vol.4 - 京都ノートルダム女子大学

第4号
2009年3月発行
ISSN 1880-165X
京 都ノートルダム女 子 大 学
司書・司書教諭課程
ニューズレター
巻頭言
目 次
読書雑感/相良憲昭
?
司書課程から
図書館サービス論/岩崎れい
?
司書教諭課程から
学校経営と学校図書館/中村百合子
?
卒業論文から
利用しやすい図書館づくり
?
−京都市の図書館を通して−/松下絵美
修士論文から
「明治期における京都の文化施設の
創設について」を書き終えて−/松尾あすか
現場の先輩、
先輩の現場
大学図書館で働くということ/呑海沙織
書架から書庫から/玄義徳 松本朋子
見学会
大阪府立中央図書館見学会/岡村敬二
海外図書館訪問記/岩崎れい
日々往来
?
?
?
?
?
?
彼の書庫にはそのような書物が整然と並んでおり、
読書雑感
私は半ば感心し、半ばあきれてしまう。作家の北
杜夫氏はハードカバーの本がきらいで、読む前に硬
い表紙をむしりとって、丸めてポケットに入れるこ
相良 憲昭
とができるようにしてしまうそうである。
夏目漱石の『三四郎』の中に「三四郎は勉強家
というより寧(むし)ろ低回家なので、割合書物を
古くからの友人である A 氏は大 層な知識人で、
読まない」という件(くだり)がある。読書に関し
森羅万象に関して知らないことが何ひとつないよう
て私はまさに「低回家」であるらしく、何十年にも
に見えるが、彼は「ほとんど読書をしない」という。
わたってごく少数の、正確にいえば二冊の書物を繰
しかし、私は彼の書斎が文字どおり
「汗牛充棟」
(か
り返し読んできた。その一はまさに今言及した『三四
んぎゅうじゅうとう)であることを知っている。たし
郎』で、大学生の時にはじめて読んで以来今日ま
かに書籍を「持っている」ことと、
「読んでいる」と
で、何百回そのページを開いただろうか。その二の
いうことは同義語ではない。教育者・研究者のはし
読書歴はもっと古く、中学時代にさかのぼる。横
くれである私も、大学の研究室や東京の自宅に少
光利一の『旅愁』という小説である。横光は戦前
なからぬ数の書籍を蔵しているが、そのうちの何冊
の一時期に川端康成や中河与一らとともに「新感
を完読しただろうか。おそらく 1 パーセントにも満
覚派」の旗手としてもてはやされたが、今日ではすっ
たないのではないか。時折、これまでに自分の蔵
かり忘れ去られている。
『旅愁』は思想小説として
書のすべてを読んでいれば大学者になっていたか
も恋愛小説としても傑作とはいいがたいのだが、や
もしれないと、不遜な思いにかられたりするのであ
はり毎年二・三回は手にする習慣がついてしまって
る。
いる。この二冊にこだわってきたことに特別な理由
世の中にはビブリオフィル(bibliophile。蔵書家)
はない。長く無沙汰をしている友人に突然連絡した
あるいはビブリオマニア(bibliomania。 書 籍 狂)
くなる欲求のように、ページを開きたくなるだけで
といわれる人がいる。フランス史を専門とする愚兄
ある。「低回趣味」的読書癖と思う所以(ゆえん)
もそんな人種の一人である。フランス語の原書を手
だろうか。
に入れると、まずパラフィン紙で丁寧にカバーを掛
(本学 学長)
け、しかる後、うやうやしく蔵書印を捺すのである。
1
司書課程から
司書教諭課程から
図書館サービス論
「学校経営と学校図書館」
この科目は、講義と演習の二本立てで実施してい
昨年から上記のタイトルの科目を担当させていただい
ております。今は同志社大学社会学部教育文化学科に
勤務しておりますが,ある意味ではノートルダムさんに勝
手ながらより親近感をもって通わせていただいておりま
す。と申しますのも,私は東京のカトリックの女子大で国
文学を学んだのちに別の大学の大学院に移り,教育学,
図書館情報学を学んだという経歴なのです。ノートルダ
ムさんに通って,
まるで東京の母校に戻ったような気持
ちになっています。皆さん,
どうぞ仲良くしてください。
「学校経営と学校図書館」は,学校図書館司書教諭
資格の必修5科目のうち,私としては一番最初に学んで
欲しい概論的な科目です。本務校の事情で今のところ
は後期の夜に設定しているので,一番最初に学んで欲
