1 BtoBメーカーにおける製販連携システムに関する一考察 ―営業部門の製品開発への関与― 上林ゼミ 090B246B 原 尚史 2 目次 1 ,問題意識/研究目的 2 ,先行文献レビュー/研究の範囲 3 ,リサーチ・クエスチョン 4 ,分析の視点 5 ,研究概要 6 ,分析結果 7 ,結論 8 ,含意 9 ,今後の課題 1,問題意識/研究目的 3 コモディティ化・多様化 新製品開発の重要性 顧客情報の重要性 BtoBメーカーでは,顧客接点に強い影響力を持つ「営業」が製品開発の肝。 製品 開発 ソリューション 製品開発への関わり方 製販連携のあり方 営業 学術的 問題意識 ● 研究目的 顧客 製品販売 営業部門 実践的 問題意識 関係性構築 製販連携 •販売志向に偏重/アウトソース増加 •顧客情報の利用での情報粘着性 メーカー営業の役割・付加価値(真髄) •ソリューション、管理形態が中心 良質な製販連携プロセス・特性/要因 •マーケティングスタッフとR&Dが中心 ● 新製品開発における営業部門の関与活動の可視化、および、これを促進する 製販連携の組織的特性・要因の特定(仮説発見・探索型) 2,先行文献レビュー/研究の範囲 ● 先行文献レビュー 切り口 先行 文献 着眼点 4 ● 営業 製販インターフェイス 田村(1999) 高嶋(1998) 川上(2005) Gupta(1985) 製品開発での 営業関与の重要性 製販統合による成果 顧客志向の重要性 コンフリクト 松尾(2002) D.Leonard(1998) 問題解決型 創造的摩擦 タスク冗長性 マネージャーの姿勢 ● 研究範囲 ● 【営業部門】 製品開発への関与 新製品開発の パフォーマンス 【製品企画/開発部門】 顧客情報の利用 川上(2005)で実証 今回の研究範囲 5 3,リサーチ・クエスチョン ● リサーチ・クエスチョン ● RQ1 営業部門は製品開発にどのように関与し、顧客情報の利用においてどのような 役割・機能を果たしているのか。 営業部門と製品企画・開発部門における良質な「製販連携」を促進する組織的 RQ2 特性・要因は何か。それらの組織的特性や要因は、製品企画・開発部門の顧客 情報の利用をどのように促進するのか。 製販連携システム 【営業部門】 製品開発への関与 RQ1 RQ2 製販連携における 組織的特性・要因 【製品企画・開発】 顧客情報の利用 新製品開発 パフォーマンス 4,分析の視点 ● RQ1の分析視点 6 ● 関与頻度 :製品企画・開発部門とどの程度やりとりをしているか。 関与段階 :製品開発のどのプロセスで関与しているか。 企画 構想 仕様 決め 量産化 事業性 検討 評価 行動 関与姿勢 :製品開発に対して、受動的な関与か、能動的な関与か。 関与意識 :製品開発への意識、メーカー営業としてのこだわりはどうか。 ● RQ2の分析視点 意識 ● タスク冗長性 顧客情報の利用において、部門間の冗長的活動、つまり、役割外のタスク関与という重複は 情報や知識の粘着性を低減するものと考えられる。 コンフリクト 製販双方のこだわりや専門知識に基づいた喧々諤々の議論という問題解決型のコンフリクトは 新製品開発に有効であり、製品開発部門の顧客情報の利用においても影響要因と考えられる。 マネージャーの姿勢 顧客情報の利用については、マネージャーの推奨が重要である。なぜなら、タスク冗長性とも 関係するが、双方の業務におけるストレッチが必要であるため。 5,調査概要 7 7産業15社、営業部門16名、製品企画/開発部門11名にインタビューを実施 条件 調査対象 理由 •顧客関係性、営業インパクト •連続的新製品の創出(仕組み化) •機能分化の為の臨界量 •経営戦略、組織戦略特性 ・BtoBメーカー ・長年トップメーカーとして君臨 ・規模1,000名以上 ・複数の産業セクター 企業名非公開 調査方法 ・営業部門、製品企画・開発部門へのインタビュー ※入社5年以上の社員および責任者:会社の枠組みや制度を理解しているレベル NO 業界 営業部門 製品企画・ 開発部門 1 2 センサ 部品 1 3 4 精密機器 1 2 1 5 6 7 設備機器 4 3 9 FA設備 1 1 8 1 1 1 10 11 IT 12 13 14 電子/化材 1 1 1 1 1 1 1 15 半導体 1 1 合計 16 1 ※Replication logic:一般化のためには、2つ以上の産業に対して、2企業以上のケーススタディを行うことが条件 11 (人数) 8 6,分析結果 -「営業部門の製品開発への関与」の分析(RQ1)- 日本のBtoBメーカーの殆どで営業部門の製品開発への意識・行動共に高い。 営業部門の製品開発への関与は製品部門の顧客情報の利用を促進する。 事業(製品)特性により、営業部門の製品開発への関与には差異が生じる。 