【心理職 進学フェア16】「心理職としてのキャリアプラン」 1 / 10 心理職としての キャリアプラン 株式会社ジャパンEAPシステムズ 代表取締役社長 松 本 桂 樹 (臨床心理士/1級キャリアコンサルティング技能士/精神保健福祉士/シニア産業カウンセラー) 2 <JESについて> <略歴> 1.会社概要 1992.3 横浜市立大学卒業 (心理学専攻:主に精神分析) 1995.3 東京学芸大学大学院修了 (心理臨床専攻:主に家族療法) 1995.4 高田馬場クリニック(心理職) (精神科:主にアルコール専門) 1996.4 JES兼務 (相談体制の立ち上げ・営業) 2001.4 EAP相談室室長(転籍) (主にナラティブアプローチ) 2013.7 代表取締役社長 ~現在に至る 1993年設立 社員数約60名 ・臨床心理士約20名 ・精神保健福祉士約20名 ・キャリア系資格者14名 ・その他(総務・営業) 2.活動実績(2015年) サービス提供法人約200社 年間相談件数:約50,000件 年間相談者数:約5,000人 年間研修実施:約370回 ストレスチェック:約12,000人 【心理職 進学フェア16】「心理職としてのキャリアプラン」 学生時代に学んだこと ◇心理学を目指すまで ・夢への興味(明晰夢)※「心理学」or「大脳生理学」⇒「心理学」 ・臨床心理士の資格 ◇大学時 ・横浜市立大学心理学科:人間関係を捉える精神分析的な理論枠組みを学ぶ ※ 為になった授業:ロールシャッハ、催眠、箱庭、エンカウンター、マイクロ・ カウンセリングなど ・青少年相談センター非常勤相談員(不登校児の適応指導教室) ◇大学院時 ・東京学芸大学大学院:ファンタジーより日常生活を見る視点の大切さを学ぶ ※ 為になった授業:指導教官の面接陪席、自律訓練法、リラクゼーション、統計 調査、論文指導 ・相談室実習(被虐待児のプレイ):箱庭の砂を投げつけられたり、吐かれたり、 池に入って行かれたり、プレイルームから逃げられたり ・保健所デイケア非常勤(統合失調症デイケア):ラブレターを貰ったり、ヒス テリーで倒れたり、包丁を喉に突きつけるPtとその周囲の対応 クリニック時代の業務 ◇相談業務 -個別- ・インテーク&個別面接(カウンセリング):アルコール依存症/AC/統合 失調症/うつ病/パーソナリティ障害/不登校/家族など ・合同面接:福祉事務所、保健所、家族、企業担当者など ・個別指導(自律訓練法・リラクゼーション):心身症/自律神経失調症/ うつ病/ パニック障害など ・心理テスト:ロールシャッハ/TEG/PF-Study/WAIS/エゴグラムなど) ・電話相談 ・電子メール相談 ◇相談業務 -集団- ・デイケア(スポーツ・散歩・運営ミーティングなど):アルコール依存症 ・集団療法(グループミーティング・SST):アルコール依存症・家族会・ 統合失調症・AC ◇相談業務 -その他- ・保健所酒害相談(アルコール依存症・家族の相談) ・作業所グループミーティング(アルコール依存症) 2 / 10 【心理職 進学フェア16】「心理職としてのキャリアプラン」 EAPの業務(EAPとは?) EAP(Employee Assistance Program)は、従業員個人および家族 と同時に、企業組織に対して提供される総合的なサービス。 例えば、職場の人間関係に問題があったり、精神疾患に罹患し てしまったり、家庭内で夫婦関係に問題があったりすると、当然 勤労者は仕事に身が入らなくなり、業務のパフォーマンスが低下 してしまうことが考えられる。 EAPは組織との契約のもと、このような問題を早い段階で専門相 談に繋げて従業員や家族の問題解決の手助けを行い、結果とし て従業員の業務のパフォーマンスを上げて企業組織にも貢献し ていこうという点が目的となっている。 EAPサービスラインナップ 1. 電話(フリーダイヤル)・電子メール等による 相談と専門機関の紹介 2. CISM・自殺のポストベンション 3. 短期カウンセリング 4. 専門機関紹介後のフォロー 5. 研修(新人・一般職・管理職など) 6. マネジメント・コンサルテーション 7. EAP利用傾向報告と組織的改善策の提案 8. EAPのPRと利用の仕方のオリエンテーション 9. ストレスチェックと組織分析、環境改善 10.