「国連研究」第7号掲載論文

武力紛争下の人道支援要員の安全性に関する一考察
The Security of Humanitarian Personnel in Armed Conflicts
東北大学大学院法学研究科博士課程院生
Graduate Student, School of Law, Tohoku University
日本学術振興会特別研究員
Research Fellow, Japan Society for the Promotion of Science
かみの
上野 友也
Tomoya Kamino
はじめに
「文民たる住民及び各国の赤十字社、赤新月社又は赤のライオン及び太陽社のような救
済団体は、自発的に行う場合であっても、侵略され又は占領された地域においても、傷者、
病者及び難船者を収容し及び看護することを許される。いずれの者も、このような人道的
な行為を理由として危害を加えられ、訴追され、有罪とされ又は処罰されることはない(ジ
ュネーヴ条約第一追加議定書・第 17 条第 2 項から)」。
武力紛争の被災者に対する人道支援は、他者の生存と尊厳を保護する目的で実践される
活動であり、評価や賞賛に値する行為である。それにもかかわらず、人道支援要員が危害
を被り、生命を奪われる事態が少なからず生起している。他者の生命を保護する目的で活
動する人々の生命が損なわれる問題、「保護者の保護(protecting the protectors)」の問題
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は、国際社会の緊急の課題の一つである 。それは「保護者の保護」の確保なしには、人
道支援要員の生命だけでなく被災者の生命も危うくするからであり、この場合、国際社会
が救助可能な人間の生存さえも保障できないことを意味するからである。
本稿では、武力紛争下の人道支援要員に対する危害の原因を解明した上で、「保護者の
保護」の問題に対する解決の方途を論究していきたい。最初に、人道支援要員に対する危
害を概観するために、この問題に関連する統計や事例を取り上げたい。次に、人道支援要
員に対する危害の原因を探究するために、メアリー・カルドー(Mary Kaldor)の「新し
い戦争」論を援用したい。この議論を通じて、冷戦終結後の武力紛争の特徴の変化が、紛
争当事者の政治的・軍事的目標と人道支援機関の人道的目標との乖離を拡大させて、この
ことが人道支援要員に対する危害の一因になったことを明確にできるであろう。
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しかし、この問題は、「新しい戦争」という現代の武力紛争に特有の問題ではなく、紛
争当事者と人道支援機関との目標に乖離があれば、時代を超えて生起する可能性のある構
造的問題である。本稿では、紛争当事者の利害と人道主義の諸規範との衝突が、人道支援
要員への危害の主たる要因であることを論証していきたい。そして、最後に、人道支援要
員の安全を確保するいくつかの手段を評価して、「保護者の保護」のあり方を提起したい。
1 問題の概要
人道支援要員の安全性の問題の概要を明らかにするために、この問題に関する統計から
包括的な概観を示し、事例を用いて具体的な事実を詳述していきたい。
(1)人道支援要員の安全性に関する統計
人道支援要員の安全性の問題を概観するために、この問題を端的に示す死者数を分析し
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てみよう。国際連合や国連平和維持軍の死者に関する調査に比べて 、各国赤十字・赤新
月社や非政府組織を含めた人道支援要員の死者数に関する包括的な調査の数は多くはない
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。しかし、ジョーンズ・ホプキンス大学難民災害研究センター(Johns Hopkins University
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Center for Refugee and Disaster Studies)の調査 は、人道支援に関連する国連諸機関、国連
平和維持軍、赤十字国際委員会(International Committee of the Red Cross、以下、「ICRC」
と称する。)と国際赤十字・赤新月社連盟(International Federation of Red Cross and Red
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Crescent Societies、以下、「IFRC」と称する。)、非政府組織を対象とし 、1985 年から 1998
年までに、現場での死亡者と緊急時あるいは過渡期での現場での活動の結果として死亡し
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た者を調査の対象としており、この問題に関する包括的で信頼性の高い調査の一つである。
この調査は、人道支援要員の安全性に関する問題の重大性を明らかにしている。この調
査によれば、同期間の死亡者は 375 人であり、組織別の内訳は、国連諸機関が 177 人、国
連平和維持軍が 88 人、国際赤十字・各国赤十字社が 52 人、非政府組織が 58 人であった。
この数字からも明確であるが、国連諸機関や国際赤十字社などの人道支援要員は、紛争当
事者と衝突する危険性の高い国連平和維持軍と比較しても甚大な犠牲を払っており、非常
に危険な環境で活動に従事しているのである。
しかし、このような犠牲が何らかの危害の結果であると判断するのは早計である。たと
えば、慣れない土地での感染症、戦争ストレスを原因とする病気、援助物資の輸送時での
事故などの可能性も考えられるからである。しかし、この調査は、故意の暴力で死亡した
人道支援要員が犠牲者の 7 割弱を占めることを明らかにしており、また、現場での人道支
援に精通している国際赤十字は、犠牲者の 77 パーセントの死因が故意による暴力である
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と報告している 。このことから、人道支援に従事した犠牲者の多くが、他人から危害を
