提案事例3

<提案事例3>
格子点と多角形の面積の秘密!
1
改善の方向
ア テキストを理解・評価しながら読む力を高めること
(ア) 目的に応じて、解釈する能力の育成
イ テキストに基づいて自分の考えを書く力を高めること
(イ) テキストを利用して自分の考えを表現する能力の育成
ウ 様々な文章や資料を読む機会や、自分の意見を述べたり書いたりする機会を充実す
ること
(イ) 自分の感じたことや考えたことを簡潔に表現することの育成
2
研究および授業改善の視点
問題解決過程において、テキストからの「情報の取り出し」や、その内容を「整理す
ること」を背景におきながら、問われているものは何か、既習事項との関わり等を考え
させることは大切である。
さらに、解決へのおおまかな流れを考えさせながらテキストを読むようにさせていく
ことが重要である。
また、十分に理解できなくとも理解できたところまでを図や表、式等の数学的な表現
を使って表す習慣を身に付けさせることは、表現力の向上につながる。なお、常に他者
に対して分かりやすい表現の工夫を意識させることは、自分の考えを表現する力の育成
につながる。
ワークシート等を活用し、簡潔なまとめ方を身に付けさせる。ワークシートに記入す
る際には、後で振り返って分かりやすく、また友達が見て自分の考えを理解してもらえ
るように、数学的な表現等の利用を意識して記述させる。そして、自分の考えや表現方
法を広げたり、深めたりさせるためには、友達の考えや表現方法を書き留める習慣を身
に付けさせることが大切である。
これらの表現活動を積み重ねることが、読解力の育成につながると考える。
3
実践のねらい
テキストを理解・評価しながら読み取り、考えをまとめ、それを口頭で表現する力や
記述して表現する力を育成する。
4
提案概要
(1) 題材名 第2学年「数と式」(課題学習)
(2) 題材について
生徒は、小学校においては伴って変わる2つの量を学習し、中学校第1学年で比例
・反比例、第2学年で文字式の利用を学習してきている。この題材は、多角形の辺上
の 格 子点 、 内 部 の 格子 点 の 数 と面 積 の 関 係を 整 理 し 、 まと め て い く中 で 、「 ピッ クの
定理」を発見する楽しさを体験できる課題である。与えられた資料を読み取り、既習
事項と照らし合わせ、格子点の数の変化に伴い、面積がどのような規則で変化してい
るのかを見つけ出すところにおもしろさがある。さらに格子点が辺上だけにある場合
数学
提案事例③- 1 -
から、格子点が内部にもある場合に広げたときの新たな規則性を見つけだすところに
醍醐味がある。格子点と面積の関係は複雑ではないが、生徒達だけで格子点と面積の
関係を見いだすのは難しいと思われる。規則性を発見しやすくするために、資料の目
の付け所やまとめ方等についてサポートしていく必要のある題材である。日常の事象
とは直接的には関わりは薄いが、既習事項を背景に条件から見通しをもって規則性を
発見する学習であり、未知の課題発見・解決能力の向上につながる題材である。また、
規則 性を 発見 し、「 書い てま と める 」、「 友達 に伝 える 」 活動 を通 して 、 表現力 を育成
できる題材でもある。
(3) 指導目標
資料から、格子点の数と多角形の面積との規則性を理解し、解釈できるようにする。
規則性を見つける中で、自分の考えを書く、口述する等の表現力を高める。
(4) 研究との関わり
ア テキストを理解・評価しながら読む力を高めること
(ア) 目的に応じて、解釈する能力の育成
多角形の形や辺の数に惑わされずに、格子点の数の変化に伴う面積の変化に着
目させ、規則性を理解し解釈する能力を育成する。
イ テキストに基づいて自分の考えを書く力を高めること
(イ) テキストを利用して自分の考えを表現する能力の育成
ワークシートを準備し、理解できたことを意識して図や表、式等の数学的な表
現を使って表すようにする。さらに、常に友達に対して分かりやすく伝えること
を意識させ、自分の考えを表現する力を育成する。
ウ 様々な文章や資料を読む機会や、自分の意見を述べたり書いたりする機会充実す
ること
(イ) 自分の感じたことや考えたことを簡潔に表現することの育成
