SGM - 早稲田大学理工学術院理工学研究所 鳥居研究室

P4-202 CALET ガンマ線バーストモニタ (CGBM)の開発
山岡 和貴*1, 吉田 篤正*1, 坂内 容子*1, 野中 雄気*1, 原 拓生*1, 山本 龍実*1, 冨田 洋*2, 上野 史郎*2、中平 聡志*3, 森 國城*4*5, 中川 友進*5, 小
谷 太郎*5, 鳥居 祥二*5, 他 CALETチーム
*1 :青山学院大学理工学部, *2: JAXAつくば宇宙センター, *3: 理化学研究所, *4: JAXA宇宙科学研究所(ISAS), *5 : 早稲田大学理工学術院総合研究所
2014年夏期打ち上げ予定の国際宇宙ステーション実験CALETには主検出器であるカロリメータ(CAL)のガンマ線バースト観測機能を強化するため,7 keV~20 MeV
の広帯域X・ガンマ線を観測する,ガンマ線バーストモニタ(CGBM)が搭載される.CGBMは新型シンチレータLaBr3(Ce)とガンマ線阻止能にすぐれたBGOの2種類の
センサ(それぞれHXMとSGM),センサからの信号処理やガンマ線バーストを自動検出し,データをメモリに保存する電子回路部(E-BOX)からなる.現在CALETは詳細
設計フェーズにあり,急ピッチでフライトモデル製作に向けて開発が進められている.本発表では,CGBMで可能なサイエンス,CGBMのシステムと開発の現状につい
て報告する.
2. ガンマ線バーストモニタ(CGBM)の概要
1. CALETによるガンマ線バースト(GRB)の観測
広帯域をカバーするため、2種類の検出器を搭載
CALET(CALorimetric Electron Telescope)の主検出器であるカロリメータ(CAL)は、FermiLATと似たタワー型の構造をもち(図1)、1 GeV-20 TeVの高エネルギー電子, 10 GeV10TeVのガンマ線, 数10 GeV-1000 TeVの陽子・原子核成分の測定を行うことが狙いであ
る。ガンマ線の感度はCGRO/EGRETと同程度であり、GRB観測を行うことが可能である。
表1. GRB観測のためのCALETの重要なパラメータ
検出器
~1.8 str.
CAL
ガンマ線エネル
ギー
有効面積(cm2)
角度分解能
視野
デッドタイム
時間分解能
VAチップAssy
10 GeV– 10 TeV (通常時)
数 GeV– 10TeV (GRBトリガー時)
~1000
2.5 deg@1 GeV, 0.4 deg@10 GeV
MaPMT組立
GRB
(視野内)
SciFi
IMC-FEC
(4段)
 硬X線モニタ (Hard X-ray Monitor; HXM)
 軟ガンマ線モニタ (Soft Gamma-ray Monitor; SGM)
どちらも光電子増倍管(PMT)とシンチレータという宇宙環境で実績のあるテクノロジーを用いる。
表 2. HXM と SGMの特徴
IMC検出器構造
(630x630x約195mm)
CHD
CGBM
サイズ
IMC搭載プレート
台数
天頂~45度(~1.8 str.)
1.8 ms
1 ms
バ
ス
部
サ
イ
ド
パ
ネ
ル
PMT
バ
ス
部
サ
イ
ド
パ
ネ
ル
TASC-FEC
(6段)
TASC_TOPプレート
TASC
PD/APD
さらにCALETのGRB観測機能を強化するため、
~7 keV– 20 MeVをカバーするCALETガンマ線バ
ーストモニタ(CGBM)を搭載する。また、姿勢決定
のためのスターセンサ(Advanced Star Camera:
ASC)を積極的に科学目的に用い、GRB発生直後
の可視光画像を取得する。
TASC検出器構造
(426x426x約270mm)
バス部ベースプレート
PWO
図1: CALET-CALを横から見た図
エネルギー
68 cm2(2台)
エネルギー分解能 ~3%@662 keV
ASC
82 cm2
~12%@662 keV
GRB方向決定
自身ではなし。惑星間ネットワークによる決定
視野
天頂 ~50度(~2.2 str.) ほぼ全天 4πstr.
