「テクノアークしまね」における氷蓄熱設備

―― 実 施 例 ――
ソフトビジネスパーク中核施設
「テクノアークしまね」における氷蓄熱設備
中国支店 関 和 志
三機工業ñ
日本ビーエーシーñ
広島営業所 吉 本 克 哉 ■キーワード/研究施設・氷蓄熱・省エネルギー
N
1.はじめに
北館(次世代技術研究開発センター)
〈平成14年夏完成予定〉
松江市は,山陰のほぼ中央に位置し,古くから水の都と
して栄え,
現在でも山陰の中核都市として発展している。
その松江市北部に開発された研究開発形団地「ソフト
第4研究棟
ビジネスパーク」内に,産・学・官が連携し,産業の高
第3研究棟
第5研究棟
度化,新産業の創出につながる研究開発を行う中核施設
第2研究棟
大型構造物試験棟
として「テクノアークしまね」が建設された。
第6研究棟
当建物では,本館棟・研究棟に囲まれている中庭に配
置されたユーティリティー棟へ熱源機器を集約し,本館
ユーティリティ棟
第1研究棟
棟・研究棟へ熱供給を行っており,その熱源機器の一部
本館西棟
本館東棟
に氷蓄熱システムを導入し,電力負荷の平準化と,業務
用蓄熱調整契約による安価な夜間電力の有効利用をはか
南館(レンタルオフィス)
っている。
図−1 施設配置図
写真−1 建物外観
― 13 ―
ヒートポンプとその応用 2002.
3.
No.57
―― 実 施 例 ――
2.建物概要
建物名称 テクノアークしまね
所 在 地 松江市北陵町1番地
建 築 主 島根県
建物用途 研究施設
延床面積 18,500fl
設 計 ñ日建設計
監 理 島根県・ñ日建設計
空調施工 三機工業ñ
写真−2 内融式氷蓄熱槽
3.空調設備
3−1 概要
吸収式冷温水発生機,空気熱源ヒートポンプチラー,
氷蓄熱システムの熱源機器台数制御を行っている。
3−2 主要機器
水熱源スクリューブラインチラー
×1台
冷却能力 236kW
内融式氷蓄熱槽
×1台
蓄熱容量 8,100MJ
吸収式冷温水機
×2台
冷房能力 880kW/暖房能力 730kW
空気熱源ヒートポンプチラー
×2台
写真−3 水熱源スクリューブラインチラー
冷房能力 118kW/暖房能力 140kW
真空式温水機
×1台
暖房能力 406kW
3−3 熱源台数制御運転パターン
本システムでは,熱源運転パターンを下記のように設
定し,きめ細やかな負荷対応が可能となる。また,中間
期や冬期に氷蓄熱システムを優先的に使用することで,
ランニングコストの低減をはかることができる。
3−3−1 夏期冷房運転
A
氷蓄熱融解運転
B
吸収式冷温水発生機冷房運転(1台目)
C
吸収式冷温水発生機冷房運転(2台目)
D
空気熱源ヒートポンプチラー冷房運転(1台目)
E
空気熱源ヒートポンプチラー冷房運転(2台目)
F
氷蓄熱追いかけ運転
写真−4 ブラインポンプ
3−3−2 冬期冷房運転
A
氷蓄熱融解運転
B
空気熱源ヒートポンプチラー冷房運転(1台目)
C
空気熱源ヒートポンプチラー冷房運転(2台目)
D
氷蓄熱追いかけ運転
3−3−3 冬期暖房運転
A
吸収式冷温水発生機暖房運転(1台目)
B
吸収式冷温水発生機暖房運転(2台目)
C
真空式温水機暖房運転
D
空気熱源ヒートポンプチラー暖房運転(1台目)
ヒートポンプとその応用 2002.3.No.57
写真−5 ブライン/
水熱交換器
― 14 ―
―― 実 施 例 ――
T−EX−3 ブライン膨張タンク
冷却塔
A
CT−3
補給水
B
E
B
CDR
CD
補給水
電動三方弁
T−IS−1
内融式氷蓄熱槽
P−C−1
HE−1
BV2
電動二方弁 ブライン/水熱交換器
C
RS−1
MV2
電動二方弁
水熱源スクリュー
ブラインチラー
CR
P−CD−3
冷却水ポンプ
往ヘッダーへ
P−C−2
冷水ポンプ
環ヘッダーより
P−B−1
ブラインポンプ
図−2 氷蓄熱設備システムフロー
でとらえ,設定水位となった時点で完了とする。
なお,夜間の空調負荷については,空気熱源ヒートポ
表−1 機器運転状態
RS-1 水熱源スクリューブラインチラー 運
転 停
P-B-1 ブラインポンプ
転 運
止 運
昼間,ブラインポンプおよび冷水ポンプを運転し,解
転
氷運転を行う。
転 停
止
運 転
転 停
止
運 転
止
4−3 追いかけ運転
解氷運転で氷をすべて使いきった後,さらに要求があ
る場合,水熱源スクリューブラインチラーおよびブライ
運 転
停 止
MV2 1次側制御弁
開
比例制御
BV2 1次側制御弁
閉
比例制御
温
度 ブライン流量 熱交換器入口→出口
・
流 冷 水 温 度 熱交換器入口→出口
量
冷 水 流 量 熱交換器入口→出口
4−2 解氷運転
運 転
運
機 CT-3 冷却塔
器
運
運 P-CD-3 冷却水ポンプ
転 P-C-1 冷水ポンプ(解氷用)
停
状
態 P-C-2 冷水ポンプ(追いかけ用)
ブライン温度 熱交換器入口→出口
ンプチラーおよび吸収式冷温水発生機で対応している。
解氷運転
追いかけ
+
運
転 追いかけ
運
転
蓄熱運転 解氷運転
4.0℃→6.9℃
運
転
ンポンプを運転し,追いかけ運転を行う。
4−4 解氷運転+追いかけ運転
解氷運転中,吸収式冷温水発生機および空気熱源ヒー
4.0℃→9.6℃
トポンプチラーを運転して,さらに要求がある場合は冷
1,200Î/min
水ポンプを1台追加運転し,追いかけ運転を行う。
12.0℃→7.0℃
620Î/min
1,240Î/min
5.おわりに
竣工後間もないため,運転データなどは記載できなか
E
ったが,今後蓄積される運転データを有効活用すること
空気熱源ヒートポンプチラー暖房運転
(2台目)
により,さらに電力負荷平準化に寄与されるものと思わ
4.氷蓄熱設備
れる。
最後に,当工事の施工に当たり,ご指導・ご協力いた
各運転モードにおける機器運転状態を表−1に示す。
だいた関係者の方々に厚くお礼申しあげます。
4−1 蓄熱運転
蓄熱調整契約時間帯(22時∼8時)の電力を使用し,
水熱源スクリューブラインチラーおよびブラインポンプ
により蓄熱運転を行う。
蓄熱完了は氷の体積膨張に伴う水位上昇を差圧発信器
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ヒートポンプとその応用 2002.
3.
No.57