コミュニケーションツールとしてのCG CG as a communication tool 宮田一乘* Kazunori MIYATA [email protected] 伊 藤 貴 之 ** Takayuki ITOH [email protected] * 北 陸 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 知 識 科 学 教 育 研 究 センター * Center for Knowledge Science, Japan Advanced Institute of Science and Technology ** 日 本 アイ・ビー・エム(株 ) 東 京 基 礎 研 究 所 ** IBM Research, Tokyo Research Laboratory 概要 CG技 術 の進 歩 とネットワーク速 度 の高 速 化 にともない、地 理 的 に離 れた空 間 をコンピュータとネ ットワークで構 成 される仮 想 空 間 内 で統 合 する、テレイマージョン(Tele-Immersion)の研 究 が現 実 味 を帯 びてきた。一 方 で、大 量 の画 像 データの中 から意 味 のあるデータを発 掘 するビジュアルデータ マイニングの研 究 は、 バイオサイエンスや気 象 学 などに おける多 元 解 析 のツー ルとして、今 後 重 要 度 が増 すと考 えられる。本 論 文 では、これらの技 術 動 向 に加 えて、テレイマージョンの環 境 下 で、協 調 しながらビジュアルデータマイニングする手 法 なども紹 介 し、コミュニケーションツールとしてのCG のあり方 を探 る。 Abstract Tele-Immersion realizes the combination of physically separated worlds in a virtual world created by computers and networks. It is an active research topic due to the reach of CG technology and fast computer network infrastructure. At the same time, visual data mining is focused as analysis tools of bioscience and weather, because it helps the exploration of semantics from enormous number of image data. This paper introdu ces the trend of such technologies and recent collaborated visual data mining technolo gies under tele-immersion environments. The paper also discusses about the future of CG te chnologies as communication tools. キーワード: テレイマージョン、アウェアネス、コミュニケーション、ビジュアリゼーション、ビジュアルデ ータマイニング Keywords: Tele-immersion, Awareness, Communication, Visualization, Visual Data Mining 1.はじめに であろう。 コンピュータネットワークの普 及 により、日 々の 一 方 で、仮 想 空 間 において、データ量 の指 数 コミュニケーション形 態 が、急 速 に電 子 化 、仮 想 関 数 的 な増 大 傾 向 は否 めない。よって、大 量 デ 化 されてきた。CG技 術 の進 歩 は、このコミュニケ ータから意 味 のあるデータを発 掘 するデータマイ ーションの仮 想 化 を更に加 速 させている。将 来 的 ニング、特 に視 覚 的 なデータマイニング(ビジュア には、地理 的に離れた空間をコンピュータとネット ルデータマイニング)が、今 後 重 要 度 を増 すと考 ワークで構成される仮 想空間 内で統合する、テレ えられる。 