日本移民学會ニューズレター

日本移民学會ニューズレター
(ウェブ版)
2006年8月1日 第43号
発行 木村健二・篠田左多江・坂口満宏・森本豊富
日本移民学会事務局:早稲田大学人間科学学術院 森本研究室
編集 白水繁彦
日本移民学会ホームページ http://www.musashi.jp/persons/imin/
本号の記事から
p.7 2006年度総会議事録
p.9 新入会員一覧
p.10 2006年度ワークショップのお知らせ
p.11 共同研究プロジェクト助成のお知らせ
p.12 第17回年次大会のお知らせ
p.13 第16回年次大会 自由論題報告およびシンポジウム要旨 ________________________________________
日本移民学会 会長就任あいさつ
木村健二
2005年6月の宮城大学で開催されました第15回大会の運営委員会で会長に選出され、総会でお
認めいただいた木村です。何とも想定外で事が運んでしまい、その結果周辺の方々にも影響を及
ぼすことになり、ご協力いただいている方々には感謝の気持ちでいっぱいです。と同時に、お引
き受けした以上は、これまで学会の基礎をつくり、発展させてこられた諸先輩の先生方のご苦労
を無にしないために、精一杯尽くしていきたい所存ですので、よろしくご支援いただければと思
います。
戦後60年が経過するなかで、ポスト・コロニアルの議論が活発となる一方で、近年のグロー
バル化の深化は歴史や伝統の再確認を迫ることとなり、日本の移民研究にもたいへん大きな課題
を担わせることになったといってよいでしょう。本学会もそのような動きに対応した体制を整
え、歴史認識と現状の動向、政治・外交関係と社会・民族関係など、研究上のクロスオーバーを
はかりつつ、その存在を内外にアピールしていきたいと考えております。今後2年間、どうぞよ
ろしくお願い申します。
________________________________________
2006年度役員及び各委員
会長:木村健二
副会長:篠田左多江
事務局幹事 関東: 森本豊富
関西: 坂口満宏
監査:山本岩夫・島田法子
年報編集委員:庄司啓一(委員長)、島田法子、中野達司、高木(北山)眞理子、守屋友江、
山本かほり
共同研究推進委員:篠田左多江(委員長)、坂口満宏、竹沢泰子
大会企画委員:村川庸子(委員長)、飯田耕二郎、坂口満宏、高木(北山)眞理子、椿 真智
子、守屋友江、アンジェロ・イシ、森本豊富
事務局:森本豊富(事務局長)、鴛海量良(事務局次長)、小林孝広(書記)
________________________________________
● 2006年度 第1回 運営委員会議事録
日 時:2006年4月22日(土) 14:00 16:30
場 所:早稲田大学人間総合研究センター分室
出席者:木村健二、篠田左多江、坂口満宏、飯田耕二郎、粂井輝子、高木眞理子、村川庸子、守
屋友江、山本岩夫、森本豊富
(事務局)鴛海量良、小林孝広
(委任状)飯野正子、白水繁彦、戸上宗賢
報告事項
1.各種委員会
(1) 編集委員会 『移民研究年報』編集企画・進捗状況について報告があった。①12号は3月末日に無事発行し
た。②次号特集テーマは「移民と国籍」であり、すでにニューズレターで周知済みである。③現
在、研究ノートを募集中であり期限は4月末日であること。(島田委員長欠席のためメッセージ
を代読)また飯田耕二郎前事務局長よりすでに12号の支払が済んでいることが報告された。
(2) 大会企画委員会 村川委員から以下の報告があった。
現在8名の委員中、木村会長と前開催校の三橋 勇会員の2名の交代が提案された。高木眞理子
氏を留任とし、各種委員会の区切りの時点で交代すること。人選に関しては村川委員に一任し、
第2回運営委員会で報告することとなった。
(3) 共同研究推進委員会 森本事務局長から以下の報告があった。①今年度助成対象者である外村大氏宛に助成金30万円
が送金されたことが報告された。助成金の支出については、2年分の領収書と使途を明らかにし
た略式の文面を提出してもらうこととした。また、大会で報告する際には、共同研究推進委員が
出席し、大会報告にコメントを付けることとした。②今年度ワークショップは8月6日(土)に
津田塾大学で開催される。ワークショップ担当委員の交代に当たっては、4月1日付で新委員を
選出し、新旧両委員でワークショップ開催を行い、ワークショップ終了後に旧委員はその任を解
かれることとした。篠田委員より、ワークショップは無料で参加できるので、広く一般、ゼミの
学生の参加を募りたいとの報告があった。
(4)ニューズレター
森本事務局長より以下の報告があった。
①『日本移民学会ニューズレター』第42号は、2006年3月20日付で発行された。また内容を
省略してHPに掲載された。②第43号の発行は7月中旬を予定しており、主たる掲載事項は
2006年度名古屋大会ならびに総会報告、および本年度ワークショップの案内である。③ニュー
ズレターの編集に当たっては、編集委員会の白水繁彦委員が担当し、事務局がその補助をするこ
と。④ニューズレターのレターヘッド、封筒の学会名称の表記については、すべて新字体にする
こととした。
2.2006年度日本移民学会大会(6月24日・25日、名古屋市立大学)について
①森本事務局長より大会プログラムが示された。②大会プログラム・出欠票の作成・発送は5月
上旬を予定していること、③大会レジュメ集は大会当日出席者に配布すること、③大会助成はす
でに送金済みであることが報告された。高木大会実行委員より、大会テーマを鑑み、来会者の敷
居を低くするため、当日の非会員大会参加費を500円に設定したいとの報告があった。懇親会に
て、開催校企画ドキュメンタリー・フィルムの監督サツキ・イナ氏を紹介することとなった。
3.事務局
森本事務局長より以下の報告があった。①事務局引継ぎに関して、打ち合わせが3月26日に大阪
商業大学にて行われ、山本岩夫、飯田耕二郎、木村健二、森本豊富の各委員、荒川正也、鴛海量
良、小林孝広の各会員が出席した。また新事務局会議が4月3日に早稲田大学人間科学部分室に
て開かれ、木村会長、森本事務局長、鴛海事務局次長、小林書記が出席した。
②2006年4月1日より事務局を下記に移転する。
新住所:〒359-1192所沢市三ヶ島2−579−15 早稲田大学人間科学学術院 森本研究室
℡/Fax:04-2947-6789 e-mail:[email protected]
郵便振替:00960-5-95922(口座番号は変わらず)
銀行口座:みずほ銀行飯能支店 303-2015866
(略)
審議事項
1.会員動態
(1)以下の入会希望者11名について審査し、いずれも正会員として承認した。
(1)以下の入会希望者11名について審査し、いずれも正会員として承認した。