しいと言っても難しいかもしれませんが,
とにかくこの科
目を学ぶ4ヶ月で“学校図書館とはなんぞや”を一度よ
く考えてみていただきたいと思っています。私はそのこと
学び,考えてきて,10年以上になります。その歩みのなか
で諸先輩方に学びながらも,試行錯誤をして自分なりの
学校図書館観を構築してきています。それを講義中に
お話し,
学生さんたちにも発言していただいて,
その学び
合いから日々それを修正し,再構築につなげているつも
りです。そんな考えから教科書にはシンプルな資料集を
指定していて,
この資料集だけでは“学校図書館とはな
んぞや”の答えは見えないだろうと思います。資料集に
加えて毎週リーディングの課題を出していますので,
皆さ
んにとにかく読んできていただきたいと思っています。そ
して私の講義に出席していただいて“学校図書館とは
なんぞや”を考えていただきたいのです。なにしろ皆さ
んが資格を手にして司書教諭として働く日がきたときに
は,
皆さんは「学校図書館の専門的職務を掌」る(学校
図書館法第5条)のであって,
その専門的職務の遂行に
はきっと
“学校図書館とはなんぞや”
という根本的な問
いへの一応の答えが必要になるでしょう。
さて,最後にあとひとこと。もう20年近く前になってしま
いますが,私にも女子大で,女性だけという中で,女性で
ある自分の生き方について,
お友だちや先生と話したり,
はたまた授業そして読書をとおして,
考えた日々がありま
した。今でも,学部時代に授業の課題のために読んだ
宮本百合子の『伸子』という本に号泣して悶々としたこと
を思い出すと,原点に返るような気持ちになります。この
4年間に卒業後の人生へのヒントがいろいろあると思い
ます。漠然と学生生活を送ってしまわないで,
この恵まれ
た環境にいるうちに卒業後の人生を支える何かを得て
欲しいと思っています。
(中村百合子 本学非常勤講師)
ます。講義では、ユネスコ公共図書館宣言をはじめ
とするいくつかの資料をもとに図書館サービスの理
念をまず学び、その後、多文化サービスや障害者サ
ービスなどの各種サービス、図書館ネットワーク、図
書館の自由など図書館サービスをいくつかの側面か
ら概観します。
演習は 2 種類あり、前半は本学図書館の協力を
得てテーマ展示をおこなっています。慣れない中で
企画・選書・ポスターや書誌作成・ポップの作成な
どを行うので、なかなか思うようにはかどらなかった
り、魅力的な資料の紹介がじゅうぶんできなかった
りと毎回試行錯誤を繰り返します。しかし、履修生
の取り組みは熱心で、立体的なポスターをつくったり、
回収率を上げるためにアンケート用紙に飴をつけて
みたり、各回工夫をこらしています。今年度は前後
期の 2 回開講で、前期は「京都のお祭り」、後期は「ク
リスマス」でした。
後半は、やはり本学図書館の協力を得て、図書
館評価の演習をおこなっています。サービス評価、
コレクション評価、図書館サイト評価をグループに
分かれて、数量評価と質的評価を行います。残念な
がら、なかなかじゅうぶんな時間をとることができず、
いつもいささか消化不良気味で、演習方法も毎年改
善を加えて実施しています。もっとも、履修生にとっ
ては、日頃自分たちが利用している図書館を「評価
する」という、いつもとは違う視点で見直すよい機
会と言えるかもしれません。
図書館サービスは幅も広く、学ばなければならな
いこともたくさんあるので、この科目で扱えるのはほ
んの基礎だけですが、今後の各自の学びにつなが
っていけば、と願っています。
(岩崎れい 本学教員)
授業風景
2
卒業論文から
利用しやすい図書館づくり
-京都市の図書館を通して 日本の障害者数からみると、およそ国民の 5%
が何らかの障害を有していることになる。しかし、
たとえ障害を有していたとしても、障害を有して
いない人と同じように学ぶ権利は保障されなけれ
ばならないし、また、その学問を学んだり、様々
な情報を入手したりするのに図書館は必要な場所
ではないかと考える。本論文では、身体障害者が
障害者の中で最も多いことから、物理的なバリア
フリーに着目し、身体障害者が利用しやすい図書
館づくりを考えた。公共図書館のバリアフリーに
ついて、どの程度進んでいるのかを明らかにする
