第9回 園・学校保健勉強会 抄録集 (一般演題)

第9回
園・学校保健勉強会
抄録集
1)
愛媛県子どものアレルギー対策
愛媛方式の実際-
2)
桂(東京都多摩市
多摩ガーデンクリニック)
MR ワクチン対策
川野辺小児科)
~年度末かけ込み接種者へのアンケート調査~
享(大阪府門真市
MRワクチン2期の勧奨
(医)松下こどもクリニック)
2つの小学校の違い
田中秀朋(埼玉県川口市
6)
あかちゃんとこどものクリニック)
MR ワクチン3・4期、能動的な集団接種併用方式の報告
岩田祥吾(静岡県小山町
7)
南寿堂医院)
メーリングリストによる東大阪市学級閉鎖情報
春本常雄(大阪府東大阪市
8)
かずえキッズクリニック)
就学時の保護者への生活指導の試み(その2)
調査の結果をふまえて-
11)
永寿堂医院)
家庭における食育~小学生をもつ親の意識調査~
川上一恵(東京都渋谷区
10)
生協こども診療所)
この 10 年、校医としてやってきたこと
松永貞一(東京都葛飾区
9)
-就学時の保護者のアンケート
青木道子(群馬県伊勢崎市
あおきクリニック)
学校の先生とのミーティングの機会をもうけて(学校医の活動)
青木道子(群馬県伊勢崎市
12)
福岡小児科アレルギー科)
静岡市の教育と医療をむすぶ精神ネットワーク
松下
5)
-病診連携による食物経口負荷試験、
福岡圭介(愛媛県松山市
三田智子(静岡県静岡市
4)
第3報
子どもの心をつなぐ NLP 理論
杉原
3)
(一般演題)
あおきクリニック)
日本小児保健協会・学校保健委員会での幼児の体力測定、幼稚園・保育所での
検診のあり方についての検討
原田正平(日本小児保健協会・学校保健委員会、
国立成育医療センター成育政策科学研究部)
13)
母子保健情報(乳幼児検診)と医療情報の連結について
原田正平(国立成育医療センター成育政策科学研究部)
14) ティーム・ティーチングにおける学校医の役割:
「目の授業」への参加を経験して
高田
15)
修(宮城県利府町
たかだこども医院)
幼保園における視力検査の取り組み
松久充子(静岡県静岡市
さくら眼科)
(1)
愛媛県における食物アレルギー対策、病診連携による食物経口負荷試験の実際。
福岡小児科アレルギー科(松山市)
福岡圭介
06 年度、愛媛県小児科医会および愛媛県医師会に子どもの食物アレルギー対策委員会が
設置され、地域連携と病診連携に基づく対策事業の試みが開始された。対策事業の骨子は
1)資料集「食物アレルギーの理解と対処法」の作製・配布、医師から保護者および園・学
校への「除去食連絡票(診断書・除去食品表)」の作製と浸透、2)公開シンポジウムおよ
び除去食調理実習の定期的開催による関係者全員の理解と協力体制の構築、3)病診連携
による食物経口負荷試験(以下、負荷試験)の実施・浸透、以上の 3 骨子とした。今回は骨
子3の、愛媛県における病診連携による負荷試験の実際について報告する。
負荷試験は現在最も信頼に足る診断法で、患児の成長とともに除去食範囲を解除して行
くための指標として必須ともいえる検査法だが、医師一人のクリニックでは重篤な症状が
惹起された場合の対応に設備面・スタッフ面で充分な施設は少なく、施行はためらわれる
場合が多い。そこで緊急の場合の対応が可能な病院小児科にかかりつけ医から紹介し、負
荷試験を実施後、結果をかかりつけ医に還元するシステムの構築を目指した。病診連携を
円滑に行う目的で負荷試験依頼書、負荷試験説明文・同意書、負荷試験結果報告書の統一
様式を作成した。負荷試験依頼書には過去の誘発症状の既往を記載するともに、RAST など
