はじめに - 共立出版

はじめに
現代の技術の進歩は目覚ましく,人々の生活にとって無くてはならないも
の,例えば,コンピューター,飛行機,自動車,家電製品,医薬品,食品など
にそれが活かされている.技術は,科学を実地に応用・加工し,人間の生活に
役立たせる技(わざ)と定義できる.すなわち,技術は,科学があって初めて
成り立つものである.
科学とは何かを理解するために,その歴史を学ぶ意義は大きい.現代の高度
な科学の成果や知識を知ったからといって,そのことから科学の本質や根本の
考えを理解することは容易ではない.すなわち,科学の知識というものは,古
代から現代まで順々に積み上げられて成り立っている.その間,数々の科学に
おける大発見や大変革があり,その考え方が根本的に変わったことも多々ある
が,それもその時代における知識の積み重ねがあっての結果である.
科学がどんな学問かを知るためには,その歴史をたどることが最も理解しや
すい方法であり,必要なことである.ところが,科学的知識は,歴史的に積み
重ねられてきたので,その量は膨大で,科学の進歩とともに分野が細分化され
てきた.そのため,科学の歴史,すなわち科学史のどのようなところに重点を
置いて,どのような筋道に従って学ぶようにするかがとても重要である.
本書は,文科系大学の教養課程の教科書として,加えて,科学史に関心を持
つ学生や社会人のための入門書として書かれている.すなわち,古代ギリシャ
時代から 20 世紀前半までの科学の進歩を学ぶ 「科学概論」および「科学史」
の入門書である.なお,20 世紀後半については,科学の発展が著しすぎるた
め,その分野があまりにも多岐にわたり,内容も豊富なので,本書では取り上
げなかった.ただし,20 世紀後半の科学は,20 世紀前半の科学を基礎にして
iv はじめに
成り立っていることを申し加えておく.
本書は,第 1 章から第 6 章で構成されている.第 1 章ではギリシャ時代とロ
ーマ時代の科学,第 2 章では中世ヨーロッパとイスラムの科学,第 3 章ではル
ネサンス期から 17 世紀の科学,第 4 章では 18 世紀から 19 世紀前半の科学,
第 5 章では 19 世紀後半の科学,第 6 章では 20 世紀前半の科学について述べて
いる.内容は,ギリシャ時代から 20 世紀前半までを順序だって,時代ごとの
科学の内容,科学的トピックス,その時代に活躍した科学者の紹介と業績等に
ついて述べている.本書を読むことによって,大まかな科学の発達とそのプロ
セス,加えて個々の内容を理解していただければ幸いである.なお,理科や数
学などの理科系科目をあまり学ぶ機会のない文科系の大学生や理数系科目を不
得手としている一般読者にも容易に理解できるように,数学的な記述は一切行
わないよう配慮したつもりである.
本書の出版にあたっては,共立出版株式会社の寿日出男氏と中川暢子氏に多
大なご便宜をいただきました.ここに,心よりお礼申し上げます.
2014 年 8 月
山中 康資