イマージョン(Tele-Immersion)技術 が確立される 本論 文では、これらの技 術動 向に加 えて、テレ イマージョン の環 境 下 で 、協 調 しな がらビジュア いる。デジタル化 されたコミュニケーションにおい ルデータマイニングする手 法 なども紹 介 し、コミュ て、喪 失 したアウェアネスを補 完 しようとした一 例 ニケーションツールとしてのCGのあり方を探る。 が、図 2に示 すような電 子 メールにおける顔 文 字 である。顔 文 字 は、プレインな文 章 では伝 えきれ 2.マルチメディアとビジュアルコミュニケーション ない書 き手 の喜 怒 哀 楽 や照 れなどの感 情 や、受 人は五感 を通じてコミュニケーションを行い、互 け取 り手 の誤 解 を招 かないような自 己 防 衛 的 な いの知 識 や経 験 などのシェアリングをしている。 手 段 として用 いられることが多 い。最 近 では、顔 マルチメディアと総 称 されている視 聴 覚 情 報 のデ 文 字 の発 展 形 として、電 子 掲 示 板 におけるアス ジタル技 術 の発 展 に伴 い、コミュニケーションの キーアートのように、感 情 を漫 画 的 な図 形 として 形 態 は変 容 しつつある。本 章 では、ビジュアルコ 表現することもある。 ミュニケーションを中 心 に、コミュニケーションとア ウェアネスの関係について述べる。 2.1 コミュニケーションの形態 (*_*) (+_+) (-.-) (-_-) (-_-;) (..) (._.) (;_;) (>_<) (@_@) (T_T) (^.^) (^^) (^^ゞ (^_-) (^_^) (^0_0^) (^O^) 人のコミュニケーションは、電子機 器の発展によ (^_^;) (^_^メ) (^o^) (^○^) (^。^) り、図1に示 すようにその形 態 を変 化 させてきた。 (ξξ_) ( _ ) ( _ ;) ( _ メ) ( o ) 図 1(1), (2)のような対 面・リアルタイムでのコミュ (・_・) ニケーション形態は、電 話の発 明により地理 的 に (゚ o ゚) 離 れた者 どうしの1対 1の会 話 を可 能 にした(図 1(3))。その後 、コンピュータとネットワークの発 展 (・o・) (゚゚) _(._.)_ (・・;) )^o^( m(__)m (ーー;) >^_^< (゚-゚) ^/^ §^。^§ (゚.゚) ^^; ^_^; *(T_T)* 図 2 顔 文 字 によるアウェアネスの補完 により、図 1(4)に示すような多 人数 の非 対面・非 リアルタイムでのグループ作 業 が可 能 になる。す 2.2 テレビ電話とアウェアネス なわち、グループウェアや電 子 メールによる、地 遠隔 地にいる人たちがリアルタイムで映像と音 理 的 制 約 や時 間 的 制 約 の壁 が取 り払 われたコミ 声 でコミュニケーションをとるインフラとしては、テ ュニケーションが実現したことになる。 レビ電 話 の歴 史 が古 い。コンピュータの普 及 によ り、テレビ電話はその形態を変えて、ISDN 回線を 用いたテレビ会議システムや、PC と CCD カメラに よるインターネットを介 した動 画 チャット、さらには 小型 CCD カメラ搭載の移動通信端末によるモバ イルコミュニケーションへとダウンサイジング、お よびカジュアル化してきている。 これらのテレビ電 話 (とその発 展 形 )のインフラ は、どちらかというと音 声 によるコミュニケーション が主で、映 像はコミュニケーションの補助として用 いられることが多 い。ただし、映 像 は多 くを語 るの 図 1 コミュニケーションの形 で、情 報 の付 加 価 値 は大 きく、伝 わる感 情 (好 き 嫌いの感情 など)のダイナミックレンジは拡大され しかし、機 器を媒 介したコミュニケーションには、 る。その一 方 で、会 話 に付 随 するノンバーバルな 従 来 の対 面 リアルタイムのコミュニケーションから 情 報 は、うまく伝 えることが出 来 ない。そのひとつ 重 要 な要 素 である、アウェアネス情 報 が欠 落 して の例 として、視 線 の不 一 致 が挙 げられる。