高畑 幸、川和清太郎、許 琳玲、山口博史、熊谷広子、宮下良子、昔農英明、
金 美善、庄司博史、大西裕子、東 聖子
2.2006年度の活動方針
今後の活動方針について木村会長から下記の方針が示された。
従来の方針に沿って、大会および年報のよりいっそうの充実化をはかること。さらに広報活動を
活発化し、会員のニーズの掌握に務める。具体的に、①学会アピールとしてのHPの充実、②学
会自己点検を行うこと。③事務作業の効率化と分業としての発送業務などの一部外部委託、事務
局に会計、書記の担当者をおくことが提案され、承認された。
3.2006年度年次大会について 森本事務局長から6月24日(土)、25日(日)に年次大会開催予定校である名古屋市立大学へ
の補正予算について報告がなされ、承認された。
4.2005年度決算案・2006年度予算案、会計監査による監査など。
①2004年度決算案が飯田前事務局長より報告された。収入の部では、3期滞納者は除籍にする
という総会決定以降、正会員の納入率が向上したこと、また支出の部では全体の消化率が
98.1%と目標通りであった点の説明がなされ、承認された。(略)
5.次回以降の運営委員会/四役会議/各種委員会
議題:総会にむけて2006年度総会議案、諸委員会活動方針・活動報告の最終確認
第2回運営委員会 6月24日(土)10:30 12:30 於)名古屋市立大学
四役会議 6月24日(土) 9:30 10:30 於)名古屋市立大学
拡大運営委員会(大会企画委員会と大会実行委員会との合同)
6月25日(日)15:30 16:30 於)名古屋市立大学
年次大会開催の反省については、次年度の大会開催の参考とするため、第3回運営委員会の大会
収支関係等の資料がそろった段階で改めて実施することとした。
6.その他
森本事務局長より以下の報告があった。
(1) 年報編集委員長の運営委員会への出席について
必要に応じて編集委員長に対して運営委員会への出席をお願いすることが承認された。
(2) 委任状のファックスでの送信について
従来書面であったが、手続きの簡略化のためにFAXによる返信も可能とすることが承認され
た。
(3) 領収書発行の簡略化について
従来、会費納入に対して領収書を発行していたが、振込の際の半券でその用が足りている。
従って、今後は領収書の発行を依頼されない場合は原則、領収証の発行を行わないことが承認さ
れた。
また、この点に関しては請求書、ニューズレター等で周知することとした。
(4) 海外口座振込について
レート換算の問題があるため現行通りの扱いとなった。
(5) 会則の「監査」について
監査が年度を超えて担当する実態に合わせて、規約の文面を事務局が作成し、次回運営委員
会に提出することになった。
(6) 除籍者の扱いについて
除籍者に関してはニューズレターに掲載しないことが承認された。
(7) 学術会議について
これまで移民学会は登録団体という扱いであったが、法改正によって解消された。外部団体
との情報交換、連携の便があるため、あらたに日本学術会議学術協力研究団体に登録にすること
が承認された。
以上
(文責 小林孝広・森本豊富)
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● 2006年度 第2回 運営委員会議事録
日 時:2006年6月24日(土)10:30 12:30
場 所:名古屋市立大学 山の畑キャンパス 会議室
出席者:木村健二、篠田左多江、坂口満宏、森本豊富、飯田耕二郎、粂井輝子、島田法子、白水
繁彦、高木眞理子、戸上宗賢、村川庸子、守屋友江、山本岩夫
繁彦、高木眞理子、戸上宗賢、村川庸子、守屋友江、山本岩夫
(事務局)鴛海量良、小林孝広
(委任状)飯野正子
報告事項
1.各種委員会 (1)編集委員会 島田法子編集委員より、『移民研究年報』編集企画・進捗状況について以下の報告があった。
①『移民年報』第13号の特集テーマは、今回の大会テーマと連動したものになる。②原稿募集
では25本の一般投稿があった。③今年度のホームページ上での論文の公開は梗概(日本語と英
語の両方)にとどめ、全文掲載に関しては今後検討して行くこととした。
(2)大会企画委員会
村川委員より、今大会テーマは昨年の「グローバリゼーションと移民」に引き続き、より展
開した形で「国境を越える移民と市民権」とすることが説明された。木村会長より大会最終日に
拡大運営委員会を開催し、大会運営の反省と今後の展望の検討を行うことが説明され、参加の要
請があった。
(3)共同研究推進委員会
①今年度のワークショップについて、篠田委員より本年度のプログラムが示された。事前の
申し込みは不要で、昨年同様、一般の方、院生、ゼミ生の参加を期待しているとの報告があっ
た。②第1回の研究助成をうけた増田直子氏と北脇実千代氏の発表が行われる旨アナウンスが
あった。
(4)ニューズレター委員会
『日本移民学会ニューズレター』第43号の発行企画及びホームページ作成について、白水繁彦
委員より以下の報告がなされた。①次回ニューズレターの発行は7月中旬に行う。②印刷内容、
ホームページ掲載内容の判断は事前に事務局が行う。③年次大会の各報告内容については司会者
がまとめ、7月10日までに事務局に送付すること。④ホームページへの掲載内容の最終判断に
ついては、四役に一任することとした。
2.2006年度大会関係 高木委員より大会の運営と司会進行のマニュアルについて説明がなされた。山本委員より、今後
の円滑な大会運営にあたって、このようなマニュアルをぜひ作成していただきたいとの要望あっ
た。
3.事務局 森本事務局長より以下の報告があった。①第16回大会抄録集に掲載する広告は4件、広告費は大
会費用に計上した。(略)
審議事項
1.会員動態 7月24日現在、会員数は346名 (特別会員7件含む)である。また、以下の入会希望
5名について審査し、いずれも正会員として承認した。
陶山宣明、上原美穂、吹原 豊、助川泰彦、山倉明弘
2.大会企画委員会
a) 今年度の大会企画委員会について村川委員より、木村、三橋の両氏の辞任にあたって、守屋
委員を推薦したいとの申し出があり承認された。またもう一名に関しては、アンジェロ・イシ氏
(武蔵大学)に交渉の上、了解を頂く旨報告があった。
b) 次年度大会実行委員会と開催校企画について、坂口委員より、来月、実行委員長の飯田委員
を中心として、「マイグレーション研究会」*で呼びかけを行うことが報告された。また、共同
研究のテーマは、「戦前における在日留学生」を予定しており、報告、コメンテーターを委員の
方々にお願いすることがあるとの報告があった。
3.ホームページ作成にかかるアルバイト代の増額について
ホームページ作成担当の佐藤万里江会員に出席頂き、ホームページの形式と運用について説明を