製品開発への意識と行動の関係 製品特性と関与レベルの関係 4社/5社が゙外資系 意識 2社 5社 (左軸) 3社 High ( 営 の)製品開発関与 (右軸) 顧客情報利用レベル High 5社 LEVEL1 LEVEL2 行動レベル LEVEL3 Low LEVEL4 行動 Low A2社 ① LEVEL4 M1社 単事業、 M3社 6社 ワンストップ A1社 M2社 LEVEL3 F1社F2社 ② 組合せ、 E2社 LEVEL2 3社E1社 クロスセル C1社 ④ ③ S1社 E3社外資系、 I1社 I2社 IT、多様 LEVEL1 3社 2社 マーケティング:強 C2社 標準品 カスタマイズ品 (50%以上) (50%以上) インタビューから得られた営業部門の製品開発に対する関与現象 LEVEL1 最適な製品提供、適正な価格と納期対応に注力、製品開発には受動的 LEVEL2 特注・加工製品で製品開発関与が高い、総じて開発段階での関与は限定 LEVEL3 顧客潜在ニーズを顕在化、製品部門を主導、開発段階の殆どに関与 LEVEL4 製品企画書を自ら起案し、製品企画・開発部門と渾然一体 9 6,分析結果 -製販連携における組織的特性・要因の分析(RQ2)- 多くの日本企業で、タスクの冗長性、均衡性、世代継承性が確認され、 加えて、権限委譲による即興性、「個の強さ」、前提としての「顧客志向」も見受けられた。 個人 組織 タスク冗長性 営業→製品:製品企画書、開発段階 での関与 製品→営業:技術者の顧客接点活動 技術部隊(SE)の前線化 社長直轄の開発部門と前線化 R&D内のマーケティング部設置 均衡性 製販の「喧々諤々の議論」「真剣勝負」 問題解決型タスクコンフリクト 双方のプライド、会社牽引の自負 相互信頼、仲間意識「同じ釜の飯」 事業組織対応 製品部門と営業部門の組織改変 世代継承性 マネージャーの姿勢(日々のOJT) 同僚からのアドバイス 社長の姿勢、歩き回る経営 本社主導の製品開発プロセス 目標管理のしくみ(新製品化率) 権限委譲 機動的な顧客対応と判断 現場から工場までの直接的なパス 即興的チーム形成による意思決定 その他 重量級スパナー:製品への執着が 強く、様々な関係者を巻き込む連結者 個人に宿る顧客志向 マーケティング部門の強さ 寮制度による仲間意識、横断人脈 組織で共有する顧客価値 6,分析結果-製販連携における組織的特性・要因:「境界レバレッジ」- 10 「境界レバレッジ」とは,部門間の境界おいて, 1) タスク冗長性と均衡性が共に高密度な状態の中で, 2)機動的な相互理解と合意形成を通して, 3)綜合的に「問題」の本質を洞察する思考および機能 境界 レバレッジ High 顧客情報の 利用 均衡性 市場感知と反応の重要性 カスタマー・セントリック Low Low High タスク冗長性 喧々諤々の議論による「真剣勝負」と役割外タスクへの「染み出し」が当たり前のように 行われ,情報粘着性のコストを低減し,「顧客回帰」,延いては「顧客情報の利用」を促進する。 7,結論 ● 11 RQ1 ● 各社の事業特性や組織体制に応じた,営業部門の製品開発への関与のあり方(営業 1 関与のバリエーション)が確認された。 営業部門の製品開発への関与は,製品企画・開発部門の営業への理解や顧客情報の 2 利用を促し,これにより情報粘着性の問題を軽減していた。 営業部門の製品開発への関与は,メーカー営業としての意識と拘りが源泉となっており, 3 関与意識と関与行動のレベルには関係があった。 ● RQ2 ● 調査企業の多くで,製販におけるタスク冗長性,均衡性,世代継承性が確認され,また, 1 これらの要素における「組織と個人の連動」が確認できた。 一方で,事業特性や組織体制により,冗長性のパターンや均衡度合いに変化がみられ、 2 特に外資系と日本企業では差異が見られた。 均衡性と冗長性が高密度な状態では,機動的合意形成と問題の本質を洞察する 3 「境界レバレッジ」機能が発生し,顧客情報の利用を活性化する。 8,含意 ● 実践的含意 12 ● 営業部門の製品開発関与は顧客情報の流通を促進し、情報粘着性の問題を軽減 1 できるという意味で意義深い。営業改革のテーマとして有効な視点である。 ⇒コモディティ化への対応、製品開発タスクを含めた営業機能・組織の再設計。 製販におけるタスク冗長性や均衡性は、製販連携の良質化に有効であり、加えて 2 個人だけでなく、ダイナミックな組織変革との連動が重要である。 ⇒個人のストレッチと組織機能の綜合的視座に基づく、改革。商品企画の前線化。 組織の良質な仕組みを世代継承するには、マネージャの指導力と、トップからの 3 強いメッセージ発信という二つの要素が必要である。 ⇒社長方針やIR活動などを通してのトップの強い発信、社長との対話の場。 8,含意 13 「ある程度」の組織システムと「ある程度」の個人技。 柔らかなマネジメントが「知的ストレッチの自律化」を促進する。 製品:顧客情報の利用 営業:製品開発関与 個人 境界レバレッジ 均衡性 マネージャー姿勢 柔らかなマネジメント High 組織 境界レバレッジ 均衡性 Low Low 世代継承性 タスク冗長性 社長/会社姿勢 タスク冗長性 High 9,今後の課題 14 製品開発における営業とマーケティングの機能分担のあり方、外資系企業との詳細な比較。 事業特性軸による詳細な分析、定量調査による統計的理論化。 日本 関 係 図 特 性 営業 部門 外資 開発 部門 マーケティング 部門 マーケティングは促進者 垂直統合志向,冗長性 営業 部門 マーケティング 部門 開発 部門 マーケティング主導 水平分業志向,非冗長性
© Copyright 2024 Paperzz