2016 TEXTE 4 (和訳) 魔女の秘密 子供(孫)がおばあちゃんに魔女の見分け方についてたずねています。 子供:おばあちゃん、他に魔女の正体を見抜くこつがある? おばあさん:足だよ。魔女には足の指がないんだ。 子供:足の指がない! じゃあ、その代わりに何があるの? おばあさん:何もないよ。魔女の足は、指がなく四角なんだ。 子供:歩きにくくないの? おばあさん:少しね。靴をはくのにちょっと問題さ。女ってもんは先のとがった小さな靴をはきた がる。 でも魔女は、足がとても大きくて四角いから、靴を履くことは本当に苦しいことなのさ。 *calvaire :イエス・キリストが十字架にかかった丘の名前で、「長く続く苦難」という意味で用いられる 子供:どうして魔女は、四角い足にあった心地よい靴を履かないの? おばあさん:あえてそうしないのさ。かつらの下にハゲを隠しているのと同じように、美しい先の とがった靴の中に、四角い足を隠しているのさ。 子供:ものすごく痛いよね。 おばあさん:すごーく痛いさ。でも、魔女はそれでも靴をはいているのさ。 子供:そんなことが魔女を知るてがかりになるの? おばあさん:そのとおりだよ。もしおまえがよーく気をつけてみれば、魔女は軽く足をひきずって 歩いているのに気付くよ。 子供:もっとほかにないの、おばあちゃん。 おばあさん:ああ、もう一つあるよ。これが最後のてがかりさ。魔女の唾液は青色なんだよ。 子供:ありえない !青い唾液だなんて! おばあさん:ブルーベリーの実の青ささ。 子供:そんなばかな、おばあちゃん。どんな女の人だって、ブルーベリーの実のような青い唾液な んてもってないよ。 おばあさん:持ってるんだよ、魔女はね。 子供:インクみたいな青? おばあさん:その通り!魔女たちは羽ペンを使うが、インクを使わずにペン先をなめるだけさ。 子供:もし、僕が魔女に出会ったら、青い唾液を見れる?ねえ、見れる?見れない?どっち?おば あちゃん。 おばあさん:もしおまえが注意深く、とても注意深く見さえすれば。魔女たちの歯が少し青くなっ てるのがわかるよ。でもほとんどわからないけどねぇ。 子供:もし唾をはいたら? 1 おばあさん:魔女は絶対に唾をはかないのさ。あえてそうしない・・・さあ、これが私が魔女のこ とで、おまえに教えてやれるすべてさ。少しは役にたったかい? その人が魔女でないか どうかなんて、一目見ただけでは決してわからないことさ。 でも、もし手袋をはめていたり、か つらをかぶっていたり、鼻の穴が大きかったり、氷のように冷たいまなざし、炎のように激しいま なざしをしていたら、それに、もし歯が少し青みがかっていたら・・・そのときはできるだけ遠く まで逃げるんだよ! 子供:おばあちゃん、おばあちゃんは小さいころ魔女に会ったことがある? おばあさん:一度だけ。一度きりさ。 子供:何があったの? おばあさん:それは言えない。おまえをぞっとさせ、怖がらせるだろうからね。 子供:お願い、話してよ! おばあさん:いいや、話すにはあまりに恐ろしすぎるよ。 子供:おばあちゃんの親指がないのと、何か関係があるの? 突然、しわしわの祖母の唇が、ペンチで閉めたように固く閉じた。葉巻を持った手が(親指はない のだが)震え始めた。私は待っていた。祖母はもう私を見ようとしなかった。私にもう話しかけよ うとしなかった。殻の中に入ったかたつむりのように、自分の中に閉じこもってしまった。祖母と の話は終わった。 子供:おやすみ、おばあちゃん。 Roald Dahl 2
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