すなわ ち、カメラとディスプレイを同 一 の場 所 に設 置 する 示 すように、互 いが伝 えようとするメンタルイメー ことが困 難 であるために互 いの視 線 が微 妙 にず ジの共通理解が重要である。 れることになり、正 確 なアイコンタクトを取ることが 情 報 の発 信 側 は、受 信 側 が発 信 側 のメンタル 出 来 ず、意 思 の疎 通 が難 しいものになっている。 イメージをよりよく理 解 できるように、言 語 情 報 に また、空間的な位置関係を感じ取ることが困難で 加 えて、身 振 りや図 などの視 覚 的 な情 報 を交 え あるため、アウェアネスを共 有できないことも問 題 ながら伝 えるビジュアルコミュニケーションの形 態 点 として挙 げられる。例 えば、会 議 に積 極 的 に参 を取 ることが多 い。共 通 のメディア基 盤 上 での各 加 しているのは誰 か、審 議 事 項 に難 色 を示 して メディアを媒 介 したビジュアルコミュニケーション いるのは誰 かといった情 報 は、空 間 を共 有してい は、高 度なデジタルコミュニケーションが可 能にな ないとなかなか伝わらない事柄である。 った現在では当然のように行われている。 テレイマージョン(Tele-immersion)とは、地 理 的 に離 れた空 間 にいる人 々が、あたかも同 室 に いるかのように自 然 に対 話 できるように、コンピュ ータとネットワークで構 成 される仮 想 空 間 を提 供 する仕 組 みである。テレビ電 話 の枠 組 みと大 きく 異 なるのは空 間 を共 有 するという点 にあり、これ を可 能 にしたのが、ネットワークとメディア技 術 で ある。なお、テレイマージョンは、米 国 における次 世 代 ネットワークのコンソーシアムであるインター 図 3 コミュニケーションとメンタルイメージ ネ ッ ト 2 (http://www.internet2.edu/) で の 重 要 な アプリケーションのひとつとして考えられている。 ここで重 要 となるのが、伝 えるべき情 報 をいか テレイマージョンの前 身 となるテレコミュニケー にしてメディアに載 せるか、という情 報 デザインの シ ョ ン に 関 す る 研 究 と し て は 、 Bellcore の 発 想 である。我 々は、膨 大 な情 報 デザインに取 り VideoWindow[Video] や 、 ト ロ ン ト 大 学 の 囲 まれて生 活 している。 TVのリモコンスイッチ、 Hydra[Hydra] 、 N T T の ClearBoard[NTT] な ど が 駅 や食 堂 での券 売 機 、地 下 鉄 やバスの路 線 図 、 挙げられる。ClearBoard では、透明なガラス板の WEBサイトなど、情 報 の発 信 側 は受 け取 り側 の 上 に描 画 しガラス板 を通 して会 話 するメタファ一 情 報 の理 解 を考 慮 しながら、伝 えるべき情 報 (コ に基 づき、視 線 の一 致 を伴 う2地 点 の遠 隔 共 同 ンテンツ)を分 析 ・整 理 し、情 報 をデザインしてい 作業を実現した。ClearBoard では、アイコンタク る。メディアを介 して、互 いの居 通 理 解をより深 め トが取 れるだけではなく、より上 位 概 念 のゲイズ るような情 報 デザインが、今 後 一 層 重 要 度 を増 アウェアネス、すなわち、協 同 作 業 面 (この場 合 すだろう。 はハーフミラ ーのスクリーン)における相 手 の 注 視 箇 所 が把 握 できるようになった。一 方 、Hydra 3.テレイマージョンとメディア技術 では、自 分 が対 話 する相 手 の数 だけカメラとモニ テレイマージョンを支 えるメディア技 術 の主 たる タを机 上 に並 べ、遠 隔 地 の相 手 と机 を取 り囲 ん ものとしては、バーチャルリアリティ(VR)技 術 とコ でいるような状 況 を再 現 し、アウェアネスの補 完 ンピュータビジョンが挙げられる。 を試みた。 