引当金と偶発事象 - Greenback Alan LLP

経営者に贈る
貸借対照表での引当金の意味合いは、取引先の債権者な
の基準を満たしていないため、財務諸表では注記として偶発
どに対するほかの債務と同じです。ただFRSでは、引当金を
債務を開示できます。
「時期や金額が不確実な負債」と定義しています。一方、取引
先の債権者への債務は時期も金額も確実なため、この定義に
は当てはまりません。 引当金あるいは偶発事象は資産になり得ますか。
経済的便益の流入がほぼ確実な場合には、偶発資産では
なく、報告日の時点での資産として計上できます。例えば過
58
それではどのようなときに引当金が計上できますか。
去に起きた事象について、保険金が貸借対照表日の後に支払
FRSでは、企業が引当金を計上する必要があるのは次の
われることを保険会社が確認している場合です。経済的便益
場合だけと定めています。
の流入が確実ではないもののその可能性が高い場合には、財
•企業が過去の事象の結果として、報告日時点で債務を持つ。
務諸表で注記として偶発資産を開示する必要があります。
•企業は債務を決済するために、経済的便益を流出させる
必要性が恐らくある(可能性が高い)
。
経営において会計は身を守る防具だけでな
•債務の金額について信頼性のある見積りができる。 く、勝ち抜くための武器にもなります。英国
イアン・ロウ
日系企業の経営者が知っておきたい会計
企業は財務諸表に計上する引当金について、上記の条件を
パートナー
トピックを、会計のプロが分かりやすく解説。
すべて満たさなければなりません。重要なのは、債務が法的
会計監査部署に所属。25年以上の経験を様々な
債務か推定的債務かという点です。推定的債務とは、過去の
ビジネスにて駆使し、また財務会計に関して企業
事象によりその企業が債務支払いの責務を果たすことについ
の立場からアドバイスを提供する姿勢から、多く
引当金と偶発事象
て、他者が妥当な期待を抱くような債務です。 何年も前であれば、企業は実際の利益を見た上で「望まし
当社では主要な設備を4年ごとに点検整備していますが、か
のクライアントの信用を得ている。
パートナー陣
い収益状況」を達成するために引当金を計上して利益を操作
なりの費用がかさみます。この費用を引当金として、点検整
できました。この会計手法は「ビッグバス会計」と呼ばれ、あ
備までの各年度に分けて計上できますか。
る年度に企業が履行の約束のない引当金を計上し、翌年度に
そのような費用に対する引当金は認められません。企業の
それを覆すということが行われてきたのです。
将来的な行動には引当金を計上できないためです。たとえ行
1980年になると標準会計実務基準書(SSAP)18号の「偶
動を起こす可能性があるとしても、貸借対照表日の時点で債
発事象会計」が導入され、これが98年に財務報告基準(FRS)
務がありません。また取締役たちが、点検整備の前にその設
12号(IAS / 国際会計基準37号)の「引当金、偶発負債及び
備の売却を決める可能性もあります。
偶発資産」に置き換えられました。FRS12号で定められた要
件は、新たな財務報告基準であるFRS 102のセクション21
偶発債務とは何ですか。
に引き継がれています。 偶発債務とは、可能性はあるものの不確実な債務、あるい
は引当金を計上する基準に合わないために計上できない現在
8
引当金が貸借対照表に記載されれば、必ず債務になるとい
の債務のことです。例えば企業が訴訟に関わっていて、報告
うことですか。
日の時点では訴訟の結果が不確実な場合です。これは引当金
www.news-digest.co.uk 7 August 2014 vol.1416
スティーブン
ポール
ニック
ジョン
パンボス
ジョー
イアン
グリーンバック・アラン LLP
「日系に強い会計事務所」として長年にわたり多くの日系クライアン
トに、会計、監査、税務、各種アドバイスから経理業務まで幅広い
サービスを提供。迅速かつ的確な対応をお約束いたします。日系
部署が、窓口から実務まで日本語にてサポート。
Greenback Alan LLP
11 Raven Wharf, Lafone Street,
London SE1 2LR
Tel: 020-7403-5959
Email: [email protected](日本語)
Website: www.gballp.com