頂いた。ページの改定に当たっては、①学会概要(「お問い合わせ」を省く)、②ページ案内
(「プライベートポリシー」を省く)、③論文梗概(和、英)、次回大会案内、ワークショップ
案内を新たに追加することとした。(略)
4.会則の変更 鴛海事務局次長より、第1回運営委員会において検討された、会則第6条、及び8条改正の文案に
ついて説明がなされ、これら会則の変更を総会議案とすることが承認された。
5.2005年度決算案、2006年度予算案、会計監査報告
①森本事務局長より、2005年度決算案について、第1回の運営委員会で承認され、戸上宗賢、
白水繁彦両委員の監査を受けたとの報告があった。②森本事務局長より2006年度予算案につい
て、第1回の運営委員会で一応の承認を得たが、その際指摘された項目及び書式について鴛海事
務局次長によって変更されたことが報告され、承認された。
6.2006年度総会
議事項目、報告担当者について、森本事務局長から報告があり了承を得た。
7.次回以降の運営委員会予定
2006年度第3回運営委員会(拡大運営委員会)2006年6月25日(日)
於)名古屋市立大学 会議室 2006年度大会の総括 2006年度第4回運営委員会 2006年9月23日(土) 於)早稲田大学西早稲田キャンパス(早稲田大学人間総合研究センター分室)
2007年度大会準備状況、その他
2006年度第5回運営委員会 2006年12月9日(土)
於)大阪商業大学 2007年度大会準備状況、その他
8.その他
①山本委員の提案により、各種委員会の委員を把握し、事務局で一覧を作成することとし
た。
②山本委員より、「マイグレーション研究会」*について紹介があり、研究会の共同研究を
次回大会の開催校企画とすることが説明された。
*すでに郵送されたニューズレターでは、「関西マイグレーション研究会」となっていました。
訂正しお詫び申し上げます。
以上
(文責 小林孝広・森本豊富)
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■ 2006年度 総会議事録
日 時:2006年6月24日(土) 18:00-18:30
場 所:名古屋市立大学山の畑キャンパス 201教室
司会 木村健二氏 議長 山田千香子氏
審議事項
1.2005年度 活動報告
(1) ワークショップの実施
2005年8月6日、7日に群馬県邑楽郡大泉町・太田市にて開催。テーマ「共生」
(2) 共同研究推進企画の実施
前年度に続き共同研究プロジェクトへの助成を募集し、審査の結果1件の申請を採択。
(3) 年次大会
2005年6月25日(土)、26日(日)に宮城大学大和キャンパスにて第15回年次大会を開催。
大会テーマ「戦争と移民」を掲げ、ビデオ Caught in Between の視聴と2報告、コメント2
報告の後、総合討論を実施。他にラウンドテーブル「東北の移民と今日的課題̶宮城の移民の先
駆者を事例として̶」4報告とコメント1報告。自由論題11報告。
2006年6月の名古屋市立大学にて開催される第16回年次大会にむけて準備を進める。
大会企画委員会を中心として大会企画を準備、運営。大会テーマは「グローバリゼーションと移
民̶国境を越える移民と市民権̶」。
(4)『移民研究年報』
第12号刊行 2006年3月、205ページ
第12号刊行 2006年3月、205ページ
特集:戦争と移民 論文2 / 論文4 / 研究ノート4/ 書評 6
(5)『日本移民学会ニューズレター』
第40号(2005年7月20日)、第41号(2005年10月20日)、第42号(2006年3月20日)
(6) 運営委員会(2005年度)
第1回(4月23日):2005年度名簿作成、2004年度決算案、2005年度予算案。
第2回(6月25日):次期運営委員の選出、名簿作成上の個人情報保護、決算案・予算案の承
認、監査報告。
第3回(6月26日):大会の反省と次年度大会への対応、次期会長の選出。
第4回(6月26日):次期の四役、監査、各委員会の委員長の決定。
第5回(9月24日):次年度大会準備状況、ホームページに掲載するニューズレターの内容簡略
化について協議。
第6回(12月17日):次年度の共同研究プロジェクト助成の審査結果と決定、事務局の引き継
ぎ及び新事務局体制(事務局次長と書記の決定)。
2. 2005年度会計決算報告
(略)
3. 2005年度会計監査報告 戸上委員より報告があり承認される。
4. 2006年度学会活動方針案
木村会長より、従来の方針に沿って大会および年報のよりいっそうの充実化をはかること。
さらに広報活動を活発化し、会員のニーズの掌握に努める。具体的には、①学会アピールとして
のHP(ホームページ)の充実。②学会自己点検を行うこと。③事務作業の効率化と分業として
の発送業務などの一部外部委託、事務局に会計、書記の担当者をおくこと、という基本方針が述
べられた。また共同研究推進委員会、大会企画委員会の新体制について、次回2007年度大会が
大阪商業大学で6月23日(土)、24日(日)に開催されることについての説明があった。
5. 2006年度予算案 (略)
6.会則の変更
森本事務局長より、役員任期と機能について、学会運営の実態に合わせた会則第6条、及び8条
の改正案の説明がなされ、会則の変更が承認された。
以上
(文責 小林孝広・森本豊富)
________________________________________
● 2006年度 第3回 拡大運営委員会議事録
日 時:2006年6月25日(日) 15:30 16:30
場 所:名古屋市立大学山の畑キャンパス 会議室
出席者:木村健二、篠田左多江、坂口満宏、森本豊富、飯田耕二郎、粂井輝子、島田法子、白水
繁彦、高木眞理子、村川庸子、守屋友江
(編集委員会)庄司啓一
(事務局)鴛海量良、小林孝広
(委任状)飯野正子、戸上宗賢、山本岩夫
審議事項
2006年度大会の反省と次年度大会への対応について、以下のような意見が出された。
①レジュメの足りなくなった会場があった。今後、レジュメの枚数は、報告会場の司会、あるい
は会場担当者が人数を把握・記録しておくことで対処することにした。②今後、パワーポイント
などの使用で、発表機材を使用する人も増えてくるので、各発表の間に5分ほど時間を設けるべ
きではないか。③大会ですぐれた発表をした会員に対しては、年報への執筆を呼びかけて行く。
その他
庄司編集委員長より、①投稿件数が多いために査読して頂ける方を増やしたいこと。また山本か
ほり氏に編集委員会に加わって頂きたいとの要望があった。②論文を採用された者が、次年度も
ほり氏に編集委員会に加わって頂きたいとの要望があった。②論文を採用された者が、次年度も
続けて投稿するケースがあるが、機会の均等からいって好ましいことではない。原則2年空ける