3.1 VR 技術 2.3 ビジュアルコミュニケーションと情報デザイン 人 と人 とのコミュニケーションにおいて、図 3 に VR 技術は、CG の父と呼ばれる I. Sutherland が 1968 年 に 試 作 し た ヘ ッ ド マ ウ ン ト デ ィ ス プ レ イ (HMD)を発 端 としており、臨 場 感 の ある視 覚 情 Visualization グループでは、Deep Vision Display 報の表 示 法 や、触覚 や力 覚のフィードバックの手 Wall(DVDW: http://scv.bu.edu/Wall/)と呼 ぶ、 法 など、人 間 の五 感 へ作 用 するデバイスの開 発 複数の PC と液晶プロジェクタによる大型高精細 を中心に研究がなされている。 ディスプレイを開 発 している。図 5,6で用 いられ 体験 者を取り囲む多 面投 影による没 入 型ディ ている液晶プロジェクタの解像度は 1024x768 で スプレイである CAVE が 1991 年にイリノイ大学に あり、2x2 枚の投影面を持つ場合、DVDW 全体と て開発された。これは、体験者の周 囲に3mx3m しては 2048x1536 の解像度を持つ。DVDW の1つ の平 面 スクリーンを正 面 、左 右 面 、床 面 の4面 に の特 長 に、スケーラブルな解 像 度 の向 上 があり、 配 置 し 、ス テレオ液 晶 プロジェクタ でそれらの 投 現在では 4x3 枚の投影面で 4096x2304 の解像 影面に映像 を表示する広視野角の表示システム 度を持ち、4.6m x 2.4m の大きさのスクリーンが開 である。日 本 でも、これを拡 張 した5面 投 影 の 発中である。なお、各プロジェクタは1台の LINUX CABIN(CAVE に加 えて天 井 に投 影 )、6面 投 影 PC でドライブされている。 の COSMOS が東大で開発された。HMD や CAVE は、もともとスタンドアロンの VR 空間の表示用デ バイスとして利 用 されてきたが、これらを高 速 ネッ トワークで結 合 し、1つの共 有 空 間 を実 現 しようと いうのがテレイマージョンの大 きな目 標 である。 (図 4 参照) 図 5 Deep Vision Display Wall 複 数 の液 晶 プロジェクタ(2x2)により、大 型 で高 精 細 な画 像 を表 示 できる。 (画 面 はサメの遊 泳 の CG アニメーション) 図 4 テレイマージョンの概 念 図 高 速 ネッ トワ ーク で結 合 さ れた仮 想 空 間 によ り 、 空 間 の 共 有 、 お よび 意 識 の 共 有 を 行 い 、 遠 隔 地 間 の自 然 なコミュニティを実 現 する。 人間の両眼での水平視野角は 240°ほどであ るが、この視 野 をどれだけ映 像 でカバーできるか が臨場感の要因となる。HMD や CAVE などは、 体 験 者 の眼 や身 体 の周 囲 を物 理 的 に映 像 空 間 で取り囲 むことで、視 野 角 の広 い映 像 を表 示 して いるが、一 方 で、大 型 のスクリーンを前 面 に設 置 し、視野角の広い映像を表示する試みもなされて いる。 ボ ス ト ン 大 学 の Scientific Computing and 図 6 Deep Vision Display Wall の映 像 投 影 部 2 台 の 液 晶 プ ロ ジ ェ ク タ が 対 に な り 、 Deep Vision Display Wall のスクリーン上 における1ブロックの映 像 を投 影 する。 ステレオ画 像 生 成 の生 成 には、従 来 のような 高 価 なグラフィックワークステーションを用 いてお らず、LINUX PC のクラスタを用いることで廉価な システムを実現していることも特筆 すべきことであ る。この場合、PC 間の描画のシンクロを取らない と バ ラ バ ラ な 画 像 に な っ て し ま う 。 DVDW で は 、 FrameLock と呼ばれるソフトウェアによるシンクロ を取っており、また、PC クラスタ内の分散レンダリ ングのプラットフォームには、WireGL を用 いてい る。 図 7 Virtualized Reality の 3D Room の壁 面 4面 の側 面 の壁 にそれぞれ10 台 、天 井 に9台 、合 計 49台 の 3.2 コンピュータビジョン カ ー ネ ギ ー ・ メ ロ ン 大 学 ( Carnegie Mellon University ) の 金 出 武 雄 教 授 の 研 究 グ ル ー プで CCD カメラが、図 中 の丸 い穴 を 通 して室 内 に向 けられて設 置 されている。