路面電車を走らせて中心市街地の 活性化を図ったデンバー市の話

路面電車を走らせて中心市街地の
活性化を図ったデンバー市の話
デンバー市はアメリカ西部にあ ターなどの大型ショッピング施設 主な内容は次のようなものである。 ア・RTDライトレール(電車)
るコロラド州の州都で、ロッキー やホテル、駐車ビルが多数並んで
デ
ンバー中心街では路面を走
山脈の東麓に位置し、緯度では秋 いる。
ア・一六番ストリートの両端にバ
り、郊外地では専用軌道となっ
「 現 在、 賑 わ い スターミナルを新設する
田市や盛岡市とほぼ同じで、高山 デ ン バ ー 市 は、
ている電車。一六番ストリート
市と姉妹都市関係にある。標高は のある街、環境改善で成功を収め 当時、走っていた五五〇台の
の北端から中心街の西側を迂回
一六〇〇m と高地にあるため「マ た都市」として、一九九九年には
バスの中心街への乗り入れを制
し、一六番ストリートの中央部
イル・ハイ・シティ」の愛称があり、 ニューヨーク・タイムスに「ダウン
限し、二つのバスターミナルに
で一六番ストリートと直交して
近くのボルダー市は高地トレーニ タウン・ルネッサンス」と評され
集中させる。これにより排気ガ
南部と南西部の住宅街と専用軌
ング地として日本でも良く知られ るなど、多くの評価を受けている。
スの低減を実現させる。
道で結んでいる。
デンバー市都市開発担当者を取材 イ・一六番ストリートの中央に専 一 九 九 四 年、 南 部 へ 五・三 マ
ている。
デンバー市は都市としての歴史 し、市の活性化に結びつけた要因 用バスレーンを設ける
イル十四駅で営業開始し、予測
は一三〇年ほどと浅く、人口も約 についてまとめることとする。
中央に幅八m の専用バスレー
利用者数が一四六〇〇人のところ
◇
◇
◇
五〇万人と日本での中核都市相当
ンにモール・ライドを運行させ、
実際は一六一〇〇人と多かった。
の人口規模である。デンバー市の 一九六〇年代にアメリカ各地の
環境改善をめざす。
二 〇 〇 〇 年、 南 西 部 へ 八・七
市街は碁盤の目状に道路がつくら 都市で、ダウンタウンの環境悪化 ウ・一六番ストリートに植栽をし、
マイル五駅で営業開始し、予測
れており、札幌市や帯広市と類し がすすんだため、人口の郊外移動 ミニ公園化、モール化をすすめる
利用者数が八四〇〇人のところ
が進み、いわゆるドーナツ化現象 エ・一六番街区の再開発をすすめる
た広さだ。
実際は一三三〇〇人と多かった。
街 の 中 心 は、 一 五 番、 一 六 番、 が起き、デンバー市も例外ではな 幅二十四m のストリートの両 現 在 で は 市 民 の 足 に 定 着 し、
一七番の各ストリートで、北端に かった。
側商店街やショッピングセン
将来はデンバー国際空港まで延
野球スタジアムや公園、南端に市 一九七一年のデンバー交通局と
ターを再開発し、集客能力の向
長される予定で、空港利用者も
や州の庁舎やビジネス街が集まっ RTDによる都市交通の改善提案
上をめざす。
直接RTDライトレールで市内
ており、この周辺約二㎞が中心街 を受け、一九七七年には世界的に
◇
◇
◇
入りするに違いない。また、郊
を形成している。特に一六番スト 有名なIMペイ建築会社による都 市街地再生の骨子は次のとおり
外の駅はハイウェーと同じ高さ
その である。
リ ー ト に 沿 っ て、 テ ー バ ー セ ン 市再生計画がつくられている。
に設けられており、市民のマイ
■ 視 点
Chiba Federation of small Businessssociations 10
つけているので、クランクシャ
民の買物客がダウンタウンを一