の検査結果と除去食連絡票を添付することで現在の食物除去の状況を伝えている。負荷試
験結果報告書には、具体的な負荷食品の種類と負荷量、時間経過を記載し、症状が誘発さ
れた場合はその具体的な症状と治療内容を記載する取り決めになっている。
09 年現在、県内主要5市に少なくとも1箇所、合計8箇所の公的病院小児科(小児科常
勤医 3 名以上)が、かかりつけ医からの紹介に応じて負荷試験を実施している。これら8
施設ではクリニカルパス、チェックリストは共通のものを使用し、食物の負荷間隔など負
荷試験方式は松山赤十字病院で行っている方式か、愛媛大学小児科アレルギーサブグルー
プが作成した方式の 2 方式のうちいずれかを選択し実施している。この 2 方式はいずれも
負荷間隔を長めに取り安全性を重視している。
紹介を受けた病院小児科は各施設の判断と自己責任で、外来負荷試験、入院負荷試験を
実施しているが入院負荷試験選択の基準として、1)過去にアナフィラキシーなど重篤な
症状の既往がある、2)患児本人あるいは保護者が負荷試験を行うにあたって不安が強い、
3)RAST score が高い、3以上(但し、年齢と現在の除去状況を考慮して)。以上の3項
目を参考基準としている。
かかりつけ医が負荷試験実施病院に紹介するにあたっての基準について取り決めはない
が負荷試験実施の年齢(紹介年齢)は、はやめ早めに少しずつでも除去の解除を目指すと
いう観点から、1歳過ぎれば負荷試験考慮、2歳前後からは積極的に負荷試験の実施が必
要と機会があるたびに触れさせていただいている。
実際、松山赤十字病院で 05 年 11 月から 08 年 8 月までに実施した入院負荷試験 241 症
例(紹介率 60.0%、負荷試験陽性率 41.5%)の年齢別実施数を見ると、1 歳児の実施数が
90 例を超え突出した実施数となっている。
【参照】 愛媛県小児科医会公式ホームページに我々が作製した「食物アレルギー資料集」、
「除去食連絡票」、「負荷試験依頼書」、「負荷試験説明文・同意書」、「負荷試験結果報告書」
の書式が公開され、ダウンロード可能となっている。
(2)
子どもの心をつなぐ NLP 理論
杉原
桂(東京都多摩市
多摩ガーデンクリニック)
1970 年代ベトナム戦争で多くの人が心に痛手を受けた米国でリチャード・バンドラーと
ジョン・グリンダー(言語学)が心理学と言語学をもとに体系化した人間のコミュニケー
ションに関する新しい学問が NLP です.NLP とは NeuroLinguistic Programming(神経
言語プログラミング)の略です.神経と言語は密接に結びついています.NLP のスキルは
意識を変え、問題の見方を変え、望ましい状態をつくるのに役立ちます.
初めはセラピスト、治療家のためのものとしてスタートしましたが、現在では教育者、
医療従事者、ビジネス、スポーツの分野、家庭などの中で活用されるようになっています.
NLP では「コミュニケーションとは相手の意欲を引き出すこと」という基本前提で人と関
わることが大切にされており、そのためのコミュニケーションスキルがたくさん用意され
ています.
否定的なニュースが増えている中で、私たち一人ひとりのちょっとした意識と言葉遣い
が変わることによって、周りにポジティブな人間関係が増やすことができます.そして互
いに大きな影響を与え合う関係をつくることができます.それを子どもたち、そしてこの
子どもたちと密に関わる先生方に知っていただきたいのです.それが未来の日本を創るこ
とにも繋がる、と考えています.
