System Map から考える Debate(初級) NAFA Spring Seminor`98

System Map から考える Debate(初級)
NAFA Spring Seminor’98
この講座の狙いは、“System Map”と呼ばれるものの学習を通じて、Debate を学ぶことで
す。System Map を用いて Affirmative Case や Negative Disad がどのように構成され、表現さ
れるべきなのかを学びます。
[Contents]
1.System Map とは何か? ∼差異を表現する装置
2.作成にあたっての注意事項
3.System Map を使って issue を作ろう
∼Case/Disad での具体例
注意!;この2時間で私が話したり、あなたが吸収できる事がらは、そう多くありません。
かならず何度も参照して自分のものにしていって下さい。話すだけでなく、マテを作って
いるのはそのためです。(この内容だけでも 100%理解できれば、大きな飛躍なのです!)
感謝;このマテの 2.の元となったのは、先輩の大井さんの[Logic Course Instruction for
KESSA Camp’97]です。大井さんには個人的にも色々とお世話になりました。ここで礼を述
べさせて頂きます。
講師紹介;皆さん、こんにちは。私は 青木滋之(あおきしげゆき)といいます。Debater
としては現役を約一年半、その後ジャッジ・教育者として一年の経験をしました。現役時
代は“京大スプレッダー(?)”の一員としてラピッドなスピーチをしていましたが、現在「あ
の頃は青かった」と自己批判するに至っています。その理由は、機会があればお話ししま
しょう。
関西ディベートは現在人数も比較的少なく、教育者に恵まれないスクワッドも多いようで
すが、今回の講義が皆さんのディベート理解の一助になれば幸いです。
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1.System Map とは何か? ∼差異を表現する装置
今、ここに1つのカンがあるとします。これを貴方はどう表現するでしょう?
赤い
握れる大きさだ
1997年製だ
コーラのマークが付いてる
リサイクル商品だ
見えない粒子から出来ている
へっこんでいる
アルミでできている
底にまだコーラが残ってる
目に
・・こうして、ある物を語る(議論をする)時には、他の物と異なったある特徴を指さなけれ
ばなりません。世界全体は、こうした差異の総体であるとも考えられます。
浅田章’84 / 経済学者、思想家 / “逃走論 スキゾ・キッズの冒険” p/b 筑摩書房 p.12
Q) 広告とは差異化である、なんて、これは今さら言うこともないことだけど、ちょっと復
習しておいてもいいんじゃないかと思う。いちばん典型的なパターンは、この製品はこれ
ファンクショナル
だけすぐれた性能をもっています、というヤツ。機能的な製品差別化といってもいい。だ
けど、今の時代じゃ、そういう面での差はすぐに縮まって、結局ドングリの背比べになる。
そこで、この製品と他の製品の差は違いのわかるひとにはわかる筈です、という新しいパ
シ ン ボ リ ッ ク
ターンが出てくる。象徴的な製品差別化といってもいい。ファンクショナルには五十歩百
歩なもんで、シンボリックに違いを出そうというわけね。これがもっと進んでくると、最
後には製品ってものがどっかへいっちゃって、製品やブランドや企業を包み込むイメージ
だけが残る。こうなると、製品のもつ差異を広告するってことじゃなく、広告が広告とし
て独立しちゃって広告同士で差をつけあう、という世界になるわけ。ここまでくると、「製
品差別化」なんて古くさい用語じゃピッタリこないし、ほかの理論分野との関連もつきに
くいから、同じ「ディファレンシエーション」の訳語だけど「差異化」っていう言い方を
採用することにしたい。で、もういちど言うと、広告というのはいまチラッと見てきたよ
うなさまざまな段階を通じて差異化を追求する試みだ、ということになるわけです。ここ
でやや唐突に言えば、差異というのはとてもたのしいものなんですね。同じような人間ば
かりが同じような品物ばかりに囲まれて暮らしている世界なんて面白くもおかしくもない。
多種多様なものが違った面を見せてくれるからこそ、世の中、面白いわけでしょ。実際、
構造主義的に言うと文化とは差異の織物なのであって、差異がなければ文化じゃないとい
うわけ。だから、広告を通じてさまざまな差異が生み出されてくるってことは、本来、と
ても心たのしいことなのです。(UQ
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Debate の議論でも、相手に勝つためには、広告と同じように相手との差異を強調しなけれ
ばなりません。Debate を何と捉えるかは、人によって異なりますが(ゲームだったり、英語
教育の場であったり、議論練習の場だったりしますが)、Judge としてどちらかに Vote
.......
......
するには、必ず彼/彼女がより優れていると考えた方(Aff か Neg か)を選ばなければなりませ
ん。
ではもっと具体的に、Judge は Aff System / Neg System のいずれかを選ぶということに言
い換えましょう。一般的に、Aff System は Plan 後の世界、Neg System は Status Quo または
Counter-Plan 後の世界、と言われています。これら2つのスタンスを効果的に・対照的に
Judge に表現する方法はないでしょうか?
