2012年度受験対策 パワーアップ問題集 行政書士講座 政治・経済・社会 パワーアップ問題集 政治・経済・社会 はじめに パワーアップ問題集は、受験経験のある方を対象とした「上級合格コース」におい て実施される「上級講義」にて使用する教材です。 本問題集は、昨年度の試験において惜しくも涙を呑まれた方が、今年度の行政書士 試験において確実に合格することが可能となるだけの実力を養成することを目的に作 成しています。 周知のことと思いますが、昨今の行政書士試験は、全体的に難化傾向にあることは いうまでもありません。旧制度時代に行われていたような勉強法(薄いテキストをあ る程度読んだうえで、過去の本試験問題(以下、過去問とします)を何回か解けばよ い)は、もはや通用しません。司法試験や司法書士試験等のような法律系の難関国家 資格に変貌したといってもいいと思います。 その一方で、行政書士試験を受験される方の大半は、働きながら勉強をしている社 会人受験生です。つまり、行政書士試験の受験生は、司法試験や司法書士試験の受験 生と異なり、受験勉強に当てるだけの時間がそこまで多くないというのが現実です。 以上から分かることは、①受験生の学習時間は旧制度時代と比べ劇的に増加してい るわけでないにも関わらず、②試験問題はどんどん難化しているというものです。 これが、行政書士試験の受験生を取り巻く環境です。 そのような環境のなか、新しく本問題集(パワーアップ問題集)を刊行することと なりました。本問題集は、以下の3つのコンセプトに基づき作成されています。 ① 過去問のみならず他資格試験の過去問題も扱う 上記の通り、昨今の行政書士試験の難化傾向に対応するには、過去問だけの学習で は不十分です。そこで、他資格試験の過去問題のうち行政書士試験対策にも参考にな りうる問題を選び出しました。 もちろん、私たちが目指すべきは行政書士試験の合格です。そのため、本試験の傾 向から外れた学習とならないように、過去問も必要な限りにおいて掲載しています。 ii はじめに ② 本当に解けるようになるべき問題のみを精選する 上記の通り、行政書士試験の受験生にとって、受験勉強をする時間というのはとて も貴重です。無駄なことをやっている暇はありません。少ない時間で最大の効果が得 られるように、本試験対策に特化した問題集を目指しました。 また、問題の解答解説に重要度を付しました。重要度の意味は以下の通りです。 重要度A:合格を目指すうえで解けて当然としなければならない問題。 重要度B:本試験までには解けるようになってもらいたい問題。 重要度C:時間に余裕があれば解けるようになって欲しい問題。 各問題の重要度を参考に、メリハリのある復習を心がけていきましょう。 ③ 知識の習得のみならず、解法テクニックを習得する 難関国家試験は、単に知識があれば、合格点に達することができるわけではありま せん。知識だけではなく、問題を解く上での解法テクニックをも習得する必要があり ます。 本問題集が、過去問だけでなく他資格試験の過去問題も掲載している理由はここに もあります。過去問だけでは、解法テクニックを練習するだけのストックがないため、 他資格試験の過去問題も用いて練習しようというわけです。 最後になりましたが、本問題集が、1人でも多くの合格者の輩出に貢献することを 願ってやみません。最後まで一緒に頑張っていきましょう。 上級合格コース iii 上級講義担当 林 裕太 パワーアップ問題集 政治・経済・社会 目次 政治 1 国家 ........................................................... p.3 2 社会契約説 ..................................................... p.7 3 執政制度 ....................................................... p.9 4 議会(国会) ................................................... p.23 5 選挙 ........................................................... p.27 6 地方自治 ....................................................... p.41 7 政治とマスメディア ............................................. p.51 8 行政組織 ....................................................... p.53 9 行政改革 ....................................................... p.63 10 国際連合 ....................................................... p.83 11 その他 ......................................................... p.85 経済 1 財政 ........................................................... p.91 2 租税 ........................................................... p.99 3 公債 ........................................................... p.103 4 予算 ........................................................... p.109 5 財政投融資 ..................................................... p.119 6 地方財政 ....................................................... p.121 7 日本銀行 ....................................................... p.138 8 貿易の自由化 ................................................... p.143 9 中小企業 ....................................................... p.145 10 その他 ......................................................... p.147 iv 目次 社会 1 地球環境問題 ................................................... p.152 2 日本の環境問題 ................................................. p.157 3 リサイクル・廃棄物処理 ......................................... p.167 4 社会保障 ....................................................... p.169 5 性差別の撤廃 ................................................... p.185 6 その他 ......................................................... p.187 v 政治 問題5 執政制度 議院内閣制に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。 1 大統領制に比べて議院内閣制のほうが権力分立の原理が忠実に適用され、立法 権と行政権の分離が徹底される。 2 議院内閣制を採っている国々では、日本国憲法と同様に、議会が最高機関であ るとする明文の規定を置いている。 3 議院内閣制の母国とされるイギリスでは、国民の政治的意思を忠実に反映させ る選挙制度としての比例代表制が採用されている。 4 日本の地方自治体の制度は首長主義を採っているが、議会の長に対する不信任 と長による議会の解散とを対抗させる仕組みは議院内閣制と同様である。 5 議院内閣制では、内閣の意思決定と政権党の意思決定が対立することが通例で あるため、内閣の閣内不一致による総辞職が引き起こされやすい。 正誤 チェック欄 - 11 - 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 / / / / / パワーアップ問題集 重要度 A 行政書士試験 1 政治・経済・社会 執政制度−議院内閣制 正解:4 平成17年度問題48 妥当でない 通常、議院内閣制に比べて大統領制のほうが権力分立の原理が忠実に適用され、立 法権と行政権の分離が徹底される。 2 妥当でない 議院内閣制を採っている国であっても、必ずしも議会が最高機関であるとする明文 の規定を置いているわけではない。 3 妥当でない イギリスでは、小選挙区制が採用されている。 4 妥当である 日本の地方自治体の制度は首長主義を採っているが、議会の長に対する不信任と長 による議会の解散とを対抗させる仕組みは議院内閣制と同様である(憲法93条2項、 地方自治法178条)。 5 妥当でない 通常、内閣と政権党の意思決定が対立することは少なく、内閣の閣内不一致による 総辞職を引き起しやすいともいえない。 - 12 - パワーアップ問題集 問題14 政治・経済・社会 選挙 選挙制度に関する次のア∼オの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。 ア 小選挙区制の特徴は、一般に大きな政党に有利に、また小さな政党に不利に作 用して、二大政党制を促進することにあるが、死票が多くなり、政党の得票率と 議席率の間に大きな差がでることが多いという問題点がある。 イ 比例代表制の特徴は、各政党の得票率と議席率との一致率(比例度)が最も高 く、民意を政治に反映しやすいところにあるが、議会制民主主義を支持しない小 さな政党が議席を獲得した場合には政治的緊張を引き起こす可能性もある。 ウ 日本の衆議院議員選挙では、小選挙区比例代表並立制がとられ、重複立候補制 が認められているが、小選挙区での得票順位と当落が逆転するなどの事例がでて きたために、重複立候補の場合に、小選挙区で供託金没収点未満の得票だった候 補者が比例代表で当選となる「復活当選」は認められなくなった。 エ 日本の参議院議員選挙では、都道府県を単位とする選挙区選挙と比例代表制選 挙がとられており、比例代表制選挙においては、政党名の得票数に従って各政党 の議席数を配分したあとで、選挙前に各政党があらかじめ届け出た名簿の順番に 基づいて当選者を決定していく方式となっている。 