者を「ウィルソン主義(Wilsonian)」 と名付け、両者の差異を指摘している(Stoddard, 2006: 7-13)。 ワイスの「古典派」と「連帯派」の区分は、人道支援機関と紛争当事者との関係から導かれたもので ある一方、リーフやスタッダードの区分は人道支援機関と援助国政府との距離に応じたものである。そ れらの類型を整理し、人道支援機関の組織戦略の相違点について明らかにしたのが、ルール大学ボーフ ム校のデニス・ダイクズュール(Dennis Dijkzeul)とマルクス・モケ(Markus Moke)である(表 2 参照) (Dijkzeul and Moke, 2005: 679)。 ( 表 2) ) 人道支援機関の組織戦略 公平 独 立 赤十字国 際委員会 ( ICRC) 連帯 国境なき 医師団 ( MSF) ノルウェー・ピ ープルズ・エイ ド ( NPA) オックスファム ( OXFAM) ビアフラでの 宗派系組織 10 セーブ・ザ・チ ルドレン英国 ( SCF-UK) アクション・コ ントラ・ラ・フ ァ ム ( ACF) 世界の医療団 ( MDM) イスラミック・ リリーフ 一般的な宗派 系組織 国際青新月 ワールド・ヴィ ジ ョ ン ( WVI) カトリック・リ リーフ・サービ ス ( CRS) 国際救済委員会 ( IRC) セーブ・ザ・チ ルドレン米国 ( SCF-USA) ケ ア ( CARE) 受 託 国連児童基金 ( UNICEF) 国連難民高等弁 務官事務所 ( UNHCR) 国連世界食糧計 画 ( WFP) 民間企業、冷 戦期の米国の 非政府組織 ( 出 典 : Dijkzeul, Dennis and Markus Moke (2005), “Public Communication Strategies of International Humanitarian Organizations,” International Review of the Red Cross, 87-860, 679) 人道支援機関と紛争当事者との関係を表すのが、横軸である。この軸は、ワイスのいう「古典派」と 「連帯派」の相違に一致する。一方、人道支援機関と援助国政府との関係を表すのが、縦軸である。独 立とは、人道支援機関が援助国政府から自立するべきであるという立場である。このような人道支援機 関は、支援事業の計画や運営、人員や資金の調達において援助国に依存せず、援助国の対外政策から距 離を取ることになる(Ibid. 678)。これには赤十字国際委員会、国境なき医師団、オックスファムなどの ヨーロッパを源流とする人道支援機関が該当する。 受託とは、人道支援機関が援助国政府の意向を受けて協働するべきであるという立場である。このよ うな人道支援機関は、援助国からの事業委託や補助金の獲得に積極的であるために、援助国の対外政策 に沿って人道支援を進めることになる(Ibid. 678-679)。これには、ケア、カトリック・リリーフ・サー ビス、ワールド・ヴィジョンなどのアメリカで組織された NGO や国連の人道支援機関が該当する。と くに、ケアとセーブ・ザ・チルドレン米国は、運営資金の約半数をアメリカ政府に依存しており、それ だけアメリカ政府の影響を受けやすい経営体質になっている(Stoddard, 2003: 29)。 「新しい人道主義」は、人道支援と紛争解決の一貫性を進めるために、人道支援の行動規範を放棄す る立場であった。ワイスは、その代表的な組織として国境なき医師団を挙げたが、それは誤りである。 それよりはむしろ、アメリカの NGO や国連の人道支援機関の方が「新しい人道主義」と融和的である。 ただ、これらの人道支援機関の多くは人道支援の行動規範を支持しており、 「新しい人道主義」を積極的 に推進しているとまではいえない。むしろここで重要なことは、 「新しい人道主義」という考え方が、人 11 道支援機関による被災者支援の活動と、欧米諸国の安全保障政策との統合を正当化する根拠となりうる ということである。 5.国際管理・統治の手段としての人道支援 (1)大国の安全保障政策と人道支援の結合 欧米諸国の安全保障政策と人道支援機関の援助政策の統合は、欧米諸国の安全保障に対する認識の変 化によって推進された。当初、 「新しい戦争」における人道危機は、破綻国家自体の問題であって、欧米 諸国の安全保障にとって重要な問題であると認識されていなかった。それゆえ、欧米諸国は自国の利害 に関連する場合には人道的介入を実施し、そうでない場合には、紛争解決を先送りして人道支援機関に 対応を委ねた(Fiona, 2002: 19)。