(ネ)第10052号事件

特許権「
特許権「ドリップバッグ」
ドリップバッグ」
知財高裁平成 22 年 1 月 25 日判決
平成 21 年(ネ)第 10052
10052 号 特許権侵害差止等請求控訴事件
特許権侵害差止等請求控訴事件
弁護士
近藤祐史
第 1 事案の
事案の概要
本件は、ドリップバッグに関する後記の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許を「本件特許」と
いい、本件特許にかかる発明を「本件発明」という。)を有する控訴人(原審原告(X))が、被控訴人(原
審被告(Y))が被告製品目録1に記載されるドリップバッグ(「被告製品」という。)を製造・販売する行為
は、本件特許権を侵害するものである等と主張して、被告製品の製造・販売の差止及び廃棄を求めた
事案である。
なお、Xは、控訴審において、被告製品目録2に記載されるドリップバッグ製造用シートを製造・販売
する行為が本件特許権の間接侵害を構成すると主張し、当該ドリップバッグ製造用シートの製造・販売
の差止及び廃棄を求める請求を追加しているが、本発表の対象からは除外することにする。
1 本件特許権
Xは、次の特許権を有している(添付資料1(特許公報)参照のこと。)。
ア
イ
ウ
エ
オ
特許番号第
発明の名称
出願日
登録日
第 3166151 号
ドリップバッグ
平成9年12月20日
平成13年3月9日
明細書の記載
本件特許権にかかる明細書の特許請求の範囲(請求項1)の記載は次のとおりである。
「通水性濾過性シート材料からなり、上端部に開口部を有する袋本体と薄板状材料からなり、
袋本体の対向する2面の外表面に設けられた掛止部材とからなるドリップバッグであって、
掛止部材が、その周縁側に形成されている周縁部と、周縁部の内側にあって、袋本体から引
き起こし可能に形成されているアーム部と、アーム部の内側に形成されている舌片部とから
なり、アーム部の上下いずれか一端で周縁部とアーム部とが連続し、アーム部の上下の他端
でアーム部と舌片部とが連続し、周縁部又は舌片部のいずれか一方が、袋本体の外表面に貼
着されていることを特徴とするドリップバッグ。
」
2 構成要件
1
本件発明を構成要件に分説すると、次のとおりである。
A1
通水性濾過性シート材料からなり、上端部に開口部を有する袋本体と
A2
薄板状材料からなり、袋本体の対向する2面の外表面に設けられた掛止部材とからなるドリップ
バッグであって、
B
掛止部材が、
1 その周縁側に形成されている周縁部と、
2 周縁部の内側にあって、袋本体から引き起こし可能に形成されているアーム部と、
3 アーム部の内側に形成されている舌片部とからなり、
C
アーム部の上下いずれか一端で周縁部とアーム部とが連続し、
D
アーム部の上下の他端でアーム部と舌片部とが連続し、
E
周縁部又は舌片部のいずれか一方が、袋本体の外表面に貼着されていること
F
を特徴とするドリップバッグ。
3 侵害物件
被告製品の構成については、添付資料2(知財高裁判決)の別紙被告製品目録1参照。
4 対比
被告製品が本件発明の構成要件A1、A2を充足することに争いはない。
第2 争 点
1 構成要件B
構成要件Bの充足性
【構成要件B
構成要件B】
掛止部材が、その周縁側に形成されている周縁部と、周縁部の内側にあって、袋本体から引き起こし可能に形成されて
いるアーム部と、アーム部の内側に形成されている舌片部とからなり
【本件明細書の
本件明細書の記載】
記載】
(ア)【発明の属する技術分野】
「本発明は、カップ等の容器の上部に掛止することにより容易にドリップ式コーヒーを入れられるようにするドリップバ
ッグに関する。」(【0001】)
「…従来の数杯分のコーヒーを抽出することが基本とされているペーパードリップ方式に代えて、一杯分のコーヒー
の抽出を手軽に行えるようにすることを目的とした、使い捨てのワンドリップコーヒー(以下、ドリップバッグと称する)が
種々の製品形態で市場に出回っている。」(【0003】)
「これまでに市場に出回っているドリップバッグは、カップにセットする方式によって二つに大別することができる。そ
のうちの一つは、ドリッパーをカップの上に載置する方式(以下、カップオン方式という)であり、他の一つはドリッパー
