「金融検査マニュアル」(その3) - Hi-HO

銀行取引の知識(00/9)
YourFinancialBrain SMC 豊島 健治
「金融検査マニュアル」(その3)
要注意先基準
ポイント
1.要注意先即不良債権ではありませんが、一般に不良債権予備軍と捉えられています。
2.債務者区分判断に裁量余地があり、それが自己査定作業を難しくしているように見えます。
今月21日、金融庁から生命保険会社に対する集中検査の結果が公表されました。生命保険会社
も銀行と同じように貸出資産の自己査定を行っていますが、検査結果を見ますと、当局の査定と自
己査定の間にかなり乖離があることが判ります。今回の発表では、実に自己査定よりも1.6倍問
題債権があるという内容でした。何故このようなことになるのでしょうか。
この辺の事情は銀行も生保もあまり変わりません。生保の健全性を示す指標はソルベンシーマー
ジンで、銀行のそれは自己資本比率ですが、その健全性指標を下げたくないという意向が自己査定
作業に反映しているものと推測されます。こうした行為は金融機関の信頼性を損なうものとなりま
すが、逆に云えば、自社の銀行査定は若干甘くなっていると判断しておくべきかもしれません。も
ちろん一般論の話ですが、そのくらい厳しく捉えておいた方が賢明ではないでしょうか(破綻した
「そごう」は、監督庁でさえ要注意先と判定していました)。
今回は、検査マニュアルに記載されている要注意先の指定基準について書いてみます。
1.「要注意先」の定義
(1)金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある先
(2)元本返済若しくは利息支払が事実上延滞している等履行状況に問題のある先
(3)業況が低調乃至は不安定な先、又は財務内容に問題がある先等今後の管理に注意を要する先
2.要管理先とそれ以外の要注意先
当該債務者の債権の全部又は一部が要管理債権である債務者は「要管理先である債務者」として、
それ以外の債務者と分けて管理することが求められている
3.「要注意先」に該当しない赤字会社(正常先と認定可)
(1) 創業赤字で当初事業計画と大幅な乖離がない債務者
具体的には、黒字化する期間が原則5年以内で、かつ売上・利益が事業計画比7割以上確保
されている債務者。
(2)以下の赤字企業
①固定資産の売却損など赤字原因が一過性のもので、短期間に黒字転化確実な先
②赤字中小・零細企業で、返済能力に特に問題がないと認められる先
(3) 不渡手形、融通手形及び期日決済に懸念のある割引手形を有する債務者であっても、債務
者の収益及び財務内容から当該手形を負担する能力があると認められる債務者
尚、(1)の場合では、債務者の業種特性、事業内容、事業規模、キャッシュフローによる債務
償還能力等の他、技術力、販売力、成長性などを総合的に勘案することを求め、(2)の場合では、
業種特性を踏まえ、債務者の状況、赤字決算の原因、内部留保の状況、今後の決算見込などを総合
的に勘案することを検査官に求めています。そして、これらの基準を形式的に充たさない債務者を
直ちに要注意先と判断してはならないと注意しています。
上記をもって、自社が正常先か要注意先か判定できますか?
2000年9月30日発行
SMC TEL.0438-53-6092 FAX.0438-53-6096
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