加えられた結果として死亡に至ったと言明できるであろう。
このような人道支援要員に対する危害は、1990 年代になって深刻な問題となってきた。
この調査によれば、人道支援要員の死者数は、1980 年代後半に若干名であったが、1990
年代になって増加の傾向を見せ、1994 年にピークを迎えて、それ以後は、冷戦期よりも
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高い水準で安定的に移行してきた 。また、ICRC の調査によれば、1990 年から 1998 年に
かけて、物理的脅威を伴う事故・事件件数が 20 件程度から 100 件以上に急増し、その中
でも、強盗やあらゆる種類の脅威に関連する事件は、1990 年に事故・事件件数の 1 割で
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あったものが、1996 年に最大 5 割まで急増したという 。以上の調査から、人道支援要員
の安全性の問題は、1980 年代から少なからず存在したのであるが、1990 年代に深刻な問
題になったと言えるであろう。
これらの調査は、人道支援要員に対する危害の一般的傾向を明らかにしているが、この
問題の要因に関する十分な情報を提供していない。そこで、このような調査から捕捉でき
ない問題の特徴を浮き彫りにするために、この問題に関する事例を分析することにしたい。
(2)人道支援要員の安全性に関する事例
人道支援要員の安全性に関する事例を取り上げることを通じて、武力紛争における紛争
当事者と人道支援機関との関係などの文脈を押さえた分析が可能となるであろう。
ICRC と IFRC による人道支援活動において、同時に多数の職員が犠牲となった事件と
して、チェチェン共和国内のノヴィ・アタギ(Novy Atagi)病院への襲撃事件が挙げられ
る。1991 年 11 月、チェチェン共和国が独立を宣言し、ロシア連邦との政治的紛争の後に、
1994 年 12 月、ロシア軍がチェチェン共和国に侵攻したのが、チェチェン紛争の発端であ
った。この戦争を通じて、チェチェンの民間人の数万人が死亡し、ロシア軍も若手軍人の
多くを失った後、1996 年 8 月、双方が停戦に合意した。1996 年夏の戦闘で、病院施設が
破壊されて住民への医療サービスが著しく停滞することになり、病院の再建は停戦後の緊
急の課題の一つとなった。この事態に対して、ICRC がチェチェン側とロシア連邦側から
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の同意と協力を取り付けた上で廃校に設置したのが、ノヴィ・アタギの病院であった 。
1996 年 12 月 18 日早朝、覆面の武装集団が、病院に侵入し、スペイン国籍の ICRC の
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看護師、カナダ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー各国赤十字社の看護師各 1 人
と各国赤十字職員 1 人、併せて 6 人が殺害された。19 日、チェチェン政府は国民哀悼の
日を宣言し、20 日、ICRC も哀悼集会を開催した。しかし、チェチェン政府が捜査に責任
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を負っているが、武装集団の所属や目的は不明のままである 。
このように人道支援要員に対する犯罪の中には、事件の背後関係が不明確であり、人道
支援要員の安全性に関する問題を論究するのに十分な情報が存在しない事例もある。しか
し、以下に挙げる事例では、人道支援機関の職員に対する暴力に関して十分な調査と分析
がなされており、この問題の原因を論究することができるであろう。
国連難民高等弁務官事務所(The Office of the United Nations High Commissioner for
Refugees、以下、「UNHCR」と称する。)が、半世紀以上の人道支援活動の中で経験した
最も残酷な事件の一つが、2000 年 9 月の西ティモール・アタンブア(Atambua)事務所に
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対する襲撃である 。UNHCR は、東ティモール独立後の混乱から西ティモールに避難し
ていた難民を、彼らの希望に応じて、東ティモールに帰還させるか、インドネシアへの再
定住を支援していた。東ティモールへの帰還者は、2000 年 9 月までに約 16 万 5000 人に
達していたが、西ティモールには約 12 万人の難民が残留していた。西ティモールに滞留
した難民は、自分の意思で帰還しなかったのではなく、東ティモールの独立選挙直後に発
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生した暴力事件の加害者である民兵集団によって帰還が妨害されていたのである 。難民
の希望があれば帰国を支援する UNHCR の方針は、民兵集団の戦略と合致するものでは
なかった。
UNHCR と民兵組織との緊張状態において、UNHCR 事務所が襲撃される直接の契機と
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なったのは、何者かによる民兵集団のリーダーの殺害であり、この殺害に UNHCR が関
与したという噂であった。この暗殺事件の翌日の昼に、UNHCR 事務所は群衆を率いた武
装集団に襲撃された。事務所は、民兵による敷地内への進入や投石に遭い、これを止めに
かかった職員の一人が刃物で腹部を突き刺されて死亡し、そのほかに事務所内にいた二人
も殺害されて、遺体は事務所から屋外に引きずり出されて燃やされた。事務所から逃走で
きたとしても危険は終わらなかった。職員は事務所から遠く離れた民家などに避難したが、
民兵集団が職員を捜し出すために町を徘徊して、ホテルを捜索し、職員を匿えば放火する
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と民家を脅して回ったという 。
この西ティモールでの事件に含意されることは、人道支援機関の活動目標と紛争当事者
