ジャーナルエディターからみた ジャ ナルエディタ からみた よい論文とは

エルゼビア Author Workshop
2011年11月8日
ジャーナルエディターからみた
ジャ
ナルエディタ からみた
よい論文とは
Associate Editor of Biochemical Engineering Journal
Editor of Journal of Biotechnology
神戸大学教授
近藤昭彦
論文を書く との重要性
論文を書くことの重要性
Publish or Perish (出版か消滅か)!
版 消滅
■どんな優れたアイデアでも実際に文章にして論文として発
どんな優れた イデ
も実際に文章にし 論文とし 発
表されなければ、公には認められないし、消滅するしかない。
■どんなに素晴らしい研究成果がでようとも、それを論文にし
なくてはだめなのだ 科学的な研究とは 論文が出ることを
なくてはだめなのだ。科学的な研究とは、論文が出ることを
もって完成と考えなくてはならない。
– 寺田寅彦 –
■Work, Finish, Publish(はたらき、まとめ、出版せよ)
– M ファラデー –
■論文こそすべて !!!
科学者の評価は論文で決まる。
論文を書いてみよう
英語で論文書けるだろうか?
■最初から書ける人なんていません。
■とにかく書いてみよう。実際に書いて、先生に添削してもらう
■とにかく書いてみよう
実際に書いて 先生に添削してもらう
ことが、唯一の道です。最初の論文では、多くの場合、自分の
書いた文章がほとんどなくなってしまうほどです。
書いた文章がほとんどなくなってしまうほどです
■そして頑張って、5報程度の論文を書くと、基本的には、何と
か書けるようになります。
■でも、常に英語能力・表現力や、論文構成力に関して、自分
■でも
常に英語能力・表現力や 論文構成力に関して 自分
を磨き続けることが大切です。
論文作成のプロセス
Title & Abstract
Conclusion
Methods
Introduction
Results
Discussion
Figures/Tables
g
/
(your
(y
data))
論文を強く意識して研究を
進めることが重要!!
論文を強く意識して研究を進めよう (1)
論文はフィロソフィーを打ち出すもの
論文はフィロソフィ
を打ち出すもの !
中心主題は一つで全体を統一 (Begin at the end) !
■実験が終了してから論文を作成するのではなく、作成しながら実
験を行うことが重要です それは 研究とは新たなフィロソフィーを生
験を行うことが重要です。それは、研究とは新たなフィロソフィ
を生
み出す作業であり、データを集める作業ではないからです。
■フィロソフィーを良く伝えるためには、コアとなるデータを厳選して
■フ
ロソフ
を良く伝えるためには アとなるデ タを厳選して
図表にまとめ、分かりやすい順番で組み立てる(骨格を作る)ことが、
重要です。
重要です
■実験をした順番にこだわらず、時間をかけたデータでも重要でな
いものは 思い切 て捨てることが大切です
いものは、思い切って捨てることが大切です。
何を扱い、何を捨てるか → 全てを生かそうとすると、理解しにくく、
インパクトのない論文になることが多いです。
インパクトのない論文になることが多いです
論文を強く意識して研究を進めよう (2)
( )
デ タ 信頼性が論文 質を決める
データの信頼性が論文の質を決める!
■コアデータは再現性を慎重に確認し(再現性を担保するために
デ タは再現性を慎重に確認し(再現性を担保するために
求められる繰り返し実験回数は、分野によって違います)、磨き上
げます 分かり切 た結果がでることを繰り返すのは苦痛と思うか
げます。分かり切った結果がでることを繰り返すのは苦痛と思うか
もしれませんが、再現性の担保されないデータは信用されません。
■写真等を載せる場合には、その美しさにもこだわろう。
写真等を載 る場合 は そ 美 さ も だわろう
→ 美しい写真等は精度の高い実験のアピールとなります。逆
に質の悪い写真等を使 た場合 ジャ ナルによ ては 掲
に質の悪い写真等を使った場合、ジャーナルによっては、掲
載不可となる場合があります。
■論文では使わないが、論理構成において必要となる裏付けデー
タを蓄積しましょう。
論文執筆の前に
強力な論文とは → Novel, Clear, Useful, Exiting!