ことを目的とし、調査を実施し、そのうえで、各
公共図書館の現状と課題を明らかにし、対策を検
討する。
京都市内の 4 つの公共図書館を調査対象とし、
調査方法として、各公共図書館に自ら足を運び、
国土交通省の建築物移動等円滑化誘導基準チェッ
クリストを用いて調査した。主に物理的なバリア
フリーに着目し、各図書館のバリアフリーの実態
を確認した。
京都市内の 4 つの図書館は、いずれもバリアフ
リー対応の義務付け範囲外であった。図書館形態
別にみたところ、合同福祉センターに含まれてい
る図書館は物理的バリアフリーの基準を満たして
おり、バリアフリーに対する意識が高いようで
あったが、子育て支援を目的としている図書館で
は物理的バリアフリーの基準を満たしておらず、
バリアフリーに対しての意識はまだまだ低いよう
であった。さらに駐輪場の点字ブロックの上に自
転車を止めてしまう問題や、障害者用駐車スペー
スに障害をもたない人が駐車してしまうといった
問題がみられた。また、制度的バリアに関しては
利用者が障害などを有していることを理由に利用
を阻害している図書館はなかった。現実には体が
不自由で外出や移動することが困難な人、視覚障
害や弱視のため活字を読むことが困難な人などへ
の対応として、京都市図書館全体では各図書館の
ネットワークを通した様々なサービスを行ってい
た。ネットワークを利用した物理的、制度的、ま
た文化・情報面のバリアフリーの充実は確かに必
要ではあるが、それだけではすべてを補えるわけ
ではないことがわかった。利用者一人ひとりが障
害のある方の図書館利用について、理解を深めて
いくことが必要なのである。
(松下絵美 生活福祉文化学科卒業生)
修士論文から
修士論文「明治期における京都の文
化施設の創設について」を書き終えて
私が、明治期における京都の文化施設の創設につ
いて着目したのは、現在の岡崎公園には博物館、美
術館、図書館、勧業館、それに動物園と文化施設が
集まっていると気付いたことがきっかけです。
なぜ現在、京都の岡崎公園の一帯には文化施設
が集まっているのだろうかとの疑問に出会った時に、
私はこのようにして文化施設が集合していることには
何らかの歴史的背景があるのではないか、何かの出
来事があったが故のことではないかと考えてみまし
た。そして同時に、これらの文化施設がどのような経
緯により広く人々に開かれた機関として成立してきた
か、といった歴史的経緯を検討してみたいと考えまし
た。それは、こうした創設の経緯を総体的に捉えてみ
ることによって、文化施設が現在、どのような役割を
担い、またどのような機能を果たすべきかをいった点
が一層理解できるのではないかと考えたからです。
こうしたことを考察していくと、内国勧業博覧会と
いうものに行き着きました。内国勧業博覧会は全部
で5回開催されており、明治10年に第一回、明治14年
に第二回、明治23年に第三回がいずれも東京の上野
にて開催されており、明治28年には第四回が京都の
岡崎で、さらに明治36年に第五回が大阪の天王寺に
おいて開催されました。そして東京・京都・大阪とこ
れら3つの開催地域には、現在文化施設が集合して
おり、この内国勧業博覧会が、文化施設創設過程の
ある結節点となったこと、また京都ではこの内国博
覧会以前に開催された幾度かの博覧会がその基層
を形成したことも分かりました。
そもそも日本で初めて開催された博覧会は明治4
年、京都での博覧会でした。また江戸時代にまで遡
ると、博覧会のように文物を展覧して他者に見せると
いう類似の会合として、本草会・物産会というものが
ありました。つまり我が国においては、江戸時代から
の本草会や物産会を底流にしながら、明治期におい
て日本の博覧会として現出したのです。
本論では、博覧会の底流とも言えるような江戸時
代の本草会、物産会から検討をしてみることにしまし
た。そして明治期から京都で行われていた博覧会を
その前史と考え、博覧会が各文化施設へと分化して
いくプロセスを、
「公開」と展示物の「分類・区分」を
軸に明らかにしていこうと考え、論文を完成させまし
た。
(松尾あすか 人間文化専攻修了生)
本
の
扉
3
大学図書館で働くということ
1. 図書館員に必要なことは ?
