式 辞 沼 田 川 の 水 が 温 み 、 高 山 城 を 仰 ぎ 見る 本 郷 の 地 に も 春 の 息 吹 き が 感じられ、暖かな陽光に恵まれる季 節となりました。新しい第一歩 をしるすのにふさわしい、今日の佳 き日、昨年三月、一足先に竣工 しましたこの体育館において開校式 並びに第一回入学式を挙行でき ますことは私たち職員一同にとって 誠に大きな慶びであります。 伸様、三原市長職務執行者惠木 慧様をはじめ、本校開校 本 日 の 開 校 式 に お い て 、 ご 祝 辞 を いた だ き ま し た 広 島 県 議 会 副 議 長宇田 に向け、ご尽力をいただき、ご多用 の中、ご臨席を賜りましたご来 賓の皆様方とともに本校の新たな門 出を祝うことができますことを 深く感謝いたしますとともに心 よりお礼申し上げます。 ま た 、 保 護 者 の 皆 様 、 立 派 に 成 長 され た 我 が 子 の 制 服 姿 を ご 覧 に なって、さぞかし慶びもひとし おの事とお察し申し上げます。 ここで、本校職員を代表して、お祝 いと歓迎の言葉を述べさせて いただきます。 新 入 生 並 び に 保 護 者 の 皆 様 、 広 島 県立 総 合 技 術 高 等 学 校 へ の ご 入 学おめでとうございます。心よりお 慶び申し上げます。新入生の皆 さんは、今日から本校の第一期生と して新たな高校生活と本校の校 風と伝統づくりの第一歩が始まりま す。自ら選択し、入学を志した 本校の生徒として、勉学に、クラブ活動に、学校行事等に、そして、 家庭・地域での生活において充実し た日々を送り、やがて社会の諸 分野においてリーダーとして活躍で きる人材になってもらいたいと 思います。また、本校の校長として なってもらえるよう教育をして いきたいと思っております。 さて、本校は,﹁夢を実現に変える﹂というキャッチフレーズの下、 幅広い視野を持つ人材を育成するた めに新しいタイプの専門高校と して、県民の関心と期待が大きい中、昨年の十二月一日に設置され、 職員が一丸となって開校に向け、準 備を進めて参りました。先程、 二四0名の生徒の入学を許可し、今 少しばかり安堵感を抱いている ところであります。 そ こ で 、 私 は 、 社 会 の 諸 分 野 に お いて リ ー ダ ー と し て 活 躍 で き る 人材になってもらうために心掛けて ほしいこととして、次の三点に ついて話をしたいと思います。 ま ず 第 一 点 目 は 、 二 十 一 世 紀 が ど のよ う な 世 紀 に な る か は 今 世 紀 の主役となる生徒の皆さんの双肩に かかっていると言っても過言で はありません。今世紀は、テクノロ ジー化、IT化、グローバル化 がさらに進み、様々な情報や知識が 世界中を飛び交い、それらが瞬 時に共有化され、多様な価値観が融 合する時代になると言われてい ます。このような社会で展開される 競争に勝ち抜いていかなければ ならない状況を目の前にして、それ らを的確に判断し、選択・処理 し、さらに活用することができる幅 広い視野を持つ能力を有する人 材が求められています。こうした人 材を育成するためには、次の三 つの要素を備えた人材が必要で あると言われています。 一 つ 目 の 要 素 は ﹁ 志 と 心 ﹂ で す 。 これ は 、 社 会 の 一 員 と し て の 規 範を備え、物事に使命感を持って取り組もうとする強い意思を持ち、 誠実さや信頼を得る人間性、倫理観 、様々な形で社会に貢献しよう とする意欲、目標を成し遂げようと する責任感などの高い志と心を 持っているという要素です。 二 つ 目 の 要 素 は ﹁ 行 動 力 ﹂ で す 。 これ は 、 情 報 収 集 や 交 渉 、 調 整 などを通して困難を克服しながら目 標を達成する力です。