■novel, clear, useful, exiting なメッセージを発信している。
■論理構成がしっかりしている。
■他人本位(読者の視点に立った記述)で、エディター、レビュアー、
■他人本位(読者の視点に立った記述)で、エディタ
、レビュア 、
そして読者が科学的な重要性を容易に理解できる。
自分に問いかけよう → 全て“Yes”ならすぐに執筆開始!
■新しく、興味深い知見が得られているだろうか?
■現在ホットなテーマだろうか?
現在ホットなテ
だろう
■何か困難な問題に答えを提示しているだろうか?
■現時点で発表して良いだろうか?
時
表
良 だ
論文を投稿しよう (1)
適切なジャ ナルを選ぼう!
適切なジャーナルを選ぼう!
■研究領域の現在のトレンドやホットなテーマを、良く理解しま
研究領域 現在 ト
ドやホ トな
を 良く理解しま
しょう。
■どのジャーナルが適した投稿先か、しっかり選びましょう。
(Impact factor、ジャーナルのスコープ、どんなテーマの論文が
良く掲載され
良く掲載されているか、自分の論文の参考文献・・・・)
自
論
参考 献
■ Impact
p factorを気にしすぎないようにしましょう。
を気
すぎな
う
ょう。
■執筆前に、投稿しようとするジャーナルの Guide to Author’s を
じっくり読んで 体裁をきちんと守って執筆しましょう 同じジャー
じっくり読んで、体裁をきちんと守って執筆しましょう。同じジャー
ナルに掲載されている類似テーマの論文は大変参考になります。
論文を投稿しよう (2)
( )
フィロソフィ を明確にし
フィロソフィーを明確にし、一気呵成に書き上げよう!
気呵成に書き上げよう!
■執筆前に論文の骨格に関して、研究チームで綿密な討論をしま
■執筆前に論文の骨格に関して、研究チ
ムで綿密な討論をしま
しょう。
■論文執筆にとりかかったら、最初の草稿は、できるだけ一気呵
成に書き上げましょう(詳細は気にせずに)。
■推敲でブラッシュアップする過程では、少し時間をおいて、フレッ
シ な目で見るのも良いでしょう
シュな目で見るのも良いでしょう。
■また、ある程度出来上がった段階で、第三者的に読んでもらう、
■また
ある程度出来上がった段階で 第三者的に読んでもらう
しかもできるだけ多くの人に見てもらうようにしましょう(厳しい指摘
があっても絶対に腹を立てない!)
論文を投稿しよう (3)
( )
エディター・レビュアーは忙しい!→科学的な重要
エディタ
・レビュア は忙しい!→科学的な重要
性をつかみ易い論文を!
■エディター・レビュアーは忙しい。 Abstruct, Introduction,
Conclusionを読んだだけで、「何が問題で、何を行って、どの
様な
様なインパクトのある結果が得られたか」が良く分かるように
パ
あ 結 が得
が良
しましょう。
■論文を書いてジャーナルに投稿すると、審査され、大幅な
改訂を求められたり、掲載を断られる場合があります。 → そ
のこと自体が大きな勉強になります
■レビューにはきちんと答えましょう。論文を良くするチャンス
■レビ
にはきちんと答えましょう。論文を良くするチャンス
です。でもレビュアーが誤解している場合もありますので、そ
の場合は、きちんと丁寧に説明しましょう。
論文執筆の基本姿勢 (1)
基本: 正しく、分かりやすく、簡潔に!
(accuracy, clarity, simplicity)
■正確さは最優先であり、読者が誤解しない様に配慮しましょう。
■論文の基本骨格が論文の“分かりやすさ“を決めます(下図)。
■論文の基本骨格が論文の
分かりやすさ を決めます(下図)。
・森で迷子になるような論理展開にならないこと。
・論理がスムーズに流れる展開になっていること。
×
○
× 一件関係なさそうなことをいきなり述べる、
脇道からさらに脇道に、頭の中で補うことを求める・・・・
・執筆にあたって常に“骨格読み(骸骨読み)”をして推敲
すること。
■論文は文学作品ではありません。簡潔な表現が重要です。
論文執筆力の向上を目指して (1)
良い論文や表現を集めて自分のデータベースを
良い論文や表現を集めて自分のデ
タ
スを
作ろう!