3D Room の大 きさ は、20 feet x 20 feet x 9 feet。 は、1993 年以来、Virtualized Reality と呼ばれる コンピュータビジョンの技術を開発している (http://www.ri.cmu.edu/labs/lab_62.html)。この 技術では、スポーツのような時系列 で変化する動 きのある場面を同時に複数台のカメラで取り囲む ように撮 影 し、撮 影 されたデジタル映 像 に「見 え 方 」の情 報 を付 加 して 、時 間 的 お よび空 間 的 に 自 由な位 置 からの再 生 を可 能にした。これは、複 数 の カ メラ で 撮 影 さ れ た 画 像 か ら 、 三 角 測 量 の 原 理 で3次 元 データを求 め、それらのデータをマ 図 8 Virtualized Reality の3D Room の裏 側 壁の裏 側に CCD カメラが設置されている。CCD カメ ラは PC に接続され、リアルタイムで動画を取り込 め る。また、音 も同 時に取り込めるようになっている。 ージして、撮 影 されたシーンの3次 元 モデルを復 元 するものである。データのマージングの際 には、 ノ ー ス カ ロ ラ イ ナ 大 学 チ ャ ペ ル ヒ ル 校 ( The 3次 元 空 間 をボク セ ル( Voxel: サ イ コ ロの よ うな University of North Carolina at Chapel Hill)のフ 小 立 方 体 )に分 割 し、そのうちのどこに表 面 があ ックス(Henry Fuchs)教 授 の研 究 グループは、多 るか(どこが見 えているか)を求 めている。この技 視点カメラと特殊な光(Imperceptible Structured 術 は、アメリカンフットボールの試 合 に適 用 され、 Light: ISL)の組 み合 わせで、物 体 表 面 の3次 元 タッチダウンの瞬 間 の多 視 点 からのシーン再 現 の凹凸形状を計測するシステムを開発した などを可能にした[Kanade]。 [Fuchs]。このシステムで用いられている ISL とは、 図7,8は、3D Room と呼ばれる CMU 内の施 設 で、部 屋 の4面 の側 面 の壁 にそれぞれ10台 、 人 間 の眼 に知 覚 出 来 ない速 さで明 滅 する光 (高 速に明滅するので連続した光に見える)である。 天井に9台、合計49台の CCD カメラが、図中の 3次 元 形 状 を計 測 するには、複 数 のカメラで撮 丸 い穴 を通 して室 内 に向 けられて設 置 されてい 影された画 像間 の対 応 点を求め、カメラからの距 る。この施設内で、Virtualized Reality の研究が 離 を求 める必 要 がある。物 体 表 面 になんらかの 進 められており、ダンスのシーンやバスケットボー 目 印 (例 えばチェッカーパターンや、ゼブラパター ルを楽 しむシーンなどを取 り込 んで実 験 を進 めて ンなど)が付 いていると、対 応 点 が比 較 的 簡 単 に いる。 求 められる。フックスらは、この目 印 となるパター ンを対象物体に ISL で投影し、リアルタイムで距 離 画 像 を求 めた。ISL は人 間 の眼 に知 覚 出 来 な い光 の明 滅 なので、視 覚 的 に非 浸 襲 である。こ のシステムを用 いて部 屋 の中 を測 定 することで、 4.ビジュアリゼーションとビジュアルデータマイニ 壁 面 の凹 凸 をリアルタイムで計 測 し、柱 やパイプ ング などの出 っ張 りがある壁 に対 しても、歪 みのない “seeing is believing” - 「百 聞 は一 見 にしか 映 像 を投 影 できるようになった。すなわち、部 屋 ず」。人 の視 覚 情 報 による理 解 力 を示 すことわざ の壁 全 体を大きな平面 ディスプレイとして扱うこと である。コンピュータを用 いて大 量 のデータを画 が出来るのである。 