元京都大学図書館司書
現筑波大学大学院
図書館情報メディア研究科助教
呑海 沙織
学生の学習上の情報の活用及び研究者等の高度な学
「図書館員に必要なことは,人が好きだということで
術情報の活用を促進することを目的とする」と定めてい
す。
」これは,大学図書館に勤め始めてすぐに耳にした
ます。教育・学習支援機能と研究支援機能をその主た
意外な言葉でした。
「人が好き」ではなくて「本が好き」
る機能とする大学図書館ですが,
「資料と人」あるいは
の聞き間違いではないかと思ったのですが,年月を重ね
「人と人」を結びつける役割を果たすことに変わりはあ
るにつれ,その言葉の重さが実感できるようになりまし
た。
りません。
ところで近年,大学図書館において,
「資料と人」
「人
図書館は,
「資料と人を結びつける場」であるといわ
と人」を結びつけるための新たな形がいくつか定着し
れます。けれども資料は人の思考の産物であり,この
つつあります。そのうちのひとつとして,情報リテラシー
観点からみると,図書館は「資料を媒介として人と人と
教育をあげることができます。情報リテラシーとは情報
を結びつける場」であるといえます。そして図書館員は,
を活用する創造的能力のことをいい,さまざまな大学
「資料を媒介として人と人を結びつける」手助けをする
ことをその使命としています。
例えばある人が,100 年前に英国で書かれた本を探
図書館で情報リテラシーに関する講習会が行われてい
たり,図書館員が情報リテラシーに関する授業を受け
持ったりしています。京都大学では,
「情報探索入門」
していたとして,図書館員であるあなたがその本を探し
が 1998 年より開講されており,演習補助として図書館
出してその人に手渡すことができたとしたら,とても素
の職員が授業に参加しています。
敵なことだと思いませんか。なぜなら,あなたは単に
レファレンス・サービスが,利用者の資料・情報探し
100 年前に書かれた本を手渡しただけではなく,100
を直接的に手助けするサービスであるのに対し,情報リ
年前の英国でその本を書いた人とそれを探していた人
テラシー教育は,利用者自らが資料・情報を探し活用
を結びつけたのですから。そして,時空を越えて人と
できるようなスキルを身につける手助けを行います。図
人を結びつける役割を
書館員に新たに「教える」という役割が増えたわけで
持つ図書館員にはやは
すが,ここにも「人が好き」であることが生かされます。
り「人が好き」であるこ
とが求められるのです。
3. 日々のスキルアップ
どんな主題のどんな仕事を任されても対応できるよ
2. 大学図書館の役割
れて提供できるようにするためには,日々のスキルアップ
は 17 年間に,附属図書館,医学図書館,教育学部図
が欠かせません。研修会や勉強会に参加したり,関連
書館,工学部電気系図書室,人間・環境学研究科・
雑誌や図書を読んだり,図書館員のためのメーリングリ
総合人間学部図書館を経験しました。3 年毎に異動す
ストなどで情報を交換したり,大学院にいったり,さま
るのが通常で,
担当する仕事の内容も変わります。目録・
ざまなスキルアップの方法があります。見方を変えると,
分類といった資料の組織化から,レファレンス・サービ
日々のスキルアップを仕事に生かすことのできる魅力的
ス,相互利用サービス,情報リテラシー教育,予算管
な職場が大学図書館であるということもできます。
理,電子ジャーナルの契約,会議運営まで,いろいろ
私自身は,昨年の 6 月末に大学図書館員を辞め,7
な業務を担当します。また,学外の大学図書館への出
月より筑波大学大学院図書館情報メディア研究科で助
向もあります。私の場合,奈良女子大学附属図書館に
教として新しいスタートをきりました。大学図書館員とい
も 2 年間,勤務させていただきました。
う仕事を辞めてしまうことに迷いはありましたが,図書
大学図書館は,教育・学習活動を支援する機能と
