電力・管理科目 - 電気技術者試験センター

● 平成14年度第一種電気主任技術者二次試験標準解答
配点:一題当たり 30 点
電力・管理科目
4 題× 30 点= 120 点
機械・制御科目
2 題× 30 点= 60 点
<電力・管理科目>
〔 問1 の標準解答〕
(1) 水冷却方式を採用する目的と発電機水冷却系統の概要
固定子巻線を冷却効果の高い水で直接冷却することにより、発電機の
大容量化又は小型化を図る。
固定子巻線の冷却水通路には中空導体の素線が用いられ、この素線の内部
に直接冷却水を流して冷却する。
発電機外部で冷却等の処理をされた固定子巻線冷却水は発電機内部に導か
れ、冷却水入口ヘッダパイプで分岐されて、絶縁物製の接続管を通して各
固定子巻線内部を流れる。
各固定子巻線から出た冷却水は、絶縁物製の接続管を通して冷却水出口
ヘッダパイプにまとめられて発電機外部に取り出され、再び冷却等の処理を
されて循環使用される。
(2) 水冷却式発電機に付属される機器と 制御装置の概要
発電機には冷却水を循環させるためのポンプ、冷却水の冷却器、冷却水の
膨張を吸収する冷却水タンク(貯水槽)、冷却水流量を調節する調整弁(冷却水
の圧力を調整する調整弁)、純水である冷却水の導電率を固定子巻線の対地
絶縁に必要な値以下に維持するためのイオン交換樹脂塔が設けられる。
また、冷却水の導電率、圧力、温度、流量の監視・制御を行う固定子冷却
水制御装置が設けられる。
(3) 運転中に冷却水の循環が停止した場合の制御の概要
冷却水の循環が停止した場合は、冷却水(又は、固定子巻線)の過度の
温度上昇を防止するため、自動的に発電機出力を減少させる制御(ランバック
制御)が行われている。さらに、所定の時間内に出力が減少できなかった
場合は、タービン及び発電機を自動停止する保護回路が設けられる。
-1-
〔 問2の標準解答 〕
(1) 試験の目的
最大揚水量で運転中にポンプ水車の入力を遮断した場合の、水圧管水圧、
ポンプ水車回転速度、発電電動機電圧、ガイドベーン開度などを測定し、
これらの値が制限値(保証値)を超えることなく、ポンプ水車その他の設備
が安全に停止し得ることを確認するもの。
(2) 入力遮断時の運転状態の変化及び水圧管圧力の変化の状況
a.揚水運転中の発電電動機が系統から遮断されると、ガイドベーンは急閉
される。回転速度の低下に伴って揚水量は急速に減少し、ガイドベーン全閉
よりも早く水車方向に逆流し始める。ポンプ運転は正転正流領域(ポンプ
運転)から正転逆流領域(ポンプ制動)に入り、ガイドベーン全閉後停止に
至る。
b .水圧管水圧のポンプ吐出し圧力は 、最初は揚水量の急減により低下するが 、
ガイドベーン全閉時には水車方向の流水を遮断するので水圧上昇が起こり、
運転時の水圧より高くなった後に静水圧になる。
(3) 試験において、注意すべき異常状態とそれを避けるための留意事項
入力遮断による管路の流速の急激な変化によって圧力の急激な変化、すな
わち、水撃が生じる。また、管路の状態によっては水流の急減によって水柱
分離が発生し、この水柱が再結合するときに非常に大きな圧力上昇を生じる
ことがある。
このような異常状態の発生を避けるため、ガイドベーンの閉鎖時間及び
閉鎖特性を予め把握し、異常状態の発生と影響の予測をしておくこと。
-2-
〔問3の標準解答〕
(1) 断路器の進み小電流の遮断
遮断器開放後、その線路側又は母線側の断路器を開放する際に発生する
現象であり、遮断器∼断路器間の漂遊容量が負荷となる。遮断する電流は
非常に小さく、開極後直ちに電流が遮断され、その時の電圧が負荷側に直流
電圧として残留する。極間にはこの残留電圧と電源側電圧の差が加わり、
開極速度の遅い断路器では、極間が十分な絶縁距離に達するまで再点弧と
消弧を繰り返す。再点弧の際、高周波の過渡電圧(いわゆる断路器サージ)
が発生し、最大で常規対地電圧の 2 ~2.8 倍に達する。
(2) 断路器の母線ループ電流の遮断
複母線の変電所で、線路を甲(乙)母線から乙(甲)母線へループ切換する
とき 、ループ形成後 、切換のため断路器を開放する際に発生する現象である 。
この場合、大部分の電流はループを開放する断路器を流れるため、定格
電流にほぼ等しい電流を遮断する能力が必要である。また、極間に現れる
回復電圧は、ループ回路に流れる電流の電圧降下分に相当し、数百〔 V 〕
以下である。
(3) 接地開閉器の電磁誘導電流の遮断
2 回線架空送電線路で片回線を停止し、停止側送電線の両端の接地開閉器
を投入すると、停止側送電線には運転中の隣接回線の磁束による誘導電流が
流れる。停止側送電線の運転再開のため接地開閉器を開放する際に、先行
して開放する接地開閉器で発生する現象が、電磁誘導電流遮断である。一般
に遮断電流は隣接回線に流れる電流の 10〔 % 〕以下 、回復電圧は数百〔 V/km〕
程度である。
-3-
(4) 接地開閉器の静電誘導電流の遮断