ワークシートを準備し、簡潔なまとめ方を身に付けさせる。また、記入する際、
数学的な表現等を利用し、自分が後で振り返って分かりやすいように、また、友
達が見て考えが理解しやすいように記述させる。さらに、自分の考えや表現方法
を豊かにしたり、深めたりさせるために、友達の考えや根拠等を書き留めさせ表
現する力を育成する。
(5) 課題の工夫
「 格子 点の 数 を数 える 」、「 多角 形の 面 積を 求め る」 等 、誰 もが 取 り組 みやす い課
題である。格子点の数と面積の関係を、格子点が辺上だけの場合、内部にもある場
合に分け、段階を踏んで理解を深めさせる。
(6) 指導計画
次
項
主 な 内 容
時間数
1 式の加法、減法
○文字の式に関連した用語の意味
○同類項の意味と同類項をまとめること
○式の加法、減法
4
○(数×多項式)の加減
11
○式の値
時
2 単項式の乗法、除法
○単項式の乗除
2 間
○乗除の混じった単項式の計算
扱
3 文字式の利用
○式の計算を利用して、数量の関係を一般的
い
に明らかにすること
3
○簡単な等式について、その目的に応じて変
数学
提案事例③- 2 -
形すること
4 基本の確かめ
5 章末問題
6 課題学習
2
本時
○ 格 子 点 の 数 と 多 角 形 の 面 積 の 関 係 に 興 味 を 2/2
もち、その関係性を調べようとすること
(7) 本時の目標
① 格子点の数と多角形の面積の関係に興味をもち、その関係性を調べようとする。
(関心・意欲・態度)
② 格子点が辺上にある場合、内部にある場合等に着目し、格子点の数と多角形の面
積 の 関 係を 明 ら か にす るこ とが で きる 。
( 数学 的な 見方 や 考え 方)
③ 格子点の数と多角形の面積の関係を、数学的な表現を使って表したり、自分の考
えを友達に伝えることができる。
(表現・処理)
④ 格子点の数と多角形の面積の関係が理解できる。
(知識・理解)
(8) 展開
○評価 ◆具体的な手立て 改善の
発問・指示・ワークシート
生徒の反応予想
★指導の留意点
方向
(ワークシート1の配布)
1 課題1の提示
○ 興味をも って、課題に取 ア
アキ ラさんは、家庭菜園を 行う
り組んでいる。
(ア)
ため に、オ サムさんから土地 を借
◆ 長い文章 であるが、印等
りま した。 その土地を上空か ら見
を付けな がら読むように
ると 右のよ うな星形の多角形 でし
促す。
た。
格子点のように見えるのは、アキラさんが1m
★ 面積を求 める煩わしさを イ
間隔にトウモロコシの種をまいた跡です。
体験させる。
(イ)
アキラさんが、オサムさんに「ところで、貸し
てくれた土地の面積は?」とたずねると、オサム
○ 自分の考 えがまとめられ
さんは、星形の辺上の点と、内部にある点の個数
たか。
を数えて…、「 26㎡」と答えました。
◆ 発表ボー ドを使って考え
面積を求めるのにオサムさんは、格子点の数を
を発表させる。
どのように利用したのでしょうか?
指示
・正方形を数え、三角形
「格子 点の数を気にせず、
の部分を後で、足した。
自分 の方法で面積を求め ・ 半 端 な と こ ろ を 、 組 み
ましょう?」
合わせて、長方形にし
て計算した。
指示
・ワークシートにまとめ
ア
「どの ようにして、面積を
る。
(ア)
求め たのか、分かるよう
に自 分の考えをまとめま
イ
しょう。」
(イ)
発問
・ ル ー ル は 分 か ら な い け ★早く理解できた生徒には
「オサ ムさんの方法に気が
ど、格子点を利用すれ
発表ボー ド等に考えをま
ついた人はいますか?」
ばいいのかも…
とめさせる。
数学
提案事例③- 3 -
2
課題2の提示
★ 格子点( 辺上のみ)の数
と面積の関係の考察させ
る。
資料2は、資料1の㋐~㋖の多角形の格子点の数と 面積をまとめ
たものです。 ㋐~㋖までの図形において、格子点の数と面積の関係
を求めなさい。
【資料1】
ア
(ア)
【資料2】
指示
・ 面 積 は 、 格 子 点 の 数 の ★ 見通しの 立たない生徒に
「格子 点の数と面積につい
半分でもないし、2.5を
は、他の 形の多角形の例
て分 かったことをワーク
引いた数でもない。
を挙げて支援する。
イ
