熊本市立力合小学校 [PDF:220KB]

熊本市立力合小学校
1 指導方法の工夫
(1) 聞くことの活動 <英語をたっぷり「聞かせる」活動の工夫>
英語をたっぷり「聞かせる」活動とは、英語を「話す」ことを急がず、英語をたくさん聞かせ
て自然と子どもの口から出てくるようにすることである。視点を変えながら同じ単語や表現に繰
り返し何度も触れさせ、慣れ親しませることである。子どもには、何度も聞いて慣れ親しんだ英
語を、実際のコミュニケーション活動や友だちとのやり取りで「使ってみたい」という意欲をも
たせたい。
「聞くこと」が不十分な段階で、無理に言わせようとするのは避けたい。英語をたっぷ
り「聞かせる」ためには、ゲームなどの楽しい活動が不可欠であると考えて、授業づくりと教材
開発に取り組んだ。
① ゲームや活動の工夫を通して
「英語活動」が好きな理由として、多くの子どもが「ゲームが楽しいから」と答える。それで
は、どんなゲームが子どもの学習意欲を掻きたて、コミュニケーションの力を伸ばすことにつな
がるのだろうか。
「聞くこと」に注目して活動内容やゲームを見直した例を紹介する。
英語をたっぷり「聞かせる」には、まずは身近で易しい英語から始める。授業で行うゲームも
同様に、易しいものから段階を経て少しずつ発展的なものへと進めていく。例えば、
「かるた」な
ど聞いて反応する簡単なゲームから始め、動作やジェスチャーが加わり、さらに聞いた言葉をま
ねたりクイズに答えたりと、
発話につながるように徐々にレベルアップさせた。
そうすることで、
子どもたちは無理なく楽しみながら、自然に英語に慣れ親しむことができた。
このように、指導者においては明確な意図を持ってゲーム等の教材開発にあたることが大切で
ある。英語活動におけるゲームの開発とその提示方法は多様であり、指導者の個性や創造性・ア
イデアが反映される。工夫次第で多種多様なバリエーションの展開が期待できる。
ⅰ「聞く」こと中心のゲーム・・・かるた、ビンゴゲーム、ウィンドーゲームほか
ⅱ「聞いて動作」するゲーム・・・チャンツ、集中力ゲーム、キーワードゲームほか
ⅲ「聞いて発話」するゲーム・・・伝言ゲーム、3ヒントゲーム、買い物ゲームほか
ⅰ「聞く」こと中心のゲーム
「かるた」
「ビンゴゲーム」
聞いて反応するゲームの典
型。ビンゴゲームは、通常はビン
ゴ用シートを使うが、絵カードを
直接マス状に並べて裏返しな
がらやることもできる。
ⅱ「聞いて動作」するゲーム
キーワードゲーム
複数の単語の中からキーワ
ードを決め、それが聞こえた
ら「拍手」→「鳴き声」→「ジェス
チャー」→「復唱」など、発話につ
ながるように段階を踏んで
ⅲ「聞いて発話」するゲーム
伝言ゲーム(例:動物)
チーム対抗で、好きな動物
を伝言する。後になるほど
伝える動物名が加えられ増
えていく。
いく。
② クラスルームイングリッシュの活用を通して
クラスルームイングリッシュは、教室で指導者が指示したり、褒めたり、子どもが答えたりす
る時に使う英語のことである。
英語を使う雰囲気の中で、
自然な言語使用場面で英語を使えれば、
生きた英語を伝え合うよいチャンスとなる。クラスルームイングリッシュは、使い易い簡単な英
語が多く、授業の中でいつでも同じように何度も使うことができる。そういう意味で、このクラ
スルームイングリッシュも、英語をたっぷり聞かせる有効な手段と考えた。
私たちは、子どもたちに「英語を聞いて理解できた」
、また「自分が言ったことが相手に通じた」
ということを実感させたいと考え、授業の中で積極的に使えるように簡単で基本的なクラスルー
ムイングリッシュを精選した。
授業の「はじめのあいさつ」と「おわりのあいさつ」では、必ず英語を使うようにしているの
で、指導者も子どももすっかり慣れてきた。また、
“Please.”
“Thank you.”
“Here you are.”
“You
are welcome.”などは、何度も繰り返すうちに子どもの口から自然と出てくるようになった。
その他の英語については、
「使えるものを少しずつ増やしていこう」ということで、無理強いは
せずに、自信をつけながら少しずつステップアップしていくことで共通理解を図ってきた。指導
者の賞賛の言葉かけも、子どもの自信につながる大切な要素のひとつである。
2008年度
力合小学校
5,6年用
『クラスルームイングリッシュ』
○ゆっくりはっきり言ってみよう。
○子どもの様子を確かめながら使ってみよう。
・動作を加えたり絵を描いたりして子どもの理解を助けよう。
場合によっては日本語を効果的に活用しよう。
○文頭や文末にpleaseをつけて、丁寧な言い方に気を付けよう。
○使える表現から少しずつ挑戦していこう。
は、低学年用・中学年用・高学
年用の3種類を作成した。
指導者は、授業中に手元に
置いて使用する。長期間の使
【基本表現】
今日は何曜日ですか。
What day is it today?
金曜日です。
It's Friday.
今日の天気はどうですか。
How's the weather today?
晴れています。
It's sunny.
準備はいいですか。
Are you ready?
始めましょう。
Let's begin.
じめの挨拶」
「終わりの挨拶」
どうぞ。
Please.
とゲーム中に使用頻度の高い
積極的に使いましょう!