との戦略目標の間に対立や矛盾があれば、紛争当事者が人道支援要員を戦争遂行の障害と
見なし、一種の紛争当事者であると認識して攻撃する可能性があるということである。こ
の事例から人道支援要員の安全性の問題に関する一般的原因を特定することはできないが、
人道支援要員と紛争当事者との間の活動目標における対立と矛盾が、人道支援要員の安全
性に否定的な効果を及ぼしているのは確かであろう。そして、この対立と矛盾の拡大が、
冷戦期よりも冷戦終結以後の人道支援に対する危険性が増大した要因となっているのであ
る。
2 「新しい戦争」と人道支援要員の安全性
このような人道支援機関の目標と紛争当事者の戦略との齟齬が顕著になったのは、昨今
の武力紛争の特徴における変化によるところが大きい。カルドーの『新しい戦争と旧い戦
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争(New and Old Wars: Organized Violence in a Global Era)』 の議論を用いて、人道支援要
員の安全性の問題と関連づけながら議論を展開していきたい。
(1)カルドー『新しい戦争と旧い戦争』
カルドーは、この著書の中で、戦争に対する旧来の認識枠組からは十分に理解できない
昨今の武力紛争を「新しい戦争」と再定義し、その「新しい戦争」の特徴をグローバリゼ
ーションとの関係から解明し、「新しい戦争」に対抗するためのコスモポリタン・アプロ
ーチとしてのコスモポリタン法の可能性を探究している。
カルドーによれば、「新しい戦争」の特徴は以下の三つである。第一の特徴は、「新しい
戦争」がアイデンティティに基づく権力闘争(アイデンティティ・ポリティクス)である
ということである。これは、人々が、自らの民族や宗教や言語などの特定のアイデンティ
ティに基づいて権力を追求し、他のアイデンティティを保持する集団を排除する態度であ
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り、コスモポリタニズムと対照的な立場である 。たとえば、ボスニア内戦におけるイス
ラム教徒主体のボスニア人、セルビア人、クロアチア人の三者間の権力闘争や、ロシア南
部のチェチェン人の独立闘争、ルワンダ内戦におけるフツ族とツチ族の抗争は、いずれも
がアイデンティティ・ポリティクスであったといえよう。
第二の特徴は、「新しい戦争」が、異質なアイデンティティを保持する集団を排除する
ために、恐怖と憎悪を巧みに利用する戦争行為の様式をとるということである。それゆえ、
戦争の目標は、領土の拡張や資源の確保よりも、異質なアイデンティティを有する人々を
大量虐殺し、強制移住させることを通じて、共同体アイデンティティの純化を推進するこ
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とにある 。たとえば、ボスニア内戦における各勢力間の文民に対する大量殺害、強制移
住、強制妊娠などを通じた民族浄化や、ルワンダでのフツ族民兵を中心としたツチ族住民
の大量殺戮は、いずれも、純化政策の一環として実施されたと考えてよいであろう。
なお、冷戦時代の戦争は、自由主義と資本主義を信奉する西側諸国と、社会主義と共産
主義を賞賛する東側諸国との間の一種のアイデンティティ・ポリティクスであった。しか
し、冷戦終結以後のアイデンティティ・ポリティクスでは、アイデンティティの源泉が、
社会秩序の規範や社会制度の設計ではなく、民族・宗教・言語などの個人の属性に帰せら
れたことにより、「新しい戦争」では武器を取らない人々に対しても熾烈な暴力が振るわ
れたのである。
第三の特徴は、「新しい戦争」が、国民経済を経済基盤とするのではなく、インフォー
マルな経済活動や外部資源に依存した戦争であるということを意味している。インフォー
マルな経済活動とは、国家総動員体制下の戦争経済とは異なり、国内産業が存在せずに失
業者が溢れた社会において、生存する糧を略奪や闇市場の運営、麻薬や武器の取引に依存
する経済活動を意味している。このような経済活動を維持するためには暴力的手段や組織
が必要であるので、「新しい戦争」はこの経済活動の維持に不可欠な環境であるともいえ
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よう 。たとえば、アフガニスタンでは、タリバン政権や北部同盟などの反政府勢力が、
内戦を遂行するために国際的な麻薬取引を経済基盤として利用したことはよく知られてい
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る 。また、ソマリア内戦においては、武装集団が社会の底辺に位置する住民を武器で脅
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迫するなどして経済的資源を収奪し、これを戦争資金に転用していたといわれる 。これ
らは、インフォーマルな経済活動と戦争が結合した典型的な事例の一つであろう。
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(2)「新しい戦争」と人道支援要員の安全性
カルドーの主張する「新しい戦争」と人道支援要員の安全性の問題とはいかなる関係に
あるのであろうか。これまでの「新しい戦争」の三つの特徴を踏まえて、「新しい戦争」
と人道支援との関係についてのカルドーの言明や、カルドーの議論からの含意を明らかに
してみたい。
第一は、アイデンティティ・ポリティクスとコスモポリタニズムとの相克である。アイ
デンティティ・ポリティクスは、特定の民族や宗教のアイデンティティを鼓舞して、異質
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なアイデンティティ集団を排除する原理を内在する 。一方、コスモポリタニズムを推進
する人道支援は、「新しい戦争」の基盤であるアイデンティティ・ポリティクスの原理を
否定し、多様性を尊重しながら民族や宗教という境界を超えて、人々の間の距離を縮小す
る運動である。それゆえ、アイデンティティ・ポリティクスとコスモポリタニズムとの対
立を回避することは論理的に不可能であり、「新しい戦争」の紛争当事者と、人道支援の
実施主体である人道支援機関との対立も不可避であるといえよう。