2 回線架空送電線路において、両端が接地された停止側送電線の一方の
接地開閉器を開放すると、回線間の漂遊容量を介して投入中の接地開閉器に
進み小電流が流れる。この状態で投入中の接地開閉器を開放する際に発生
する現象が、静電誘導電流遮断である。開放後の極間には、回線間及び当該
回線の対地容量で分圧された回復電圧が加わる。
一般に遮断電流は数十〔 A〕以下、回復電圧は数十〔 kV〕程度である。
-4-
〔問4の標準解答〕
(1) 発電設備連系前のインピーダンスマップは次のとおりとなる。
%ZT
%ZF1
8〔 % 〕
50〔 % 〕
%ZF2
40〔 % 〕
ここで、二相短絡電流( IS2)と三相短絡電流( IS)の関係は、
P: 基準容量〔 kV・A〕、 V: 線間電圧〔kV〕を用いると、
IS2 =
3
× IS ,
2
IS =
P
100
×
%Z
3V
で あるため 、発電設備連系前の配電線末端において二相短絡が発生した際に 、
短絡電流が最も小さくなるので、そのときの 二 相短絡電流 IS2 は、
IS2 =
3
3 100 10,000
× IS =
×
×
= 773.03 → 773〔A〕
2
2
98
3 × 6.6
と なる。
一方、過電流リレー( OCR)の整定値は 700〔 A〕であることから、
773〔 A〕> 700〔 A〕より 、「 IS2 > OCR 整定値」の関係が成立し、連系前
の整定値は正しいことが証明できる。
(2) 次に、出力 2,000〔 kV・A〕、% ZG = 30〔% 〕(自己容量基準)の発電設備
の%インピーダンスを 10〔 MV・A〕基準に換算すると、
%ZG′ = %ZG ×
10〔MV・A〕
= 30 × 5 = 150〔%〕
2〔MV・A〕
と なる。
よって、発電設備連系後のインピーダンスマップは次のとおりとなる。
%ZT
%ZF1
8〔 % 〕
50〔 % 〕
%ZF2
40〔 % 〕
%ZG ′
150〔 % 〕
-5-
短絡点からみた%インピーダンスは、
(%ZT + %Z F 1 ) %ZG′
%ZT + %Z F 1 + %ZG′
+ %Z F 2 =
(8 + 50)× 150 + 40 = 81.826〔%〕
8 + 50 + 150
以上から、短絡点に供給される三相短絡電流は IS ′は、
IS ′ =
100
10,000
×
= 1,069.0〔A〕
81.826
3 × 6.6
と なる。
このため、配電用変電所から供給される二相短絡電流 IS2 は、
IS2 =
=
%Z G
3
×
× IS ′
2 % ZT + % Z F 1 + % Z G
3
150
×
× 1,069.0 = 667.63 → 668〔A〕
2 8 + 50 + 150
と なり、求める短絡電流は 668〔 A〕となる。
( 3) 配電用変電所の過電流リレーの整定値は、 700〔 A〕であることから二相短
絡で過電流リレーが動作するためには、限流リアクトルを設置し、発電機側
の%インピーダンスを増加 さ せる必要がある 。ここで 、限流リアクトルを% ZL
とし、発電設備合計の%インピ ー ダンスを% ZG ′とすると、
% ZG ′=% ZG +% ZL
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
①
一方、過電流リレーが不動作とならないためには、配電用変電所から流れ
る二相短絡電流 IS2 を次のように整定値より大きくする必要がある。
IS2 > 700〔 A〕
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
②
ここで、 IS2 と% ZG ′の関係を、 P:基準容量〔 kV・A〕、 V:線間電圧〔 kV〕
を用いて表すと、
IS2 =
%ZG ′
3
100 P
×
×
2 %ZG ′(%ZT + %Z F 1 + %Z F 2 )+ %ZT × %Z F 2 + %Z F 1 × %Z F 2
3V
と なり、上式にそれぞれの値を代入すると、
IS2 =
%ZG ′
10,000
× 50 ×
6.6
%ZG ′(8 + 50 + 40) + 8 × 40 + 50 × 40
-6-
②から、 IS2 > 700〔 A〕であることから、
IS2 =
%Z G ′
500,000
×
> 700
98 × %ZG ′ + 2,320
6.6
71.575 ×% ZG ′> 16,240
よって、% ZG ′> 226.89〔%〕と求めることができる。
ここで、求める限流リアクトル% ZL は、式①より、
% ZL =% ZG ′−% ZG = 226.89 − 150 = 76.89 → 76.9〔%〕
と なる。
-7-
〔問5の標準解答〕
(1) a.電線の風圧荷重 Ww は、電線の投影面積に風圧を乗じて求める。
Ww = Pw (D + 2b )〔N / m〕
b.着氷雪重量 Wi は、着氷雪の質量に重力加速度を乗じて求める。
2
 D
D 2 