ことを内規としたい旨の報告があった。しかし、投稿規定の改定の必要があるため、編集委員会
でさらに検討することにした。
木村会長より、次回のニューズレターに今期の各種委員会メンバーのリストを掲載する旨の指
示があった。
村川委員より、アンジェロ・イシ氏に対して大会企画委員就任の要請をしたところ、快諾を
得たとの報告があった。
以上
(文責 小林孝広・森本豊富)
________________________________________
■新入会員一覧
★ 高畑 幸(広島国際学院大学専任講師)
名古屋市中区栄東地区のフィリピンコミュニティと地元住民との「共生」の可能性
★ 川和清太郎(明治大学大学院政治経済学研究科博士後期課程)
ハワイ沖縄系アメリカ人のエスニシティ
★ 許 琳玲(名古屋大学大学院国際開発研究科博士後期課程)
オーストラリアの多文化主義と中国系移民
★ 山口博史(名古屋大学大学院環境学研究科社会環境学専攻博士後期課程)
地域レベルでの外国籍住民受け入れのありかた−教育、医療、労働を中心に−
★ 熊谷広子(宮城工業高等専門学校建築学科助手)
ブラジル日系移民の住空間の変容について
★ 宮下良子(跡見学園女子大学短期大学部非常勤講師)
エスニシティ研究
★ 昔農英明(慶應義塾大学大学院社会学研究科後期博士課程)
現代ドイツにおける教会庇護(教会アジール)及び教会庇護運動に関する研究
★ 金 美善(国立民族学博物館外来研究員・日本学術振興会外国人特別研究員)
日本の多民族化、多言語化における在日コリアンの社会言語学的研究
★ 庄司博史(国立民族学博物館教授)
日本の多民族化・多言語化、多言語都市問題
★ 大西裕子(立命館大学大学院国際関係研究科博士前期課程)
国際結婚事情から日本社会の国際化について考察する
★ 東 聖子(早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程)
滞日スィク教徒の移住と信仰
(以上、2006年4月22日第1回運営委員会承認分)
★ 陶山宣明(帝京平成大学専任講師)
国際移住、カナダの移民・難民政策
★ 上原美穂(慶應義塾大学SFC研究所訪問研究員(上席))
移民生徒の青年期とキャリア形成
★ 吹原 豊(フェリス女学院大学留学センター専任講師)
定住インドネシア人コミュニティの日本語習得、日本語学習者のライフコース研究
★ 助川泰彦(東北大学国際交流センター助教授)
インドネシア人定住者の日本語習得の研究
★ 山倉明弘(天理大学国際文化学部教授)
在米日本人、日系アメリカ人、中南米日系人の戦時強制収容の意味
★ 西村和子(川村学園女子大学教授)
日系人子弟の数学教育
(以上、2006年6月24日第2回運営委員会承認分)
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■2006年度ワークショップのお知らせ■
タイトル: 日本における移民研究動向展望̶1994年から今日まで̶
日時:2006年8月5日(土)、6日(日)
場所:津田塾大学
目的
『日本の移民研究』(日外アソシエーツ:1994年)が刊行された1994年以降、日本における
移民研究は質・量ともに飛躍し、その裾野の広がりには目を見張るものがある。そのことは、新
たに出現している膨大な研究とその研究視座の検討(再検討)が必要であることを示している。
たに出現している膨大な研究とその研究視座の検討(再検討)が必要であることを示している。
本企画は、1994年以降の移民研究文献の分類・整理作業をふまえ、研究テーマごとに「研究動
向と展望」を発表し、議論を深めることを目的とする。このような「研究史研究」の作業は、歴
史・文学・人類学・社会学・地理学等、多分野にまたがる「移民」を巡る研究における諸概念、
研究視座の建設的な「翻訳」、相互交流に繋がるであろう。具体的には、「出・入移民」、「同
化」などの伝統的な研究視座に加えて、「トランスナショナルリズム」、「グローバル・マイグ
レーション」といった研究視座の可能性と課題を検証しつつ、移民研究の新たな地平を模索する
こととしたい。また、2日目には、移民研究の教育方法とその内容についてのセッションを設
け、3つの異なる研究視座から「移民」、「移住」といったテーマをどのように授業で取り上げ
ているのか、知識を共有する場としたい。
対象
学会員、及び一般の方(学生を含む)対象
事前の申し込みは不要
プログラム(敬称略)
8月5日(土)
12:00 日本移民学会共同研究推進委員長挨拶 篠田 左多江
12:10-14:10 【第1セッション:ネーション・トランスナショナル】 各20分発表
菅、増田、長谷川、小澤
14:20-16:20【第2セッション:移民と社会の諸相】各20分発表
高橋、丸山、拝野、深見
16:30-18:00 【総括セッション:これからの移民研究】
木村健二、飯野正子
8月6日(日)
10:00-13:00 【移民研究の教育の現場から】
粂井輝子、森本豊富、南川文里
________________________________________
■共同研究プロジェクト助成のお知らせ■
日本移民学会「共同研究プロジェクト助成」成果報告に対する講評
共同研究推進委員会
(1)2004 年度の日本移民学会「共同研究プロジェクト助成」は、以下のグループに与えられ
た。
研究課題: 「多人種社会ロサンゼルスにおける日系アメリカ人」
研究代表者: 増田直子、共同研究プロジェクト参加者 北脇実千代
助成期間: 2004 年 4 月 1 日 2006 年 3 月 31 日
助成金額: 30 万円
(2)上記「共同研究プロジェクト助成」による研究成果は、2006 年 6 月 24 日に開催され
た日本移民学会第 16 回年次大会自由論題①B 会場において、以下の題目として報告された。北
脇実千代「戦前のロサンゼルスにおける日系アメリカ人社会のビューティ・カルチャー」増田直
子「戦後ロサンゼルスの日系アメリカ人をめぐる人種関係̶再定住期を中心に̶」。北脇報告
は、1910 20 年代のロサンゼルスにおける日系アメリカ人の美意識や流行感覚の基準を検討
したもので、同基準がアメリカ主流社会か日本のそれかという二者択一では捉えきれないもので
あることを考察した。
増田報告は、ロサンゼルスに帰還した日系アメリカ人による白人や他の人種との協調に向けた戦
略的な考えに着目し、JACL による定住に向けた戦略と JACL に批判的な二世による文化活動の
諸相を分析した。
(3) (略)
■ 2007年度 共同研究プロジェクト助成のお知らせ ■
日本移民学会では、とくに若い会員の独創的な研究を奨励することを目的として、移民およびそ
れに関する諸問題を研究する共同研究プロジェクトに対して、1グループにつき2年間で 30 万
