中学生版 ブックリスト №24 2004・10・27 この主人公たちに会いたい! 2003年1月∼12月までの1年間に 図書館に入った本の中から、14冊を選んで紹介します。 編集・発行 富山市立図書館 富山市丸の内1-4-50 TEL 432-7272 1 ノリー・ライアンの歌 パトリシア・ライリー・ギフ 作 もりうち すみこ 訳 さ・え・ら書房 19世紀半ば、イギリスの悪政の下、アイルランドは大飢饉にみ まわれた。全島の畑で主食のジャガイモは、葉も茎も腐って悪臭を 放っている。 それでも、 イギリス人領主の取り立ては容赦なかった。 ノリーの家族も、地代の代わりに頼みの家畜を取り上げられてし まう。やっと手に入れた小麦粉も奪われ、草も海草も食べ尽くした 時、出稼ぎの父さんから迎えが来た。希望を失わず困難を生き抜い た少女の物語。 二つの旅の終わりに エイダン・チェンバーズ 作 原田 勝 訳 徳間書店 第2次世界大戦中、オランダの少女ヘールトラウは、イギリス 人負傷兵ジェイコブを命がけでかくまい、その死を看取った。 50年の歳月が流れ、今は死の床につくヘールトラウ。彼女に 招かれイギリスからオランダにやって来た17歳の少年ジェイ コブは、自分と同じ名前の祖父が、ヘールトラウとの間に意外な 秘密を持っていたことを知らされる。 過去と現在を行き交いながら、戦争と平和、本当の愛のありか た、安楽死の是非など、多くのことを問いかけてくる。 2 ブレーメンバス 柏葉 幸子 作 講談社 都会がいやになり田舎で暮らしたくなったトキさん。家庭生活に あきあきして、一人旅に出たくなった明子さん。つきまとう不良グ ループから逃げ出したい里見ちゃん。おなかに赤ちゃんがいるのに 恋人に捨てられたゆかりさん。世代は違うが、それぞれに今の自分 から脱皮したいと願っている4人の女性たち。4人が行き先を求め て出会った所が、 「ブレーメンバス」のバス停だった。いっしょに乗 ろう、希望をつなぐバスがやってくる。 11の短編からなるファンタジーの傑作集。 駆けぬけて、テッサ! K・M.ペイトン 作 山内 智恵子 訳 徳間書店 父親が競走馬の繁殖家だったため、幼い頃から馬と一緒に育った 少女テッサ。しかし両親が離婚したため、大好きな馬のアカリとも 引き離されてしまう。その上、母の再婚相手から残酷な仕打ちを受 け、 テッサの心はすさむばかりだった。 だが働きに出された厩舎で、 テッサは思いがけずアカリの子、ピエロに出会う。やがてピエロに 騎乗して、英国最大の障害競馬で優勝する夢を抱く。 一歩ずつ成長していく少女の姿が力強く描かれた作品。 3 とびら バドの 扉 がひらくとき クリストファー・ポール・カーティス 作 前沢 明枝 訳 徳間書店 大恐慌のアメリカ・ミシガン州の町に、黒人少年バドが住んで いた。6歳の時に母を亡くし、養護施設と里親の家で育った。母が 大事にしていた暗号のような石ころと、ジャズバンド公演のチラシ は大切な宝物。それを頼りに、まだ見ぬ父を探して旅に出る。途中、 様々な困難にあいながらも元気に、自らの知恵と勇気で未来への扉 を次々と開いていく。 人間の暖かさとユーモアを感じる作品。 盗神伝 Ⅰ∼Ⅲ M・W・ターナー 作 金原瑞人 宮坂宏美 訳 あかね書房 ソウニス王によって牢獄につながれた、 名うての若き盗人ジェン。 牢からの解放と引き換えに、王がジェンに要求したのは、伝説の石 を盗み出すことだった。それを手にする者に、永遠の命と王座を約 束するという幻の石。しかし、盗みに行って生きて帰った者は、い まだ一人としていない。 ギリシア神話を思わせる世界を舞台に、手に汗にぎる冒険の末、 物語は意外な結末へと向かう。全3巻のファンタジー。 4 七人の魔法使い ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 作 野口 絵美 訳 徳間書店 ある日、ハワードの家に巨大な体に小さな頭の男「ゴロツキ」が やってきた。アーチャーのところから、約束の“二千”を取りにや ってきたという。実は、作家であるハワードの父は、13年前から 3ケ月ごとに、市役所の男に二千語の原稿を届けていたのだが、そ れが今回届かなかったらしいのだ。