虫さされについて 「虫さされ」は身近な皮膚病で、一般的には蚊やダニに刺されたことによっておきるかゆみ の強い赤いブツブツ、という印象があると思います。また、「刺さない虫」を犯人(犯虫?)と思 い込んでいる方もおられます。そこで、ヒトに被害を与える「虫」の種類や生態、生息場所をよく 知り、どんな虫がどんな症状を引き起こすか、対処はどうするかを知っておくと役に立ちます。 蚊に刺されたらどうなりますか? 蚊は体長 5mm 前後で、メスは皮膚に止まって吸血します。通常は顔、手足などの露出部を刺し ます。蚊はどこにでも生息しますが、庭や公園などではヤブカ類のヒトスジシマカ、室内ではイ エカ類のアカイエカが多いようです。 ヤブカ類のヒトスジシマカ イエカ類のアカイエカ 蚊に刺された場合の症状としては、刺されてすぐに出現する発赤・かゆみ(即時型反応)と、 刺されて 1~2 日で出現する発赤・かゆみ(遅延型反応)があります。一般に乳幼児期には遅延型 反応のみ、幼児期~青年期には即時型反応と遅延型反応の両者、青年期~壮年期には即時型 反応のみが出現し、老年期になるといずれの反応も生じないとされますが、実際には個人差が かなりあるので一概にはいえません。 即時型反応 遅延型反応 ダニに刺されたらどうなりますか? ダニによる虫さされの原因としては、ネズミに寄生するイエダニ類による屋内での被害が多 いのです。イエダニ類は体長 0.7mm と小さい上に、寝ている間に布団に潜り込んで血を吸うた め、刺されている場面はほとんど見ることができません。古い一戸建てで、ネズミがいるような 家で被害がでやすいようです。顔や手足はほとんど刺さず、わき腹や下腹部、ふとももの内側 などを刺して、かゆみの強い赤いブツブツができます。 布団やほこりの中に生息するヒョウヒダニ(チリダニ)類は体長 0.3mm ときわめて小さいので 目には見えません。ヒョウヒダニ(チリダニ)類は刺したり、咬んだりはしません。ですが死骸や 糞、抜け殻などの破片を吸い込むことによりアレルギーの原因にはなります。 イエダニによる湿疹 マダニ類 山や草木の多い公園などの屋外ではマダニ類による咬まれることもあります。マダニ類は 体長 1~3mm で、本来は野生動物に寄生していますが、ヒトの体に取りついて、わき腹やふともも、 陰部などの皮膚に咬みついて吸血します。そして数日後にはダニの腹部が数 mm 大に膨らみ、 お腹が膨れると咬むのをやめ離れます。無理に引き抜こうとすると、マダニの頭部が皮膚に残 って炎症を起こすことがあります。また、ダニの種類によってはライム病や日本紅斑熱などの 感染症を媒介することがあります。最近ではマダニの媒介するウイルスによって重症熱性血小 板減少症候群(SFTS)を発症し、死に至った事例も報告されています。 ハチに刺されたらどうなりますか? 刺すハチとしてはミツバチ、アシナガバチ、スズメバチが代表的です。ミツバチに刺されるの は養蜂家の方々が多く、一般人が刺されることは稀です。アシナガバチやスズメバチの場合は、 庭木の手入れや農作業、林業、ハイキングなどの際に刺されることが多く、特に秋の野外活動 での被害が多いので注意が必要です。 ミツバチ アシナガバチ スズメバチ ハチに刺されると、激しい痛みが出現し、赤く腫れます。これはハチ毒の作用によるもので、 初めて刺された場合、通常は 1 日以内に症状は治まります。しかし、2 回目以降はハチ毒に対す るアレルギー反応が加わるため、刺された直後から蕁麻疹を生じたり、刺されて 1~2 日で強い 発赤、腫れを生じたりします。この反応は個人差が大きいですが、ひどい場合は刺されて 30 分 ~1 時間で血圧低下などにより意識を失い、死に至ることもあります。これはアナフィラキシー ショックと呼ばれる症状で、ハチ刺されによる死亡事故はこの特殊なアレルギー反応によるも のです。 虫さされの治療はどうすればよいですか? 虫さされの治療は、軽いものであれば市販のかゆみ止め薬(ムヒ、オイラックスなど)でもよ いですが、赤みやかゆみが強い場合はステロイド外用薬が必要です。さらに症状が強い場合は 抗ヒスタミン薬やステロイドの内服薬が必要になるので、皮膚科を受診するのがよいでしょう。 またハチ刺されのアナフィラキシーショック時などには緊急で症状を抑える注射もあります。ア ナフィラキシーショックを経験した方は、病院を受診し注射をもらっておくことを勧めます。 虫さされの予防はどうすればよいですか? 室内の蚊やノミ、イエダニなどの駆除には燻煙殺虫剤(アースレッド、バルサンなど)が有効で すが、気密性の低い家屋ではあまり効果がでません。イエダニの場合はその宿主であるネズミ の駆除が必要です。 蚊やブユなどの吸血性の節足動物に対する予防として、野外活動の際には肌を露出しない ことが重要です。また、携帯用蚊取りや、防虫スプレ-などの虫除け剤(忌避剤)を用いることで、 ある程度の予防は可能です。なお、虫除け剤(忌避剤)には、小児に対する使用上の注意として、 顔には使用しないこと、生後 6 ヶ月未満の乳児には使用しないこと、小児では 1 日 1~3 回の使 用にとどめることなどがありますので、必要に応じて適切に使ってください。 ドクガ類やイラガ類による被害を予防するには、何よりも有毒の毛虫に触れないように注意 することが最も大切です。もしドクガ類の毒針毛に触れた場合は、すぐにセロハンテープを用い て皮膚に付着した毒針毛を取り除き、よく泡立てた石鹸とシャワーで洗い流すことで被害を最 小限に留めることができます。 ハチ刺されの予防には、ハチにいたずらをしたり、むやみに巣に近付かないようにしてくださ い。特に夏~秋はハチの活動が活発になる時期なので注意してください。香水やヘアスプレー などの香りはハチを刺激することがあるので、野外レジャーの際には避けてください。 連絡先 平成調剤薬局 黒野店 TEL (058)293-0858 引用: 日本皮膚科学会ホームページ アース製薬ホームページ
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