Wi = g ρ π  + b  −
 = g ρ π b(D + b)〔N / m〕
4 

 2
(2) 電線の横振れ角 θ は、水平方向の風圧荷重を垂直方向の電線重量と着氷雪
-1
重量の和で除した値の tan で求める。
θ = tan −1
Ww
〔° 〕
Wc + Wi
〔別解〕
θ = cos −1
Wc + Wi
(Wc + Wi )
2
+ Ww
〔° 〕
2
θ = sin −1
Ww
〔° 〕
(Wc + Wi ) 2 + Ww 2
(3) 離隔距離 S は、水平距離から電線の横振れ量を引いて求める。
電線の横振れ量は、上記の横振れ角 θ より dsinθ となる。
S = L − d sin θ〔m〕
(4) 離隔距離 S の値は、上記 S の計算式に与えられた数値を代入して求める。
ここで S の計算式の sinθ の値を求めるために θ を計算する。
θ = tan −1
Ww
39
= tan −1
= tan −1 0.65 = 33.0〔° 〕
30 + 30
Wc + Wi
離隔距離は
S = 9 − 10 ⋅ sin 33.0°
= 9 − (10 × 0.5446)
= 9 − 5.45
= 3.55〔m〕
-8-
(5) 「電気設備の技術基準の解釈」では、電線と植物との離隔距離は、 2〔 m〕
に 、使用電圧が 60,000〔 V〕を超える 10,000〔 V〕又はその端数ごとに 12〔 cm〕
を加えた値以上と規定されている。
使用電圧が 154 〔 kV 〕の場合は、
154 − 60
= 9.4 、端数を切り上げて 10 と
10
なるので、樹木との離隔距離は
S = 2 + 0.12 × 10 = 3.2〔m〕
以上必要となる。
したがって、 ( 4 )で求めた電線と樹木との離隔距離 3.55 〔 m 〕は、「電気
設備の技術基準の解釈」に適合している。
-9-
〔問6の標準解答〕
( 1) 全発電設備容量と需要との差以上の発電設備が停止している場合には、電力
不足が生じるわけであるから、電力不足確率は、全発電設備容量と現在の需要
との差と同容量以上の発電設備が停止している確率累積値に等しい。それぞれ
の系統の全発電設備容量と需要の関係から、各系統の供給力が不足する停止
出力の値は、
系統 A: 40,000 − 37,100 = 2,900〔 MW〕
系統 B: 31,000 − 26,200 = 4,800〔 MW〕
系統 C: 30,000 − 27,800 = 2,200〔 MW〕
となる。この値以上の電力が停止する確率が、電力不足確率であるから、
与えられた表より、
系統 A は 0.0710
系統 B は 0.0500
系統 C は 0.2500
となる。
(2) 系統 A に融通するために系統 B 及び系統 C は 、自系統の予備力を 1,500〔 MW〕
確保することが必要である。したがって、
系統 B では 26,200 + 1,500 = 27,700〔 MW〕
系統 C では 27,800 + 1,500 = 29,300〔 MW〕
の供給力が必要である。
系統 B は 31,000 − 27,700 = 3,300 〔 MW 〕の余力があるが、連系線の送電
容量は 1,000 〔 MW 〕なので、系統 A が受けられる融通電力は 1,000 〔 MW 〕と
なる。
系統 C の余力は 30,000 − 29,300 = 700〔 MW〕であり、これは連系線の送電
容量以内なので、系統 A が受けられる融通電力は、 700〔 MW〕となる。
- 10 -
(3)
(a) 系統 A では、系統 B から 700〔 MW〕融通を受ける場合は、これを自系統の
