心臓核医学検査を理解しよう ~ 明日から携わる人へ ~ 序章 心臓核医学検査における データ収集法並びに解析処理法 心臓核医学検査は、現在一般的な検査となっております が、心筋SPECT 画像を例にとるとCT CTや やMRIの画像と比較 が、心筋SPECT画像を例にとると MRIの画像と比較 し、負荷、撮影(データ収集)、画像再構成(解析処理)、 画像表示、定量評価等の多くの過程をたどり、1枚の画像 が得られます。 今回、これらの過程のなかで撮影法(データ収集法)、画 岩手県立二戸病院 放射線技術科 像再構成法(解析処理法)について報告したいと思います。 石田 幸治 撮影法(データ収集法) 撮影法(データ収集法) ① コリメータの選択 ① コリメータの選択 ② 撮影開始までの時間 ③ エネルギー・ウインドウの設定 ③ エネルギー・ウインドウの設定 ④ 撮影データ収集角度 ⑤ データサンプリング(SPECT) 収集角度及び時間 ⑤ データサンプリング(SPECT)収集角度及び時間 ⑥ 収集拡大率(ピクセルサイズ) ⑦ 回転軌道 コリメータの種類 エネルギー別 低(L ME)・高( )・高(HE HE) ) 低(Low Energy)・中( nergy)・中(ME 透過層の大きさ 汎用(G 汎用(General Purpose) urpose) 高感度(H 高感度(High Sensitive) ensitive) 高分解能(H 高分解能(High Resolution) esolution) 透過層の傾き 平行(パラレル)・ファンビーム etc 平行(パラレル)・ファンビーム etc 例 MEGP=中エネルギー用汎用型 心筋シンチで主に用いられる核種 使用する核種のエネルギー 99mTc 分布を考慮し、かつコリメータの 140 140 KeV ぺネトレーションをも考慮しなが 123 I ら最適なコリメータを選択します。 159 159 KeV 529 KeV KeV 201Tl 70 KeV ☆ 注意 135 KeV 高感度コリメータ、ファンビームコリメー 167 KeV タ等を使用する場合、各々のコリメー タの特性を十分周知した上で使用す ることが重要です。 撮影法(データ収集法) ② 撮影開始までの時間 静注後の撮像のタイミングが画像に影響を及ぼすことがあります。 特に99mTc 製剤を用いた場合、肝臓、胆のうの集積が著明になる 特に99mTc製剤を用いた場合、肝臓、胆のうの集積が著明になる ことがあり、この時期に撮像すると偽欠損や高集積を生じやすく読 影に支障をきたす場合があります。また、運動負荷直後のupward 影に支障をきたす場合があります。また、運動負荷直後のupward creep現象にも注意が必要です。 creep現象にも注意が必要です。 ③ エネルギー・ウインドウの設定 使用する核種で最大の真のカウントを取り込み、散乱線は最小に抑 えるように設定します。また2 えるように設定します。また2核種同時収集を行う場合、特にエネル ギーピークが近い核種において、一方の核種の画像に他方の核種 のエネルギーの一部が介入するクロストークの影響を考慮しなけれ ばなりません。 1 撮影法(データ収集法) 撮影時間によるアーチファクトの例 ④ 撮影データ収集角度 体軸を中心に360° 体軸を中心に360°収集、左後斜位~右前斜位までの180° 収集、左後斜位~右前斜位までの180°収集 があります。それぞれ一長一短がありますが、画像の特性を考慮し また、使用している機器の検出器数に応じて適宜選択します。 ☆ 撮影データを収集する際の検出器の配置 エネルギーウインドウの設定 複数の検出器可変型カメラにおいては検出器の配置を変化させて収集すること も可能です。 クロストロー クに注意 90 度 180 度 撮影法(データ収集法) 76 度(104 度(104 度) サンプリング数について ⑤ データサンプリング(SPECT) 収集角度及び時間 データサンプリング(SPECT)収集角度及び時間 収集角度が小さく収集時間も長くなる程データ数並びにカウント数も 多くなり画質が向上しますが、これは1検査あたりの時間とのかねあ いもあるため、至適カウント数も確保しつつ、1検査15 分~30分に収 いもあるため、至適カウント数も確保しつつ、1検査15分~30分に収 めるようにし、収集角度は、サンプリング不足によるアーチファクトを 防ぐため6度以内に収めるのが望ましいと思われます。 