(3)
静岡市の教育と医療をむすぶ精神ネットワーク
三田智子(静岡県静岡市
川野辺小児科)
近年子どもたちの精神保健に関する問題が大きくかつ深刻化し、それに対しさまざまな
試みがなされているが、教育や医療などひとつの機関での努力では対応が困難となってい
る。こうした背景のもと、静岡市では子どもに関わるさまざまな専門職種が集い、子ども
たちの問題をともに考え・知恵を出し合い・解決の糸口を探ろうという趣旨で「静岡市こ
どもと家族の精神保健ネットワーク」を立ち上げ、平成 14 年から活動している。主な活動
内容は、事例検討会と講演会・シンポジウムの企画・開催である。
今回は学校医として参加した 7 年間の活動を、準備段階から組織作り・運営方法・会計
を含め報告する。
ネットワークを立ち上げたことで実感できた効用としては、顔が見える連携関係が作れ
る、問題を抱え込まず相談できる場ができる、地域のリソースや生きた情報を知ることが
できるなどであった。また教育現場と医療現場の信頼が深まりより良い協力関係を築くき
っかけにもなっている。
今後はさらに広報を徹底し参加者を増やし、縦のラインでの観察・連携を充実させて継
続的な支援がしやすい体制作りを目指していきたい。
(4)
MR ワクチン対策
松下
~年度末かけ込み接種者へのアンケート調査~
享(大阪府門真市
(医)松下こどもクリニック)
毎年、当市での第 2 期MRワクチン接種者数は、年度末の 3 月に最も増える傾向がある。
一方で当医師会では、2 月に各小学校で開催される入学説明会に学校医が出向いて、MRワ
クチンの接種勧奨を行ってきたが、その効果については明らかではない。
【目的】年度末の 3 月に接種者数が増える理由を明らかにする。
【対象・方法】平成 21 年 3 月1日~31 日の期間に、当市内の医療機関で第 2 期・3 期・4
期MRワクチンの接種を受けた保護者に対してアンケート調査を実施し、接種行動に影響
を与えた因子について検討した。
【結果】アンケート回答数は、第 2 期で 216 名、3 期 135 名、4 期 128 名で、それぞれ同時
期の接種者数の 61.7%, 57.0%, 50.0%であった。接種のきっかけとしては、第 2 期MRでは
「市からの案内(42.6%)」が最も多く、次に「就学時健診での案内(34.3%)」、
「園からの
案内(31.0%)」
、「入学説明会での案内(30.6%)」が続いた。第 3、4 期では同様の傾向があ
り、
「学校からの案内(79.3%、49.2%)」が最も多く、次いで「市からの案内(25.9%、31.3%)」
が多かった。接種が年度末の 3 月になった理由(自由記載)については、全期を通じて「多
忙であった」という理由が多かったが、第 2 期では「インフルエンザの流行が心配」や「イ
ンフルエンザ予防接種を優先した」
、第 3 期では「忘れていた」、第 4 期では「迷っていた」
という記載が特徴的であった。しかしながら、
「以前から接種しようと思っていた」という
人は、第 2、3、4 期でそれぞれ 82.2%、77.8%、57.0%であった。接種率を上げるための有
効な対策についての質問では、各期とも「園や学校からの案内」と「学校や地域での集団
接種」が多く、「日曜や祝日の接種」と答えた人は意外と少なかった。
【まとめ】年度末にかけ込み接種をされる方の意識としては、第 2、3 期では接種しようと
思っているものの接種行動に結びつき難く、第 4 期では周知自体に問題があるように思わ
れた。園や学校からの周知を徹底させ、同時に休日の接種機会を増やすよりは集団接種な
どにより接種を促すことが有効であると思われた。
(5)
MRワクチン2期の勧奨
田中秀朋(埼玉県川口市
2つの小学校の違い
あかちゃんとこどものクリニック)
2007 年、10 代の若者を中心に関東で麻疹が流行した。遺伝子解析によって麻疹ウイル
スの変異による流行ではなく、若者世代における麻疹抗体価の低下が流行の原因だと結論
づけらけた。これを受けて 2008 年度から 5 年間の期限付きで、中学 1 年生を対象とした 3
期、高校 3 年生相当の若者を対象とした4期を実施することになった。2006 年から施行さ
れた MR ワクチンの2回接種法(1 期および 2 期)と合わせて実施されることにより、日
本国民全体の麻疹抗体価が上がることが期待される。この政策で日本は「はしかゼロ」を
達成できるのか、身近な小学校からワクチン勧奨の取り組みを通して、MR ワクチン普及に
ついて考察した。
埼玉県川口市は人口 50 万人を超え、47 の小学校を抱えている。2 期の MR 接種率を調べ
てみると、34-94%と学校間で大きな格差があることが判明した。
川口市では保健センターが、
1
該当する年度の直前の 3 月に問診票を郵送し、注意喚起する
2
就学前健診で、MR2 期接種勧奨のちらし(オレンジ色の紙)を配布する。
3
1 月に未接種者に問診票を再び郵送し、再度接種を促す。
と再三にわたって保護者に働きかけている。