供給力として計算できるので、停止電力が 2,900 + 700 = 3,600〔 MW〕になる
まで供給力不足は発生しない。系統 A がこの条件を満たす停止出力の確率累積
値は 0.0300 となる。
一方 、系統 B が 700〔 MW〕を融通するためには 、供給力を 26,200 + 1,500 + 700
= 28,400〔 MW〕以上確保しなければならないから 、停止出力は 、31,000 − 28,400
= 2,600〔 MW〕以下でなければならない。系統 B がこの条件を満たす確率は、
系統 B で停止出力 P が 0〔 MW〕< P < 2,600〔 MW〕である確率となるので、
表より 1.0000 − 0.3300 = 0.6700 となる。
(b) 系統 A が系統 B から融通を受けた場合の電力不足確率は、融通を受けない
場合の確率( 0.0710)から、融通を受けて電力不足が解消できる確率
{(0.0710 − 0.0300)× 0.6700}を差し引いたものであるから、電力不足確率は
0.0710 − (0.0710 − 0.0300)× 0.6700 = 0.04353 → 0.0435
となる。
〔(b)の別解〕
電力不足確率は、系統 B から融通できる場合とできない場合を分けて考える
と、
(B が 700〔 MW〕融通できる確率)×(A で 3,600〔 MW〕以上停止する確率)
+(B が 700〔 MW〕融通できない確率)×(A で 2,900〔 MW〕以上停止する確率)
= 0.6700 × 0.0300 + 0.3300 × 0.0710
= 0.04353 → 0.0435
- 11 -
<機械・制御科目>
〔問1の標準解答〕
(1) 二次電流
I2 =
sE2
r2 2 + (sx 2 )2
〔A〕 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
①
(2) トルク
機械的出力を Po、角速度を ω(= 2π f )とすれば次式となる。
3 I 2 2 r2
3 p I 2r
P
s
=
= ・ 2 2〔N・m〕 ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥
T= o =
2π f1
2 π f1
ω
2π sf1
(1 − s)
p
p
3 I 2 2 r2
(1 − s)
s
②
(3) 滑り周波数及びトルク一定時の二次銅損
②式から二次銅損 Pc2 は次のようになる。
Pc 2 = 3 I 2 2 r2 =
2π
・T・sf1〔W〕
p
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
③
すなわち、一次周波数 f1 が変わってもトルク T 及び滑り周波数 sf1 が一定
ならば、二次銅損は変わらない。
(4) トルク不変の説明
一次周波数 f11 でのトルク 、滑り 、誘導起電力及び二次電流をそれぞれ T1、s1、
E21 及び I21、周波数 f12 でのそれらを T2、 s2、 E22 及び I22 とすれば、②及び①
式から
T2 =
3 p I 22 2 r2 3 p
・
= ・
2π s2 f12 2π
(s2 E22 )2
・
r2
s2 f12
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ④
 f12 
x2 
r2 +  s2
 f11 
f
f
与えられた条件から E22 = 12 E21、s2 = 11 s1 であるから、これらを④式に
f11
f12
代入して
2
- 12 -
2
2
 f11 s1 f12 E21 