円を助成しています。
今回の助成期間は 2007 年 4 月 1 日 2009 年 3 月 31 日です。
応募要領をご覧のうえ、奮ってご応募ください。
<応募要領>
<応募要領>
【概要】
(1) 助成件数:年度ごとに1件。
(2) 助成対象:研究に必要な書籍代、コピー・文房具などの消耗品代、調査や会議のための旅
費・交通費など。
(3) 研究成果公表の義務:助成金を受けたグループは、その成果を次のような形で公表すること
が義務づけられます。
① 研究助成期間の2年目にワークショップを企画して発表するかまたは日本移民学会年次大会
で発表すること。
② あわせてその成果を『移民研究年報』誌上に論文として投稿すること。投稿に際しては共同
または個人執筆のいずれでも可とする。
【応募資格】
(1) 個人ではなく2,3人のグループ。若い研究者が望ましい。
(2) 申請者全員が応募の時点で日本移民学会の会員であること。
(3) 申請はグループの代表者が行うこと。
【募集期間】
2006 年 9 月 1 日 10 月 31 日(当日消印有効)
【申請書の請求】
日本移民学会のホームページに掲載してある所定の申請書1,2を使用すること。
【申請書類】
(1) 日本移民学会所定の申請書1,2に必要事項を明記のこと。
(2) 申請する研究プロジェクトに関する申請者全員のこれまでの研究業績一覧 (A4 サイズで印
字したもの、書式は問いません)。
【申請書の送り先】
募集期間中に日本移民学会事務局へ送付すること。
【結果の公表】
共同研究推進委員会による審査の結果については、2006 年 12 月中に応募者に連絡し、採択さ
れた共同研究プロジェクトについてはニューズレターで公表する。
________________________________________
■ 第17回年次大会のお知らせ ■
来年度の年次大会は、大阪商業大学において2007年6月23日(土)、24日(日)に開催しま
す。
《 自由論題報告をご希望の方へ 》
自由論題報告をご希望される方は、下記の要領を明記のうえ、日本移民学会事務局までお申し込
みください。大会企画委員会にて検討いたします。申し込みは、原則として電子メールにて事務
局宛にお願い致します。
●要 領 (1)報告者氏名、(2)所属、連絡先、電子メールアドレス、(3)報告タイトル、
(4)1200字以内の報告要旨 ●申込み締切り 2006年11月30日
●申込み先 日本移民学会事務局 e-mail:[email protected]
________________________________________
●寄贈図書
・蘭 信三 編著 『日本帝国をめぐる人口移動(移民)の諸相・研究序説』(日本移民学会
2004年度ワークショップ報告書・日本学術振興会科学研究補助金中間報告書、平成16年度
18年度科学研究費補助金基盤研究(B)(1)「エスニック・マイノリティの社会参画と国民国
家の社会統合に関する比較社会学的研究̶中国帰国者およびエスニック移民の比較研究を中心と
して̶」課題番号:16330098、2006年2月28日)。
・北米エスニシティ研究会編、『北米の小さな博物館̶「知」の世界遺産』彩流社、2006年。
________________________________________
■日本移民学会第16回年次大会 自由論題報告およびシンポジウム要旨
自由論題報告
第一日目(6月24日)
A会場 司会: 李洙任
1.日野壽憲「ロンドンテロをめぐる英国イスラム事情」
「ロンドンテロ後のイスラム住民」に関する本発表は、日本人にとって他人事ではない重要かつ
興味深い報告内容だった。なぜなら、北朝鮮によるミサイル発射に関するメディア報道の中、心
興味深い報告内容だった。なぜなら、北朝鮮によるミサイル発射に関するメディア報道の中、心
無い一部の日本人からの在日コリアンに対するヘイトクライムがロンドンテロ後のイスラム住民
に向けられたハラスメントと酷似しているからである。死者52名を出した2005年7月7目のロ
ンドン同時多発テロ以後、英国内では反イスラム感情が一段と高まっており、テロ事件以後に発
生した宗教憎悪に基づく犯罪行為は、ロンドン警視庁管轄内で前年度同時期の5倍に達したこと
が本発表で報告された。イスラム住民の不安は増大し、女性への暴力事件も頻発していることか
ら、著名なイスラム聖職者が「女性は外出時にはヘッドスカーフを外すように」との声明を出し
たなど、ロンドン在住のイスラム住民が置かれている緊迫した状況を把握できた。これは、
1998年、北朝鮮から発射されたとする物体が太平洋に落ちたとする報道後、朝鮮学校に脅迫電
話が相次ぎ、チマチョゴリで通学する生徒たちに着用をやめさせる緊急措置がとられたことと酷
似している。緊迫した状況がある中、イギリスの国会議員によるイスラム住民との対話集会や意
見交換を通じての粘り強い人種関係の改善に取り組む姿勢も報告されたので、対岸の火事ではな
く日本の対策においても学ぶ点は多いと感じた。
2.新海英史「グローバル化における市民権政策、その意義と課題̶オランダにおける市民化講
習を事例に」
本報告では、オランダにおける移民の市民権政策の一環として実施されている「市民化講習」の
運営状況が紹介された。オランダは1980年代に入ってから、長期的展望に立った包括的かつ野
心的な移民の統合政策に着手しており、本報告はその具体例として興味深い内容であった。永住
目的の外国人対象に実施される研修内容は、(1)570時間の「オランダ語講習」、(2)30時間の
「社会化講習」、そして(3)キャリア相談を含む「職業講習」である。移民の社会的統合を目指
すこの研修は、手厚い移民保護施策のようであるが、ドロップアウトする移民も少なくない実態
から統合化プログラム運営は容易でないことが理解できた。オランダにおけるエスニック・マイ
ノリティ統合化政策は、ヨーロッパ各国のそれと比較しても、精力的かつ、充実した内容のもの
とされている。中央政府からの支持によるトップダウン式運営ではなく、地方自治体が重要課題
として積極的に取組む姿勢など、オランダのエスニック・マイノリティ統合化政策の動向につい
ては、今後も注意深く観察すべきものであり、大いに研究を深めるに値する課題であると感じ
た。
3.吉田裕美「日系二世の言語・文化維持 −八ワイ島ヒロの事例から」
本発表は、ハワイ島・ヒロ市に暮らす日系二世達がどのように日本語・日本文化を緯持してきた
かを明らかにし、その要因をライフヒストリーインタビューにより調査した報告である。1900
年代初頭から、ヒロ市沿岸のダウンタウンに日本人移民が暮らし始め、その後ワイアケアタウン
に日本人移民が集住して暮らすようになり、その地域は梛子島町と呼ばれた。一世たちが二世に
