地域に根ざした自然エネルギー振興と地域間連携は、いかにして可能か

*自然エネルギーの豊富な地域では、「人がいない、お金がない、知識もノウハウもない」としばしば語られる。
*①コミュニティパワーの考え方/地域自然エネルギー基本条例、②複数段階による主体形成と事業化推進体
制の構築、③地域金融の活用、④地域間連携のネットワーク構築の四点セットによって、打開の可能性がある。
[1]「コミュニティパワーの三原則」をヒントに、地域自然
エネルギーの定義条件を定め、それを優先的に振興
世界風力エネルギー協会は、下記の3基準のうち 2 つ以上を満たす
事業を「コミュニティパワー」と規定
1.地域のステークホルダーが事業の全体あるいは大部分を担って
いる。
2.地域社会に基づく団体が事業の議決権を持っている。
3.社会的、経済的利益の大部分が地域に分配される。
(出典:ICLEI Japan HP ニュース&イベント、2012)
→ 「地域再生可能エネルギー基本条例」を定めてはどうか?
以下の三つのうち、二つ以上を満たす事業を「地域再生可能エネ
ルギー」と呼ぶことにし、各自治体では、「地域再生可能エネルギ
ー」を優先的に奨励するようにする。
①[意思決定]事業の意思決定は、地域に基礎をおく組織によって
行われること
②[事業資金]事業資金の過半が、当該地域に属する主体から提供
されていること
③[受益の還流]事業による利益の過半が、当該地域に属する主体
に行き渡ること
ただし、これらの原則のより具体的な意味内容は、各自治体の個性
に応じて、柔軟に考えればよい。
[3]地域金融の活用
*自治体財政、国家財政とも余裕はなく、巨額の支出は困難。
*各地域内(県内、または、市町村内)の資金を活用して、事業資金
計画をつくる。
*全国の金融機関で、「預金あれども投資無し」という事態が広範に
見られる。
[全国銀行協会によると]
2010 年末の預金残高は、564兆円
2010 年末の貸出残高は、416兆円
預金と貸出の差額は、148兆円=それまでで最高。
国民一人当たり、120万円程度にあたる。
預貸率は、過去最低の73%。この10年間で、25%も低下。
*例、(2009 年 3 月末)
青森県では、地方銀行二行で、預貸率68%
預金 3 兆 9352 億円のうち、1 兆 2641 億円が貸出しされず。
*金融機関が、再生可能エネルギーに対する融資に積極的に取り
組む必要。
そのためには、さまざまな資金調達モデルの開発、金融機関の経
験蓄積、信用保証制度の運用における配慮が必要。
[4]地域間連携のネットワーク構築
[2]複数段階による主体形成と事業化推進体制の構築
<第一段階>学習会+講演会などの開催
・基礎知識の収集・蓄積(再生可能エネルギーのポテンシャル/
技術的情報/地域金融ポテンシャル)や、全国の経験(成功事
例、失敗事例)を学ぶ。
・住民だけでも可能だが、多様な主体(住民、地域の企業、行政、
金融機関、その他)が参加するほど、力が出る。
<第二段階>事業組織準備会の開催
・技術的選択:地域の自然特性と賦存量
・組織計画=担い手たる諸個人、担い手組織形成+ネットワーク
形成
・事業計画:収入、支出、キャッシュフローの計算
・資金計画:自己資金、融資、私募債、補助金
<第三段階>事業組織の設置と事業運営
・建設と運営を担う組織を設置し、実行する。
・担い手主体形成における、親組織(A)+直接的担い手組織(B)
という二層構造のメリット
A 親組織(民間企業、各種経済団体(土地改良区、森林組
合、漁協、生協など)、市民団体(社団法人、NPO)、行政組
織(自治体))
B 直接的担い手組織(Special Purpose Company)
*新たな地域間連携の構築に必要な配慮と工夫
・情報支援:県単位、市町村単位の事業化推進協議会に必要な
情報を提供する。
・金融支援:市民ファンドによる支援。利子の一部を現地の生産
物・商品券・宿泊券等による提供という手法もあり得る。
・需要の組織化:大都市での温暖化対策のためにはグリーン電力
購入需要は今後増大する。
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