第二は、紛争当事者の戦略目標と人道支援機関の活動目標との対立である。第一の相克
が、両者の理論的な相克であるとすれば、この第二の対立は、実践上の対立である。「新
しい戦争」の軍事目標は、異質なアイデンティティ集団の放逐であるから、敵対する勢力
の文民も攻撃の対象である。一方、人道支援の目標は、紛争で被災した文民への援助と保
護であるから、「新しい戦争」の紛争当事者の戦略目標と人道支援団体の活動目標は相反
する関係にあるということである。なお、これについてはカルドーの直接の言明はないが、
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これまでのカルドーの主張の含意として理解できるであろう。
第三は、戦争経済の外部資源としての人道支援である。「新しい戦争」の経済的基盤は、
前述したようにインフォーマルな経済活動であり、外部資源への依存もその一つである。
カルドーは、紛争当事者や武装集団が外部資源として人道援助物資を搾取することについ
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ても言及している 。人道支援団体が、被災者に対して援助物資を提供している一方で、
紛争当事者が、援助物資を収奪して戦争遂行の資金源とする場合には、紛争当事者と人道
支援団体が、被災者への援助物資の供給・配分方法をめぐり対立し、関係を悪化させるこ
とにもなるのである。
これまで、
「新しい戦争」の三つの特徴に即して、紛争当事者と人道支援機関との関係
を分析し、武装勢力の戦略目標と人道支援団体の活動目標が相反する関係であることを明
らかにしてきた。このような「新しい戦争」における両者の相反関係が、武装勢力による
人道支援機関への攻撃を助長してきたと言えるであろう。
しかし、人道支援要員の安全性に関する問題は、「新しい戦争」特有の問題であるとい
えるであろうか。言い換えれば、この問題は、「新しい戦争」と同様に「新しい」問題で
あるのであろうか。たしかに、昨今の人道支援要員に対する危害は深刻であるが、そのこ
とを理由にして、この問題の原因が、現代の武力紛争における特徴の変化であると断定は
できない。それは、冷戦期に人道支援要員に対する危害が少なくとも存在したからである。
それでは、人道支援要員の安全性に関する問題の原因は何に求められるのであろうか。
これまでに議論してきたように、「新しい戦争」が、紛争当事者の戦略と人道支援機関の
目標との乖離を拡大させて、人道支援要員に対する危害を増大させるとすれば、危害自体
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は、紛争当事者と人道支援機関の活動目標の乖離に起因すると推論できるのではなかろう
か。
3 人道主義の諸原則と人道支援要員の安全性
紛争当事者の戦略目標は、戦闘の有利な展開と戦争での勝利であり、人道支援機関の活
動目標は、紛争被災者の救済にある。両者の目標における乖離は瞭然であるが、両者の目
標が乖離している条件の下で、人道支援機関が武力紛争に関与することは、人道支援要員
が紛争当事者の一つとして誤認される危険性を高めることになる。これを本格的に議論す
る前に、人道支援機関の目標形成において重要な人道主義の諸原則を確認しておきたい。
(1)人道主義の諸原則
人道主義や人道支援には様々な原則や原理が存在するが、本稿では、人道支援要員の安
全性の問題を論究する上で不可欠な原則として、人道主義の無差別性、比例性、中立性の
三つの原則を取り上げたい。
無差別性とは、ジュネーヴ諸条約とその議定書にある無差別適用の規定に由来するもの
であり、対象者を差別することなく平等に処遇するべきであるとする原則である。たとえ
ば、非戦闘員に対する無差別原則については、ジュネーヴ第四条約(文民条約)第 13 条、
第 27 条、第一追加議定書第 9 条第 1 項、第 75 条第 1 項に規定があり、とくに、国際紛争
の影響のある住民全体に適用される文民条約第 13 条には以下のような規定が置かれてい
る。「第二編の規定は、特に人種、国籍、宗教又は政治的意見による不利な差別をしない
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で、紛争当事国の住民全体に適用されるものとし、また、戦争によって生ずる苦痛を軽減
することを目的とする」。それゆえ、被災者を差別して処遇することは人道主義に反する
行為であるといえよう。
人道主義の無差別性にしたがえば、すべての人間を差別なく処遇する行為は正しいので
あるが、無差別原則の適用が、人道主義の本来の目的を逸脱する結果をもたらすことがあ
る。たとえば、人間を苦痛から救済することが人道主義の目的であるとすれば、傷病者と
健常者を区別することなく処遇することは、人道主義の目的に適合するとはいえない。人
道主義の無差別性の原則に対する唯一の例外として、被災の程度に応じた人道的支援の程
度の差異が許されるからである。本稿では、この無差別性の例外を比例性と呼称すること
にしたい。
比例性とは、ジュネーヴ諸条約とその議定書にある特別の保護・尊重の規定に由来する
ものであり、対象者の被災の程度に応じた支援を実践するべきであるとする原則である。
たとえば、非戦闘員に対する比例原則については、ジュネーヴ第四条約(文民条約)第 16
条、第一追加議定書第 8 条(a)、第 10 条第 1 項、第 10 条第 2 項などに規定されている。
たとえば、国際紛争の紛争当事国の住民全体に提供される文民条約第 16 条には以下のよ
うな規定がある。「傷者、病者、虚弱者及び妊産婦は、特別の保護及び尊重を受けるもの
とする」。また、第一議定書第 10 条第 2 項では、「傷者、病者及び難船者は、すべての場
合において、人道的に取り扱われるものとし、また、実行可能な限り、かつ、できる限り
速やかに、これらの者の状態が必要とする医療上の看護及び手当を受ける。医療上の理由
以外のいかなる理由によっても、これらの者の間に差別を設けてはならない」という規定
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が置かれている。この規定は、医療上の理由に基づいた差別が、無差別原則の例外として