ところが、破綻国家の存在は、難民・移民やテロリストの流入、麻薬 や武器の取引を助長し、欧米諸国にとって安全保障上の脅威と認識されるようになってきた。そこで、 人道支援は破綻国家の社会状況を改善するだけでなく、欧米諸国の安全保障政策に不可欠な要素となっ たのである。 このような人道支援と安全保障との一体化について、海外開発研究所のマクレーは、それまでの人道 支援が紛争解決の代替手段に過ぎなかったのに対して、昨今では辺境地域を国際的に管理する戦略の一 つになったと主張した(Macrae and Leader, 2001: 305)。このような事態をグローバルな統治の観点から 分析したのが、リーズ大学の国際政治学者マーク・ダフィールド(Mark Duffield)である。 ダフィールドによれば、人道支援は大国が安全保障を追求し、破綻国家を統治する手段の一つである。 「メトロポリタン国家(欧米諸国)」は自国の安全を維持するために、その安全を脅かす「辺境国家(開 発途上国)」の不安定な社会状況を監視し、それを封じ込めて管理しようとする。ところが、「メトロポ リタン国家」は「辺境国家」を管理するための資源・能力・正統性を十分に持っておらず、それを補う ために、人道支援機関の技術と能力を活用し、人道支援を正統化の根拠として用いる(Duffield, 2001a: 312)。いわば、人道支援は「メトロポリタン国家」による統治の新たな技術である。 「メトロポリタン国 家」は、 「辺境国家」を直接的に統治するのではなく、人道支援機関を通じて間接的に統治する。そのよ うな遠隔からの統治を行うために、援助の目標や対象、基準、予算を設定して人道支援機関に統治を委 託するのである(Ibid. 316)。このような施策は、欧米諸国で積極的に導入されたニュー・パブリック・ マネージメント(NPM)の方式をグローバル・ガヴァナンスに拡張したものである(Ibid. 316-318)。 破綻国家の社会状況が、欧米諸国の安全保障にとって直接の脅威であることが明白になったのは、2001 年 9 月 11 日のアメリカ同時多発テロリズム事件であった。この事件は、アメリカの安全保障の認識を一 新させるだけでなく、 「新しい人道主義」が求めた人道支援と紛争解決の統合を推進し、人道支援が国際 12 統治の手段として活用される大きな原動力となった。 (2)アフガニスタンにおける対テロリズム戦争と人道支援の統合 アメリカ同時多発テロリズム事件を受けて、2001 年 10 月 7 日にアメリカを中心とする多国籍軍が「不 朽の自由作戦」を開始し、11 月 13 日には北部同盟が首都カブールを制圧した。アル・カーイダのオサ マ・ビン・ラーディンを支援してきたタリバーン政権は、カンダハールを中心とするアフガニスタン南 西部に敗走した。12 月 5 日、ボン会議において暫定政府の樹立、国際治安支援部隊(International Security Assistance Force; ISAF)の展開、国連アフガニスタン支援ミッション(United Nations Assistance Mission in Afghanistan; UNAMA)の設立が合意された。しかし、ボン会議にはタリバーン政権の代表者は招聘され ず、アフガニスタン全国民による和平は達成されなかった。 アフガニスタンでの人道支援において最大の問題は、欧米諸国がタリバーン勢力を敵視し、タリバー ン勢力の支配地域における人道支援に極めて消極的な政策を採用したことにある。欧米諸国はアフガニ スタン和平を推進するために暫定政権を軌道に乗せて、国際治安支援部隊によって治安を回復し、地方 復興チーム(Provincial Reconstruction Team; PRT)と国連アフガニスタン支援ミッションを通じて復興を 促進しようとした。ところが、アフガニスタン和平にとっての最大の障害は、タリバーン勢力によるテ ロリズムであった。それゆえ、欧米諸国はタリバーン勢力の弱体化を図るために、人道支援機関に対す る資金提供に際してコンディショナリティを課し、テロリスト集団や個人に対する利益供与を禁止した (Featherstone, 2012: 14)。それゆえ、資金提供を受けている人道支援機関の中には、タリバーン勢力と 人道支援活動に関する交渉を行うこと自体を差し控える組織もあり、人道支援に際して妥協を強いられ る組織もあったという(Ibid.)。 欧米諸国による対テロリズム戦争と人道支援機関の援助政策が統合されることにより、人道支援はア フガニスタン政府を側面から支援し、タリバーン勢力の影響力を削ぐための手段となった。