職場復帰支援(リワークなど) 3 / 10 【心理職 進学フェア16】「心理職としてのキャリアプラン」 CISM実施事例 社員の自殺(寮など) 社員の自殺(職場) 社員同士の傷害事件 社員の殺人事件 利用者の自殺(介護施設) 利用者による職員刺殺(医療施設) 部外者による自殺 同時多発テロ 死傷者の発生した労災事故 自然災害(震災) 相談事例 AさんはIT関係会社のシステムエンジニア。この所、忙しい状況 が続いて業務量が倍増し、全スタッフの残業が増えている状況。 ある日、Aさんが「話があるのですが」と相談室にやってきた。 「心身の疲労が高まっていて、できれば少し休みたい。ただ皆が 頑張っている中で、自分だけ抜けるなんてことはできない。でも、 疲労感・頭痛に加えて不眠もあって、とってもつらい。こんなにつ らいのに、何のために仕事を続けないといけないのか正直よく分 からなくなっている」とのこと。 「私はどうしたら良いのでしょう」と聞かれ、臨床心理士としても 困ってしまった。部署全体が大変ななかで、でも実際問題として、 Aさんがいないと業務は回らない状態のよう。上司は自分よりも 忙しい状況で、かつ昨今の不況もあって、増員も現実的ではない 様子。 臨床心理士として、一体どう対応したらよいものか。。 4 / 10 【心理職 進学フェア16】「心理職としてのキャリアプラン」 5 / 10 職業性ストレスモデル(NIOSHモデルを改変) 個人要因 性格・ストレス 評価・体力・業務 能力など 残業が 増えてる 仕事上の ストレッサー 疲労感 頭痛 眠れない ・うつ病 ・パニック障害 ・適応障害 ・過敏性腸症候群 Etc. ストレス性 疾患 急性⇒慢性 ストレス反応 問題行動 昨今の不況 仕事外の ストレッサー 社会的支援 ・遅刻や欠勤 ・仕事上のミス Etc. メンタルヘルス関連相談の流れ 1.電話・メールでのファーストコンタクト 2.来所相談⇒ 後に電話・メールでのフォロー 3.可能であれば、職場環境へのアプローチ 4.医療機関の紹介(受診の説明・費用の説明・紹介状) 5.主治医の要休職判断⇒ 本人承諾の上、人事へ説明 6.休職中のモニターと職場への継続連絡 7.復職の主治医確認と、産業医への情報提供 8.慣らし勤務スケジュールおよび注意事項の提案 9.職場復帰後の本人・上司フォロー 【心理職 進学フェア16】「心理職としてのキャリアプラン」 6 / 10 心理職を求める需要 【喪失体験】 ・生命: 恋人・親友・ペット・配偶者・家族の死 ・健康: 事故に合って手足を失った、脳に障害を残した、障害全般 ・財産など: 天災(地震・噴火)・火事・犯罪に巻き込まれて家や財産を失った ・信用: 自分や家族が世間的にまずいことをして警察やマスコミに取り上げられた ・関係性: ケンカをして友達と別れた、恋人・配偶者と別れた、親しい人に騙された ・仕事: リストラに合って退職になった、解雇になった ・平穏な生活: 犯罪被害、強盗に刺された、乱暴された、ストーカーに狙われてる 【過去の悔恨】 過去の人間関係で十分な関心を向けて貰えなかった(親が病気だった、兄弟が病気 だった、金銭的に余裕がなかった、親がいなかった、親に虐待された、いじめに合った、 犯罪被害に合った、などなど) 【セルフコントロールの不能】 心身症・強迫観念・強迫行為(洗浄・摂食・リストカット・アルコール依存・薬物依存な ど)・パニック発作・病気(精神疾患・生活習慣病・慢性疾患・アレルギー) 潜在した需要に対して、どうデリバーしていくのか 12 関連専門領域 医療的支援 適応支援 予防・発達 組織 組織 ストレスチェック コンサルティング 環境改善の知識 教育・研修支援 EAP対象 領域 発達 リワーク 治療 キャリア コンサルティング キャリア カウンセリング 公認心理師 センター コンサルタント 精神科 コーチング クリニック 個人 出典:大阪商工会議所編(2006).メンタルヘルス・マネジメント 検定試験公式テキストⅠ種マスターコース,中央経済社 【心理職 進学フェア16】「心理職としてのキャリアプラン」 7 / 10 13 専門分化した際のカウンセラーのありよう カウンセラーが自ら顧客企業とやりとりを行い、相談サービス のあり様を検討できる形態。