時には、 議論し、理解してもらうためには、 コミュニケーション能力が必要 となります。その際、自分の意見と 違う相手と意見をかわす場面と 遭遇する場合があります。その時、 自国の文化や歴史などを理解し た上で、異文化を理解する能力が必要となります。このことは、﹁日 本人としてのアイデンティティー﹂ の意識を持つことと相手の立場 を尊重する振る舞い、すなわち、エ チケットやマナーを持った行動 ができる要素です。 三 つ 目 の 要 素 は ﹁ 知 力 ﹂ で す 。 こ れは 、 深 く 物 事 を 探 求 し 、 考 え 抜く力です。各分野の基礎的な学力 に加え、深く物事を探求し、考 え抜く力、論理的思考力や高い専門 性や独創性が求められます。そ のためには、自分の知識を総合し、 発展させることができる力を培 っていくことが必要となります。まさに、﹁知の総合化﹂ができる力 を持つ要素です。 私 は 、 こ の よ う な 考 え と 本 校 の 教 育内 容 の コ ン セ プ ト ︵ 概 念 ︶ で ある﹁ものづくりの技術﹂、﹁ビジネス感覚﹂、﹁もてなしの心﹂の視 点に立ち、自分の能力を最大限に発 揮し、幅広い視野を持ち、社会 に貢献でき、大きく羽ばたける人材 を育成しようと思い、本校の校 訓を﹁敬愛・創造・飛翔﹂と定めました。 ま た 、 こ の こ と を 実 現 す る た め に 本校 は 、 工 業 ・ 商 業 ・ 家 庭 型 の 六学科の生徒が一つのクラスを形成 するミックスホームルームや各 学科の内容について学習することが できる総合選択科目を設置した り、﹁産業探求﹂、﹁インターシップ﹂、﹁ビジネス英会話﹂、﹁産業総 合実習﹂など各学科が共通して履修 することができる教育課程にな っております。 そ こ で 生 徒 の 皆 さ ん 、 自 分 自 身 の 能力 を 育 成 し 、 最 大 限 に 発 揮 す るためには絶えず﹁学ぶ﹂という姿勢を持つことが大切です。今は、 どの学校を出たかで測る﹁学歴社会 ﹂から、何を学び、何ができる かが問われる﹁学習歴社会﹂に変わりつつあります。そのためには、 ﹁学びの場﹂としての学校において 、勉学の基礎・基本を学ぶ授業 を大切にし、疑問を持ちながら授業 を受け、その疑問点を解決する ためにはどのようにしたらよいか、 生徒の皆さん自身が主体性と自 主性をもって、授業に臨んでもらい たいと思います。また、高等学 校の学習内容を十分に理解するため には家庭学習を怠らず、自主的 に根気強く継続し、勉学に励んで下 さい。この思いを常に念頭に置 き、自ら考え、自ら動ける﹁自立型人間﹂になることにとどまらず、 さらに自ら持つ能力や可能性を最大 限に発揮し、個として自立する ことができる﹁個立型人間﹂として 、自分自身が将来なりたい社会 人、就きたい職業人なるための ﹁自己実現﹂図って下さい。 第二点目は、先程、私は﹁新しい第一歩をしるすのにふさわしい、 今日の佳き日﹂という表現をしました。﹁新しい第一歩﹂とは今日か ら始まる高校生活の第一歩を踏み出 すことを意味します。この第一 歩をただ何となく踏み出すか、高校 生活終了時における自分の姿を 思い浮かべながら第一歩を踏み出す かによって大きな違いがあると 思います。すなわち、ただ単に何と なく日々を過ごすのではなく, 高校卒業後における自分の人生の在 り方生き方を見通し、自分自身 の進路を実現するための﹁夢と目標 ﹂を持った高校生活を送っても らいたいと思います。今日からの第一歩は、﹁自分の夢を近づける第 一歩である﹂ということを 忘れないで下さい。 ﹁まさかり投法﹂ ・ ﹁サンデー兆治﹂ ・ ﹁努力に耐えて努力する選手﹂ と評され、右ひじ手術後も四0歳ま で投手を務め、現役時代二一五 勝を挙げ、引退後の現在、プロ野球 OBによる﹁マスターリーグ﹂ では、時速一四0キロ以上のボール を投げ、離島の子どもたちに野 球教室を開き、今年の一月十一日、 野球殿堂入りされた、ここ本郷 町の名誉町民である﹁村田兆治﹂さんは、﹁本物を見せることによっ て相手は感動をしてくれる。身近に 体験したことは、必ずよい刺激 になり、夢につながります。夢があ るから目標を明確にできるので す。﹂と言われています。新入生の皆さん、本物の技術者・技能者に なる﹁夢﹂を持ち、あらゆる学習活 動の場面において﹁本気で、一 生懸命﹂に取り組み、夢の実現に向かって、﹁かけがえのない自分の 人生﹂を創り上げて下さい。本 校は、これができる学校です。 ま た 、 来 年 以 降 、 入 学 し て く る 後 輩の た め に も 一 歩 一 歩 づ つ 本 校 の職員と共に本校の校訓である﹁敬 愛・創造・飛翔﹂を合言葉に新 たな校風と伝統を築き上げて行 こうではありませんか。 第 三 点 目 は 、 ク ラ ブ 活 動 と 言 う も う一 つ ﹁ 学 び の 場 ﹂ で は 、 先 輩 たちから技術を﹁学ぶ﹂ことは言う までもなく、勝った時の喜び、 負けた時の悔しさを共有し、お互い の人格や人権を尊重しながら協 調性・連帯感・克己心など心豊かで 、敬愛し合うことができる人格 を創るための人間関係を学んでほし いと思います。これらのことを 通して、今までとは違う新しい自分 を発見し、新たな自分自身を創 り上げてください。 ﹁親友は心の友﹂という言葉がある ように、自分の心の中を独占 してしまうほど、その存在感が大き く、一生涯つき合える﹁友﹂を つくって下さい。 本 校 の 職 員 は 、 仕 事 に 対 す る 強 い 意欲 や 教 育 へ の 情 熱 と 専 門 性 豊 かな集団です。きっと、生徒の皆さ んの要望に応えてくれるものと 信じております。また、そのように 応えてもらえるよう校長として 支援していきたいと思っております。 最後になりますが、﹁天は人の上に人を造らず﹂の言葉で知られ、 ﹃学問のすゝめ﹄など数多くの書を 著した明治の政治思想家である 福沢諭吉氏は、小編﹁家庭習慣の教 えを論ず﹂に次の一節を著して います。 ﹁父母たるものが⋮身の挙動にて教 えうることは、書を読みて教 うるよりも深く心の底に染み込むも のにて⋮、自身の所業は決して 等閑︵大事なことと考えないで、い いかげんに扱うこと︶にすべか らず﹂とあり、親がいいかげんな行 動をするのではなく、手本を示 すことだと説いています。つまり彼は、﹁親の言うことはしないが、 親のすることをする﹂とか﹁親の背 中を見て、子は育つ﹂という言 葉があるように、親の生き方在り方を述べ、﹁教育の原点は、家庭で あり、子どもにとって最初の教師で ある親の生き方在り方が大切で ある﹂ということを言っている のではないでしょうか。 保護者の皆さん、今世紀を担う我が 子にどのようなメッセージを 教え、伝えられようとされています か。どうぞ私たち学校と手を携 えて、子どもたちの高校生活を充実 させ、子どもの成長を促すため に、お互いの役割を果たし、力を出 し合っていこうではありません か。 話が少し長くなりましたが、保護者 の皆様に対し、改めて本校へ の教育に対するご理解とご支援とを お願い申し上げるとともに、か けがえのない宝物であるお子様が、 本校を巣立っていく時、心身と もに成長し、自己実現を果たし、社 会に有能な人材として活躍する ことができるような人間になるよう 祈念し、お祝いと歓迎の気持ち 神鳥 誠 と今日からスタートする本校への万 感の思いを込め、式辞といたし ます。 平成十七年四月八日 広島県立総合技術高等学校長
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