やがて、アーチャーを始めとす る7人兄弟の魔法使いが、次々に父の原稿をねらい、ハワード一家 は大騒動にまきこまれていく。 笑わっしょんなぁ 廣畑 澄人 作 国土社 漫才作家を父親に持つ望は、大阪に住む中学3年生。漫才師を目 指している充が東京から転校してきた。金髪にピアス、テンポのよ い大阪弁の充は、自己紹介で「おもろいやつ」と大喝采を受ける。 その充に相方を押し付けられた望だが、充の漫才への情熱に動かさ れ、オーディションに挑戦することになる。 コンビを組んだり離れたり、台本を書いたり、ボケとツッコミの なかで互いに相手を見直していく二人の友情を描いている。 5 こ て き 狐笛のかなた 上橋 菜穂子 作 理論社 人の思いが聞こえる、<聞き耳>の才を持つ少女、小夜。人の世 と神の世の<あわい>に生まれ、呪者が吹く狐笛に命を握られなが ら、使い魔として生きる狐の野火。森の屋敷に幽閉された領主の息 子、小春丸。若い三者は森で巡り会い、心を通わせる間柄になる。 しかし彼らは、それぞれが持つ特異な才能のため、憎しみ合う二つ の国の争いに巻き込まれ、互いに戦うことを余儀なくされていく。 背景に描かれた日本の野山が美しく、幻想的な世界を作り上げて いる。 ハッカー マロリー・ブラックマン 作 乾 侑美子 訳 偕成社 中学2年のヴィッキーは、コンピュータが大好きな女の子。ある 日、 数学のテストで、 電卓にプログラミングして簡単に答えを出し、 先生にカンニングしたと間違われてしまう。その夜、パパが銀行の お金を横領した疑いで逮捕されたとの知らせがきた。潔白を証明す るため、ヴィッキーと弟のギブは、銀行のコンピュータシステムに アクセス、侵入に成功する。だが、そこで見つけたのは意外な真犯 人の名前だった。 6 もうひとりの息子 ドリット・オルガッド 作 樋口 範子 訳 さ・え・ら書房 1960年代のイスラエル。医学生ハミッドは、アラブ人という 理由で下宿を断られる。ようやく落ち着いた先は、息子の戦死で心 を閉ざしたユダヤ人女性ミリアムの家だった。ハミッドを息子だと 思い込むミリアム。ハミッドの存在はミリアムの心を癒すが、周り のユダヤ人は彼を恐れ、追放してしまう。 現在も続く民族や宗教上の対立を、文化の違いを超え、人と人を 結ぶ共感で乗り越えたいという、作者の思いが伝わってくる。 宇宙のかたすみ アン・M. マーティン 作 金原瑞人 中村浩美 訳 アンドリュース・クリエイティヴ 12歳の夏、少女ハッティは、それまで存在すら知らなかった、 21歳の叔父アダムと出会う。養護学校で暮らしてきた叔父の振る 舞いは子供のように無邪気だ。 「君は、僕たちの宇宙のすみっこをめ くってみることができる人だよ」アダムの言葉に、ハッティはしあ わせな気持ちになる。 しかし、 純粋すぎる人を愛することは難しい。 思いもよらぬ悲劇がアダムを見舞い、やがてそれぞれに深くアダム を愛した家族の姿が浮かび上がる。 7 川の少年 ティム・ボウラー 作 入江真佐子 訳 早川書房 ジェスは水泳が得意な女の子。15歳の夏、大好きな画家のおじ いちゃんが心臓発作でたおれた。がんこなおじいちゃんは入院を拒 み、最後の日々を、少年時代を過ごした故郷の川辺で過ごすと言い 張る。そしてそこで、「川の少年」と題した絵を完成しようとする が、絵には少年の姿などなく、ジェスは不審に思う。そんなある日、 川で泳いでいたジェスの前に、不思議な少年が現れた。 少女が最愛の祖父の死を受け入れていくまでの様子が、美しく幻 想的に描かれている。 HOOT ホー カール・ハイアセン 著 千葉 茂樹 訳 理論社 転校生のロイは通学の途中、裸足で疾走する風変わりな少年を見 て興味を抱く。一方、この町に進出するファミリーレストランの建 設現場には、奇妙な事件が相次いで起こっていた。いつのまにかロ イも事件に巻き込まれ、真相を追い始める。やがて、それはあの少 年がたった一人で引き起こした騒ぎだったことをつきとめる。建設 現場に棲息するアナホリフクロウを守るために…。 題名の HOOT(ホー)は、フクロウの鳴き声を表したことば。 8
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