オ 日本の最高裁判所は、選挙区間の議員1人当たりの有権者数に3倍を超える格 差があった1990年衆議院議員選挙について、憲法に定める「法の下の平等」に反 して憲法違反であるとし、一部選挙区の選挙を無効であるとした。 1 一つ 2 二つ 3 三つ 4 四つ 5 五つ - 32 - 政治 正誤 チェック欄 - 33 - 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 / / / / / パワーアップ問題集 重要度 A 行政書士試験 ア 政治・経済・社会 正解:2 選挙 平成19年度問題48 正しい 小選挙区制の特徴は、一般に大きな政党に有利に、また小さな政党に不利に作用し て、二大政党制を促進することにあるが、死票が多くなり、政党の得票率と議席率の 間に大きな差がでることが多いという問題点がある。 なお、死票とは、有効投票ではあるが、当選人以外の者に投じられたため、当選人 の決定に関与しなかった票のことをいう。 イ 正しい 比例代表制の特徴は、各政党の得票率と議席率との一致率(比例度)が最も高く、 民意を政治に反映しやすいところにあるが、議会制民主主義を支持しない小さな政党 が議席を獲得した場合には政治的緊張を引き起こす可能性もある。 ウ 正しい 日本の衆議院議員選挙では、小選挙区比例代表並立制がとられ、重複立候補制が認 められているが、小選挙区での得票順位と当落が逆転するなどの事例がでてきたため に、重複立候補の場合に、小選挙区で供託金没収点未満の得票だった候補者が比例代 表で当選となる「復活当選」は認められなくなった。 エ 誤っている 参議院の比例代表制選挙は、非拘束名簿式であり、各政党の議席数は、総得票数(政 党名の得票数と候補者名の得票数の合計)に応じて配分される。また、各政党は、当 選順位を決めずに候補者名簿を届け出る。 オ 誤っている 最高裁は、本肢の選挙当時の議員定数配分規定について、格差は憲法に定める「法 の下の平等」に反して違憲状態にあったが、憲法上要求される合理的期間内における 是正がされなかったものと断定することは困難であり、憲法に違反するものと断定す ることはできないとしている(最大判平成5.1.20)。 よって、2(エ・オの二つ)が正解となる。 - 34 - 政治 問題22 行政組織 り ん ぎ 稟議 制に関する次のア∼オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。 ア 稟議制は、決定権者の指示の下で、職場の第一線の職員が起案書を作成し、そ れを関係各部署に回議し、決裁にいたる意思決定の方式であり、トップ・ダウン とボトム・アップの調和を考えた制度である。 イ 稟議制は、わが国においては、行政機関だけでなく民間企業においても用いら れてきた。 ウ 稟議制は、日常的な意思決定に際して、組織のトップが各部署の責任者を招集 して合議のうえで行う意思決定の方式であり、トップの意向を組織に浸透させる うえで有効な制度とされている。 エ 稟議制は、関係する構成員が決定過程に参加でき、その間で情報を共有しやす いという利点がある一方で、最終決定にいたるまで時間がかかるという短所があ るとされている。 オ 情報技術の発達に伴う電子決裁や電子メールの浸透によって、行政機関におい ても稟議制による意思決定の方式はとられなくなっている。 1 ア・イ 2 ア・エ 3 イ・エ 4 ウ・オ 5 エ・オ 正誤 チェック欄 - 53 - 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 / / / / / パワーアップ問題集 重要度 A 行政書士試験 政治・経済・社会 行政組織−稟議制 正解:3 平成20年度問題48 稟議制とは、下位の職員が起案書を作成し、それを関係各部署に回議し、決裁にい たる意思決定の方式である。 ア 妥当でない 稟議制では、職場の第一線の職員(下位の職員)が起案書を作成するが、多くの場 合、それは決定権者の指示によるものではない。つまり、稟議制は、トップ・ダウン ではなくボトム・アップによる意思決定の方式である。 イ 妥当である 稟議制は、わが国においては、行政機関だけでなく民間企業においても用いられて きた。 ウ 妥当でない 稟議制は、下位の職員が起案書を作成し、それを関係各部署に回議し、決裁にいた る意思決定の方式であり、本肢のような「組織のトップが各部署の責任者を招集して 合議のうえで行う意思決定の方式」ではない。よって、稟議制では、トップが指導力 を発揮しにくいという欠点が指摘されている。 エ 妥当である 稟議制は、関係する構成員が決定過程に参加でき、その間で情報を共有しやすいと いう利点がある一方で、最終決定にいたるまで時間がかかるという短所があるとされ ている。 オ 妥当でない 行政機関では、現在でも稟議制を採用している。 よって、3(イ・エ)が正解となる。 - 54 - 政治 問題30 行政改革 ニュー・パブリック・マネジメント(NPM)に関する記述として、妥当なのはど れか。 1 PPPとは、公共と民間のパートナーシップによって、公共部門が提供してき た公共サービスを民間に開放するものであり、民間資金の活用を図る手法である PFIは、PPPに含まれない。 2 エージェンシーとは、政策立案機能は中央省庁に残し、行政執行機能を分離、 独立させたものであり、民間の経営手法を導入することにより、行政の効率化を 図ることを目的としている。 3 内部市場システムとは、政府部局内で擬似的な市場を創出することにより、よ り効率的で質の高いサービスの提供を実現しようとするものであり、供給主体の 決定にあたっては、市場化テストを経なければならない。 