30 μs / イベント
デッドタイム
Gonzalez et al. 2002
SGM
BGO+PMT
LaBr3(Ce)+PMT
Φ66 mm x 12.7mm t Φ102 mm x 76 mm t
2
1
~7 keV – 1 MeV
~100 keV – 20 MeV
有効面積(cm2)
時間分解能
Fenimore et al. 1988
SGM
HXM
検出器
IMC
HXM
MDC
図4: CALETの全体図
トリガー時: 62.5 μs (イベントデータ)
通常時:
1/8 s or 4 s (モニターデータ)
 CAL、CGBM、ASCを合わせてGRBの超広帯域
Ginga/GBD SC(約60 cm2)や
HETE2/FREGATE(約120 cm2)とほぼ
同等の性能をもつ。特にFermi-GBMに
はない、10 keV以下の低エネルギーX線
に感度をもつことがユニーク。7 keV以下
に下限エネルギーを設定する予定。
スペクトルを取得 (可視光、~7 keV—数 TeV)
•X線フラッシュからGeVガンマ線バーストまでの
SGM
ピークエネルギー探査、遅れたGeVガンマ線の
HXM
起源(図2)、Gingaでみられた吸収線探査(図3)
CAL
•可視光閃光(フラッシュ)の検出、起源解明
GRBに加えて、軟ガンマ線リピーター、太陽フレア、
X線パルサー、ブラックホール突発天体の
長期モニター観測
図2:GRB 941017で観測
された遅れた10 MeV
図3:GRB 880205のGinga GBD
以上の超過成分
で発見された吸収線構造
3. CGBMの開発現状
3.3 CGBM E-BOXとMDC
3.1 CGBMの主要コンポーネント
① センサー部: HXM, SGM
② CGBM信号処理部: CGBM-EBOX
③ ミッションデータ処理部: MDC (Mission Data
Controller)
3.2 CGBMセンサー部
結晶シンチレータ、PMT、ブリーダー、プリアンプ
(Astro-Hと共同開発のハイブリッド ICを使用)で構成
図7: HXMシンチレータ結
◎HXM
晶ユニットの構造
• 宇宙で使用実績のない高性能シンチレータ
コリメ
LaBr3(Ce)を初めて用いる。潮解性が大きい。
結晶ユ
ータ
• X線に感度をもたせるため、410 μm厚の
ニット
ベリリウム入射窓を使用。
PMT
• コリメータで視野を約50度に制限。
• 高い量子効率をもつ浜松ホトニクス耐震型2.2イン
ブリーダー
チ光電子増倍管 R6232-05を用いる。
プリアンプ
• サンゴバン、IHIエアロスペース(IA)と検出器
図8: HXMの全体構造
構造設計ほぼ完了(図7, 8参照)。
◎SGM
• 高いガンマ線阻止能をもち、宇宙での実績豊富な
BGOシンチレータを用いる。
• 高い量子効率をもつ浜松ホトニクス耐震型3インチ
光電子増倍管 R6233-20を用いる。
• 応用光研工業、IAと設計ほぼ完了(図9参照)
結晶テストモデルの製作と性能評価
図6: HXM2台とSGM1台の有効面積
図9: SGMの全体構造
BGO
現在の配置でHXMで年間約40
個程度、SGMで約80個程度の
GRB検出を期待
1系統 x3 センサ
• 広帯域を実現するためHigh/Lowのゲインア
ンプ出力を独立の16bit ADCで取得。
• ゼロクロスタイミングでピークを検出し、波高
をサンプルホールド。
• 高圧電源S9099 (イタリアSITAEL社)を装備
。 8 bitで3検出器独立に高圧値制御を行う。
• GRBが発生したことを判断するハードウエ
ア判定回路を保持する。判定はGinga/GBD
やSuzaku/WAMと同様に、 バックグラウンド
レベルを時々刻々計算し、統計揺らぎからの
有意性で判断する。
FPGA
Lowゲイン
ADC
Highゲイン
ADC
LD+ゼロクロス
コンパレータ
Fast 整形
DAC
UD
ADC
HV
HV mon
DAC
HV ref
Δt 秒間のBG
を引いたGRB
イベント数
Δt 秒間の
BGの統計揺
らぎ
図11: テストモデルの性能
M
メモリ
データ
D
C
コマンド
ΔBg
Bg
Δt
表 3. CGBMのデータの種類
• GRBトリガー時に、
• メモリに約10 Mbyteのイベントbyイベントデータ
データ
イベントデータ
モニターデータ
を蓄積する。
PH
TH
• CGBM EBOXの内部クロックとMDCの
62.5 μsec
4 sec 1/8 sec
時間分解能
クロック、GPS時刻の照合を行い、時刻付けする。
8
エネルギーチャンネル 4096 (High, Low) 512
• CALのエネルギー閾値を数 GeVに下げる。
時間範囲
約1.4x106イベント 常時出力
• ASCの可視光画像データを取得。
を保存(~500s)
• CGBMからのデータ
イベントデータとモニターデータの2種類を出力(表3)。
Highゲイン
 電気系要素試作モデル(BBM)
•
•
IA,三菱プレシジョンと共同製作
広帯域スペクトル(4.6 keV~2614 keV)の取得に成功
GBM-EBOX
138La
1438
keV + 40K 1461
keV
208Tl
LaBr3 テスト
モデル
+ トリウム
(232Th)レンズ
Ba-KX
32.1 keV
Lowゲイン
SGM-FEC
図10: テストモデルの写真
(ADC
駆動部
、カウ
ンタ、ヒ
ストグ
ラム生
成、G
RB判
定、コ
マンド
など)
図12: CGBM-EBOXのブロック図
Ba-LX
4.6 keV
LaBr3(Ce)
Logic
GRB
トリガー
1
10
100
1000
エネルギー (keV)
図13: CGBM電気系BBMの写真と試験風景
図14: BBMで取得したLaBr3(Ce)
テストモデルのスペクトル
2614 keV