に取り付けられている掛止部をカップの壁に引っかけ、ドリッパーがカップ内で掛止されるようにする方式(以下、カッ
プイン方式という)である。」(【0004】)
2
(イ)【発明が解決しようとする課題】
「…ドリップバッグとして、種々のカップオン方式やカップイン方式の製品が市場に出回っているが、それぞれ長所及
び短所を有しており、これまでに双方の利点を兼ね備えたドリップバッグ、即ち、カップオン方式のコーヒーの美味し
さと、カップへのセットや注湯のしやすさを有し、カップイン方式のようにコンパクトで低コストに製造できるものは存在
しない。」(【0009】)
「本発明は以上のような従来技術の課題を解決しようとするものであり、本来のペーパードリップ方式でいれるコーヒ
ーの美味しさを得ることができ、簡略な構成を有し、かつカップへのセットが極めて容易で、カップへのセット後の形
状も安定しており、コーヒー抽出後の廃棄も容易かつ安全な新たなドリップバッグを提供することを目的としている。」
(【0010】)
(ウ)【課題を解決するための手段】
「本発明者は、上記の目的を達成するため、通水性濾過性シート材料からなり、上端部に開口部を有する袋本体
と、薄板状材料からなり、袋本体の対向する2面の外表面に設けられた掛止部材とからなるドリップバッグであって、
掛止部材が、その周縁側に形成されている周縁部と、周縁部の内側にあって、袋本体から引き起こし可能に形成さ
れているアーム部と、アーム部の内側に形成されている舌片部とからなり、アーム部の上下いずれか一端で周縁部
とアーム部とが連続し、アーム部の上下の他端でアーム部と舌片部とが連続し、周縁部又は舌片部のいずれか一方
が、袋本体の外表面に貼着されていることを特徴とするドリップバッグを提供する。」(【0011】)
「本発明のドリップバッグは、通水性濾過性シート材料からなる袋本体と、袋本体の外表面に設けられた掛止部材と
からなる。この掛止部材は、例えば、矩形の薄板状材料に特定の切込線を入れることにより簡便に得ることができ
る。したがって、本発明のドリップバッグは、その形成材料の省資源化を図ることができ、また、低コストで製造できる
ものとなる。」(【0012】)
「さらに、この掛止部材
この掛止部材は
掛止部材は、掛止部材の
掛止部材 の周縁側に
周縁側に形成された
形成された周縁部
された周縁部と
周縁部と、周縁部の
周縁部の内側にあって
内側 にあって、
にあって、引 き起こし可能
こし可能に
可能に
形成された
形成されたアーム
されたアーム部
アーム部と、アーム部
アーム部の内側に
内側に形成されている
形成されている舌片部
されている舌片部とからなり
舌片部とからなり、
とからなり、このアーム
このアーム部
アーム部の上下いずれか
上下 いずれか一端
いずれか一端で
一端で
周縁部と
周縁部とアーム部
アーム部とが連続
とが連続し
連続し、アーム部
アーム部 の上下の
上下の他端で
他端でアーム部
アーム部と舌片部とが
舌片部とが連続
とが連続している
連続している。
している。即ち、アーム部
アーム部 の上
端部で
端部で周縁部と
周縁部とアーム部
アーム部とが連続
とが連続し
連続し、アーム部
アーム部の下端で
下端でアーム部
アーム部と舌片部とが
舌片部とが連続
とが連続しているか
連続しているか、
しているか、あるいは、
あるいは、アーム部
アーム部
の下端部で
下端部で周縁部と
周縁部とアーム部
アーム部とが連続
とが連続し
連続し、アーム部
アーム部の上端部で
上端部でアーム部
アーム部と舌片部とが
舌片部とが連続
とが連続している
連続している。
している。そして、
そして、この周
この周
」(【0013】)
縁部又は
縁部又は舌片部のいずれか
舌片部のいずれか一方
のいずれか一方が
一方が、袋本体の
袋本体の対向する
対向する2
する2面の外表面に
外表面に貼着されてい
貼着されている
されている。
「したがって、舌片部が
舌片部が袋本体の
袋本体の外表面に
外表面 に貼着されている
貼着されている場合
されている場合、
場合、アーム部
アーム部を引 き起こすことにより、
こすことにより、周縁部も
周縁部も引き起
こしてカップ