私の関わっている 2 つの小学校での MR2 期接種勧奨の取り組みは、
1
就学前健診で予防接種歴を尋ね、MR ワクチンをするように促す(学校医名でチラシを
配布)
2
MR 未接種の入学予定者に電話で連絡(1 校のみ)
3
入学後に MR ワクチン接種について調査
以上の流れで接種者の推移を見た。
「はしかって子どもでも重症になるのですか?」
「個別の電話はプライバシーのことがあってできません」
「個別の電話は数が多すぎてできません」
以上の言葉は養護教諭の口から出たものである。養護教諭の知識や情熱によっても MR2 期
接種率に差が出るのではないかと予想した。養護教諭の話によると、養護教諭間の格差も
さることながら、学校医の格差はさらに大きいという。川口市には、養護教諭が全員集ま
る会合(義務化されている)はあるが、校医が勢揃いする会合は存在しない。
保護者へのアンケート記載から、1 期・2 期の区別ができていない保護者も多数見受けら
れた。
以上、多数の問題を抱える現状だが、既に高い接種率を実現している自治体の工夫をご
教示いただければ幸いである。
(6)
MR ワクチン3・4期、能動的な集団接種併用方式の報告
岩田祥吾(静岡県小山町
南寿堂医院・御殿場市医師会)
2008 年度 MR ワクチン3・4期の接種が5年間、補足的な法定接種としてスタートしま
した。いずれの接種率 95%超を目指す御殿場市医師会は、御殿場市・小山町と協働し、好
成績を得ることができました。その中で今回、3・4期ともに4月1日から集団接種、終
了後個別接種とし、詳細に記録ができた小山町の方式を報告いたします。2008 年度は、1
期(個別)96.0%(参考)、2期(個別)98.9%、3期(集団後個別)100%、4期(集団
後個別)93.6%でした。
(7)
メーリングリストによる東大阪市学級閉鎖情報
春本常雄(大阪府東大阪市
生協こども診療所・東大阪市小児科医会)
【はじめに】
インフルエンザ(以下インフル)の流行状況は、日常診療の中で患児・家族
から聞き取ったり、嘱託医をしている学校・園から情報を得たりして、ある程
度は把握できるが、市全体の流行状況を知るという点では限界がある。
われわれ大阪府東大阪市小児科医会では、東大阪市の公立幼稚園・小学校・
中学校の学級閉鎖状況を、東大阪小児科医会会員メーリングリスト(以下 ML)
で流している。その結果、インフルの流行状況がリアルタイムで知ることがで
き、日常診療に活かすことができている。
【実施状況】
2006年1月のインフル流行前に、行政の方々の努力で、学級閉鎖情報を
デジタル情報にし、迅速に情報が伝達できる基盤を作っていただいた。それに
合わせて東大阪小児科医会 ML を整備し、そこに学級閉鎖情報を流し始めた。
その後も毎年、インフルシーズンには情報提供を続け、08~09年シーズン
で早や4シーズン目となる。
具体的には、各学校から行政機関を通じて、同市の3つの医師会に個人情報
を十分配慮する形で学級閉鎖情報が伝えられているが、同時に東大阪小児科医
会 ML にも流している。学級閉鎖情報では、学校名・学級閉鎖学年・閉鎖学級
数・欠席者数などが示され、東大阪市の地図上に学校の場所が明示されること
で、東大阪市での流行状況が一目瞭然でわかるようになっている。例えば、1
月29日付けの ML で、○○小学校が1月29日から31日に学級閉鎖をする
といったリアルタイムの情報が流される。さらに、その情報を継続的に見るこ
とで、東大阪市での流行が最初東部中心で時間が経つにつれ西部に移ってきて
いるなど、流行状況を把握することができる。このような情報を得た上で日常
診療を行い、親への説明の際にも活用している。
【考察】
会員の感想として、「情報が非常に早いので、即活かせて重宝している」「親
への情報提供を、自信を持って行える」などあり、非常に役立つものとなって
いる。今後も続けることで、東大阪小児科医会会員の日常診療の役に立つこと
ができればと思っている。
【まとめ】
東大阪市小児科医会 ML で市のインフル学級閉鎖情報を流すことで、会員の
日常診療に役立てていただいている。
この 10 年、校医としてやってきたこと
(8)
松永貞一(東京都葛飾区
永寿堂医院)
長かった勤務生活を終え、平成 12 年から開業とほぼ同時に地元の公立小学校の校医を拝
命した。それから今年で 10 年となる。その間に経験した校医としての活動を通して感じた
こと考えたことをまとめてみたい。長く校医をされてきている先達もあるなかで、わずか
10 年間の経験で演題を出すのは我ながら、些か僭越とは思うが、参加者の皆様に訴えたい
ところは多々あり、稚拙・拙速のそしりを受けることを覚悟で演題を提出する。発表内容
は、下記の参考文献から類推される通りである。
一開業医に何が出来、何が出来ないか?組織活動の利点と弱点などに触れつつ今後の校
医活動の展開と発展を皆様とともに考えたい。
【参考文献】
1)
松永貞一:小学校における校医の責務と権限の問題点.日本小児科学会雑誌、
105(2):131-134.2001.