像 に変 換 し(ビジュアリゼーション)、視 覚 化 され たデータから意 味 のある情 報 を探 り出 す(ビジュ 3.3 イメージベースドレンダリング 実 世 界 をコンピュータ内 に取り込む技 術 である イ メ ー ジ ベ ー ス ド レ ン ダ リ ン グ ( Image Based アルデータマイニング)技 術 は、多 次 元 情 報 から 的 確 に必 要 な情 報 を抽 出 し、人 間 の判 断 を補 助 するものとして重要な技術であると考える。 Rendering : IBR)やイメージベースドライティング (Image Based Lighting : IBL)の技術を用いて、 仮想空間を構築する研究が進められている。 4.1 コンピュータによるデータの視覚化 コンピュータによる大量 データの高 速処理 は可 IBR および IBL の研究成果は、Paul Debevec 能 であるが、人 間 がそのような膨 大 なデータを瞬 (http://www.debevec.org)を中心にした研究グル 時に的 確に理解することは困難である。一 方、画 ープのものが有名である。Debevec らは、多数の 像 化 されたデータに対 する人 間 の理 解 力 は、き 写 真 を元 に撮 影 時 の照 明 条 件 を仮 想 空 間 内 に わめて高 い。例 えば、天 気 図 から明 日 の天 気 を 再 構 築 して、CG 物 体 のリアルな合 成 を試 みた。 予 想 したり、CT 画 像 から病 巣 を見 つけ出 したり また、2002 年の SIGGRAPH においては、仮想空 することができる。 間での照明条件をコンピュータ制御の LED 光源 コンピュータを用 いて、複 雑 な現 象 や大 量 のデ で再 現して実世界での照明に用いる、 ータ、目 に見 えないデータを人 間 に理 解 しやすい LightStage3 と 呼 ば れ る シ ス テ ム を 発 表 し た 形 に視 覚 化 する技 術 が、コンピュータ・ビジュアリ [Debevec]。このシステムにより、現 状 のクロマキ ゼーション(computer visualization)である。コンピ ー合 成 にとって変 わる、新 たな実 世 界 と仮 想 世 ュータ・ビジュアリゼーションは、その目 的 に応 じ 界 とのシームレスな統 合 が可 能になると考 えられ て、以下のような分類ができる[Viz]。 る。これらの研 究 も、テレイマージョンを支 える技 気 象 情 報や流 体 解 析の結 果などの複 雑な 術となる可能性を秘めている。 数値データの可視化など IBR, IBL では、撮影された風景を光源と仮定し て、仮想空間内の CG モデルの照明を行うが、そ サイエンティフィック・ビジュアリゼーション: エンジニアリング・ビジュアリゼーション: のためにはダイナミックレンジの広 い画 像 フォー 振 動 解 析 や応 力 解 析 のような、設 計 に関 マ ッ ト が 必 要 で あ る 。 そ こ で 、 HDR image わる測定・解析データの可視化など (High-Dynamic Range image)と呼 ばれる、各 ピ メディカル・ビジュアリゼーション : クセル値を小 数 値 で表 す画 像フォーマットが提 案 CT 画 像 の表 示 や器 官 の視 覚 化 のような されている。 医療診断のための情報の可視化など IBL の手法は、最新の RenderMan(CG 映像を ビジネス・ビジュアリゼーション: 生 成 す る た め の ソ フ ト ウ ェ ア : RenderMan プレゼンテ ーション 支 援 を主 と し た統 計 結 Release11, https://renderman.pixar.com/)に採 果などの可視化など 用 されており、また、一 部 のグラフィックカード上 では、リアルタイムに IBR の画像を表現できる。 エデュケーショナル・ビジュアリゼーション: わかりやすい教 材 の提 供 のための可 視 化 など している。その後、該当 するウェブページ群は、す コンピュータ・ビジュアリゼーションは、対 象 の時 べてオープンソースの API マニュアルのページで 空 間 のスケールに依 存 せずに、好 きな見 方 で、 あることが判 明 した。このような熱 心 な潜 在 的 閲 対 象 を壊 さずに、高 い再 現 性 で繰 り返 し探 ること 覧 者 によるアクセスは、従 来 のアクセス分 析 ツー が可 能 である。