欧米諸国の 援助機関が課したコンディショナリティは、アフガニスタンの被災状況とは無関係に政治的な配慮から 決定されたものであり、「援助に値する被災者(deserved victims)と援助に値しない被災者(undeserved victims)」を分け隔てるものであった(Fox, 2001: 282)。本来であれば、中立原則と公平原則に基づいて、 政治的配慮なしに被災に応じて被災者を支援することが求められるが、人道と政治が統合されて、人道 的空間の自立性が損なわれてしまえば、そのような人道支援は実現できないのである(Fox, 2001: 282; Atmar, 2001: 328)。 しかし、すべての人道支援機関が対テロリズム戦争と人道支援の統合を支持し、 「新たな人道主義」に 基づいて人道的空間を放棄したわけではない。アフガニスタンで活動している人道支援機関は、欧米諸 13 国の統治戦略と資金提供に対して、以下の 4 つの戦略的立場を採用している(Featherstone, 2012: 17)。 第一に、アフガニスタンに対する援助国政府の方針が高度に政治化していることから、二国間・多国間 の資金提供をすべて拒絶する。第二に、二国間・多国間の資金提供を受ける場合には、その資金提供の 政治性を組織内部で評価して判断する。第三に、極度に政治化しているアメリカ開発援助庁からの資金 提供は拒否し、それ以外の資金提供は受容する。第四に、すべての資金提供を受け入れて、欧米諸国の 安全保障戦略も容認する。このように、すべての人道支援機関が「新しい人道主義」を推進して、対テ ロリズム戦争と人道支援の統合を進めたわけではない。人道支援機関の援助戦略は、どれほど独力で資 金調達できるのかに依存するだけでなく、欧米諸国の国際戦略をどれほど支持し、タリバーン勢力や地 域の政治・社会勢力とどれほどの距離があるのかにも左右される。 6.結論 これまで人道と政治を統合し、人道支援と紛争解決の一貫性を主張する「新しい人道主義」が登場し た経緯と展開について論じてきた。 「新しい人道主義」は、ルワンダ難民支援の失敗を受けて、人道支援 の行動規範を否定し、人道支援と紛争解決を一体的に促進しようとした。ところが、「新しい人道主義」 は、大国の国際統治の手段として人道支援が利用される道を開くことになった。 しかし、すべての人道支援機関が「新しい人道主義」を受容したのではなかった。赤十字国際委員会 や国境なき医師団などの有力な人道支援機関は、欧米諸国の政治戦略から距離を置き、活動資金を独自 に調達できることから、人道的空間を失わせるような「新しい人道主義」の理念を受け入れようとはし ない。その一方、アメリカの人道支援機関や中小の援助団体は、欧米諸国に活動資金を依存しているこ とから、積極性の程度は別にして、欧米諸国の政治戦略に従い、人道的空間を制限して「新しい人道主 義」を支持することになる。このように人道支援機関は、それぞれの組織が置かれている状況に適応し て、公平―連帯/独立―受託の立場を決定し、援助国政府や紛争当事者との関係を構築して、人道支援 の行動規範や「新しい人道主義」を活動の正当化の根拠として利用しているのである。 昨今、人道支援は人道支援機関だけのものではなくなった。1990 年代には、人道的介入の一環として 介入軍が人道支援に参入し、人道支援における民軍協力が問題となった。対テロリズム戦争以降は、民 間軍事企業を始めとする営利組織も欧米諸国の委託を受けて人道支援を実施している。人道支援機関は、 国家、国際機構、民間企業、地域組織や地域住民などのさまざまなステイク・ホルダーと協働すること により、人道支援の効果を高める努力をしている。その一方で、これらの組織や活動の境界線はますま す曖昧になり、人道支援機関の自律性は失われつつある。人道支援が政治的影響を受けずに実施できる とは到底思われない。しかし、それを理由にして、最も深刻な状況に置かれた人びとを最優先に助ける 14 という人道支援の本質が見失われてはならないであろう。 参考文献 Adelman, Howard, Astri Suhrke and Bruce Jones (1996), The International Response to Conflict and Genocide: Lessons from the Rwanda Experience: 2. 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