2)
松永貞一:小学校における校医の責務と権限の問題点-教育委員会へのアンケート調査
を踏まえて.第32回全国学校保健・学校医大会大会誌.138-168,2001.
3)
松永貞一:ワクチン接種率向上に関する就学時健診の役割と意義.第34回全国学校保
健・学校医大会大会誌、65~71、2003.
4)
松永貞一:文部科学省局長通知後の教育委員会の予報接種に対する対応について.日
本小児科学会雑誌、108(6):887 – 891,2004.
5)
松永貞一:私の視点 予防接種 就学時健診で受け忘れ注意. 朝日新聞 朝刊 平成 16
年 10 月 23 日,2004.
6)
松永貞一:一開業医から見た予防接種事業に関する問題点と提言.第 8 回 予防接種に
関する検討会
(平成 17 年 4 月 6 日(水) 10:00~17:30 厚生労働省7階専用第15会議
室):資料集 1~27ページ、2005.
7)
松永貞一、 杉山和子、岩田祥吾、上原真理子、中村英夫、藤岡雅司:就学時健診におけ
る予防接種の調査・勧奨・事後措置.小児科、47(4):478 – 486,2006.
8)
松永貞一:就学時健診は予防接種を勧める最後の機会 縦割り行政を超えた対応を.学校
医は学校へ行こう!. 118~123ページ 岩田祥吾、谷村聡、岡空輝夫、高田修、町田孝編集
医歯薬出版株式会社 2006.
9)
葛飾区医師会編(松永貞一は編集幹事ならびに分担執筆者として関与):あなたの疑問に
身近なお医者さんが答えます Q&A 181、医歯薬出版株式会社 2006.
10)
松永貞一、安藤進、青井禮子、東海林文夫、城所敏英、山崎喜久雄、林美津男:地域で
の新たな麻疹対策の取り組み -東京都葛飾区の場合-.小児科、48(3):289-297,2007
11)
松永貞一:麻しん予防接種率向上に向けてー開業医・学校医としてどう取り組んできたか.
診療研究、421号(10月号):27~30、2007.
12)
松永貞一:風邪の話. 日本医学館 2007.
13)
Teiichi Matsunaga, Mizue Shoda, Eiji Konishi:Japanese Encephalitis Viral Infection
Remains Common in Japan.Pediatric Infectious Dieseae Journal,27(8):769 – 770, 2008.
14)
Sayaka Takanashi, Shintaro Hashira, Teiichi Matsunaga, Akira Yoshida, Tomoyuki Shiota,
Phan Gia, Tung, Pattara Khamin, Shoko Okitsu, Masashi Mizuguchi, Takashi Igarashi, Hiroshi
Ushijima: Detection,genetic characterization, and quantification of norovirus RNA from sera of
children with gastroenteritis. Journal of Clinical Virology, 44:161- 163,2009.
15)
松永貞一:人間の命の値段 ー 「麻疹撲滅」に向けてのレース.診療研究、444号(1月
号):48~49、2009.
16)
杉原桂:アドボカシーNow!
ベストパフォーマンス賞第2位、麻しんゼロチー
ム.外来小児科、12(1):124~125、2009.