・
f11 
3 p  f12
r2
T2 = ・
・
2π 2  f s f x  2 f11 s f
r2 +  11 1 ・ 12 2  f 1 12
12
f11 
 f12
=
3 p (s1 E21 )2
r2
3 p I 212 r2
・ 2
・
=
・
= T1
2π r2 + (s1 x2 )2 s1 f11 2π s1 f11
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
すなわち、与えられた条件下ではトルクは不変である。
- 13 -
⑤
〔問2の標準解答〕
(1) 図のような一次側が非接地の Y 結線で二次側のΔ結線を開放すると、励磁
電流に第 3 調波成分が流れ得ないから鉄心磁束には第 3 調波磁束が生じ、
二次側巻線に第 3 調波起電力を誘導する。これは三相同相の成分で、これらが
加算されてΔ結線の開放端で 600〔 V〕になって現れた。なお、基本波成分は
大きさが等しく、 120 °ずつ位相がずれているのでその合成は零となり、極間
には現れない。
(2) 二次側巻線 1 相当たりの第 3 調波誘導起電力 Eh3 は
Eh3 =
600
= 200〔V〕
3
である 。二次側線間電圧 Eh(= 447〔 V〕)は基本波成分 E2 と第 3 調波成分 Eh3
の合成であるから、その基本波電圧 E2 は
E2 =
E h 2 − E h3 2 = 447 2 − 2002 = 399.76〔V〕
となる。一方、一次側巻線 1 相の電圧 E1 は
E1 =
6,000
3
= 3,464.1〔V〕
である。巻数比 a は一次と二次の基本波電圧の比として
a=
E1 3,464.1
=
= 8.6654 → 8.67
E2 399.76
となる。
(3) スイッチ S を閉じた Y -Δ結線の変圧器では、励磁電流の基本波成分は一次
側 Y 回路を流れ、第 3 調波成分は二次側Δ回路内を環流する。一般に、定常
状態では変圧器の励磁電流は小さく、また、第 3 調波分は基本波分に比べて
さらに小さい。このため、Δ回路に流れる定常循環電流はわずかである。
- 14 -
〔問3の標準解答〕
(1) 電源電圧 1 サイクル中の充電期間 Tc
交流電源電圧の瞬時値を vs = 2Vs sin ω t = Vm sin ω t とする。
ダイオードは vs > E でオンし、 vs < E でオフする。充電開始角を α、充電
終了角を β とすると、ダイオードの導通開始条件は Vm sin α = E であるから
α = sin −1
E
= sin −1
Vm
E
2 Vs
 24 
= sin −1 
 = 0.17053〔rad〕‥‥‥‥
 141.42 
①
したがって、
β = π − α = 2.9710〔 rad〕
これより、電源電圧 1 サイクル中の充電期間 Tc は
Tc = β − α = 2.9710 − 0.17053 = 2.8004 → 2.80〔 rad〕 ‥‥‥‥
②
(2) 限流抵抗 R
充電電流の瞬時値は
vs − E Vm sin ω t − E
=
R
R
iD =
α<ω t<β
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
③
より、充電電流の平均値 ID は
ID =
1 β Vm sin ω t − E
1
(2 Vm cos α + 2 Eα − π E )
d (ω t ) =
2π ∫α
R
2π R
‥‥
④
1
(2 Vm cos α + 2 Eα − π E ) = 1 (278.73 + 8.1854 − 75.398)
2π × 6
2π I D
= 5.6106 → 5.61〔Ω〕‥‥‥‥‥
⑤
これより、限流抵抗 R は
R=
- 15 -
(3) 充電電流の実効値 Irms
I rms =
I rms 2 =
=
1
2π
β
∫α
iD 2 d (ω t ) より
β
1
(Vm sin ω t − E)2 d (ω t )
2 ∫α
2π R
2
 V 2