検出器 a a N SPECT画像の角度サンプリング数 SPECT画像の角度サンプリング数 (投影データ数) πD 回転軌道の円弧の長さ Q ⑥ 収集拡大率(ピクセルサイズ) 収集拡大率を大きくする程ピクセルサイズが小さくなり、空間分解能 を上げる事が出来ますが、それと共に1ピクセル当たりのカウント数 (情報量)が低下し、統計的雑音の増加を引き起こし画質劣化の要因 となります。また、被写体のトランケーションエラーも引き起こす可能 性があります。臨床においては以上のことを考慮し、自施設の装置に おいて最適な収集拡大率を選択します。 a ピクセルサイズ D N> 被検体 N = πD/2a : 現在のピクセルサイズにおいて これ以上微細な角度サンプリン グの効果が認めにくい。 N < : : サンプリング数不足となりやすく、 放射状アーチファクトが目立ってく る場合がある。 有効視野 SPECT画像技術の基礎(日本放射線技術学会より引用) サンプリングのデータ数の違いによる再構成画像の例 シミュレーション条件 マトリックスサイズ ピクセルサイズ 収集角度間隔 :128 × 128 :3.2 mm / pixel :4, 6, 10 degrees / step (90, 60, 36 projection) ピクセルサイズと角度のサンプリング数 被検体の大きさ (mmΦ) 収集倍率 マトリクス ピクセルサイズ(mm) 角度サンプリング数 64 8.0 39 128 4.0 64 5.3 59 128 2.7 118 1.0 200 4 degrees / step (90 projeciton) projeciton) 6 degrees / step (60 projection) 10 degrees / step (36 projection) 79 1.5 64 4.0 79 128 2.0 157 64 8.0 59 128 4.0 118 2.0 1.0 300 64 5.3 88 128 2.7 176 64 8.0 79 128 4.0 157 1.5 400 1.0 SPECT画像技術の基礎(日本放射線技術学会より引用) 2 撮影法(データ収集法) 画像再構成法 ⑦ 回転軌道 SPECT収集時の軌道には、円形軌道、近接(楕円)軌道がありま す。円軌道は、画像のゆがみが非常に少ないですが、回転半径は 体表面からもっとも離れた所で決定されるため空間分解能の低下 が問題になる場合があります。楕円(近接)軌道は、各々の角度で 被写体に近接するため空間分解能が向上しますが、被写体のゆが みが生じます。これらのことを考慮した上で回転軌道を決定する必 要があります。 画像再構成法は大きく分けて以下の2 画像再構成法は大きく分けて以下の2つの方法があります。 ・ フィルター補正逆投影法 ・ 逐次近似法 距離一定 円軌道 近接軌道 画像再構成法 FBP法のまとめ FBP法のまとめ ◎ フィルター補正逆投影法 投影されたデータを再構成画像の収集線上に沿って逆方向に収集 カウントを書き込み、これを全ての方向について加算する方法です。 画像の分布は、真の分布と異なり線源のある1 画像の分布は、真の分布と異なり線源のある1点f (x、y)を考えたと き、その点からの距離r=√(x2+y2)に反比例した分布となり、その 濃度分布は真の画像に1/r で表される応答関数を作用させたもので 濃度分布は真の画像に1/rで表される応答関数を作用させたもので す。この操作を行うと画像にボケが発生する為、フィルターを投影デ ータに作用させた後に逆投影を行います。 ・重畳積分逆投影法 フィルターと投影データの処理を実空間 で行うもの フィルターと投影データの処理を実空間で行うもの ・フィルター補正逆投影法(filtered back projection:FBP) 長所 計算時間が短時間 短所 局所に高集積領域が有る場合および、サンプリング角度が 大きい場合にはストリークアーチファクトの原因となります 統計的変動に弱いです 負の再構成値が生じます ☆ カウントをできるだけ集めて、統計雑音を減らし、角度 と空間のサンプリングを細かくするほど正確な再構成 が可能です フィルターと投影データの処理を周波数空間 で行うもの フィルターと投影データの処理を周波数空間で行うもの 画像再構成法 ◎ 逐次近似法 「結果(投影データ)から、それを起こした原因(RI 分布)を、 「結果(投影データ)から、それを起こした原因(RI分布)を、 確率論に基づいて最も可能性の高いケースとして推定する方法」 初期画像として再構成画像上に適当な初期値を与え、各投影方向 に加算して計算上の投影データを作成します。