顧客組織のことを踏まえつつ、 コーディネーター機能やプライマリケアを担う。 仲介業者による業務委託。サービス提供先とのやりとりは 仲介業者かコーディネーターが担うことになる。カウンセ ラーはクライアントのニーズによって自由に選択されるか、 コーディネータに選ばれる。 私に寄せられた心理職への不平・不満 ①すぐに面接室のなかに籠って仕事をしたがる ②守秘を盾にして、情報を共有しようとしない ③他職種との連携に積極的でない ④プライド高くて、偉そう ⑤新規相談を嫌がり、継続相談に長い時間をかける ⑥心理テストを取ると目が輝くが、言ってることが不明 ⑦経営視点やコスト意識がない ⑧労働関連法規や就業規則の知識が不十分 これでは産業領域で生き残って行けない! 【心理職 進学フェア16】「心理職としてのキャリアプラン」 現場で感じる「臨床心理士」の強み・弱み <強み> ●心理学全般の知識があること ・特に社会心理学・学習心理学・発達心理学の知識 ●大学院を出ていること ・統計ができること ・文章を書くことができること ・ある程度の英語ができること ●大学院の仲間が同業なこと <弱み> ●社会人経験が少ないこと ・社会常識やマナーが不足 ・若いうちから「先生」と呼ばれるため教わらない ●受け身・指示待ちのスタンス なぜ「臨床心理士」なのか? 【教育分野】 なぜ、教員じゃないのか? なぜ、養護教諭じゃないのか? 【医療分野】 なぜ、医者じゃないのか? なぜ、看護じゃないのか? なぜ、精神保健福祉士じゃないのか? 【産業分野】 なぜ、産業カウンセラーじゃないのか? なぜ、キャリアコンサルタントじゃないのか? なぜ、その他の資格じゃないのか? 8 / 10 【心理職 進学フェア16】「心理職としてのキャリアプラン」 臨床心理士としてどんな働き方をしたいか? ◎ガッツリと個人臨床がしたい 常勤:私設相談室/医療機関(病院) 非常勤:医療機関(クリニック)/私設相談室 ◎コミュニティアプローチがしたい 常勤:福祉/産業 非常勤:産業/スクールカウンセラー ◎安定した収入を確保したい 常勤:公務員(司法・法務)/大学教員 ◎家庭も仕事も大事にしたい 非常勤:医療機関/スクールカウンセラー/私設相談室 臨床心理士の主たる勤務機関の月収 臨床心理士動向調査より(H24) 9 / 10 【心理職 進学フェア16】「心理職としてのキャリアプラン」 10 / 10 19 なんのために臨床心理士になるのか? 大分類 内因的仕事観 功利的仕事観 規範的仕事観 中分類 項目 やりがい やりがい、達成感、チャレンジ、能力発揮 成長 器を大きくする、接点を広げる、できるようになる 関係性 誰かの役に立つ、感謝される、仲間と一緒 認知 存在価値を認めてもらう、責任を任される 仕事内容 やりたいことをやる、楽しい、自分らしい、没頭できる 上昇獲得型 社会的地位・評価・権限・裁量・金銭的成功を得る 損害回避型 家族を経済的に支える、自立をする、所属を得る 社会規範 社会・国のために役立つ 会社規範 会社を成長・発展させる 仕事規範 自分ならではの価値を生み出す、周囲の期待に応える、問 題を解決する、成果や価値を生み出す 世代継承規範 次世代に伝えていく、人を育てる 現場の「臨床心理士」としての矜恃 まず大事なのは、「自分が何をしたいのか」「どのように して人や社会に役立ちたいのか」という自分の想い。ここ がないと長く持たない。 その想いを果たすためには、どういう知識とスキルが必要 かを踏まえ、その知識やスキルに自分自身が興味を持てる ことが大事。知識やスキルは自分を守るためでもある。 大学院は、興味が近い仲間と師匠に出会える機会。資格は、 やりたいことをやらせてもらう許可証でもあり、継続した 成長のための会員証でもある。 国家資格は定期更新がないが、臨床心理士は更新がある。 国家資格化は、継続成長にブレーキとならないか心配。 何よりも「聴く」というところは大事な専門性。聴き続け るためには、専門性と仲間(SV)が必須。
© Copyright 2024 Paperzz