館というものに違う形で関わってみたいという気持ちが
学術研究活動を支援する機能をもっています。京都大
大きくなり,決断しました。これからは,別の視点から,
学の場合,
「京都大学における全学の図書館機能に関
大学図書館とかかわっていきたいと思っています。
する規程」によって,大学の全学図書館機能を「本学
4
うに,あるいは,新しい形のサービスを積極的に取り入
京都大学には,50 以上の図書館・室があります。私
(生活文化学科卒業生)
『マティス 画家のノート』
アンリ・マティス著 二見史郎訳
みすず書房
マティスはルノアール、モネ、ピカソらと並び日本
で大変人気の高い画家である。色彩と装飾性に富
み、また切り絵「ジャズ」のシリーズに見られるよう
なモダンな要素もあり、専門家のみならず、それほ
ど絵画に関心のない人にまで広く親しまれている。
この本はマティスが書き残した絵画に関する記述、
美術批評家によるインタビュー、親しい画家や友人
に宛てた書簡などから構成されている。
絵画制作に関する専門的な記述に多くのページが割
かれているが、それ以外の箇所でも読みどころは多い。
マティスの絵画は一見すると、授かった天賦の才
にまかせて思うがままに描いているように見える。し
かしこの本を紐解けば、それは、間違った見方であ
ることがわかる。視覚芸術である絵画の新しい可能
性を常に模索し、何が普遍的な芸術なのかを探求し
てやまなかった思索の痕跡が随所にうかがえる。
とりわけ遠近法による従来の空間表現を、いかに
色彩の効果によって創出するかという問題に関して
は、多くの記述が見られる。おもにフォーヴィズムと
呼ばれた絵画形式に着手し始めた頃からの、製作上
の大きなテーマであったと思われる。一見無造作に
『スナーク狩り』
ルイス・キャロル 著 高橋康也 訳
ヘンリー・ホリデイ 挿絵 河合祥一郎 編者
この『スナーク狩り』は、
『不思議の国のアリス』
の作者でお馴染みのルイス・キャロルによって 1876
年に書かれた叙事詩です。そして、
『スナーク狩り』は、
解読不能であり、解読できないからこその楽しみが
ある本だと私は思います。 作者であるルイス・キャロルはこの話に限らず、他
の作品のナンセンスで摩訶不思議な箇所に関して質
問されても、
「私にもよくわからない。」という言葉を
残しています。それは、作者ですら、物語を書きな
がら不思議に思っているということです。永遠に答え
は求められない。
「何か」を常に求めながら読む作
品のひとつが『スナーク狩り』だと私は考えています。
私にとって『スナーク狩り』は、一度読んだだけで
は登場人物ですら訳がわからないままでした。なぜ
ならば、この物語詩の登場人物は皆「B」から始まり、
9 名もいるのです。さらに、そもそも題名にも記載さ
れている「スナーク」はルイス・キャロルの造語であ
り、外見がどんな生物であるのかさえもわからず、意
味不明な特徴が羅列されているだけなのです。 またこの叙事詩の多くの章で見るのが以下の 4 行
です。
置かれている色も、その効果と空間表
現上の意味を精査した上でのものだと
いうことがわかる。
純然たる視覚的な絵画上の実験に
大胆に邁進する一方で、絵画のあり方についても、
独自の考えがあったようである。とりわけ絵画によ
る文学的表現を忌避し、表現主義的な、
「もの言う」
絵画にはたいへん批判的である。
「絵に文学を持ち
込むな」というような記述は幾度となく出てくる。マ
ティスの場合、芸術創造と造形に関する分析は絵画
制作上のたゆまぬ努力と研究から生まれたものであ
るため、思想が絵画に先立つことを嫌ったためとも
思われる。余計な細部があれば、それが見る者が
受け取る絵画全体の印象を別のものに変えてしまう。
顔に溢れる情熱とか、激しい動きによって表わされ
る表現は、画布上に創出された高度の均整と調和を
貶める要素だと考えていたようである。
今日の芸術(表現)はとかく文学的な要素(ある
いはある種の社会的メッセージを)を重視しているも
