4 保育所の環境衛生面対策について

 無症候性病原体保有者については、検査で「偶然」見つかった人だけを隔離しても、
予防方法としてはあまり有効ではないからです。
⑧最も重要な予防方法は手洗いですが、例え健常者同士であってもタオルやハンカチの
共用はやめましょう。
⑨咽頭結膜熱は子どものときに誰もがかかり経験している病気です。これを、かかって
はいけない、発病してはいけない、麻しんあるいは風疹と同じようになくすべきであ
ると考えてはいけません。それは発病した人、子どもたち自身が発病したと正直に 言っただけで、不利益を被る可能性があるからです。
4 保育所の環境衛生面対策について
保育所の環境衛生面対策についてですが、まずは手洗いです。手洗いは施設内の感染対
策の最も基本的で重要な課題です。しかし、一番難しいのも事実です。あまねく全員が同
レベルの手洗いをするというのは至難の業です。
手洗いにおいては、流水下の石けんによる手洗いが推奨されます。洗面器に水を張り、
ためた水で手洗いをするのは絶対にやめましょう。
そうした洗面器などに入れる消毒剤程度で、ノロウイルス、エンテロウイルス、咽頭結
膜熱のアデノウイルスは死滅しません。それどころか、その洗面器の水にはウイルスが元
気に泳ぎまわっていると思ってください。それで手を洗うことによってみんなでウイルス
をうつし合っているとご理解するべきです。流水であることが大事なのです。
アルコール消毒は、ほとんどのウイルスや細菌に対して効果的ですが、明らかに手が汚
れているときは消毒効果が低下します。また、ノロウイルスやアデノウイルスには効果が
あまりありません。
石けんは、液体石けんを推奨します。固形石けんは前に洗った人の汚れや病原微生物が
付着している可能性があります。また、石けん置き台やネットなどでは、非常に多くの微
生物が繁殖しています。見方によっては、水回りで一番汚いのが石けん置き台となります。
また、石けんを入れている網も非常に不衛生です。可能な限り液体石けんを使用してくだ
さい。
なお、液体石けんを詰め替える際には、残っている液体石けん液は捨てましょう。残っ
ている液にバクテリアが繁殖している可能性がありますので、必ず残った石けんは捨て、
容器をよく洗い、乾燥させて、新たに清潔な石けん液を詰めるようにしてください。補充
(継ぎ足し)はやめてください。
手洗い設備
トイレ以外の場所の各保育室に設置されていることが理想的です。
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手を拭くのはタオルではなくペーパータオルを設置して使用することが推奨されますが、
これはできる範囲内で結構です。
布タオルを使用する場合は、必ず個人持ちとし、それぞれのタオルが触れ合うような掛
け方は避けたいものです。可能な範囲で努力してください。
手を洗うべき機会(子どもについて)
子どもたちは保育所到着時、食事前後、おやつを食べる前後、トイレに行った後、外で
遊んだ後、粘土や玩具で遊んだ後、動物を触った後、手が汚れてしまったときに、手洗い
を実行させるようにしてください。
手を洗うべき機会(保育者のみなさんについて)
保育所に到着時、食事を配ったり、調乳をしたり、子どもの薬を扱ったりする前、トイ
レで子どもの手伝いをした後、おむつを取り替えた後、子どもの体液(尿、便、血液、だ
液、目やに、傷口の浸出液)に触れた後には必ず手洗いをしてください。ちなみに、汗は
この触れたら手洗いをすべき体液の中には入りません。また、動物を触った後、教室やト
イレの清掃をした後にも、手洗いをしてください。
手洗い方法
手首の上まで、できれば肘までを、しっかりと石けんを泡立てて洗浄します。
きちんと手が洗えない年少児は手洗いを介助してあげなければいけません。
手洗い方法については、時々みなさんで子どもたちも含めて練習をしてください。
絵に描いて、みんなで歌いながらやっていただければ良いと思います。手を洗う手順を
絵に描いて、手洗い場に貼っておきましょう。
日常の清掃管理
日常的にこまめに清掃を行い、清潔を保ち、微生物が繁殖しにくいようにしましょう。
これは埃などが溜まらないようにするだけでも、すごく効果があることを示しています。
床、壁、ドアなどは水拭きで良いです。
子どもたちがよく触れるドアノブ、手すり、ボタン(スイッチ)などは、水拭きをした
あとで、可能ならば1日1回の消毒をすることが推奨されます。
嘔吐物・下痢便の処理
スタッフがゴム手袋をした上で、できればマスク、ゴーグルも着用し、ペーパータオル
や使い古した布で拭き取ってください。
拭き取ったものはそのままビニール袋に二重に入れて密封して、破棄します。
便もしくは嘔吐物が付着していた箇所は消毒しましょう。その際の消毒剤には、塩素系
消毒剤を使用しましょう。ノロウイルスの季節ではないことを理由に、塩化ベンザルコニ
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ウムで十分であると思ってはいけません。ノロウイルスは一年中発生します。したがって
年間を通して適切な処理をしてください。消毒液の濃度は200ppm程度です。漂白剤を約
200倍程度に薄めて使用してください。
やむを得ない場合を除いて、消毒剤は噴霧してはいけません。この理由は、消毒剤を噴
霧すると、それを吸い込むことにより、消毒者の健康状態に問題が生じることがあります。
また、消毒剤の噴霧は霧状に噴霧されるだけであり、面として消毒ができないため、効果
が薄れるからです。さらに、消毒剤を噴霧することにより病原微生物が舞い上がり、それ
を消毒者や周囲の人が吸い込んでしまう可能性もあります。実際にノロウイルスは、この
行為が原因となり感染が広がる可能性があるので、消毒剤の噴霧はやめてください。
便や嘔吐物が付着していた箇所を消毒する際は、消毒剤をしみ込ませたタオルなどで拭
き取る拭き取り消毒をしてください。消毒が終わったら、処理を行ったスタッフは流水・
石鹸での手洗いを念入りに行ってください。
これは消毒剤について、何が効くかということを一覧表にまとめたものです。
図45
5 プールについて
プールの塩素濃度は法令により0.4 〜 1.0ppmを保つようにされていますが、測定管理を
するのは、ほとんどの場合が保育所のスタッフであり専門家ではありません。
正しい遊離塩素濃度の測定・把握は、プールの水の管理において最も重要なのですが、
正確に行うためには、きちんとした研修などが必要です。
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