予稿 - 薄膜物性研究室

分子流コンダクタンスの数値シミュレーション
研究場所: 東京電機大学 工学部 環境化学学科
07ES040 櫛田 哲郎
松田 七美男
薄膜物質研究室
指導教授
はじめに
1
ると考えるのが普通であり、これを余弦則と呼ぶ。す
なわち表面法線に対して散乱角 θ で立体角 dω の方向
本研究は分子流領域における2枚の平行な長方形板
に気体分子が散乱する確率は
間の気体圧力分布を、ある 1 点に気体放出源がある場
f (θ)dω = −
合について、次の二通りの方法により計算し、その結
果を比較検討する。1) マクロな立場から気体分子の拡
散として編微分方程式(以下 DE 法)で記述できると
考え、その解析解を適当な境界条件を付与し求める。2)
ミクロな立場から個々の気体分子の壁への衝突頻度を
モンテカルロシミュレーション法(以下 MC 法)によっ
て数値的に求める。
2.1
(5)
となる。モンテカルロ法においては、表面において散
乱された気体分子の方向分布が式を満たすような乱数
を発生させ、平行板における気体分子シミュレーショ
ンを行う。このような余弦則乱数の発生方法は、一様
√
乱数 U の平方根を散乱角の余弦として cos θ = U と
すればよい。一方、方位角 φ は完全にランダムである
ことを前提としているため一種乱数 U をとり
計算方法
2
1
cos θdω
π
φ = 2πU
偏微分方程式
直角直交座標系をとる。境界条件として、次のよう
な第一種の境界条件を考える。
と与えればよい。
3
x = −δ, a + δ , y = −δ, b + δ で p = 0
(1)
すなわち、板の一辺を a + 2δ, b + 2δ に伸長して考え
(6)
計算結果
MC 法の結果の一例を Fig.1 に示す。これは DE 法の
数値解析結果と非常に良く一致する。
る。式が繁雑になることを防ぐため、この値を改めて
a, b と置き、元の本当の長さは a0 , b0 と置く。定常状態
では
∆p = −δ(x − ξ)δ(y − η) × Q0 (2)
仮想境界
となる Poisson 方程式であり、長方形辺上で値が0で
あるという Dirichlet 境界条件に対する第一種の Green
関数を G1 (x, y; ξ, η) とすれば、まさに Green 関数その
ものが解である。すなわち、
p(x, y) = G1 (x, y; ξ, η) × Q0 (3)
一般に辺 a、b の長方形領域の辺上で値が0である
Dirichlet 境界条件の Green 関数は、Fourier 級数展開
により以下のように表現される。
G1 (x, y; ξ, η) ∞
nπy
mπξ
nπη
4 ∑ sin mπx
a sin b sin a sin b
=
( m )2 ( n )2
πabm,n=1
+
a
2.2
Fig. 1: 辺の長さ a = 40, b = 30、気体放出源の位置
ξ = 30, η = 15 の場合の MC 法の結果
(4)
b
モンテカルロシミュレーション法
壁面における気体分子の散乱方向分布は、表面法線
より測った散乱角分布を θ とすれば、θ の余弦に比例す
参考文献
[1] A.Berman,V acuumEnf ineringCalculations,
F ormuls, andSolvedExercises,(Academic
Press,1992)133.