こしてカップ側壁
カップ側壁にかけることが
側壁にかけることが可能
にかけることが可能となり
可能となり、
となり、また、
また、周縁部が
周縁部が袋本体の
袋本体の外表面に
外表面に貼着されている
貼着されている場合
されている場合には
場合には、
には、アーム部
アーム部
この場合、袋本体は、アーム部によって対向する
2面からそれぞれ外向きに互いに反対方向に引っ張られ、袋本体の上端部の開口部が大きく広げられた状態で、カ
ップの中央上部に吊されることとなる。また、カップ側壁は周縁部又は舌片部とアーム部とで挟まれ、かつカップ側
壁の外面は周縁部又は舌片部で押さえつけられるので、ドリップバッグは極めて安定した状態でコップの上部に固
定される。」(【0014】)
「よって、このドリップバッグによれば、極めて簡単なセット方法でカップ上部に安定的にセットすることが可能となる。
また、このドリップバッグによれば、カップにセットした状態で袋本体の開口部は大きく広がる。したがって、このドリッ
プバッグによれば、コーヒー抽出時に注湯を容易に行えるようになる。また、このドリップバッグは、カップの上部に掛
止されるので、コーヒー抽出後もドリップバッグは抽出したコーヒー液の液面上にある。したがって、本来のペーパー
ドリップ方式と同様の美味しいコーヒーをいれることが可能となる。さらに、コーヒー抽出後にドリップバッグは抽出し
たコーヒー液中に浸っていないので、コーヒー抽出後のドリップバッグの廃棄も容易であり、やけどの危険も生じな
と共に舌片部を
舌片部を引き起こしてカップ
こしてカップ側壁
カップ側壁にかけることが
側壁にかけることが可能
にかけることが可能となる
可能となる。
となる。
3
い。」(【0015】)
(エ)【発明の実施の形態】
「以下、本発明の実施の態様を図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成
要素をあらわしている。」(【0017】)
「一方、掛止部材3aは紙、プラスチックシート等の薄板状材料からなり、袋本体2の表裏の矩形面2a、2bの外表面
にそれぞれ設けられている。本発明においては、この掛止部材3aが、その周縁側に形成されている周縁部4と、周
縁部4の内側にあって、袋本体2から引き起こし可能に形成されているアーム部5と、アーム部5の内側に形成されて
いる舌片部6とからなり、アーム部5の上下いずれか一端で周縁部4とアーム部5とが連続し、アーム部5の上下の他
端でアーム部5と舌片部6とが連続し、さらに、周縁部4又は舌片部6のいずれか一方が、袋本体2の外表面に貼着
されていることを特徴としており、例えば、図1のように、アーム部5の上端部で周縁部4とアーム部5とが連続し、アー
ム部5の下端でアーム部5と舌片部6とが連続し、アーム部5の基部と舌片部6(図1(a)中ドットで塗りつぶした部分)
が袋本体2の外表面に貼着されている態様とすることができる。」(【0023】)
「図2は、この掛止部材3aの平面図である。同図に示したように、この掛止部材3aはその外形が四つの角に丸みを
有する矩形となっている。そして、周縁部4が掛止部材3aの全周に帯状に形成され、周縁部4とアーム部5とが、矩
形の掛止部材3aの両側辺及び下辺に略沿った第1の切込線(外側切込線)L1で区切られ、アーム部5と舌片部6と
が、外側切込線L1の内側で矩形の掛止部材3aの両側辺及び上辺に略沿った第2の切込線(内側切込線)L2で区
切られている。したがって、この掛止部材3aにおいては、外側切込線L1により周縁部4とアーム部5とが区切られ、
また、内側切込線L2によってアーム部5と舌片部6とが区切られている。」(【0024】)
「さらに、この掛止部材3aにおいて、周縁部4
周縁部4の外周部には
外周部には、
には、第3の切込線L
切込線L3で周縁部4
周縁部4と区切られている
区切られている補強片
られている補強片9
補強片9
が形成されており
形成されており、
されており、この補強片
この補強片9
補強片9が袋本体2
袋本体2の外表面に
外表面に貼着されている
貼着されている。
されている。」(【0025】)
「このコーヒードリップバッグ10Aを使用してコーヒーを抽出する方法としては、まず、図1(b)に示したように、ミシン