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許容されることを含意している 。それゆえ、被災者を公平に処遇するということは、す
べての人に対して平等に対応することを意味せず、被災の程度に応じて対応することを意
味しているのである。
ところで、無差別性と比例性の原則は、公平性の原則として一般的に理解されている。
「赤十字基本原則(The Fundamental Principles of the Red Cross)」の公平原則では、
「赤十
字・赤新月は、国籍、人種、宗教、社会的地位または政治上の意見によるいかなる差別を
もしない。赤十字・赤新月はただ苦痛の度合いにしたがって個人を救うことに努め、その
場合もっとも急を要する困苦をまっさきに取り扱う」と規定されており、無差別性と比例
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性の二つの原理を包含して一つの原則としている 。また、「災害救援時の国際赤十字・
赤新月社連盟と非政府組織の行動原則(The Code of Conduct for the International Red Cross
and Red Crescent Movement and NGOs in Disaster Relief)(以下、「人道行動原則」と称す
る。)」においても、「援助は、受益者の人種、民族、国籍とは関わりなく、あらゆる種類
の不利な差別なしに提供される。援助の優先性は、必要性のみに基づいて考量される」と
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いう原則が挙げられており、二つの原理が一つに集約されている 。
しかし、公平性の原則をめぐる議論の混乱を回避するために、二つの原理を峻別した方
が適当である。それは、無差別原則が被災者の支援に対する機会の平等を促進する原理で
ある一方で、比例原則が被災者の被災に応じた結果の平等を達成する原理であり、二つの
異なる目標を内在した原理を一つに集約するよりも区別した方が適当であるからである。
また、赤十字基本原則の議論の基礎となったのは、ICRC 幹部のジャン・ピクテ(Jean
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Pictet)が公表した「赤十字の諸原則」という一連の論稿であるが、ピクテは、この中で
二つの原則を「平等原則(egalité)」と「比例原則(propotionnalité)」として区別して議論
している。本稿では、「平等」という表現は多義であるので使用せず、この原則に関連す
る国際人道法の概念である「無差別適用」から「無差別」という表現を採用し、「比例」
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に関しては、ピクテの表現を採用した 。
本稿で議論する最後の人道原則は、中立性の原則である。これに関しては、赤十字基本
原則の中立原則、人道行動原則にも規定されており、赤十字の中立規定は以下のような内
容である。「すべての人からいつも信頼を受けるために、赤十字・赤新月は、戦闘行為の
時いずれの側にも加わることを控え、いかなる場合にも政治的、人種的、宗教的または思
想的性格の紛争には参加しない」。中立性の原則とは、言い換えれば、人道支援機関やそ
の職員が、政治的・軍事的紛争の当事者になることを回避することを意味している。
これまで人道主義の三つの原則について概観してきたが、これらの原則は、人道支援機
関が被災者に対する援助と保護を実践する場合の行動指針となっているものである。しか
し、これらの原則が矛盾することなく同時に成立するとは限らない。人道主義の諸原則に
ある矛盾や不整合は、人道支援要員の安全性の問題に深く関連しており、以下、これにつ
いて論究していきたい。
(2)人道主義の無差別性と比例性とのディレンマ
人道主義の無差別性と比例性の原則は、整合せずに矛盾する結果を引き起こす場合が少
なからず存在する。それは、被災の程度に応じた支援が、差別的支援となる場合や、被災
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者に対する差別のない支援が、被災の度合とは無関係な支援になる場合があるからである。
人道主義の無差別性と比例性とのディレンマは、紛争当事者によって戦争を有利に展開
するための政治的・戦略的争点に摩り替えられることで、人道支援機関を中立ではない立
場、すなわち、紛争当事者と同様の立場に追い込むことになる。人道支援機関が中立性の
原則を維持できなくなることが、人道支援要員の安全性に関する問題の主因なのである。
武力紛争において人道支援機関の中立性が不安定になるのは、以下の二つの場合である。
一つは、人道主義の無差別性と比例性とのディレンマが、紛争当事者間の対立と緊張と結
合して政治的・戦略的争点となり、人道支援機関が武力紛争に巻き込まれる場合である。
もう一つは、これが、武装勢力内の指導者と被災者との支配・従属関係と結合して、人道
支援機関が権力闘争の巻き添えになる場合である。
紛争勢力間の対立と緊張の場合については、無差別性に基づいた人道支援であれば、武
力紛争に関与する諸勢力の被災者に対して差別することなく実践されなければならない。
一方、比例性に基づいた人道支援であれば、武力紛争で劣勢であり、多くの被災者を抱え
ている勢力に対してより厚い支援が実践されなければならない。このことは、武力紛争に
関連する勢力間に被災の不均衡があればあるほど、無差別性と比例性とのディレンマが深
刻になることを含意している。
比例性の原則に適合的な人道支援が、無差別性の原則から見てディレンマを生起するこ
とがある。たとえば、1994 年のルワンダ・ジェノサイドに際しては、人道支援の主たる
受益者はジェノサイドの生存者であるツチ族であったが、その後、その対象者は、ジェノ
サイド行為に対する報復を恐れてタンザニアやザイールに避難したフツ族難民に移行した。
15
これは、被災の程度に応じた支援であるので、比例性の原則に適合的な支援であったが、
ツチ族主体のルワンダ新政権樹立後、同政権は人道支援がジェノサイドの被害者よりも加
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害者に集中したことを非難している 。無差別性の原則からすれば、人道支援は民族とは