のが多いが、マティスが目指したものは均整と調和
がもたらす静謐の芸術であり、その絵画を見れば、
やはり真理はマティスの方にあったと言わざるをえな
い。多くの「もの言う絵画」が時代の移ろいのなか
で省みられなくなるなか、マティス絵画は今日もなお、
輝き続けているからである。
(玄義徳 本学職員)
本
の
扉
一同は指ぬきと注意を駆使し フォークと希望を持って探した 鉄道の株で命をおどし 微笑と石鹸で金縛りにした ここからもわかるように、狩りをする側の人間の戦
う準備と心構えにまでナンセンスが駆使されていま
す。このようにルイス・キャロルはナンセンスをどこま
でも抜かりなく散りばめているからこそ、ナンセンス
の天才と言われるのだと思います。 また、ルイス・キャロルは自分の作品それぞれとす
べてが連携しているかのように、他の作品での話が
大変うまくナンセンスに散りばめられています。
『スナー
ク狩り』には『鏡の国のアリス』の中の詩である『ジャ
バーウォックの歌』が、随所に存在します。けれども、
それはあくまでも読者が『鏡の国のアリス』を読んで
いなければ知りえないことであり、仮に知っていたと
しても意味を成立させる道具どころか、ますます読者
を混乱に陥れる道具の一つでしかないのです。
ナンセンスとは意味の不在であり、意味を成立さ
せない為に、ルイス・キャロルは挿絵にまでも拘りま
した。その結果ナンセンス叙事詩の傑作とも言われる
『スナーク狩り』は生まれ、意味の不在を徹底させる
ことで、ナンセンスという意味が成立した不思議な叙
事詩は文学界以外にも影響を与える作品となったの
です。
(松本朋子 人間文化専攻)
5
見 学 会
大阪府立中央図書館 の巻
猛暑日が続くさなかの8月6日、東大阪市にある大阪
府立中央図書館の見学会を敢行した。授業も試験も終
わってからの、いささか条件のよくない時期でもあり、
人数が集まるかどうか心配だったが5名の参加があ
り、ふだん利用者としては入れない広大な地下書庫や
対面朗読室、児童室のバックヤードなどを見学した。
まず2階の会議室で企画協力課の吉川さんから丁
寧な説明を受ける。蔵書が約170万冊におよぶこと、
インターネットを通じて自分で府立図書館の資料が
予約できる「セルフ予約」が始まったこと、そして府
内の図書館への協力業務の実情など。
大阪府立中央図書館の外観
そして館内の見学にうつり、まず地下にある広大
な書庫へ。閲覧室で請求された資料はファックスで
んにお礼を申し上げ、カウンターでそれぞれに貸し出
情報が届けられるが、この地下書庫では自転車を利
しカードを作り、約2時間におよぶ有意義な見学会を
用してそれら資料を取りに回っている。実際にそんな
終えたのであった。
出納の現場を確認して、わたしたちは、今さらながら
170万冊という蔵書を抱えた図書館の仕事の実態に
おく。
驚嘆する。
住友文庫…住友家より寄贈された自然科学、医学、
続いて府内市町村立図書館への資料面でのバッ
工学に関する洋書で21,563冊。
クアップを担う協力業務のうち、協力貸出資料の仕
大原文庫…旧大原社会問題研究所の資料。経済・労
分け室を見せていただく。府内の市町村図書館を8
働・福祉など社会科学中心の資料で約38,300冊。
コースに区分して毎週協力車を運行していた。授業
市河文庫…市河三喜から譲渡された言語学、英語学
などで幾度か説明するより、このように実際の現場
に関する資料。洋書1,008冊、和書23冊。
で、コースごとにに仕分けされた協力貸出の資料を目
齋藤文庫…英文学者齋藤勇の旧蔵書288冊。
の前にするほうがはるかに理解がはやい。この地下
松下文庫…松下幸之助の寄付金により購入した電気
には、資料の収集・整理やデータ管理などを受け持
つ資料情報課もある。ちょうど選定作業の時期にあ
たっていた。
1階にあがって対面朗読の様子を見学する。部屋
では録音図書を作成している最中であった。そして
工学関連図書で3,140冊。
塚本文庫…塚本 勲寄贈の韓国、朝鮮関係資料、