ここで、System Map と呼ばれるものが登場するわけです。Aff は Plan によって政府に何ら
かの政策を採らせ、それが国家/国民の利益につながる、と主張するわけですから、一般に
*政府の行動→A→B→
・・
→Advantage
という構図が考えられます。しかし、これだけでは Plan を取る必要性を主張することはで
きません。Resolved:That the Japanese government should expand the scope of admissible
..
evidence in criminal court. を肯定するためには、Plan がない状態(Neg System)との比較がな
ければ Judge は Plan を選ばないでしょう。(ぶっちゃげた話をすれば、証文などは既に認め
られているので、それを現状と同じまま法廷で認めても、何ら現状とは変わらない)
そこで、Aff は*とその反対の世界(Plan のない世界)の双方を証明しなければならない、と
考えられます。よって Aff は、
という時間軸での因果連鎖の、SQ / Plan 後の世界の双方を証明しなければなりません。
えっ?
ここで鋭い人は気付いたかもしれません。「Plan 後の因果連鎖を証明しなければ
ならないのは分かるけど、なんで SQ での因果連鎖まで証明しなければならないのか?」
メモ;
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関連問題1;“Independent Solvency”
関連問題2;“縦と横の糸”(マクロとミクロの)
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2.作成にあたっての注意事項
さて、System Map がなんで必要なのか、どのように有用なのかを僕たちは見ました。そこ
で、実際にマップを書く際に、多少の注意事項があるので言っておきましょう。
1.当然かもしれないが、時間軸をとった直線上の前の点(Data)と次の点とが適切な
にある。
やや悪い例) WESAのポリス
..
(注意!) 一般に、常識とのずれが増えるほど、
2.Aff System、Neg System はそれぞれ一本の線にして、途中で
。
させない。
悪い例)
になっ
3.Aff System の各点(Data と呼ぶ)と、Neg System の各点とが
ている。これは、字面上では正反対でなくとも、意味上では正反対でなくてはならな
い、という意味。逆に言えば、Aff System と Neg System に対照的に現れない議論を
System Map に書くのはナンセンスである。
例)Big⇔Not Big
Small、Little、Trivial など
例)Observation や Underview
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3. System Map を使って issue を作ろう
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∼Case/Disad での具体例
実際に System Map を使って issue を作る過程を見てみましょう。
今期のケースとして、よく話に聞くのが盗聴ケースです。現在、刑事訴訟法では、盗聴は
刑事裁判で証拠として用いることができないそうです。そこで、このケースを作ったら、
盗聴が可能になるでしょう。つまり、話の流れでは
*刑事訴訟法で盗聴記録を証拠として認める→
(注意!) Plank は
。
ということになるでしょう。しかし、3∼4ページで述べたように、これだけでは Judge
は投票してくれません。必ず、対応した inherency を付けましょう。5ページで述べた注意
を必ず守ってくださいね。
ってな感じでしょうか。
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次いで、Neg の Disad も作ってみましょう。Disad の Three Requirements と呼ばれるのは、
Uniqueness / Linkage / Impact の3つでしたよね。盗聴ケースの場合、どのような Disad が
考えられるでしょう? 一般に言われるのは「プライバシーの侵害」といったものでしょう。
とすると、
*Plan により刑事訴訟法で盗聴が証拠として認められる→
となるでしょう。前と同じように、対応した Uniquness を付けるのを忘れずに・・・
Claiming のコツを挙げておきましょう。
ヒント1 Judge の頭はいつも A→B→C→D→E で流れている
例)DA Japan Bashing(日本叩き)
a) plan is against U.S.policy b) it relults in Japan Bashing c) leads to depression
d) leads to world-wide depression e) relults in war ・・などなど
ヒント2 1つの Sentence には SVO の各要素は1つずつのみにする
できれば、上のような A leads to B,B leads C…というのが理想。重文や受け身はゆっくり言っても
意味が取りづらい場合が多いので、できるだけ避けた方が良いだろう。また、情報提示は、大事な
情報ほど文頭に出すとフローに残りやすい。
悪い例) Our privacy will be violated by the wire-tapping, which causes serious damage to the
innocent.
良い例) wire-tapping violates our privacy. (ポーズを取って) And it gives serious damage to the
innocent.
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ヒント3 サブポイントは意味段落(一流れの inh,imp,sol など)で変える。また、必ず表題を付ける
ヒント4 Number は System Map 上で Link が進んだら変える。Evidence などでは変えない
a),b)といったサブポイントは1つのシナリオの表題を付けて用いる。よく Data の Evidence(事実や統
計など)で Numbering を変える人がいるけど、それはリンクではなくて、リンクの補強にすぎないから、
Numbering を変える必要はない。
コラム; Logic<Data?
例を挙げると、
a) Inherency. Wire-tapping is necessary to prevent Gangs’ crimes.
1.Without wire-tapping,no effective evidence for Gang.
B/C Gangs don’t make any clear evidence of crimes.
2.Without evidence,prosecutors cannot prosecute Gangs.
Here are actual cases.
3.So,Gangs continue to commit crimes.
b) Impact. Gangs’ crimes are disastorous.
Gangs’ crimes commit any kind of crimes. …
※理由付けや Data はリンクではないから、ポーズをとって立て続けに Evidence を読む。
ヒント5 難しい単語はなるたけ使わず、みんなが知っている中学生英語を心がけよう
ヒント6 短い単語でも、具体的にどんな状況なのか一応は想像できるような Word を使おう。
例)97’JNDT Final “perception change”
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