(9)
家庭における食育~小学生をもつ親の意識調査~
川上一恵(東京都渋谷区
かずえキッズクリニック)
平成20年度、渋谷区立中幡小学校学校保健委員会の年間テーマは食育でした。在籍児
童430名のすべての保護者を対象に行ったアンケート調査の結果を報告いたします。
(10)就学時の保護者への生活指導の試み(その2)
-就学時の保護者のアンケート調査の結果をふまえて-
青木道子(群馬県伊勢崎市
あおきクリニック)
平成 18 年度より就学時の保護者を対象とした講演を行ってきた。就学時保護者説明会は原
則的に保護者全員出席となるために、家庭での過ごし方など基本的な生活習慣の指導には
絶好の機会となった。またPTA・学校と協力し、PTA講演会・5~6年生対象の保健
講座、啓発のための“のぼり”製作、生活習慣カ-ドの家庭配布など様々な試みを行い、
関与していった。さらに学校保健委員会を通じ生徒に3年間に渡って生活習慣のアンケー
トを行った。そのアンケートの結果を報告するとともに、就学時の保護者への働きかけが
効果的であったため、学校医として如何に関わるかについて問題点を提起するとともに、
考察を含めて報告する。
(11)
学校の先生とのミーティングをもうけて(学校医の活動)
青木道子(群馬県伊勢崎市
あおきクリニック)
平成20年度に学校の先生方を対象とした児童の生活習慣確立に向けての様々な活動の
報告を中心とした講演を行った。学校保健委員会や児童・保護者の講演やアンケート等か
ら、問題点を提示するとともに、学校医としての取り組みを理解してもらうこと、さらに
その取り組みを学級運営に役立ててもらうことを目的としたものであった。その中で学級
運営をしていく上で気になる児童をかかえる先生からの質問があり、本年は、特別支援学
級が設置されたこともあり、発達障害についての講演を行った。先生方には事前アンケー
トを行い、先生方と学校医の話し合う機会を設けたので、事前のアンケートの結果を報告
するとともに、学校医がいかに先生方と関わっていくのか、今後の課題を含めて報告をす
る。
(12)
日本小児保健協会・学校保健委員会での幼児の体力測定、幼稚園・保育所での
検診のあり方についての検討
○原田正平1)2)、岡田知雄1)、齋藤麗子1)
、羽崎泰男1)、原
光彦1)、山崎嘉久1)
1)日本小児保健協会・学校保健委員会、2)国立成育医療センター成育政策科学研究部
日本小児保健協会は 1933(昭和8)年に「小児保健研究会」として発足し、第二次世界
大戦後、一時活動の休止時期があり、1954 年2月に再発足(会員 416 名)しています。1962
年 4 月に、社団法人「日本小児保健協会」となり現在に至っています。個人会員数は 1970
年に 2,013 名となり、1999 年の 5,725 名をピークに漸減しています(2008 年8月、4,393
名)。小児科医師だけではなく、看護師、保健師、行政関係者といった小児保健に関わる多
業種が会員となっているのが特徴です。「学校保健委員会」は協会内に 10 ある委員会の一
つで、2001 年 11 月に「子どもの睡眠に関する提言」、2003 年 11 月に「未成年者の喫煙を
無くすための学校無煙化推進」をそれぞれ報告しています。その後は、日本小児科連絡協
議会「子どもをタバコの害から守る」合同委員会と兼任する形で活動を行いましたが、2007
年 11 月に委員会が再構成され、より学校保健に関わる問題を検討することになりました。
2008 年度中に新たな検討課題について論議を重ね、幼稚園年齢の学校保健に関わる問題、
とくに、1)幼児の適切な体力測定の方法の開発、2)幼稚園(保育所も含み)での適切
な検診のあり方、について2年以内に報告書を取りまとめることになりました。これらの
課題については、園医・学校医などとして現場で活動されている方々との連携が必要と考
えられることから、これまでの経緯や課題となっていることなど、その概要を報告します。
(13)
母子保健情報(乳幼児検診)と医療情報の連結について
原田正平(国立成育医療センター成育政策科学研究部)
20 世紀の終わりに、21 世紀の母子保健のビジョンを示すためとして、(当時)厚生省児
童家庭局長の委嘱による「健やか親子 21 検討会」
(座長:平山宗宏 母子愛育会日本子ども
家庭総合研究所所長)が開催され、母子保健の 2010 年までの国民運動計画である「健やか
親子 21」が提言されました。
「安心して子どもを産み、ゆとりを持って健やかに育てるため
の家庭や地域の環境づくりという少子化対策としての意義と、少子・高齢社会において国
民が健康で元気に生活できる社会の実現を図るための国民健康づくり運動である健康日本
21 の一翼を担うという意義を有する」とされ、当初その実施期間は 2001 年から 2010 年ま
での 10 年間とされました。基本的視点は、1)20 世紀中に達成した母子保健の水準を低下
させないために努力、2)20 世紀中に達成しきれなかった課題を早期に克服、3)20 世紀
