肥前大島港 臨港道路における 補強土(スーパー

肥前大島港 臨港道路における
補強土(スーパーテールアルメ)壁工と盛土材選定について
長崎県
大瀬戸土木事務所
河港課
◎馬郡
正高
〇森
康哲
Ⅰ はじめに
肥前大島港寺島地区において、建設資材(砂)中継基地の-7.5m岸壁(L=130m)から
県道まで延長 1,340mの臨港道路を計画・施工している。
図1 肥前大島港位置図
Ⅱ 地質構造・土地利用
1.地質構造
圧砕花崗岩類を基盤とし、この上位に砂岩、泥岩、礫岩の互層を主体とし、地層の傾
斜は、5°~10°最大では 60°を示すものも認められる。
側線№19~№25 付近の傾斜は 25°の流れ地盤地形をなしており。調査ボーリングの結
果は礫混じり土砂状に採取される。コアは、角礫状で毛細状の亀裂が密に入り部分的に
礫混じり粘性土~土砂状を呈し、部分的に片状を呈している。
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2.土地利用(現地踏査)
・尾根平坦面は畑として土地利用や貯水槽、NTT通信鉄塔が建設されている。
・道路を計画している斜面及び尾根には、近年発生したと判断される亀裂や崩壊跡は
確認されないが、民家裏の急傾斜部において表層崩壊が確認された。
Ⅲ 補強土壁設計
1.計画条件の確認
本計画は、すでに決定された道路線形に対し、擁壁計画による現状の抱える問題を整
理して補強土壁の設計を実施した。
<問題点>
①計画道路の下方に 3 軒の住宅が近接している。
②切土斜面の上部に貯水槽、NTT鉄塔が設置されている。
③公衆用道路を計画道路が横断するため、付替えが必要。
④擁壁工の切土施工中に流れ盤状に分布した破砕面において地すべりの
危険性がある。
⑤擁壁工の基礎となる部に流れ地盤をなす礫質土を含んでいる。
図2 No.20 付近平面図
N o .2 0
図3 No.20 断面図
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2.盛土やブロック積擁壁による計画
①盛土による計画
盛土を安定勾配で計画した場合、民家へ盛土計画がおよぶ、また、盛土が現況斜面に
載荷されることで、強風化帯を下底面とするすべり崩壊の可能性が懸念される為、盛土
のみによる計画は不可能である。
図4 盛土による計画
②軽微な擁壁計画
一般的には、間知ブロックを用いたブロック積み擁壁が施工性や経済性から、土圧や
載荷条件の軽微な箇所で計画されることが多い。
計画地は適用高さの 5mを超えてしまう。また、多段積み擁壁とした場合は、民家へ影
響してしまうことから、ブロック積みによる計画も不可能である。
図5 軽微な擁壁計画
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3.構造形式の選定
①構造形式(一次選定)
擁壁の分類により選定された土留め壁よりコンクリート擁壁として逆T式擁壁と大型
ブロック積擁壁の2工法、帯鋼補強土壁としてテールアルメ工法の1工法と特殊な擁壁
として軽量盛土工法の1工法、計4工法を構造性、施工性、経済性に留意した上で評点
により比較検討を行った。
その結果、総合評価で帯鋼補強土壁(テールアルメ工法)が最も適した工法であると
選定した。
②比較検討(二次選定)
帯鋼補強土壁類としてテールアルメ工法、多数アンカー工法、アデムウォール工法に
加え、新工法からスーパーテールアルメ工法の4工法を選定した。
比較検討については一次選定と同様に構造性、施工性、経済性に留意した上で評点に
より比較検討を行った結果、スーパーテールアルメ工法が最も適している工法として選
定され、これを採用し詳細設計を実施することとした。
4.補強土壁(スーパーテールアルメ)工法
①設計条件
(1)土質条件は補強土壁盛土材の単位体積重量が 19kN/㎥、内部摩擦角が 30°で粘着力
は 0 kN/㎡と仮定する。
(2)基礎地盤条件は地質調査結果より単位体積重量が 26 kN/㎥、内部摩擦角が 40°で粘
着力は 314kN/㎡とする。
(3)上載荷重は活荷重 10kN/㎡とする。
(4)設計水平震度(Kh)は Kh=v1×v2×k0=0.70×1.0×0.12=0.08 とした。
(5)テールアルメ工法の内的安定、外的安定は設計・施工マニュアル(財団法人土木研究
センター)に準じて実施した。
5.テールアルメ工法の盛土材選定について
補強土壁の盛土材については、補強土(ストリップ)の摩擦抵抗が十分に確保できる
材料を使用する必要があることから、掘削土を盛土に流用する為、掘削土の土質試験を
実施して条件を満足する土砂を利用した。
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①盛土材の土質試験フロー
START
補強土壁の盛土材
35%以上
不適合
25%未満
土の粒度試験
適合
細粒分の含有量
細粒分の含有 35%未満
・土の締固め試験
・三軸圧縮試験
・三軸圧縮試験
内部摩擦角
設計値の確認
φ=30°以上
内部摩擦角の確認
(設計値)
最大乾燥密度
φ=30°γ=19kN/m3
90%以上
φ=30°以上
盛土材として適合
90%未満
φ=30°未満
使用不適合
・締固め施工
or
使用不適合
方法の見直し
・購入材
or
盛土材の改良
(砂礫との混合土質定数の見直し)
図6 テールアルメ工法の盛土材選定フロー
②盛土材の試験結果と箇所図
(1)土質試験の結果
平成 19 年度中に掘削土:7 箇所、施工中:2 箇所、施工予定地:6 箇所の粒度試験
を実施した結果、掘削土の仮置き土は細粒分の含有が 25%未満となっており、使用前
に再度試験を行い使用することとした。
しかし、№12~№33 付近の未施工地の土砂については細粒分の含有が 25%を大きく
越えており補強土壁盛土材としては不適当と判断された。
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図7 盛土材試験箇所図
(2)盛土使用前の試験結果
補強土壁盛土材として使用する直前に仮置場の掘削土の土質試験を行った結果、細
粒分含有が 15.6%(設計条件:25%未満)、内部摩擦角 34.13°(設計条件:30°以上)、
単位体積重量 18.2kN/m3(設計条件 19 kN/m3 以下)となり、設計条件を満たす材料とし
て使用することとなった。
6.補強土壁(スーパーテールアルメ)工法の施工結果
補強土壁は、補強土(ストリップ)の摩擦抵抗が十分に確保できていることが必要な
為、盛土厚さHn=2.4mの箇所において、ストリップの現地試験を 3 カ所実施し検証を
行った結果、目標の約 1.5 倍の抵抗力を得ることができた。
①ストリップの目標引抜き抵抗力
:
22.8 kN
②ストリップの引抜き試験結果
(1) 35.7kN
(2) 34.0kN
(3) 40.8kN
平均 36.8kN(目標の約 1.5 倍)
なお、盛土施工中の密度試験値は 90%以上を確保できており、盛土にかかる全ての
品質管理項目をクリアーした。
7.まとめ
今回、補強土壁工法の調査・設計から施工に至る業務で、施工前に行う盛土材の試験
や施工中に行うストリップの引抜試験により設計時に仮定した設計条件が確認された。
これにより供用後は臨港道路の安全性が確保され、輸送コストと環境負荷の低減が図ら
れて地域経済の一員として港湾施設が活躍してくれることを期待する。
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