ありがとう。
Thank you.
どうぞ。(物を渡す時)
Here you are.
どういたしまして。
You are welcome.
すみません。
Excuse me.
手伝ってくれますか。
Can you help me?
テキストの6ページを開きなさい。
Open your textbook to page six.
もう一度言ってください。
Pardon?
CDを聞きなさい。
Listen to the CD.
私の後について繰り返しなさい。
Repeat after me.
私を見なさい。
Look at me.
手を挙げなさい。
Raise your hands.
静かにしなさい。
Be quiet.
目を閉じなさい。
Close your eyes.
【ほめる】
用にも耐えられるようパウチ
フィルム加工している。
両面印刷で、ウラ面には「は
指示の言い方を載せている。
“Raise your hands.”
“Good! ” “Good job!”
~ゲーム中はクラスルームイング
リッシュがたくさん飛び交う~
1つでも積極的に使いましょ う!
正解です。
That's right!
よくできました。
Good!/Great!/Good job!
いいアイディアですね。
Good idea!
すばらしい!
Wonderful!/Excellent!
Super!/Perfect!
おめでとう。
Congratulations!
ありがとう。
Thank you(very much).
高学年(5・6年用)のオモテ面
③ ALTとの効果的なTT(ティーム・ティーチング)を通して
TT授業では、ALTに子どもたちの表情を見ながら、何度もゆっくり発音してもらうように
した。さらに、日本語との違いについても示してもらうようにした。子どもたちの英語を聞き取
る力は、大人よりも敏感かつ柔軟であり、大人が考える以上に英語の音声を聞き分けたり、違い
に気付いたりできることに驚かされることも多い。
次に、英語と日本語の発音の違いを、子どもたち自身が気付くようにするために、授業の中で
担任はALTと次のようなやり取りをして、子どもたちに示した。
ALT:I like apples.(りんごの絵カードを示しながら・・・)
HRT:I like アップルズ.(わざとカタカナ読みで)
A:No. Apples. I like apples.
H:アップルズ・・・?
A:Listen carefully. I like apples.
H:A・・・Apples.
A:Yes. Apples. I like apples.
H:I…I like apples.・・・・
A:Good! I like apples.
H:I like apples. Thank you.
子どもたちは、
「Apples(りんご)」の発音を何度も繰り返し聞くことになる。カタカナ英語と
して慣れている発音や分かりにくい発音など、子どもたちにぜひ気付いてほしい発音の違いは、
担任がALTに何度も聞き直したり、わざと間違えたりなどして、子どもたちに繰り返し聞か
せるようにした。授業の中で、子どもが間違えた発音をした場合には、指導者の方から正しい
発音を何度か示し、子どもたち自身が気付くようにした。正しい音声を繰り返し聞かせること
が基本だが、わざと間違えた発音をしてその違いに気付かせる工夫をするなど、単調な反復練
習にならないようにする必要がある。初めのうちは、教師とALTとのやり取りをながめてい
るだけの子どもたちが、次第に自分でも口に出して言うようになり、ALTの口元を注意して
見るようになった。また、授業の振り返りの場面では、たくさんの気付きを発表できるように
なった。外来語にも興味が高まり、家庭学習で調べてくる子どもも増えてきている。
また、担任がわざと間違って発音したり、分からないことを尋ねたりすることを子どもたち
に見せることで、良き学習者としてのモデルを示し、子どもたちに間違いを恐れず、積極的に
コミュニケーションを図ろうとする態度をはぐくむという視点から、このようなALTとのや
り取りを展開している。
④ チャンツと英語の歌を通して
「チャンツ」とは、話し言葉のリズムやイントネーションを崩さないようにリズムやビート
にのせた歌のことである。
子どもたちは、
「チャンツ」を歌うことで、自然な英語のリズムを得ることができる。知らず
知らずのうちに「チャンツ」のリズムにのり、英語のイントネーションを体で感じながら、楽
しく生き生きとたくさんの英語に触れ、英語をたっぷり聞くこともできる。授業はじめのウォ
ームアップとして、授業の中に多く取り入れている。最近では、CD教材として数多く作られ、
市販もされているので入手し易くなった。英語の「チャンツ」には、比較的簡単な表現や単語が
繰り返し出てくるが、単元の内容を見ながら事前に試聴し、適切な曲を選定することも教材開
発のひとつと考えた。
一方、「英語の歌」は、
「歌わせる」ことだけにとらわれずに、まずはしっかり「聞かせる」
ことを意識して扱った。
「英語の歌」を初めて登場させた 1 年目は、子どもになじみのある歌
いやすいものをという視点で、1 か月に 1 曲選定した。だが、これが子どもたちにも指導者に
も無理をさせてしまった。全校集会で「歌わせよう」と考えた瞬間から、子どもも教師も「英
語を楽しむ」
「英語に親しむ」という本来の姿から数歩遠のいてしまった。
その反省に立って選曲した2年目の「英語の歌」は、
「聞くこと」を主眼にした内容になった。
授業の中では、
「英語の歌」をいきなり歌わせようとしないで、例えば歌詞の中から知っている
単語を見付させたり、繰り返しのフレーズだけを歌わせたりした。また、子どもたちは、
「英語
の歌」を朝の会や帰りの会で聞き、給食時間の放送で毎日耳にすることで、次第に慣れていく。
担任が毎日少しずつ歌詞の内容に触れたり、身振りやジェスチャー、手叩き・リズム打ちなど
を取り入れたりすることで、子どもたちは「英語の歌」に自然と慣れ、楽しむことができるよう
になった。