10,680冊。
これら文庫についてはそれぞれに文庫目録が刊行
されている。
さらに児童室へ。閲覧室の他、お話の部屋、児童室
また 特 別 集 書として、本 川誠 二 氏 旧 蔵 書( 約
書庫などを回る。児童室はやはり学生諸君には興味
3,000 冊)、家高憲三氏寄贈資料(223 冊)、久野収
深いようで熱心に説明を聞いている。
氏旧蔵書(2,080 冊)、日本山岳会関西支部寄贈図
児童室をあとにして、3階4階閲覧室のカウンター
書(約1,600 冊)などもある。
裏のいわゆるバックヤードを見せていただく。よく利
他にデジタル画像として『フランス百科全書<図版
用される雑誌のバックナンバーや参考図書の一部、
集>』の銅版画や『薬用植物図譜』もホームページで
また書庫から配送コンベアにのらない大型本なども
見ることができる。
置かれている。
特別コレクションのHPは以下のとおり。
こうしてひととおり館内の見学を終えて再び会議
室へ。親切に全館を案内して説明いただいた吉川さ
6
以下中央図書館のコレクションを簡単に紹介して
http://www.library.pref.osaka.jp/contents.html#collection
(岡村敬二 本学教員)
外部研修報告
どのフロアにもおり、一般市民だけではなく、大
学生もたくさんいて、さまざまな調べ物をしてい
海外図書館訪問記
た。座席も書架も利用方法に応じて数種類あった。
s Book Week にち
展示スペースでは、Children’
なんで、中学生の調べ学習の結果がグループごと
に冊子にまとめられて展示されていた。
この夏、機会を得て、シンガポールの国立図書
州立図書館といえば、日本では都道府県立図書
館と西オーストラリア州立図書館、地元の小さい
館の役割を果たすところにあたるであろうが、こ
ドンガラ図書館を訪問した。
こでは州立としての図書館だけではなく、地元の
公共図書館・学生のための研究・学習図書館とし
1. シンガポール国立図書館
ての役割も果たし、かつ学校との連携も見て取れ
シンガポールの国立図書館は強力な図書館政策
る活動の活発な図書館であった。
Library2000 の中で大幅な発展を遂げ、2005 年に
は新国立図書館が完成し、同時に新たな図書館政
策 Library 2010 が発表された。この政策では前
政策に引き続き、シンガポールの社会的・経済的
発展を支える知的基盤をつくることを目的として
いる。
西オーストラリア州立図書館 館内風景
貸出しを目的とする一般的な公共図書館機能を
持つのは地下 1 階部分だけで、上階は、レファレ
3. ドンガラ公共図書館
ンス機能を中心とするスペースや展示スペースな
Dongara Public Library は、オーストラリ
どになっている。
アの西海岸に沿って、パースから北上したとこ
飛行機の乗り換えの合間に立ち寄っただけで
ろにある小さな町の図書館である。もとは郵便局
あったが、シンガポールが図書館政策に国の将来
だった建物を改造して公共図書館としたもので、
の一端を託す姿勢が如実に見えた図書館だった。
入口をはいると、なんとまず観光案内所があるの
残念ながら館内の撮影は許可されなかった
であった。建物内部は図書館となっており、観光
が、建物内部についてはシンガポールの National
案内の受付にいる人が図書館の仕事もしており、
Library Board のホームページで見ることができ
図書館員が観光案内の係を兼ねているのか、はた
る。 URL: http://www.nlb.gov.sg/
またその逆か逡巡しながらも聞きそびれてしまっ
本
の
扉
た。
2. 西オーストラリア州立図書館
先進的なサービスは行われていないが、書架や
The State Library of Western Australia は
座席が居心地良くしつらえられており、奥には
The Perth Cultural Centre の 一 部 で あ る The
