成長と安心のために必要な資金供給に関する当面の対応(提言)

成長と安心のために必要な資金供給に関する当面の対応(提言)
平成27年1月9日
自 由 民 主 党
1.課題と現状認識
・アベノミクスの成功、特に、その効果を地域へ波及させるとともに、地方
が自立的に考え自らも地方創生に向けて取り組むためには、あらゆる政策
手段を総動員して取り組む必要がある。そうした中で、本提言は、企業の
喫緊の資金需要に対応する成長と安心のために必要な資金供給の在り方
について、政府検討会の結果も踏まえ、日本政策投資銀行や商工組合中央
金庫といった政府系金融機関の果たすべき役割と在り方に焦点を当てて、
自民党として具体策を示すものであり、政府に、早急な対応を求めるもの。
(1)成長マネー
・企業の潜在的な成長力を引き出すには、資本性資金を中心とする成長マネー
が不可欠だが、現状、民間の担い手・市場が未成熟であり、資金供給が
限定的。
・当面は、企業の喫緊の資金ニーズに応えるため、政府系金融機関を活用し、
民間ファンド・銀行等の資金への呼び水とする必要。
・中長期的には、当面の施策を礎とし、新たな資金供給の担い手・市場・
投資家を育成し、民間主導の資金循環を創出。
(2)セーフティネットマネー
・金融危機や大規模な自然災害は、実体経済に大きなダメージ。また、危機
に対する備えなしには、企業は思い切った成長への投資ができない。
・リーマンショックや東日本大震災の際の危機対応業務では、民間金融機関
の参加はなく、日本政策投資銀行と商工組合中央金庫のみがみなし指定
金融機関として危機対応業務を実施。
2.当面の対応(日本政策投資銀行・商工組合中央金庫に求める機能)
(1)成長マネー
・日本政策投資銀行の競争力強化ファンドによる資本性資金の供給は、地域
活性化への貢献の観点からも、企業の成長を支え、地域金融機関を含む
民間金融機関への呼び水効果を発揮してきた。
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・今後、政府の支援の下、こうした取組みを強化する。特に、地方創生に
向け、地域の取組みを積極的に支援し、効果を全国に波及させる。
・商工組合中央金庫は、組合金融に基づく目利き力を活かして中堅・中小企業
を支援し、新しい融資手法を率先して実施し、民間金融機関への呼び水効果
を発揮してきた。
・今後、政府の支援の下、戦略的な海外展開等のリスクの高い資金供給や
地域経済全体への波及力を有する地域中核企業への支援を強化する。
(2)セーフティネットマネー
・民間金融機関による危機対応が事実上困難である現状も踏まえ、両機関は、
引き続き、セーフティネットマネー供給の中心的役割を果たす。
3.日本政策投資銀行・商工組合中央金庫のあり方
両機関については、2005 年に決定された政策金融改革の方針の下、具体的
に定められた年限内に、完全民営化を行うこととなっている。
一方、前述のように、日本における資金供給の現状は、成長マネーについて
は供給が十分ではなく、セーフィティネットマネーについては民間による
対応が事実上難しい状況。
このため、両機関の完全民営化の方針を維持しつつ、アベノミクスの成功
に向けて万全を期す観点から、民間金融等の現状を踏まえて現実的に必要
な当面の措置として、以下の通り、提言する。
(1)日本政策投資銀行
<成長マネー供給に係る時限的措置>
・企業の喫緊の資金需要に応え、アベノミクス、特に、地方創生の成功に
資するため、成長マネーを集中的に供給する新たな投資の仕組みを創設。
・同行は、政府による新規出資を受けて、新たな投資を 2020 年度迄行い、
その後 5 年間目途で同業務を終了。同措置の必要性について、民間金融機
関の資金供給の状況等を勘案し、適時に検討。
・上記の業務が継続している間、適確な業務運営の確保のため、政府は日本
政策投資銀行の株式の 2 分の1以上を時限的に保有。
<セーフティネットマネー供給に係る措置>
民間による危機対応が十分に確保されると見込まれるまでの間、危機対応
業務の実施を義務付け。政府が同行に新規出資できる期限も延長。
上記の措置を講じる当分の間、危機対応業務の適確な実施のため、政府は
日本政策投資銀行の株式の 3 分の1超を保有。
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(2)商工組合中央金庫
<成長マネーの供給に係る措置>
戦略的な海外展開等のためのリスクの高い資金供給や地域経済への波及力
の高い地域中核企業への支援を強化しつつ、民間金融機関への呼び水効果
や民間による資金供給等を年々チェック。
<セーフティネットマネー供給に係る措置>
・民間による危機対応が十分に確保されると見込まれるまでの間、危機対応
業務の実施を義務付け。政府が同庫に新規出資できる期限も延長。
・商工中金の政府保有株式が既に半数未満(46%)となっていることも踏まえ、
上記の措置を講じる当分の間、政府は商工中金について、危機対応業務の
適確な実施のため、必要な株式を保有。
・具体的な株式の処分・保有の割合については商工中金に対する出資の状況、
商工中金による危機対応業務の実施の状況、商工中金の資金調達等を含む
財政基盤、株主となる中小企業団体及びその構成員の資金の余力、社会
経済情勢の変化、民間金融機関の危機対応の状況を勘案して判断すべき。
(3)共通事項
・両機関の役割は、民間の状況に応じて、変化していくものであり、適当な
時期に、市場の動向等を勘案し、改めて検討を行う。
・こうした当面の措置は、市場規律の尊重と民業補完の前提の下に実施し、
民業圧迫は厳に回避すべき。政府においては、両機関に対し、民業圧迫回避
の取組み状況について報告を義務付けるなど、そのための対応策を検討・
実施すべき。
4.目指すべき姿の実現に向けて
こうした当面の施策を礎にして、中長期的には、企業による成長マネーを
活用したリスクテイクが根付き、民間ファンド等の新しい資金の担い手や、
それを支える投資家や市場等が育っていく必要がある。
こうした本提言の目指している姿が確実に実現されるよう、民間ファンド等
の新しい資金の担い手がなぜ育たないのか、それを支える投資家や市場等
をどう育成すべきなのかといった点について、引き続き検討していくこと
とする。
また、セーフティネットマネーについても、金融機関が自らの経営判断に
よって危機時に対応できるよう、強い財務基盤の構築や、金融機関同士の
連携強化などに取り組むことを期待したい。
以上
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