したがって、理 想 的 には、コンピュ ルによる棒グラフ表示やランキング表示で発見す ータ上 で 理 論 と 実 験 を 対 置 する こ とが可 能 に な ることは困 難 であるが、視 覚 的 にデータマイニン る。 グすることで容易に発見できる[Itoh]。 このように、複 雑 なデータをビジュアル化するこ 4.2 ビジュアルデータマイニング 大 量 のデータが与 えられたときに、この中 から とにより、潜 在 化 した情 報 や大 局 的 な情 報 を直 感的に把握することが可能になる。 人間にとって意味のある情報を得るためには、単 にデータを画 像化するだけでは不 十 分である。人 間 がデータの性 質 を認 識 しやすいように画 像 化 する技 術や、画 像からさらに情 報を探索 するため の技 術 、またそれらの技 術のためには人 間・デー タ・可 視 化 画 像 間 のインタラクションの技 術 が必 要 になる。このような技 術 を兼 ね 備 えた、「一 歩 進 んだビジュアリゼーション」 こそが、ビジュアル データマイニングである。 図 10 ウェブサイトへのアクセス分 布 の表 現 例 灰 色 のドットは、該 当 する時 間 帯 にアクセスがな かったウェブページを表 している。赤 色 の棒 は、 該 当 する時 間 帯 にアクセスがあったウェブページ を表しており、その高さがアクセス数 を表 現 してい る。灰 色 や 赤 色 の ドット を囲 む長 方 形 の境 界 線 は、ディレクトリ階層を表わす。 図 9 ウェブサイトの全 体 像 を表 現 した例 個 々の棒 グラフが個 々のウェブページに相 当 する 。 ア クセ ス 数 を 棒 グ ラ フの 高 さ で 表 現 し 、 更新 日時で棒グラフが色 分けされている。 4.3 遠隔コラボレーション 以 上 で述 べたテレイマージョン技 術 とビジュア ルデータマイニング技 術 を有 機 的 に結 合 すること で、有 効 な遠 隔 コラボレーションが実 現 可 能 にな 図 9,10 にビジュアルデータマイニングの例を挙 る。すなわち、地 理 的 な制 約 条 件 を取 り払 い、コ げる。これらの例 は、ウェブサイトへのアクセス数 ンピュータの補 助 による知 的 で効 率 的 な協 同 作 や更 新 日 時 を視 覚 的 に表 したものである。このよ 業の環境が提供できるのである。 うな膨 大 なデータも視 覚 化 することで、ビジュアル 遠 隔 コラボレーションに関 しては、既にいくつか に大 局 を把 握 することが可 能 になり、また、全 体 の実証実験が進められている。例えば、GM では、 での特殊なケースも浮き彫りになってくる。例えば、 車のデザインにあたり、Detroit, Brazil, Germany 図 10 の右上にある緑丸は、あるディレクトリ内部 (Opel)の3拠点を結んで、バーチャルプロトタイピ の 100 個 以 上のウェブページが、ある一 定 時 間 ングを行っている。 内(1 時間 以内)にすべてアクセスされたことを示 遠 隔 コラボレーションを発 展 させることで、新 た な遠 隔 教 育 のプラットフォームを提 供 できるかも らは実際の競技を複数台のカメラで撮影し,その し れ な い 。 例 え ば 、 GeoWall 各映像から各選手領域を抽出し、各選手の画像 Consortium (www.geowall.org)では、VR 技術を教育分野に応 上での位置を実際のグランド上での位置に変換 用 し、 地 球 科 学 の体 験 的 学 習 環 境 の実 現 を 目 して移動速度や加速度情報を用いて優勢領域を 指 している。この環 境 をネットワークで結 合 すれ 算出し、勢力範囲のビジュアリゼーションを試み ば、 地 球 環 境 に 対 して 全 世 界 で 考 える「 学 びの た。(図11参照) 場」を提供できるであろう。 5.おわりに 4.4 アウェアネス情報のビジュアル化 テレイマージョン技 術 の発 展 により、地 理 的 に アウェアネス情 報 のビジュアル化 の研 究 例 とし バリアフリーな環 境 が実 現 できるだろう。それは て、スポーツにおける勢 力 範 囲 のビジュアリゼー すなわち、物 流 以 外 の物 理 的 な交 通 量 (人 の移 ションが挙げられる[Taki]。 