この作成されたデー タと実測投影データを比較し、全ての画素値に対して修正を何回か 繰り返して逐次修正を行い、最終的な画像を得る方法です。 ・最尤推定 - 期待値最大化法 (ML-EM法 ML-EM法) 高速化 ・OS-EM法 OS-EM法 OS-EM法 OS-EM法 1) 2D OSEM 法(従来のOSEM法) 2D OSEM法 本来のコリメータ孔に入射するRI 分布と同じ2D Dビームモデルを用 本来のコリメータ孔に入射するRI分布と同じ2 いることにより、XY方向 のRI分布を正確に計算する分解能補正 いることにより、XY方向の RI分布を正確に計算する分解能補正 により画像再構成を行うアルゴリズムです。 しかし、Axial方向を考慮した再構成法でないため、Cornal,Sag しかし、Axial方向を考慮した再構成法でないため、Cornal,Sag italスライスに、歪みや分解能の低下を生じます。 2) 3D OSEM 法 3D OSEM法 本来のコリメータ孔に入射するRI 分布と同じ3D Dビームモデルを用い 本来のコリメータ孔に入射するRI分布と同じ3 ることにより、XYZ方向 のRI分布を正確に計算する分解能補正によ ることにより、XYZ方向の RI分布を正確に計算する分解能補正によ り画像再構成を行うアルゴリズムで、コリメータ孔の直径、長さ、クリ り画像再構成を行うアルゴリズムで、コリメータ孔の直径、長さ、クリ スタル厚、回転軌道によって決定されるコリメータ開口径補正を行い、 全ての方向において歪みや分解能を維持するもの。 3 画像再構成法 逐次近似法のまとめ ◎ コリメータビームモデル FBP コリメータ孔に入射する放射線はその直線上から と仮定 2D OSEM コリメータ孔に入射する放射線はスライス面内 (X、Y方向)からと仮定 3D OSEM コリメータ孔に入射する放射線はスライス面内 並びにAxial方向(X、Y、Z方向)からと仮定 FBP法と比較し FBP法と比較し ・ 負の再構成値が生じない ・ 高集積領域からのストリークアーチファクトが少ない ・ 測定系で起こりうる物理現象(散乱、減弱、解像力低 下)を織り込むことにより定量性の向上が期待できる。 しかし、 FBP法に対して、再構成に時間を要する。 FBP法に対して、再構成に時間を要する。 シーメンス旭メディック(株)提供 基礎的検討 ファントムの概要 京都科学社製 RH -2型 京都科学社製 RH-2型 基礎的検討 欠損部位は2 欠損部位は2箇所設定 1)心基部より5cm の側壁部に直径1cm 1cmディフェクト ディフェクト 1)心基部より5cmの側壁部に直径 2)心基部より3cm の前壁部に直径2cm 2cmディフェクト ディフェクト 2)心基部より3cmの前壁部に直径 心基部 3cm 直径 2cm 5cm 右心:水 直径 1cm 側壁 前壁 心尖部 使用機器 基礎的検討 ☆ 円形軌道 ガンマカメラ SIEMENS ガンマカメラ SIEMENS E.cam 画像処理装置 e.soft e.soft 3.5 コリメータ ・心臓撮影用高感度コリメータ 収集条件 1)収集条件は回転軌道のみを円形軌道、近接軌道とし FBP法 2D OSEM 法 3D OSEM 法 2D OSEM 法 3D OSEM 法 ☆ 近接(楕円)軌道 それ以外の条件は一定としました。 2)画像再構成はFBP法、2D OSEM法、3D OSEM法 で行いました。 FBP法 4 臨床画像 臨床画像 近接(楕円)軌道で360° 近接(楕円)軌道で360°画像再構成を行っております。 FBP 法 2D OSEM 法 FBP 法 2D OSEM 法 3D OSEM 法 3D OSEM 法 最後に 心臓核医学検査において撮影法、再構成法はいく通り もあります。どの方法をとってもそれぞれにおいて画像 は少なからず変化します。各々の再構成法によって作成 される画像の特性を周知し、診断医と緊密に連携しなが ら検査方法を決定し、診断に必要な画像を提供しなけれ ばならないと思われます。 5
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