積極的に日本語を学ばそうと努力し、日本語学校が設立される。戦時中は、そのような日本語学
校も閉鎖され、1946年、1960年の2度の大津波によりコミュニティティは離散したが、幼少
期に言語習得を終えていた二世たちは、カラオケで日本語の歌、日本のテレビ番組を堪能できる
ぐらいの言語を身につけた。しかし、二世たちの間で、その習熟度に大きな差があるのが判明
し、その差の要因を探るのも本研究の重要な課題の一つになるであろう。言語とアイデンティ
ティの関係や、主流言語や文化への同化と異化の狭間で一世たちがどのような葛藤を経験してい
たのかも知りたい点である。(以上3報告・文責:李洙任)
B会場 司会:山本剛郎
①高井由香里「20世紀初頭カナダ・アメリカ・ボーダーランド̶越境者と国民国家の対峙の場
として」/ ②北脇実千代「戦前のロサンゼルスにおける日系アメリカ人社会のビューティ・カル
チャー」/ ③増田直子「戦後ロサンゼルスの日系アメリカ人をめぐる人種関係̶再定住期を中心
に」
①は、移民史やボーダーランド研究の最近の知見を踏まえ、加・米国境を越えて、1890年代
から1920年代にかけて合衆国に入国した日本からの移民に焦点をあて、彼らの移動の軌跡を
辿ったものである。キーワード風に言えば、国家(国境管理)、個人(不法・合法移民)、そし
て選択と排除の論理の、三者間の相互作用の分析といえよう。/ ②は、「ビューティ・カル
チャー」の日系アメリカ人社会への浸透過程を、1910年代から30年代にかけて発行された
日系人新聞の記事や広告を手がかりに、分析したものである。「ビューティ・カルチャー」と
は、服装・髪型・化粧などへの関心、それらの実践、さらにはそれらへの関心や実践をめぐる言
説、加えてこうしたことの結果としてのアイデンティティ、これらの複合された概念をして捉え
られている。/ ③は、1945年1月から1952年の頃までを再定住期と捉え、その間におけ
る日系アメリカ人の再定住過程を、日系アメリカ人社会と彼らを取り巻くホスト社会との関係に
焦点をあてて、分析したものである。具体的には、ロサンゼルスを事例にJACLの戦略や2世の
文化活動を通して、日系アメリカ人と他の人々との人種関係のあり方が論じられた。
以上の興味深い各発表に対し、それぞれ活発な議論が展開された。その詳細は割愛するが、われ
われは、そこでの議論や示唆を自分の今後に活かしたいものである。なお、第二、第三報告は、
日本移民学会第1回共同研究助成金による研究であった。(文責:山本剛郎)
C会場 司会:野入直美
このセッションでは、台湾、華人をキーワードとする2つの報告が行われた。金戸幸子氏(東京
大学大学院総合文化研究科博士課程)による「1930年前後の沖縄県八重山地方から植民地台湾
への自発的な人の移動−周縁における社会空間の共有とその地域社会へのインパクト−」と、成
瀬千枝子氏(関西学院大学研究員)による「戦後の大阪華人社会の変容−華人組織を中心として
−」である。
金戸報告は、植民地下の台湾が、八重山の人々にとってあこがれの地であったこと、台湾体験が
引揚者にとってその後の人生を生きる上での文化資本となったことを、台湾での就労構造などの
マクロデータと、インタビュー調査で得られたミクロデータを組み合わせて実証しようとするも
のであった。とくに八重山から植民地台湾へ渡った女性たちのいくらかは、「女中」奉公のかた
わら、夜間学校や職業学校で専門的な技術を習得した。帰郷後に助産婦となって地域医療の第一
線を担う女性、与那国で最初の美容院を開業した女性などが、台湾引揚者の中から輩出している
ことが示された。
今回の報告では、人の移動をめぐる輝かしい部分が前面にでていたが、当時の台湾が植民地で
あったことの意味を掘り下げ、誇らかな台湾引揚女性たちの語りに対しては、当事者の思いに寄
り添いつつも、それを冷静に分析する研究者としてのまなざしを深めれば、今後の発展可能性を
持つ研究であると思われた。フロアからは、分析にあたって重要な概念として提起された台湾の
「モダニティ」について、概念の用法の妥当性を問う質問や、他の地域との比較の視点につなが
る有益な示唆が寄せられた。
成瀬報告は、関西学院大学21世紀COEプログラムの助成を受けて行われた研究の成果を発表
するものであった。その主旨は、大阪に居住する華人が、台湾系と大陸系それぞれの組織を持ち
ながらも、華僑社会は分裂してはいないということであった。その根拠としては、両方の組織の
メンバーで連立的に構成される中間的な経済組織があることが挙げられた。また、90年代以降
は、日本人との合同組織も成立しているという。華人社会の中で、台湾系と大陸系、新華僑と老
華僑、自費留学生と公費留学生などの下位集団が、さまざまに組織化をはかってきた経緯が説明
された。
今回の報告では、多様な華人組織の成立の経緯は、年代順に整理されていた。フロアからは、大
阪の華人社会を大づかみで把握できる構図、組織の機能についての分析、ひとりひとりの華人た
ちの側から見た組織参加・不参加をめぐるリアリティなどについて、今後の研究課題を示唆する
と思われる質問が寄せられた。
C会場は、中国との間の人の移動をめぐるセッションの今後の展開に、期待を抱かせる活発な議
論の場となった。ご参加・ご発言をいただいた皆様に御礼を申し上げます。
(文責:野入直美)
第二日目(6月25日)
A会場 司会者:粂井輝子
1.羅 京洙「ハワイに渡ったコリアン「写真新婦」にみる女性の国際移動(1910-1924)」
羅 京洙会員は、「女性の国際移動」を解明するという問題意識から、1910年代から1924年
にアメリカ合衆国、とくにハワイに渡ったコリアン「写真新婦」の移動の歴史を取り上げ、日本
からの「写真花嫁」と対比しつつ、その実態を報告した。まず先行研究を紹介し、ついでメディ
ア資料や統計資料を用いて、「写真新婦」の多くが18歳前後、朝鮮半島東南側の港町近辺の出
身で、夫より概して高学歴で、その9割がハワイに渡ったと指摘し、その渡航動機やハワイでの
生活において、彼女らは想定されてきた以上に主体的であったのではないかと論じた。そして、
「写真新婦」らの体験は現在の「ビデオ新婦」らの問題と共通するものがあり、「写真新婦」の
研究に今日的意義があると論じた。フロアからは、「写真花嫁」の渡航期間とのずれに関する質
問や、出身地の偏りに対するコメントなどがあった。
2.小沼英明「明治大学日系アメリカ人留学生とアメリカンフットボール:日本のアメリカン
フットボール伝来と日系アメリカ人の関係」
小沼英明会員は、アメリカンフットボールを事例にして、関係者への面接聞き取り調査をもと
に、日本のスポーツ揺籃期に日系アメリカ人二世が果たした貢献を解明し、正しく評価すること
の重要性を論じた。まず1934年に行われた日本最初のアメリカンフットボール公式戦を紹介