無関係に提供されるべきであるが、武力紛争に際しては被災が勢力間において偏るために、
紛争当事者から見れば差別的支援であると認識されるのである。
一方、無差別性の原則に基づいた人道支援が、比例性の原則からみてディレンマを惹起
することがある。たとえば、1991 年からのボスニア内戦に際して、ムスリムを中心とす
るボスニア政府、セルビア人勢力、クロアチア人勢力の間で、人道支援の規模をめぐる戦
略的駆け引きが展開され、UNHCR が各勢力間の人口比に応じた人道支援の物資規模を決
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定するという事態に至った 。これは、各民族を差別することなく実践された支援である
ので、無差別性の原則に適合的な支援であったが、被災のない住民にまで援助物資が配給
されることになり、被災に応じた支援という比例性の原則を逸脱する結果となった。
なお、比例性の原則に応じた人道支援を実施すれば、ボスニア内戦初期であれば、被災
が少ないセルビア人勢力の地域では支援は少なく、被災者の多いムスリム居住地域では重
点的な支援を行うことになり、前述したように、セルビア人勢力から差別的な支援である
と非難されることになり、ディレンマから抜け出すことは困難である。
紛争勢力内の支配と従属の場合については、無差別性に基づいた人道支援であれば、被
災者の政治的・社会的地位とは無関係に提供されなければならない。一方、比例性に基づ
いた人道支援であれば、政治的・社会的地位の上位である武力紛争の主導者よりも、被災
の影響を受けやすい政治的・社会的地位が低く経済的に窮乏している人々に対して実践さ
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れなければならない。このことは、戦争遂行を目的とした収奪や搾取が激しい社会であれ
ばあるほど、無差別性と比例性との間の緊張が高まることを意味している。
比例性の原則に適合的な人道支援が、無差別性の原則から見てディレンマを引き起こす
ことがある。人道支援は、社会的地位の低く経済的に貧しい被災者の福祉を向上させる一
方で、被災者を支配し武力紛争を推進する階層や集団の反発を招くことがある。たとえば、
1993 年、ボスニア政府が統治するスレブレニッツア(Srebrenica)などの都市をめぐる攻
防戦が、政府軍とセルビア人勢力との間で展開されていた。UNHCR が、セルビア人勢力
に包囲されて、水や電気の供給が停止されて餓死の危険が迫ったスレブレニッツアから一
部の避難民をトラックで救出したところ、ボスニア政府は、この救出活動をセルビア人勢
28
力によるジェノサイドに荷担する行為であると非難し、救出活動を停止に追い込んだ 。
これは、比例性の原則に基づいた行為であり被災者の利益に適うものであったが、この人
道支援があらゆる階層や集団の利益を促進するのではなく、とくに、戦争を遂行する支配
層の反発を引き起こすこともあるということを意味している。
無差別性の原則に適合的な人道支援が、比例性の原則から判断してディレンマを生起す
ることがある。人道支援は、被災者の社会的地位や経済的条件とは無関係に提供されるべ
きであるが、武装集団内部の支配と従属の関係の影響によって、社会的地位の低く経済的
に困窮状態にある被災者の救済には十分な支援とはならない場合がある。たとえば、1991
年からのソマリア内戦では、人道支援機関は、被災地において氏族などの出自や社会的身
分とは関わりなく援助を提供していたが、人道支援要員の護衛、援助物資の輸送業者、伝
統的支配層や武装集団にも援助物資を提供していたので、本来の受益者である被災者には
17
29
不十分な援助物資しか提供できなかったこともあったという 。比例性の原則にしたがえ
ば、紛争被災者が人道支援の最大の受益者となるべきであったが、人道支援が権力者や武
器携行者などに利益をもたらした可能性は否定できない。
(3)中立性の原則と人道支援機関の紛争当事者化
人道主義の無差別性と比例性の原則にあるディレンマが、武力紛争下において惹起する
深刻な問題は、人道支援団体が紛争当事者と認識されることである。人道支援をめぐるデ
ィレンマ自体も解決困難な問題であるが、人道支援要員の安全性を考察する上で、より重
要な問題は、人道支援活動が武力紛争の権力闘争に巻き込まれるという事態である。
たとえば、スレブレニッツアからの避難民の救出を事例として再考すると、ボスニア政
府から判断すれば、UNHCR による救出行為はセルビア人勢力側のジェノサイドと合致す
るものであり、政府軍の戦略を毀損するものである。セルビア人勢力側から判断すれば、
この救出活動は特定地域からのムスリムの追放という政治的・戦略的目的に合致している
のである。このようにして、人道支援の無差別性と比例性の原則の間にあるディレンマが、
紛争当事者によって政治的・戦略的争点に置き換えられることによって、人道支援機関が
中立性の原則を逸脱することになるのである。
しかし、人道主義の中立性の毀損は、紛争当事者による人道支援要員への危害を必ずも
たらすのではない。武装集団と人道支援要員との間で対立が生じたとしても、その対立が
暴力の行使に至るとは限らないからである。しかし、西ティモールのアタンブア事務所の
襲撃事件のように、両者の対立が凄惨な暴力に発展する危険性は少なからず存在すること
18
も確かであろう。「新しい戦争」の時代が到来し、紛争当事者と人道支援機関の活動目標
における乖離が拡大するにつれて、両者の対立がさらに悪化し、人道支援要員に対する危
害が増長してきたといえるのである。
4 「保護者の保護」
それでは、紛争被災者を保護する人道支援の従事者を保護する問題、「保護者の保護」
の問題はどのように解決するべきであろうか。最後に、この解決手段に関する三つの方法
について論究してみよう。
第一は、紛争当事者からの人道支援活動に対する同意と協力を取り付けるための信頼と
交渉を重視する方法である。紛争当事者との信頼関係を構築することで安全を確保しよう
とするものであるが、人道支援の安全を確保する代償として、紛争当事者による援助物資
の戦争の転用といった問題に対して、断固たる行動や発言をすることが困難になるかもし
れない。
第二は、紛争当事者からの危害や攻撃に対して人道援助団体の職員を保護するために安