は、日本では城下町や商人町が
フトがなく、床は低くフラット
巡するのに便利な交通手段とし
あり鉄道の駅と離れている都市
になっている。
て モ ー ル・ ラ イ ド が 利 用 さ れ、
がかなりあること、さらに歴史
一九八五年に導入された当初
一六番ストリートへの来街者が
も長いことから観光客のニーズ
の動力源は電気六、ディーゼル
増加した。
も加味して都市再生を検討すべ
四の割合であったが、二〇〇二 エ・デンバー市のイメージがアッ
きことであろう。どんな街づく
年からディーゼルに代わり天然 プした
りをめざすのか、地域でしっか
りした合意を形成しておくこと
ガスを用いたハイブリッド車に 連
邦政府からダウンタウンの
なっている。
ルネッサンスのはしりと評価さ
が必要となる。
◇
◇
◇
れ、全米で一番空気のきれいな イ・ライトレールはバスターミナ
デ
都市とイメージがアップした。 ルと駐車場の連絡を重視する
ンバー市の都市再生事業の
効果は次のようにまとめること しかし、一六番ストリートを バ
スやマイカーの交通渋滞を
防ぎ排気ガスから環境を守るに
ができる。
はさむ一五番、一七番以外と離
カ ー は 駅 の 駐 車 場 を 利 用 し て、
れるに従い、まだ都市再生効果
はライトレールを利用してもら
マイカーでの市内入りは極めて ア・交通渋滞が緩和され、排気ガ
スによる環境の悪化が防止できた
は波及しておらず、
今後の課題も
わなければならない。このため
少なくなっている。
残 し て い る。環 境 志 向 の 街 づ く
に既存の鉄道駅と中心街やビジ
イ.モール・ライド(無料シャト RTDバスは一六番ストリー
トの両端にあるバスセンターに
りは一応の成功を収めてはいる
ネスセンターとは別の箇所にバ
ルバス)
スターミナルや駐車場を整備す
集められた結果、交通渋滞が緩
が、一六番ストリートを少し離
一九八五年モール・ライドの
和され排気ガスが減少している。
れた地域の再生は別のテーマの
ることが重要となる。
導入時は二三台のシャトルバス
検討も必要なのかと思われる。 ウ・日
で一五〇〇〇人の利用があった イ・住環境がよくなり郊外から人
本では函館市や熊本市、広
島市など路面電車が残っている
◇
◇
◇
が、
現在は一一五台、
六三五〇〇 口が流入しはじめる
富山港線のオープも注目されて
大気汚染の緩和は一六番街周 日本でもデンバー方式が参考に
人に利用されている。
辺にまで拡がり、古いオフィス なる点は多い。
いる。宇都宮市では計画づくり
モ ー ル・ ラ イ ド 導 入 時 に
ビルや商業施設がリニューアル ア・ライトレールの導入、活用
がすすみ、東京日本橋や池袋で
五五〇台のバスが除かれたた
されて新しいビジネス地区が出 日
も話題にのぼっている。
め、これだけで車ラッシュが解
本ではライトレールの技術
現したことや、アパートなどに
は確立されている。最近では富 県内でも西部では五〇万都市
消されている。
住む人も増え、中心市街地の再
山市で富山ライトレールが新設 があり、エコロジーに対応する都
一六番ストリートを七五秒間
生がすすめられている。
されたが、元来各地域で運行さ 市づくりに検討を加える価値はあ
隔で運行されている。車両前部
れていた経緯がある。
るのではないかと感じられる。
に 充 電 す る ゼ ネ レ ー タ ー が あ ウ・来街者が増加した
(中小企業診断士
大橋唯男)
り、後部に天然ガスの駆動部を ビ
ジネス客、観光客、地元市 デ
ンバー市とは異なるところ
視 点
■
RTD ライトレール
16 番ストリートと直交して交差点で駅とモール・ライ
ト停留所と直結している
2007.3
11