ちょっとした書斎コーナーもあった。手前には消
Alexander Library Building にある。 防車の形の座席が子ども用に用意されており、ど
フ ロ ア は 十 分 な 余 裕 が あ り、 入 口 脇 に は
う見ても羊より人の数の方が少なそうな、小さな
Library Shop もあった。受付でまず「子連れな
町の小さな図書館でありながら、「ゆったりした
らば、お話会のサービスもありますよ。州立図書
時間を過ごしたくなる」雰囲気を醸し出していた。
館ではしていませんが、地元の図書館では年齢別
にさまざまなサービスをしていますから、希望す
る場合は遠慮なくお尋ねください。」と声をかけ
られた。家族旅行中に州立図書館を見学するのは
珍しいので、新住民と思われたらしい。写真撮影
の許可を求めるとシンガポールとはうってかわっ
て“No problem.”とあっさり。
分野別にフロアが分かれており、各フロアには
Dongara Library 消防車型座席
(岩崎れい 本学教員)
十分なスペースと多様な資料があった。利用者は
7
5 月∼ 6 月 読書プログラム実習
「児童サービス論」でブックトークやストー
リーテリング等の読書プログラムを実践。
7 月 4 日 司書課程オリエンテーション
今年度より 1 年次は図書館資料論を履修でき
るようになった。
8 月 6 日 大阪府立中央図書館見学会
東大阪市に所在する大阪府立中央図書館の見
学会を開催した。詳細は p.6 の見学会報告をご
参照ください。
8 月 21 日 京都ライトハウス見学
「資料特論」集中講義(8 月 19 日∼ 21 日)で
点字実習や京都ライトハウスでの施設見学を
行った。
11 月 8 日、22 日 製本技術講習会
今年は受講生多数の為、午前午後で完全入れ
替えを行った。洋綴じ和綴じの受講内容で、真
剣に取り組む学生が目立った。
11 月∼ 1 月 読書プログラム実習
「読書と豊かな人間性」にて。
3月
平成 20 年度卒業生の司書資格取得者は、4 学
科合わせて合計 30 名。司書教諭は 11 名。
編集後記
2 月になると花粉症が始まる。それがちょう
ど年度の 終わりと初まりの大 変忙しい時期に
重なってしまっていてまことに辛い毎日だ。そ
れに加えて今 年度は、あたっていた科 学 研究
助成が最終年度で、その報告書の編輯と刊行
も並行して作業をおこなった。目のまわる忙し
さであった。ともあれ忙しいうちが 花かも知
れないと思い直して日々精 進、日々努力の 毎
日を送ることにしている。遅々とした歩みであ
るが、少しずつでも前進しているつもりである。
大学内外のいっそうのご支援をいただきたい
と切にお願いいたしたいと思う。 (0)
いつの間にか、また年度 末になり、すぐに
新しい 学 期が始まる。仕事に追われる毎日だ
が、司書 課程も司書教 諭 課程ももっと充実さ
せ、新しいことも徐々に始めていきたいと思っ
ている。本誌もなんとか 3 号雑誌にならずに、
4 号 発 行に無 事こぎつけた。執 筆者及び読者
の皆様、ありがとうございました。 (零)
大 変多くの 教職 員の方々にご助力願えたお
かげで、無事に第 4 号を刊行する事ができた。
皆様方に厚く御礼申し上げたい。
(S)
京都ノートルダム女子大学 司書・司書教諭課程
ニューズレター 本の扉
第4号 2009年3月30日
11 月 18 日∼ 12 月 24 日
「図書館サービス論」での展示実習。今回の
テーマは、“クリスマス”。学内に掲示する展示
案内のポスターが、アイディアが豊富で多くの
人の目を引いた。
8
編集・発行
京都ノートルダム女子大学
司書・司書教諭課程
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用 紙
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