し、明治大学のアメリカンフットボール部創設とハワイ移民の関係を述べ、さらに1930年代に
なぜ二世の日本留学がさかんになったか、なぜチーム育成と日米交流試合にアメリカ大使グルー
が積極的に関与したかなどについても、要因を分析した。さらにアメリカンフットボール草創期
に活躍した二世のその後の軌跡も小沼会員作成のビデオを用いて紹介した。フロアからは野球と
の対比や、日本国内の反響についての質問があった。
3.森 仁志「ハワイ日本文化センターの危機̶再創造/想像されるエスニック・コミュニティ
と文化」
森 仁志会員は、2002年に発生したハワイ日本文化センター売却問題を事例に、参与観察に
よって、現在のハワイのジャパニーズが直面したコニュニティの存続問題と、次世代の若者たち
よって、現在のハワイのジャパニーズが直面したコニュニティの存続問題と、次世代の若者たち
の、従来とは異なるエスニシティ観について報告した。まず文化センターについて説明し、売却
問題に対する「センターを守る会」の活動を概観した。そして、活動家のあいだに、次世代の
ジャパニーズにコミュニティへの帰属意識が薄れているという危機意識が生まれたと指摘した。
しかし、森会員は、数名の被観察者の日常の言動から、次世代の若者のジャパニーズ文化とのか
かわりを抽出し、かれらのエスニシティ、ジャパニーズ性、文化観を分析して、ジャパニーズ文
化に対するかかわりの可変性と多様性を認識する必要があると論じた。フロアからはハワイの
ニッケイ文化と日本発のジャパニーズ文化とを区別して扱うべきではないかというコメントがあ
り、活発な議論が展開された。(以上3報告・文責:粂井輝子)
B会場 司会:アンジェロ・イシ
B会場では、ノンフィクション作家の佐渡拓平さんと、JICA横浜̶海外移住資料館の小嶋茂さん
のお二人から示唆に富んだご報告をいただいた。佐渡拓平氏は「『大和コロニー会』前史」とい
うタイトルで、様々なエピソードを紹介しながら、明治時代に出稼ぎ目的でアメリカ本土に渡っ
た人たちが形成し、間もなく100周年を迎える大和コロニーについてディテールにこだわった
発表をした。「コロニーの人たちの歩みが、改めて見直され、研究者の人たちの検証がなされる
ものと期待している」という佐渡の言葉からは、長年に渡ってこのコロニーに注目して来た者な
らではの思い入れが伝わってきた。 他方、小嶋 茂氏は「Festival, Taiko, Nikkei --文化の伝承、変容とアイデンティティ」という
タイトルで、ブラジルの日系移民の芸能祭について、豊富な映像資料を提示しながら紹介した。
「祭り」、「タイコ」、そして「日系人」という順番で連鎖的に関心が広がったと振り返り、
様々な人や団体によるnikkeiの定義を比較分析した。小嶋によれば、「北米においても若い世代
の中から、南米におけるようにnikkeiを使い始めている三世以下の世代が現われ始めており、少
しずつ受け入れられつつあるように見える。」実はブラジルの日系移民も、佐渡が紹介した米国
の「大和コロニー」と同じように、間もなく(2008年に)100周年を迎える。また、小嶋の
発表は、ブラジルの事例を中心にしながらも、アメリカとの比較を試みていた。このように両発
表とも相互補完的な側面が強く、北米と南米の移民を比較する上でも有意義であり、熱心に聞き
入っていた学会員のみなさんにとっても充実したセッションであったといえよう。
(文責:アンジェロ・イシ)
C会場 司会:白水繁彦
1.永田貴聖「個別事例からみる在日フィリピン人の社会関係の変遷̶ 「90年」を境にして」
本報告は、永田氏がこれまで続けてきた80年代以降の来日フィリピン人女性の聞き取りや参与
観察等による調査のうち、今回は、ある日比混血女性に焦点を当て、彼女が、既に定住している
フィリピン人や日本人との間で形成している社会関係についての分析である。氏は本研究の特色
を、従来の在日フィリピン人研究がフィリピン人の集まる集団の機能を考察してきたのに対し
て、本研究は在日フィリピン人の「個別性」に注目し、複数の錯綜する関係を構築するプロセス
として捉えたいとしている点であるという。報告では、来日前後の、社会関係を織りなす過程が
紹介され、彼女の適応のストラテジーも見て取れる報告であったし、調査者である氏の個人的
「関わり」の持つ意味の重要性にも言及された。ただ、報告の目的がいまひとつ明確でなく、ま
た、氏のいう関係や社会関係がどのような「関係」であるのか明確ではないようであり、フロア
から質問がなされた。とくに、社会関係は主要コンセプトでもあるのでいっそうの洗練が必要で
あろう。今後長く個別調査が続けられる由だが、越境的な関係の構築を、自ら関わりながら事実
に即して説明しようという氏の方法は注目に値する。フロアとの活発な議論がなされた。参加者
19名。
2.小林孝広「在日フィリピン食料雑貨店サリサリストアに関する予備的考察̶日本人夫の協力
によるサリサリの展開」
本報告のねらいは、移民の多様化、移民の女性化が言われるなか、80年代以降著しい伸びを見
せる来日フィリピン人女性の定着のプロセス、そしてその戦略を詳細なケーススタディを展開す
ることで明らかにし、もって異文化接触の境界状況について検討することであるという。ケース
として取り上げられたのは氏が参与観察を続けてきた一つのサリサリストアである。定住化の進
展にともない、さまざまなサリサリの形態が出現しつつあるが、氏が紹介するのは日本人の夫が
経営に参画しているやや大規模な例である。氏の報告のなかでは、エスニック・ビジネスとして
のサリサリストアの持つ様々な側面のうち、情報交換、情緒の交換の「場」、すなわちメディア
としての機能についての言及が興味深かった。
全体に、詳細で生き生きとした報告であり、フロアの関心を大いに引いた。ただ、研究の本
来の目的である異文化接触の境界状況の検討については、まだ先の話のように感じた。フロアか
らも指摘があったように、今後、日本内外のいろいろなエスニック集団のエスニック・ビジネス
のありかたやお金の流れの研究にも目配りしながらケーススタディを積み重ねられる必要があろ
う。フロアとの間で活発な議論が展開され、有意義なセッションであった。参加者26名。(以
上2報告・文責:白水繁彦)
上2報告・文責:白水繁彦)
ラウンドテーブル
移民研究における「出身地と定着地」 発題者:筒井正
少人数でのラウンドテーブルというのは移民学会で初めての試みであり、最初にこれを企画した
木村健二会長から、その趣旨が説明された。ついで発題者の筒井正氏が、これまで研究されてき
た地元愛知県の海部・津島地域からカリフォルニア地方のウォルナッツグローブに渡った移民の
移住過程を提示し、とくに同郷人が関わる「旅館」や「クミ」の果たした役割を強調した。そし