シートに記入しよう。」 ・ 面 積 は 格 子 点 の 半 分 か ★ ワークシ ートに自分の考 (イ)
ら1を引いた数。
えを簡潔にまとめさせる
指示
・自分では分かったけど、★ 周りの生 徒と情報交換を
「近く の友達と分かったこ
うまく伝えられない。
させ、自 分の考えを伝え ウ
とに ついて情報を交換し ・ 途 中 ま で は 、 説 明 で き
たり、友 達の考えを知る (イ)
てください。」
た。
場面を設定する。
○ 自分の考 えを友達に伝え
ることができる。
◆ 考えが出 やすいように、
聞き手は 、相づちやサポ
ートをし ながら考えを聞
くようにさせる。
発問
・ 面 積 は 格 子 点 の 半 分 か ★ 発表ボー ド、黒板、ビデ ア
「格子 点の数と面積の関係
ら1を引いた数です。
オプレゼ ンテーションカ (ア)
はど のようになっている ・ 格 子 点 の 数 を m 、 面 積
メラ等を 使って発表させ
か説明してください。」
をSとすると、
る。
S=m/2-1 だ。
数学
提案事例③- 4 -
指示
「友達 の考えのよいところ
をワ ークシートに記入し
ましょう。」
★友達の考えを書き留める イ
ことは、 大切であること (イ)
を意識させる。
(ワークシート2の配布)
4 課題3の提示
資料3の㋗~㋡について、格子点の数と面積の
関係を、資料4を参考に求めなさい。
指示
「友達 に伝えることを前提
に、 自分の考えをワーク ・ 考 え は も て た が 、 ど う
シ ー ト に ま と め よ う 。」
まとめたらよいのか分
からない。
・資料4から、前にまと
めた 、 m /2-1の値
と面積の差は内部の点
の数になっている。
発問
・内部の格子点の数をn
「格子 点の数と面積の関係
とすれば、
はど のようになっていま
S=m/2+n-1
すか説明してください。」 と表せる。
★ 格子点( 格子点が内部に
もある) の数と面積の関
係を考察させる。
○ 課題の意 味は、理解でき ア
たか。
(イ)
◆ 周りの友 達と確認し合う
よう促す。
★内部の格子点が一つ増え イ
ると面積 がどのように変 (イ)
化してい るのかに着目さ
せる。
◆ 発表ボー ド、黒板、ビデ ウ
オプレゼ ンテーションカ (イ)
メラ等を 使って発表させ
る。
★ 友達の考 えを書き留める
ことは、 大切であること
を意識させる。
5
格 子点の数と面積の関
係の活用
指示
○ 格子点の 数と面積の関係
「課題 1の面積を、格子点 ・簡単に求められる。
を理解し 、活用すること
の数から求めましょう。」・すごい発見だ。
ができる。
・ 複 雑 な 形 で も 面 積 が 簡 ◆ 周りの友 達と確認し合う
単に求められる。
よう促す。
6 まとめ
指示
辺上の格子点の数をm、内部の格子点の数をn、
「この 時間で見つけた、格
面積をSとすると
子点 の数と面積の関係を
S=m/2+n-1
まとめましょう。」
・ 今 日 の 授 業 を 振 り 返 っ ★ 本時の授 業において、自
てまとめてみよう。
分の考え がもてたか、考
えを数学 的に表現できた
か。また 、友達の考え方
や表現方 法で参考にする
ところは あったかを振り
返らせる。
数学
提案事例③- 5 -
〈ワークシート1〉
格子点の数と面積の関係を見つけられるかな!
2年
組
番 氏名
課題1
アキラさんが借りた土地の
面積を求めなさい。ただし、
点と点の間を“1m”
として考えること。
自分の考え
友達の考え
【資料1】
【資料2】
課題2
㋐~㋖までの図形において
格子点の数と面積の関係を求
めなさい。
友達の考え
自分の考え
数学
提案事例③- 6 -
〈ワークシート2〉
格子点の数と面積の関係を見つけられるかな!
〈内部にも格子点があるぞ!〉
2年
組
番 氏名
課題3
資料 3の㋗ ~㋡につ
いて 、格子 点の数 と面
積の 関係を 、資料 4を
参考に求めなさい。
【資料3】
自分の考え
【資料4】
友達の考え
わかったこと!
辺 上 に あ る 格 子 点 の 数 を m 、 内 部 に あ る 格 子 点 の 数 を n、 多 角 形 の 面積 を S と す
ると、
の定理
~授業を振り返って(感想)~
数学
提案事例③- 7 -