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第13号
MAR. 2009
ウムを回収し、ガラス固化体による貯蔵効率の大幅な向
上を図る。
三つ目の「ガラスメルター運転用物質輸送モデルと前
処理(白金族回収)技術の開発」は、現在開発中のガラ
ス固化用ガラスメルターの問題点の一つであるガラス溶
融物中の白金族を、新しい抽出剤を用いて抽出・分離す
る前処理システム技術を確立するものだ。また、ガラス
溶融過程の物質輸送のモデル化を行い、メルターの最適
運転システムに反映できる要素技術を開発する。
四つ目の「原子燃料サイクル評価のためのLCA(ライ
図:高速増殖炉と原子燃料サイクル
別の物質に変える技術を実現するものだ。
二つ目は「核種分離プロセスの高度化を目指した液々
向流遠心抽出装置の開発」。高レベル放射性廃液には
フ・サイクル・アセスメント)ツールの開発」は、原子
燃料サイクルに適用可能性のある各種技術について、
CO2 排出量のような環境負荷を指標としたLCAを実施
し、その有用性を評価するツールを開発するものだ。
MAのほかにセシウムやストロンチウムなどが含まれ
最初の3テーマは主に政府系の外部資金により推進し
る。寿命は短いが、発熱量が大きいため、廃液を閉じ込
ていく予定で、特に国が進めている軽水炉から高速増殖
めて貯蔵するガラス固化体に多くのガラスが必要とな
炉への転換計画等を見据えながら、そこに貢献できる基
り、大きな冷却用スペースが必要になるため、貯蔵効率
盤技術を提供していく。第4のテーマについては、当面
が悪くなる。そこで、油水向流遠心抽出技術を用いた独
は各分野の専門家を交えた研究会を開催、評価ツールの
自の溶媒抽出法により、廃液中のセシウムやストロンチ
コンセプトやフレームワークを構築していく予定だ。
【ポスターセッション】
若手研究員の活躍で企業人との
議論の輪が…
会場ロビーではポスター発表に多くの関心が集まった。
初めての試みで、とりわけパソコンや小型装置を使った
デモ展示コーナーでは、企業関係者らとの熱心な議論の
輪が生まれた。
出口の見えない世界不況のなかで、産業界の新規テー
マ探索の助けにしようというのが、研究者検索を工夫し
た「逆引きデータベースシステム」
。東工大の4附置研究
所に所属する125人の教授、准教授の論文と特許情報をも
とに、世の中の「新しい技術課題」との類似性をうまく
結びつけた。
「直接研究していなくとも、それに“近い”
研究者を推理し探し出せる」と、橋本泰一特任准教授ら
は成果に自信をみせた。会場ではパソコンを使い、技術
課題にどれだけ近いかの“近遠関係”を表示し、産業に
役立つことを強調していた。
「いつごろ臨床応用ができるの?」と見学者の質問が
相次いだのが、乳がんの励磁音響診断装置のコーナー。
デモ用に作ったウメボシ大のリンパ節に磁性流体を注入
し、交流磁界を当てることで発する特異な音波を探知し、
乳がんのリンパ節転移の有無を診断できる。上田智章特
任教授のグループが開発した。
これまでリンパ節転移を見るには色素判別法があるが、
外科手術が欠かせない。放射線方式だと管理棟が必要で
扱いにくかった。通常の手術室でも使える小型、簡便な
診断装置をとの臨床医師の要望を受け、小型磁気センサ
ーを実現させた。ラット試験で皮膚下3センチまで測定が
可能だ。
試薬はす
でに医用認
定済みだか
ら、「各大
学の倫理委
員会さえ通
れば臨床応
用は可能」
と上田特任
教授は実用間近を繰り返していた(写真中央が上田特任教授)。
米オバマ政権のグリーン・ニューディール政策の追い風
を受けて注目されているのが、伊藤雅一特任助教グルー
プの「大規模太陽光発電システムを設置する砂漠の評価」
。
大型の太陽光発電システムを砂漠に設置するには、地
盤の安定した「砂利の砂漠」が望ましい。米国の衛星画
像から適地を見分ける手法を考案し解析したところ、サ
ハラ砂漠の面積の約40%にあたる480万平方キロメートル
が利用できることがわかった。ここに実用規模のシステ
ムを設置すれば、370億キロワットもの膨大な発電が可能
になる。
「サハラ砂漠なら近くのチュニジアやアルジェリアに
向けての有力な電源になる。ゴビ砂漠で使えば、中国の
既設送電網で大都市北京の有力な電源にもできるはず」
と、夢ではない太陽エネルギーの可能性を語っていた。