終盤に顕在化し 21 世紀にさらに深刻化することが予想される新たな課題に対応、4)新た
な価値尺度や国際的な動向を踏まえた斬新な発想や手法により取り組むべき課題を探求、
とされ、具体的には次の4課題が設定されました。1)思春期の保健対策の強化と健康教
育の推進、2) 妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援、3)小児保健
医療水準を維持・向上させるための環境整備、4)子どもの心の安らかな発達の促進と育
児不安の軽減。
「健やか親子 21 推進協議会」が運動方針などを決定し、保健所、市町村(教
育委員会)が活動の中心となって、現在に至っています。2006 年3月に中間評価が行われ、
当初設定された目標値への到達度評価や新しい指標の設定が行われました。2003 年7月に
「次世代育成支援対策推進法」が公布され、2005 年度から 10 年間の時限立法とされたこ
ともあり、健やか親子 21 の終了期限が 2014 年度まで延長され、今年は 2 回目の中間評価
が行われます。その中間評価を担当する、厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研
究事業)
「健やか親子 21 を推進するための母子保健情報の利活用に関する研究」研究班(研
究代表者、山縣然太朗山梨大学教授)は、主に市町村の母子保健担当者との連携を図り、
健やか親子公式ホームページ(http://rhino.med.yamanashi.ac.jp/sukoyaka/index.html)
上に様々な情報提供を行ってきました。演者は、2009 年度からの分担研究者として、小児
科医の立場から、母子保健情報と医療情報をいかに有機的に連結して、有効活用していく
かを検討することになりました。そのためにも、現場からの声を頂きたいと考えています。
(14)
ティーム・ティーチングにおける学校医の役割
「目の授業」への参加を経験して
高田
修(宮城県利府町
たかだこども医院)
性教育、喫煙防止、メディア漬け、生活習慣など、現在の子どもを取り巻く環境では、
保健・安全教育の重要性が増す一方である。平成10年の教育職員免許法改正で養護教諭
が保健学習を担当できるようになったが、学校医のサポートによりより良い授業を自信を
持って作る事ができる。
今回、担任・養護教諭・学校医3者の協力により「目の健康」に関するティーム・ティ
ーチング授業を構築したので、その経験を提示したい。
世話人推薦演題
(15)
幼保園における視力検査の取り組み
松久充子(静岡県静岡市
さくら眼科)
【目的】
我が国の幼児視力検査の機会は3歳時健診と就学時健診の2回とされている。3歳児健
診では事前に家庭で視力検査を行い、異常の場合のみ眼科2次受診をすすめているが、家
庭での検査は不正確で、かつ実施していない保護者も多い。就学時健診では視力異常を発
見しても、就学以前のために「受診のすすめ」を出すことができない。このため、小学1
年時学校健診で初めて視力異常を指摘され、6~8月ころから治療開始することになる。
この頃には視機能発達は完了期に入っており、弱視等の治療成績は低下、もしくは手遅れ
となってしまう。幼児の眼疾患を早期発見して適切に治療するには幼児期の視力検査が重
要である。このために、幼保園の健康診断時に視力検査を実施することを提案した。
【方法】
静岡市静岡医師会学校医部会の協力を得て、静岡市教育委員会、静岡市こども家庭課、
静岡私立幼稚園園長会、静岡私立保育園園長会、学校医部会主催乳幼児保健研修会などで、
幼児の視力検査の必要性についての啓発活動を15年間継続した。眼科医等の専門職がい
なくても、幼保園の養護教諭や保育士が実施可能な視力検査方法を実地指導した。また、
安価、かつ正確な視力検査用器具を提案した。
【結果】
平成12年度から公立幼稚園で、平成20年度から公立保育園とほとんどの私立保育園
で視力検査を開始した。平成21年度の公立保育園年中児の視力検査結果集計では、要治
療児は 4.1%(49人/1190人)だった。治療効果の上がりやすい就学前に治療開始する
ことが可能になった。
【結論】
学校保健安全法で視力検査は幼保園においても健康診断必須項目となっているが、幼い
ので無理であるとの思いこみと、眼科園医不在のために、ほとんど実施されてこなかった。
幼保園での視力検査の有用性を啓発し、実現可能な方法を実地指導し、経済的負担が軽く、
かつより精度をあげる検査器具を提案することで、幼保園での視力検査実施が実現できた。
第9回
園・学校保健勉強会
特別講演
特別講演1
8月1日(土)
17:30~18:40
麻しん排除の話題(仮題)
岡部信彦(国立感染症研究所
感染症情報センター長)
特別講演2
8月2日(日)
11:10~12:00
学校における重大な事件・事故発生時の緊急支援
-CRT の取組み-
松本晃明(静岡県精神保健福祉センター所長)
日本外来小児科学会
第9回
園・学校保健勉強会
開催地:静岡県御殿場市