育成牛(乳牛)の管理について 1 管内の育成牛の現状 管内の育成牛の現状を乳検成績から、まとめてみると、初産分娩月齢は平成 13 年で 26 ヶ月、全道で は 26 ヶ月です。 目標である 24 ヶ月以内で分娩している割合は 60%で、また、分娩時体重は 585kg(目標は 570kg)です。 初産の補正乳量は、2産、3産以降と比較すると、63%の割合でトップになっていないことがわかります。 以上のことから、14>ヶ月で受精できる牛づくりと、初産能力を引き出す食い込みの良い腹づくりに、改 善の余地があることを示しています。 これらが達成できれば、まだ、経営効率を高める可能性があります。 我が家の育成管理方法と照らし合わせながら、もう一度育成管理のポイントを確認しましょう。 2 出生時 生理理的特徴 ○限界温度は 13℃。 ○出生後の体蓄積栄養源は4∼5時間で消化。 チェックポイント ○へその消毒 ○初乳の比重チェック (良質初乳:初乳計で比重 1.047 以上) 6,200 円/個 飼養方法 ○ 1時間以内に良質初乳を2㍑給与 →遅れると免疫吸収量が減少 →小腸内に病原菌が定着 ○ 12 時間以内に2回目の初乳給与 ○施設の消毒、敷料など十分な手入れ ○被毛の乾燥 3 出生∼離乳 生理理的特徴 ○限界温度−5℃ ○2∼3週齢はもっとも免疫力が低下 チェックポイント ○人間との信頼関係を結ぶ →大声を出さない、乱暴に扱わない ○下痢の有無を1日に2回確認する ○全体の動き、耳の動きが鈍くないか →体調の把握 ○哺乳施設は乾燥を保ち、新鮮な空気を提供する ○哺乳量の目安は1日4㍑もしくは体重の 10% ○離乳はスターターの摂取量で判断 →1kg を3日連続で摂取 ○哺乳期間は6週間が目安(無理なく固形飼料の摂取量が高められる期間) ○十分に食い込める環境 ○新鮮な水を常に飲めるようにする。特に夏期は注意する ○子牛同士を接触させない ○できれば個体飼いから群飼いへの馴致 ○離乳後1週間は移動させない ○初乳に余裕があれば凍結保存しておく ○離乳時の目標体重は 75kg 以上 ○離乳時の日増体量は 0.8kg 以上 飼養方法 ○水の給与開始 ○2日目からスターター(粗たん白 20∼22%)の給与開始 →200g 位を強制的に口へ直接入れる ○ルーメンの発達を第一に考慮した方法→ルーメン微生物の増殖 ・収縮や反すう機能を高める ・吸収力を高める ・水分(飲水・唾液)の補給 ・感染性細菌の排除< ○乾草給与は4週令まで最低限にする 4 離乳∼6ヶ月齢 生理理的特徴 ○急速な日増体量の増加 チェックポイント ○哺乳施設は使用後に生石灰などで消毒する ○常に飲水できるようにする 飼養方法 ○スターターから育成用配合飼料(粗たん白 16∼18%)に切りかえる。その時に、育成牛と同じ粗飼料 を給与する ○粗飼料は飽食とし、出来れば粗飼料分析を行ない品質を確認する ○群分けは、同じような体格、採食スピードの牛を1グループとする ○同日、同時間で1群としてハッチ等より移動する →全ての牛に同様の移動ストレスがかかり、食い負けが出にくい →その群に牛は足し飼いしない 5 6∼12 ヶ月齢 生理的特徴 ○乳腺が急速に発達する ○乾物摂取量が増加する ○過肥にすることにより乳腺組織に脂肪が付着し、将来の産乳量が低下する ○バランスのとれた栄養管理 →栄養不足で初回分娩月齢の遅れ ○低タンパク、高エネルギー主体飼料で、発育不良や小太り牛になりやすい チェックポイント ○過肥にならないように、BCSを 3.0∼3.25 にする 飼養方法 ○飼料乾物中のTDNは 70∼72%、粗タンパク質は 16%前後とする ○ミネラル(特にカルシウムとリン)とビタミン(AD3E)を補給する。 6 授精∼妊娠鑑定 生理理的特徴 ○骨の成長が緩やかになり、乾物摂取量が増加する チェックポイント ○意識的発情発見、授精、妊鑑 ○発情兆候が弱い牛は、繁殖検診を実施 ○授精時のフレームサイズ (体重 340∼360kg、体高 121∼127cm) →月齢よりも体重、体高を重視する ○日増体量 0.8kg 以下 飼養方法 ○授精対象牛のグルーピング ○飼料中のたん白質含量は 12∼14%で充足可能 ○過剰なたん白は不経済と不受胎の原因 7 授精後∼分娩前1ヶ月 生理理的特徴 ○妊娠期の栄養状態は、初産乳量に影響 →増体が良ければ初産乳量向上 ○増体が高まっても、乳房の発達には影響を及ぼさない チェックポイント ○目標の分娩前体重は 570kg ○日増体量は 0.8kg ○BCSは 3.5 を目安にする 飼養方法 ○牧草は草架ではなく、確実に食べさせるように、給餌する ○配合飼料は牛のBCSを観察し給与 8 分娩前後の疾病や難産に注意 育成妊娠末期(分娩予定1ヶ月前∼分娩) 生理理的特徴 ○胎児が急速に発育 チェックポイント ○コンディションの維持、BCS は 3.5 が目安 飼養方法 ○乾乳牛と一緒に管理させて馴致 ○ビタミン AD3E、ESE筋注 10mg 9 黒松内町営牧場の平成14年成績について ア 町営牧場の概要 放牧面 積 87ha 利用農家戸数 6戸(80 頭) 放牧期 間 5月中旬∼10 月下旬 預託料金 210 円/日(平均) 衛生対 平成 13 年度から、共済、後志家畜保健衛生所、JA、黒松内町の協力のもと、牧場衛生対策 策 を実施している。 ※後志NOSAI南部家畜診療所調べ イ 増体成績 下の図は入牧時と下牧時の体重の推移を示したものです。 ※ 黒松内町役場産業課調べ 図中の線は月齢毎の標準的な体重の上限と下限を示しています。 下牧時体重は発育曲線の範囲内で推移しており、平均的な増体が確保されていることがわかります。 ウ 繁殖成績 右の表に入牧中の繁殖成績を示しました。平成 14 年度は人工授精対象牛(乳牛)38 頭のうち、32 頭 が受精し、84.2%の受胎率となりました。平成 13 年度と比較しても約 10%向上しています。 5ヶ月の入牧期間内では、好成績を残しています。 表−町営牧場の繁殖成績 年度 受精実頭数 受胎頭数 受胎率 平均受精回数 (%) 13 33(8) 76(75) 76(84) 1.4(1.4) 14 38(6) 84(100) 84(100) 1.9(2.3) ※後志南部家畜診療所調べ ※後志家畜保健衛生所調べ エ まとめ 以上、平成 14 年度黒松内町営牧場の成績から、日増体量成績、繁殖成績、牧場衛生対策結果は、良 好に推移している事がわかりました。 これらの水準が維持されれば、育成部門の省力化、低コスト化が期待できます。 また、預託牛がよりよい増体などを保つためには、預託前の管理が重要です。食い負けしない腹づくり、 群飼い・放牧への馴致が、預託効率を高める飼養方法といえるでしょう。 町営牧場が果たす役割は、将来の後継牛の創出のため、今後とも重要になります。
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