■自分の領域において、優れた論文を見つけ、論文を執筆す
るという観点から(研究上の観点からではなく)、何回も熟読し
よう。
■優れた表現、使えるなと思った表現を集めて、自分独自の
優れた表現 使えるなと思 た表現を集め
自分独自
“表現に関するデータベース(使えるセンテンス集)”を作ろう。
■論文の書き方に関する書籍を読んだり、セミナー・ワーク
ショップに出て基本を磨こう。
ショップに出て基本を磨こう
■書く癖をつけよう。 研究は論文執筆で完結!
論文執筆力の向上を目指して (2)
簡潔で分かりやすいセンテンスを!
■ なるべく平易な単語と平易な表現を用いた短いセンテンス
を心がけましょう。
■短いセンテンスが、相互に密につながっている書き方が望
まし です。
ましいです。
■一つのセンテンスでは、一つの考え、または一つの情報を
伝えるようにしましょう。たくさんのことを一つのセンテンスで記
述することは避けましょう。
■良いセンテンスを集めて、それをまねましょう!
論文執筆の実際 (1)
Introduction :研究にどの様な意義があるかを伝える
■以下の点を明確にしましょう。
以
点を明確にしまし う
・何が問題か? ・今のところどんな解決法があるか?
・どれがベストか?
どれがベストか? ・それでもどんな限界があるか?
それでもどんな限界があるか?
・そしてあなたは何が成し遂げたいか?
■簡潔に述べる。歴史的なレッスンにならない様にする。
■結果・考察・結論等を混ぜ込まない。
結果 考察 結論等を混 込まな 。
■novel, first time, paradigm shift 等の表現を多用しすぎない。
■引用は重要なものにとどめる!
重 なも
ど る
論文執筆の実際 (2)
Results : 何を発見したのかを伝える
■研究から得られた主要な結果のみを示そう
■研究から得られた主要な結果のみを示そう。
・ということは全部の結果ではない。
→ 取捨選択が重要です。
・Methods sectionで記述した実験から得られた結果を
記載しよう。
■過去の報告と異なる結果や予想外の結果は強調しよう。
■統計的な解析は極めて重要である。
■統計的な解析は極めて重要である
■適切な対照実験を行うことが重要である。
■図で示すか、表にまとめるか
→ どちらが効果的か良く検討しよう。
論文執筆の実際 (3)
Discussion: 結果の意味や意義を伝える
■論文において最も重要な場所であり、多くの論文がDiscussionが
弱いために掲載不可となっている。
■以下の点を記述できているか。
・データが introductionで述べた問題や研究目的とどう関係し
・データが、introductionで述べた問題や研究目的とどう関係し
ているか。
・各データの意味や意義はどうか。
各デ タの意味や意義はどうか。
・各データは他の研究者の報告と整合する結果となっているか。
もしな て な のであれば、何故か。
もしなっていないのであれば、何故か。
・何か限界は無いか。
・論理的に結論を導き出せるか。
■してはいけないこと。
・結果から導き出せないところまで、飛躍して述べること。
結果から導き出せないところまで、飛躍して述 ること。
・突然新しいタームやアイデアを述べ出すこと。
論文執筆の実際 (4)
C l i
Conclusion:
■包括的かつ具体的な結論を示そう。
■どの様に利用や拡張ができるか、適当であれば示そう。
■将来の実験プラン(既に始めているかも含めて)を示そう。
■将来の実験プラン(既に始めているかも含めて)を示そう
■論文の要約はしない(要約はAbstractで)。
■インパクトの評価を行うことは避けよう。
■感覚的な表現は避けよう
■感覚的な表現は避けよう。
e.g. low/high, extremely, enormous, rapidly, dramatic,
considerably massive
considerably,
massive, major/minor
major/minor, ・・・・
→できるだけ定量的な表現を心がけよう。
よい論文をドンドン出しましょう!!
■どんなに素晴らしい研究成果がでようとも、それを論文にしな
くてはだめなのだ 科学的な研究とは 論文が出ることをもって
くてはだめなのだ。科学的な研究とは、論文が出ることをもって
完成と考えなくてはならない。
– 寺田寅彦 –
Associate Editor of Biochemical Engineering Journal
Editor of Journal of Biotechnology
神戸大学教授
近藤昭彦