4 ベンチマーキングとは、政府が補助金を消費者に賦与し、特定のサービスを受 ける業者を消費者自身に選択させるものであり、その場合、サービスを評価する ための具体的な基準が設定される。 5 アウトカム指標とは、投入された資源で行政が提供したモノやサービスの量を 表すものであり、政策評価において、執行効率を評価する指標として導入されて いる。 正誤 チェック欄 - 69 - 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 / / / / / パワーアップ問題集 重要度 東京都1類 1 A 政治・経済・社会 正解:2 行政改革 平成18年度試験 妥当でない 民間資金の活用を図る手法であるPFIも、PPPに含まれる。 2 妥当である エージェンシーとは、政策立案機能は中央省庁に残し、行政執行機能を分離、独立 させたものであり、民間の経営手法を導入することにより、行政の効率化を図ること を目的としている。 3 妥当でない 市場化テストは、民間企業と行政組織の間でサービスの質や効率性を競う入札を実 施し、行政に勝る民間企業があれば、当該業務を民間企業に委託する制度をいい、本 肢の内部市場システムとは無関係である。 4 妥当でない ベンチマーキングとは、他の優良な事例を見つけて分析し、それを基準とすること で、自己の活動を判定・評価する業務改善の手法をいう。 5 妥当でない 投入された資源で行政が提供したモノやサービスの量を表すものであり、政策評価 において、執行効率を評価する指標は「アウトプット指標」である。アウトカム指標 とは、政策の実施によりもたらされた成果を表すものである。政策評価では、活動そ のものより国民に対する具体的な成果が重視されることから、アウトプット指標より もアウトカム指標のほうが重視されている。 - 70 - 政治 問題32 行政改革 我が国の独立行政法人に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。 1 独立行政法人は、イギリスのエージェンシーをモデルとしている。イギリスで は、行政の機能を企画・立案と実施とに分け、エージェンシーは後者の機能を担 当している。これに倣って、我が国の独立行政法人も、企画・立案機能を担当す ることはなく、実施機能だけを担当する。 2 独立行政法人は、地方自治体がより効率的な行政サービスを提供するため、首 長から一定の独立性を持った法人として設立されている。独立行政法人が地方自 治体の法人であるのは、我が国では、国が企画・立案機能を、地方自治体が実施 機能を分担して担当してきたという伝統があるためである。 3 独立行政法人の長は、事業実施の目標や方法だけでなく、職員の報酬や給料に 関する裁量を持つ。そのため独立行政法人が目標を超える実績をあげた場合、職 員に支払う報酬を増やすことができる。所管官庁の大臣は、こうした長の裁量を 統制することはできない。 4 独立行政法人には、公務員型と非公務員型とがある。職員は公務員型において は国家公務員であるため、国家公務員法と独立行政法人通則法の適用を受けるが、 非公務員型においては国家公務員ではないため、それらの法律の適用を受けるこ とはない。 5 独立行政法人の扱う事務は、次の二つの条件を満たすような事務である。第一 に、公共上の見地から確実に実施される必要がある事務であり、第二に、国が直 接実施する必要はないが、民間に委ねると必ずしも実施されないか、又は独占的 に行う必要があると考えられる事務である。 正誤 チェック欄 - 75 - 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 / / / / / パワーアップ問題集 重要度 国家Ⅱ種 1 A 政治・経済・社会 正解:5 行政改革 平成13年度試験 妥当でない わが国の独立行政法人は、主に政策の実施機能を担当しているが、その企画・立案 機能を担当することが完全に否定されているわけではない。 2 妥当でない 独立行政法人は、国の行政機関の行政活動から政策の実施部門のうち一定の事務・ 事業を分離し、独立の法人格を与えて、業務の質の向上、効率性の向上等を図ること を目的として設立されたものであり、地方自治体が設立したものではない。なお、独 立行政法人の地方版として、地方独立行政法人法に基づく地方独立行政法人の制度が ある。 3 妥当でない 主務大臣は、3年以上5年以下の期間において独立行政法人が達成すべき業務運営 に関する目標(中期目標)を定め、これを当該独立行政法人に指示しなければならな い(独立行政法人通則法29条)。そして、独立行政法人は、この中期目標に基づき、当 該中期目標を達成するための計画(中期計画)を作成し、主務大臣の認可を受けるこ ととされている。この中期計画のなかには、職員の報酬や給料を含む予算も含まれて いる(独立行政法人通則法30条)。よって、所管官庁の大臣は、独立行政法人の長の裁 量を統制することはできないとはいえない。 4 妥当でない 非公務員型の独立行政法人も、独立行政法人通則法の適用を受ける(cf.独立行政 法人通則法2条)。 5 妥当である 独立行政法人の扱う事務は、①公共上の見地から確実に実施される必要がある事務 であり、②国が直接実施する必要はないが、民間に委ねると必ずしも実施されないか、 又は独占的に行う必要があると考えられる事務である(独立行政法人通則法2条1項)。 - 76 -
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