動 量 )の削 減 につながり、安 全 性 や、環 境 問 題 、 サッカーやオリンピックなどのテレビの解 説 番 地 域 格 差 などの問 題 を解 決 してくれる手 段 のひ 組 において、競 技 内 容 を分 かりやすく、かつ、お とつになる可 能 性 がある。また、ビジュアルデータ もしろく見 せるための映 像 表 現 の手 法 が工 夫 さ マイニングは、可 視 化 技 術 にさまざまな「知 識 」を れてきている。例えば、サッカーのゴールシーンを 付 加 することにより、人 間 のソフト面 でのバリアフ 3次 元 CGアニメーションで表 現 したり、陸 上 のト リーを実 現 してくれるかもしれない。画 像 や映 像 ラック競 技 などで現 在 の映 像 に過 去 の選 手 の映 は言語と違 って、世界共通である。テレイマージョ 像 を重 ね合 わせて、両 者 を比 較 することもデジタ ン技 術 とビジュアルデータマイニング技 術 の有 機 ル画 像 処 理 の技 術 により可 能 である。また、3.2 的 な結 合 により、次 世 代 のビジュアルコミュニケ で述べた、Virtualized Reality の技術もその一つ ーション環境の実現が期待される。 である。 参考 文献 [Video] Fish,R. et. al, "The VideoWindow in informal communication," Proc. of ACM CSCW '90, pp.1-11 [Hydra] 図 11 勢 力 範 囲 のビジュアリゼーション Sellen,A.J., "Speech Pattern in Video-Mediated Conversations," Proc. ACM CHI'92, pp.49-59 一 方 、目 に見 える現 象 の再 現 ・再 生 の手 法 だ [NTT] Ishii, H., et. al, "Iterative Design of Seamless けではなく、サッカーに代 表 されるチーム競 技 に Collaboration Media," Communications of the ACM おける戦 術 や繁 雑 な競 技 ルールを分 かりやすく (CACM), Vol. 37, No. 8. pp. 83-97. 示すことも重要であると考えられる。 [Kanade] チーム競技では、攻守において「スペース」を http://www.ri.cmu.edu/events/sb35/tksuperbowl.html 奪い合うことが最も基本的で重要な戦術の一つ [Fuchs] Raskar, R., et.al., "The Office of the Future: A である。すなわち、いかに敵陣内に有利なスペー Unified スを築き活用するか、もしくは、いかに自陣内で Spatially 相手にスペースを築かせないかが、勝利の重要 Proceedings (SIGGRAPH 98), pp.179-188 ポイントとなる。このスペースはビジュアルに存在 [Debevec] しているものではなく、プレーヤがリアルタイムで Reproduction Approach to Live-Action Compositing," 肌で感じる「勢い」のアウェアネス情報である。瀧 ACM TOG (SIGGRAPH2002), Vol.21, No.3, pp.547-556 Approach to Immersive Debevec, Image-Based Modeling Displays,"Computer P., et. al, "A and Graphics Lighting [Viz] 中 嶋 、藤 代 編 著 , "コンピュータビジュアリゼーショ ン", 共 立 出 版 [Itoh] http://www.trl.ibm.com/projects/webvis/index.htm [Taki] 瀧 、長 谷 川 、"勢 力 範 囲 に基 づいたチームスポー ツ解 析 ", 情 報 処 理 学 会 誌 , Vol.42, No.6, pp.582-586
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