全な地域まで撤退させる方法である。自己の安全を放棄してまで他者の生命を保護する義
務が、人道支援団体の職員に課されているとはいえないが、被災者への援助と保護という
国際社会の最後の手段を放棄することになってしまう。
第三は、国際連合第 7 章に基づいた強制措置として実施される人道的介入によって、人
道支援団体を保護するという方法である。これは、湾岸戦争直後に多国籍軍によって設定
された安全地帯でのクルド難民支援を初めとして、ソマリア、ボスニアなどの 1990 年代
19
の武力紛争に対して広範に実施された。これは、人道支援団体が多国籍軍を護衛として利
用して、紛争当事者による人道支援要員への攻撃を回避することを目的としている。
しかし、これは、人道主義の諸原則に対する深刻な論理的矛盾を惹起することになる。
紛争当事者が多国籍軍などの介入軍を紛争当事者の一であると認識すれば、同時に、この
保護下にある人道機関も紛争当事者と認識されることになり、人道機関の中立性は維持で
きない。それゆえ、介入軍の保護の能力が不足する場合には、人道機関に対する攻撃は熾
烈なものとなる可能性がある。たとえば、ボスニア内戦において国連保護軍は、UNHCR
の人道援助活動を保護していたが、同時に紛争当事者からの攻撃も少なくなかった。なお、
この問題を回避するために、ICRC は、ボスニア内戦での国連保護軍による護衛活動を拒
否したという。
これまでに考量したように、何らかの代償なしに人道支援要員の安全性の問題を解決で
きる方法は存在しないように思われる。それゆえ、人道支援が安全な環境で実践されるた
めには、本稿の冒頭に挙げた国際人道法の規定をすべての紛争当事者が遵守するほかに方
法はないであろう。そして、国際人道法の普及とこの違反者に対する国際刑事法に基づい
た処罰が不可欠である。それは、戦闘員が戦争を理由として非戦闘員を救助しない行動を
拒否するべきであるし、戦闘員が被災者を援助し保護する人々の活動を妨害する行為を容
認するべきではないからである。
おわりに
これまで人道支援要員の安全性に関する問題の概観を統計や事例を通じて示し、人道主
20
義の無差別性と比例性の原則にあるディレンマが、武力紛争と権力闘争の争点の一つとな
り、人道支援機関の中立性に否定的効果を及ぼしている点を明らかにした。人道支援の中
立性は、紛争当事者と人道支援機関の目標が乖離するにつれて動揺し、人道支援要員の危
害を増加させたと主張した。また、人道支援要員を保護するためには、紛争当事者の国際
人道法の遵守とこの違反者に対する国際刑事法による処罰が必要であると指摘した。
これまでの議論から、人道主義の諸規範を同時に成立させることだけでなく、人道支援
機関の中立性と人道支援要員の安全性を同時に確保することも容易でないと理解できよう。
しかし、人道主義の諸規範は、実践が困難であるとしても価値を喪失することはない。た
とえば、人道支援団体が中立性を維持できないことを理由にして、中立性を無視して武力
紛争に積極的に荷担してよいということにはならないからである。むしろ、規範の価値は、
規範の実現可能性に反比例して高くなるものである。人道支援が評価や賞賛に値する行為
であると認識されるのは、公正中立の立場を堅持しながら、武力紛争の被災者を救助する
という人道主義の理想を達成することが困難であるからなのである。
1
United Nations, Basic Facts about the United Nations, New York: United Nations
Department of Public Information, 2000, p. 251 (国際連合広報局、八森充訳『国際連合の基礎
知識』、改訂第 6 版、2002 年、311 頁); Grossrieder, Paul, “Protecting the Protectors,” ICRC Official
Statement, Ref.: LG 1998-012-ENG, 28 January 1998.
2
国際連合職員の安全性の問題については、以下の報告書を参考のこと。UN Document,
A/57/300, 15 August 2002; UN Document, A/55/637, 21 November 2000. 平和維持活動の安全
21
性の問題に関しては、以下の論考を参考のこと。Seet, Benjamin, and Gilbert M. Burnham,
“Fatality Trends in United Nations Peacekeeping Operations, 1948-1998”, JAMA, vol. 284, 2000,
pp. 598-603.
3
人道支援要員の安全性に関する統計的調査として、以下のものが挙げられる。European
Commission Humanitarian Office (ECHO), Report on Security of Humanitarian Personnel:
Standards and Practices for the Security of Humanitarian Personnel and Advocacy for
Humanitarian Space, January 2004; King, Dennis, Paying the Ultimate Price: Analysis of the
Deaths
of
Humanitarian
Aid
Workers (1997
-
2001),
15
January
2002,
at
http://www.reliefweb.int/symposium/PayingUltimatePrice97-01.html (30 November 2005).
4
Sheik, Mani, et al., “Deaths among Humanitarian Workers,” British Medical Journal, vol. 321,
2000, pp. 166-168.
5
調査対象機関については、以下のホームページにある研究協力機関への謝辞を参考の
こと(http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/321/7254/166/DC1 (30 November 2005))。
6
7
8
9
Mani et al., op.cit, p. 166.