てこれまで出身地による移民の特色を分析した研究は少ないとし、比較の観点から「出身地と定
着地」の対応関係を明らかにすることが求められるとした。小さな会場に予想以上の参加者をみ
て、会場からは「定着地」という言葉の使い方や、この種の研究自体の重要性の意味、出身地や
定着地のスケールの問題についてなど、多くの意見や感想が出されたが、限られた時間で当然論
議を尽くすことは出来なかった。しかし、共通テーマで意見交換を主とする場を今後も大会で設
けることは大切だと感じた。
(文責:飯田耕二郎)
(お詫びと訂正)郵送されたニューズレター43号に、ラウンドテーブルの記事が掲載されてい
ませんでした。お詫びし、訂正いたします。
●開催校企画「地域における外国籍住民との共生をめざして」
冒頭の村井忠政(名古屋市立大学)による開催校企画の趣旨説明に続き、愛知県西尾市の公営団
地における日系ブラジル人住民と地域住民との共生をめぐる取組について山本かほり(愛知県立
大学)が報告、ついで西日本最大のフィリピン人集住地域である愛知県名古屋市の繁華街「栄東
地区」におけるフィリピン人住民と地域住民との共生の取組について高畑幸(広島国際学院大
学)が報告した。 これらの報告でとりあげられた事例は、地域社会での共生が比較的うまく
行っているケースであるが、その原因はどこにあるのかを明らかにし、いかなる条件が共生に
とって必要なのか、また残された課題はなにかついての考察がなされた。次にこれらの報告をふ
まえて、山口博史(名古屋大学)と菊地夏野(名古屋市立大学)によるコメントがなされ、休憩
をはさんで再会された全体討議では、フロアから多数の活発な質問が寄せられ幕を閉じた。当日
は非会員の参加も多く170名を擁する会場がほぼ満席になるほどの盛況であった。(文責:村井
忠政・名古屋市立大学)
________________________________________
● 大会シンポジウム グローバリゼーションと移民:国境を越える移民と市民権
司会・コーディネーター:村川庸子
今回のシンポジウムでは、昨年に引き続き「グローバリゼーションと移民」をテーマに掲
げ、「市民権」をキーワードにアメリカ、フランス、日本の移民政策・市民権制度の「今」を比
較社会・比較文化的視点から考察することを企画した。
第一報告の江成幸氏(三重大学)「政治化するメンバーシップ−合衆国メキシコ移民の労
働・福祉・教育」では今年5月の包括的移民法案の連邦上院通過に至る経緯とこれを方向付けた
要因が、移民受入国アメリカの国内事情(移民労働力への依存、対テロ戦時下での兵員不足、
等)、送出国メキシコ側の事情(移民への経済的依存、等)と米墨外交関係という重層的な関係
性において整理された。1990年代の米国の移民政策の転換と福祉コストの削減が移民の市民権
取得の必要性を増し、メキシコ側が二重国籍を容認する。国境警備の強化が非正規移民の国内残
留を増加させるが、一方で米国市民権をもつ第二世代が大きな政治勢力となりつつあることが
ブッシュ政権の移民政策に大きな影響を与える。移民の統合を謳うこの国の移民の受入/排除の
システムのアイロニーが明示的に表れた。
第二報告の森 千香子氏(南山大学)「フランス移民問題の変容と『内なる敵』の表象−イ
スラーム、植民地主義、『暴動』」では、タテマエとしては「民族・人種をベースとした統計さ
え国家レベルではとられ」ないほどに「『個人』が『市民』として平等に扱われることを国家原
理とするフランス」で、近年、「移民」が「内なる敵」として問題化されていく状況が示され
た。特に1990年代後半から2000年にかけて顕著になった移民第二世代の「宗教への回帰」現
象、大都市郊外の移民集住地区のゲットー化と民族対立、若者の抵抗と、我々の記憶に新しい
「移民」(この国では存在しないはずの)の暴動に至る社会的背景が鮮やかに浮かび上がった。
第三報告の淺川晃広氏(名古屋大学)「日本への移民と日本国籍」において刺激的であった
のは、第二次大戦直後に一律に日本国籍を喪失した旧植民地出身者が戦後に帰化による国籍取得
を目指したことから、「制度的にも認識的にも混乱をきたした」、という指摘である。即ち、件
数こそ少ないが戦前の移民と昨今の「ニューカマー」の間にこの時期の「移民でない者の帰化」
が挿入されることで、「本来的な移民と帰化の明示的関連性」の不連続性が生まれたとする指摘
である。アメリカにおいても同じ第二次大戦中にアメリカ生まれの日系二世が米国市民権を「放
棄」し、 native American alien という特異な立場に置かれたことが思い起こされた。
「国籍」=「市民権」と言われる米国、タテマエとしての「個人」の平等を堅持するフラン
スの移民政策と市民権制度、特別外国人問題を抱える日本の帰化制度、3つの移民受入国の比較
スの移民政策と市民権制度、特別外国人問題を抱える日本の帰化制度、3つの移民受入国の比較
は、小倉充夫(津田塾大学)のコメントにより旧植民地の被支配民族の問題、即ち、国籍と市民
権の問題が外から規定されることになった旧植民地の状況が提示されることで更に重層性を増し
た。例えば、米国により「テロ支援国家」に指定されたスーダンで、それまで国境や国籍の有無
を殆ど意識していなかった人々が、国境を越えることや国籍の有無を意識させられる、民主化が
押し付けられ選挙が行われたモザンビークでは、誰が選挙権・被選挙権を持つか、即ち誰が国民
かを確定することを迫られる、等々、グローバリゼーションが個人のナショナル・アイデンティ
ティに及ぼす影響が全く異なる角度から示された。
最後に、坂口満宏氏(京都女子大学)が在日コリアンの中から、自らの歴史性を根拠に特別な権
利としての日本国籍の取得を目指すとともに民族的出自を明らかにし、日本社会の中で不幸な歴
史を克服する取り組みが始まっていることを指摘した。このような在日の動きがニューカマーや
在日ブラジル人に影響を及ぼす可能性に言及しつつ、我々が特定の一集団だけに注目するのでな
く、常に複数の移民集団をからめて議論することの必要性を指摘した。
フロアからの質問も相次いだが、字数の都合で割愛させていただく。「時間が短すぎて残
念」という不満の声も多く聞かれた。今後につないで行きたい。 (文責:村川庸子)
________________________________________
■事務局からのお知らせ
●年会費納入のお願い
2006年度分の年会費6,000円を下記郵便振替口座へお振込みください。
加 入 者 名 日本移民学会
郵便振替口座 00960-5-95922
●住所や所属に変更のある方は、下記事務局までご連絡ください
〒359-1192
所沢市三ヶ島2−579−15 早稲田大学人間科学学術院 森本研究室
日本移民学会事務局
℡/FAX:04-2947-6789 e-mail:[email protected]