 m + E 2 (π − 2α ) + Vm sin 2α − 4 Vm E cos α  ‥‥‥

2 

2
2π R  2


1
⑥
したがって、充電電流の実効値 Irms は
I rms =
=
1
2π × 5.61062
[(10,000 + 576)× 2.8004 + 10,000 × 0.33448 − 13,379]
99.009 = 9.9503 → 9.95〔A〕‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
⑦
(4) 充電回路の効率 η
2
限流抵抗による電力損 PR = Irms R = 99.009 × 5.6106 = 555.49〔 W〕
電池への供給電力 PD = E × ID = 24 × 6 = 144〔 W〕
これより、効率 η は
η=
PD
144
× 100 =
× 100 = 20.586 → 20.6〔%〕‥‥‥
144 + 555.49
PD + PR
⑧
(5) ダイオードの逆電圧の最大値 VINV
VINV = Vm + E = 141.42 + 24 = 165.42 → 165〔 V〕 ‥‥‥‥‥
- 16 -
⑨
〔問4の標準解答〕
(1) c1 = 1、 c2 = 0 であるから C = [1 0 ] となる。
a.①式に各係数の値を代入して、ラプラス変換し、初期値を零とすると
sX1(s)= X2(s)
sX2(s)=−15X1(s)−8X2(s)+U(s)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ①′
Y(s)= X1(s)
となる。①′式において、 X1(s)、 X2(s)を消去すれば
2
s Y(s)+8sY(s)+15Y(s)= U(s)
となり、これより、
G( s) =
1
Y ( s)
=
U ( s) s 2 + 8 s + 15
1


=

(
+
3
)(
+
5
)
s
s


‥‥‥‥‥‥‥‥ ②′
が得られる。
b.①式の状態方程式の各係数は
1
 0
0
A=
、B =   、 C = [ 1 0 ]

− 15 − 8 
1 
であるから、可制御性行列 D の行列式は
 0   0 1  0  0 1
det D = B , AB =   
= −1 ‥‥‥‥‥‥ ③′
  =
 1  − 15 − 8   1  1 − 8
となり、階数は 2 であるから可制御である。
可観測性行列 M の行列式は
[1 0 ]
C
1 0
=
= 1 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ④′
det M =
 0 1 =
CA [1 0 ]
 0 1
−
−
15
8


となり、階数は 2 であるから可観測である。したがって、このシステムは
可制御かつ可観測である。
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(2) c1 = 3、 c2 = 1 であるから
c. A、 B は(1)と同じで、C = [ 3 1 ] となる。したがって、②式を用いて
G( s) = C ( sI − A ) −1 B =
=
s+8
 − 15
[ 3 1 ]
C adj( sI − A )B
sI − A
1  0 
s   1 
s −1
15 s + 8
=
1

 s
[ 3 1 ]
2
s + 8 s + 15
=
( s + 3)
( s + 3)( s + 5)
1
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ⑤′
s+5
が求められる。
=
d. A は(1)と同じで、 C = [ 3 1 ] となるから、可観測性行列 M の行列式は
[3 1 ]
C
3 1
det M =
=
= 0 ‥‥‥ ‥‥‥ ‥ ⑥′
 0 1 =
CA [ 3 1 ]
− 15 − 5

 − 15 − 8 
となり、階数は 2 とならないので、このシステムは可観測ではない。
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