Ibid., p. 167.
Grossrieder, op.cit, para 3.
United Nations Department of Humanitarian Affairs, United Nations Consolidated Inter-Agency
Appeal for the Return and Integration of Displaced Persons from Chechnya, Russian-Federation,
January - December 1997; Annex II, The International Committee of the Red Cross, 31 January
22
1997.
10
Ibid.; The Statement by Mr Cornelio Sommaruga, President of the ICRC, at the meeting of
Permanent
Representatives,
ICRC
Headquarters,
Geneva,
18
December
1996,
at
http://www.icrc.org/Web/Eng/siteeng0.nsf/htmlall/57JNBF?OpenDocument (30 November 2005).
11
西ティモール・アタンブア事務所の襲撃事件については、以下の報告書において事件
の背景から詳細な事実が調査されており参考となる。The United Nations High Commissioner
for Refugees, Summary Report of the Inquiry into the Deaths of Three UNHCR Staff Members in
Atambua, Indonesia, on 6 September 2000, 8 December 2000, at http://www.unhcr.ch/cgibin/texis/vtx/research/opendoc.pdf?tbl=RESEARCH&id=3f5ddf712 (30 November 2005).
12
13
14
Ibid., paras 6-14.
Ibid., paras 51-68.
Kaldor, Mary, The New and Old Wars: Organized Violence in a Global Era, Cambridge: Polity
Press, 1999(メアリー・カルドー著、山本武彦・渡部正樹訳『新戦争論:グローバル時代
の組織的暴力』、岩波書店、2003 年)
。
15
16
17
18
Ibid., pp. 6-7, 76-86(邦訳 9-10、126-142 頁)。
Ibid., pp. 7-8(邦訳 11-12 頁)。
Ibid., p.9(邦訳 12-13 頁)。
アフガ ニスタンでの麻薬 生産に関しては、以下の文献を参考 のこと。Blanchard,
Christopher M., “Afghanistan: Narcotics and U.S. Policy”, CRS(U.S. Congressional Research
23
Service) Report for Congress, 7 December 2004.
19
de Waal, Alex, Famine Crimes: Politics & the Disaster Relief Industry in Africa, London:
African Rights & the International African Institute, 1997, pp. 163-166; Natsios, Andrew S.,
"Humanitarin Relief Intervention in Somalia : The Economics of Chaos," in Walter S. Clarke and
Jeffrey Ira Herbst, (eds.), Learning from Somalia: the Lessons of Armed Humanitarian Intervention,
pp. 77-95. Boulder, Colo.: Westview Press, 1997, pp. 78-80.
20
21
22
Kaldor, op.cit., pp. 86-89(邦訳 142-147 頁)。
Ibid., pp. 101-107(邦訳 169-176 頁)。
Henckaerts, Jean-Marie and Louise Doswald-Beck, Customary International Humanitarian
Law, Volume I: Rules, Cambridge: Cambridge University Press, 2005, pp.402-403.
23
赤十字基本原則は、ICRCと国際赤十字・赤新月者連盟、各国赤十字社の共通原則とし
て、1965年の第20回赤十字国際会議で採択されたものである。それゆえ、これには赤十字
の組織機構の原則も含むものであるが、人道支援に関する原則として他の国際機構にも指
針を与えるものである。赤十字基本原則については、以下の論考が詳しい。International
Committee of Red Cross and International Federation of Red Cross and Red Crescent Societies,
Handbook of the International Red Cross and Red Crescent Movement, Thirteenth Edition, Geneva:
ICRC/ IFRC, 1994; Haug, Hans, Hans-Peter Gasser, Françoise Perret, Jean-Pierre Robert-Tissot,
and Institut Henry-Dunant, Humanity for All : The International Red Cross and Red Crescent
Movement, Berne: P. Haupt, 1993. 三浦勉「赤十字の人道原則とその法的意味」『亜細亜法
学』第33巻第2号(1998 年)、69-96 頁。
24
第33巻第2号(1998 年)、69-96 頁。
24
これは、国際人道支援に従事する八つの国際組織(IFRC、ICRC、セーブ・ザ・チル
ドレン、オクスファムなどの非政府組織)が共同で発表した人道支援に際する行動規範で
ある。International Federation of Red Cross and Red Crescent Movement (IFRC), Code of Conduct
for the International Red Cross and Red Crescent Movement and Non-Governmental Organizations
(Ngos) in Disaster Relief, Geneva: International Red Cross and Red Crescent Movement, 1994.
25
Jean S. Pictet, Les Principes de la Croix-Rouge, Genève : Comité international de la Croix-
Rouge, 1955, pp. 31-49(ジャン・S・ピクテ著、井上益太郎訳『赤十字の諸原則』、日本赤
十字社、1958 年、39-67 頁)。
26
27
de Waal, op.cit., p. 262.
Cutts, Mark, “The Humanitarian Operation in Bosnia, 1992-95: Dilemmas of Negotiating
Humanitarian Access”, New Issues in Refugee Research, Working Paper, No. 8, the United Nations
High Commissioner for Refugees, pp 14-16.
28
29
UN Document, A/54/549, paras 48-50, 15 November 1999.
Sahnoun, Mohamed, Somalia: the Missed Opportunities, Washington, D.C.: United States
Institute of Peace Press, 1994, pp. 2-3; de Waal, op.cit., pp. 169-170; Natsios, op.cit., pp. 83-84.
25