子どもたちに寄り添う『わたしたちの体育』の活用をめざして

特集 「ここが変わった体育学習 新しくなった『わたしたちの体育』!」(活用実践例)徳島県
子どもたちに寄り添う『わたしたちの体育』の活用をめざして
∼いろいろなくにへ 行こう∼〈2年〉(表現リズム遊び)『わたしたちの体いく』P.22∼25
徳島県徳島市佐古小学校
教諭
二宮 あゆみ
1.はじめに
徳島県の全小学校では,
『わたしたちの体育』を使って,体育の学習を進めている。本校でも,
体育の時間になると,どの学年においても『わたしたちの体育』を片手に運動場や体育館へと
向かう子どもたちの姿がある。
そこで,体育の学習の中で,
『わたしたちの体育』が子どもたちの関心・意欲を高め,技能や
思考の身近な手助けとなり,学習のいろいろな場面でより手軽に活用できるように位置付けた
授業が展開できないかと考え,実践を行った。
2.実践内容
(1) 単元計画 (BGM には表現 CD−# 1
0・1
1・1
2を使用)
時間
学
習
の
流
れ
1
2
3
いろいろなくに
虫のくに
海のくに
4
5
きょうりゅうのくに 大すきなくに
【やってみる】
イメージカードを元に,即興的に踊ったり,教師の言葉掛けに合わせて踊ったりする。
【ひろげる】
いろいろな生き物の動きを友だちと一緒になりきって踊る。
(2)『わたしたちの体育』の活用場面
! 〈イメージを広げるために〉
第1時に入る前,教室で子どもたちと「いろいろなくに」のイメー
ジを広げるために活用した。子どもたちに虫・海・恐竜の国の生き
物を十分想像させてから『わたしたちの体育』を開き,イメージカー
ドを作成させた。
子どもたちは,イラストから実際の生き物の姿を思い浮かべるこ
とができ,うまくカードを描くことができない子どもたちにとって
は,大きな手がかりになった。これから進められる学習についての見通しをもつことができる。
" 〈関心・意欲を高めるために〉
低学年の『わたしたちの体育』には,
「できたら色をぬろう」とい
うマークがある。低学年の子どもたちにとっては,色をぬるよりシー
ルを貼る方が容易であるため,シールを単元のはじめのページにホッ
チキスでとめ,いつでも,どの単元でも使えるようにした。表現リ
ズム遊びでは,毎時間の振り返りのときに,できたところにそれぞ
れの子どもがシールを貼っている。だんだんとシールで埋められて
いくマークを見て,
「次は恐竜のところに貼れるぞ。
」とか,
「全部で
きた!」と嬉しそうにしていた。時間もかからず,子どもたちは意
欲をもって学習に臨むことができた要因のひとつとなった。
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子どもたちの意欲をかきたてる要因は他にもある。まず,イラストが子どもに親しみやすい
ことである。また,表現の具体例がわかりやすく示しているため,活動の参考にでき,授業の
中で実際に子どもたちがイラストのような動きを取り入れていた。
! 〈子どもたちの思考を見取るために〉
表現リズム遊びでは,授業中の子どもたちの活動において,動きの工夫や,友だちのよい動
きを見つけて発表する場面等から,子どもたちの思考を見取ることができる。中・高学年の『わ
たしたちの体育』の中には,
「学習のあしあと」として,文章で振り返るコーナーがある。低学
年では,
「学しゅうのまとめ」として3段階評価(◎○△)で振り返りができる欄がある。しか
し,次のめあてを明確にするために,低学年の子どもたちにも文章での振り返りをさせるため
に付箋を使うことにした。毎時間違う色の付箋を使い,楽しかったことや,がんばったことな
どを短い言葉で書かせることにした。子どもたちは次のような感想を書いている。
○ 大きく,小さくなっておどりました。
○ さめになりきって泳げたと思います。
○ 1番気にいったのは,イルカのジャンプでした。
○ 友だちとバッタのお話作りをして楽しかったです。
○ 他のペアと見せ合いっこしたのが楽しかったです。
○ 今日,お気に入りの動きを見つけました。
○ ∼さんの動きがすごく明るかったです。
言葉で書き記しておくことで,子どもたちがだれとどんな生き物になったのか,どんな動き
が楽しかったのか,どんないい動きを見つけたか等が授業の後でも教師が確認でき,評価の一
資料になる。言語活動の充実にもつながり,授業ごとにワークシートを作成しなくても,毎時
間の様子や,単元ごとの子どもの成長の様子をこれ1冊で見取ることができる。付箋に教師が
メッセージを入れることで,授業の中で一人一人の子どもに声かけできなかったことも補うこ
とができ,また,次時への意欲付けにもつながった。
3.終わりに
今回の実践では,子どもたちが学習の見通しをもったり,自分の
学びを振り返ったりするのに,
『わたしたちの体育』が大変役立った。
また,技能面においても,イラストから動きのヒントを得て,のび
のびと大きな動きでなりきって踊ることにつながり,どの子も生き
生きとした表情で動くことができた。体育が苦手と思っている子も,
「今までで1番楽しい。
」という感想を残している。
徳島のある新聞の読者投稿のコーナーにうれしい記事があった。
『わたしたちの体育』の「学習のあしあと」に毎回,担任が子ども
を励ますコメントを記入していることに対する保護者の感謝の気持
ちを書いた記事であった。子どもがそのメッセージに励まされ,い
ろいろな運動に挑戦する気持ちになり,
『わたしたちの体育』を大切
に箱の中に入れてしまっているという内容であった。
子どもたちに寄り添い,さらに保護者との架け橋にもなる『わた
したちの体育』
。1年通して使った後で,子どもたちの成長の証とな
るように,活用方法についてこれからも探っていきたい。
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