目7にそって袋本体2の上端部を切除することにより袋本体2を開口し、周縁部4を矢印Aのように引き起こす。次に
4
図1(c)に示したように、カップ20の開口部22の径に合わせてさらに周縁部4を引き起こし、周縁部4をカップ側壁2
1にかける。これにより、袋本体2は、アーム部5によって対向する2面から矢印B方向に、互いに反対方向に引っ張
られ、開口部8が大きく広げられた状態で、カップ20の中央上部に吊されることとなる。さらに、この開口形状
この開口形状は
開口形状は補強
片9によって良好
によって良好に
良好に維持され
維持され、
され、袋本体2
袋本体2の表裏の
表裏の矩形面2
矩形面2a、2bが撓んで開口部
んで開口部8
開口部8が閉ざされることが防止
ざされることが防止される
防止される。
される。」
(【0028】)
「本発明において、掛止部材の形態は、種々の態様をとることができる。」(【0033】)
「例えば、
えば、図3に示す掛止部材3
掛止部材3bのように、
のように、上述の
上述の掛止部材3
掛止部材3から補強片
から補強片9
補強片9を省略してもよい
省略してもよい。
してもよい。この場合
この場合には
場合には、
には、コーヒ
ードリップバッグの
ードリップバッグの使用時に
使用時 に袋本体2
袋本体2の開口形状が
開口形状 が良好に
良好 に維持できるよう
維持できるよう、
できるよう、袋本体2
袋本体2の外表面に
外表面 に貼着する舌片部
する舌片部6
舌片部6
」(【0034】)
を大きめに形成
きめに形成することが
形成することが好
することが好ましい。
ましい。
「例えば、図4に示す掛止部材3cのように、周縁部4が掛止部材3cの両側辺3q、3r及び上辺3sの縁部に帯状に形
成され、周縁部4とアーム部5とが、矩形の掛止部材3cの両側辺3q、3r及び上辺3sに略沿った第1の切込線(外側
切込線)L1で区切られ、アーム部5と舌片部6とが、外側切込線L1の内側で矩形の掛止部材3cの両側辺3q、3rに
略沿った第2の内側切込線L2で区切られるようにしてもよい。この掛止部材3cを袋本体2の外表面に貼着する際に
は、周縁部4を袋本体2の外表面に貼着し、アーム部5と舌片部6とが引き起こし可能となるようにする。」(【0036】)
「図5は、この図4の掛止部材3cを袋本体2に貼着したコーヒードリップバッグ10Bの使用状態の説明図である。」
(【0037】)
5
「同図に示したように、このコーヒードリップバッグ10Bを使用してコーヒーを抽出する場合には、まず、図5(a)に示し
たように、開口した袋本体2の舌片部6を矢印Aのように引き起こす。次に図5(b)に示したように、カップ20の開口
部22の径に合わせてさらに舌片部6を引き起こし、舌片部6をカップ側壁21にかける。これにより、図1のコーヒード
リップバッグ10Aの場合と同様に、袋本体2は、アーム部5によって対向する2面から矢印B方向に、互いに反対方
向に引っ張られ、開口部8が大きく広げられた状態で、カップ20の中央上部に吊されることとなる。」(【0038】)
「また、カップ側壁21はアーム部5と舌片部6とで挟まれ、かつカップ側壁21の外面は矢印C方向に舌片部6で押さ
えつけられるので、コーヒードリップバッグ10Bは極めて安定した状体でカップ20の上部に固定されることとなる。」
(【0039】)
「この他、本発明のコーヒードリップバッグで使用する掛止部材としては、図6に示すように、周縁部4とアーム部5と
が、矩形の掛止部材3dの両側辺3q、3r及び上辺3sに略沿った第1の切込線(外側切込線)L1で区切られ、アーム
部5と舌片部6とが、外側切込線 L1の内側で矩形の掛止部材3dの両側辺3q、3rに略沿った第2の切込線(内側切
込線)L2で区切られ、さらに周縁部4と舌片部6とが、矩形の掛止部材3dの下辺3pに略沿った第4の切込線(下側
切込線)L4で区切られていてもよい。これにより、周縁部4が、掛止部材3dの全周に略帯状に形成されることとな
る。」(【0040】)
「この掛止部材3dを有するコーヒードリップバッグ10Cは、図7に示したようにカップ20にセットされる。この場合、コ
ーヒードリップバッグ10Cの袋本体2の底部は、図5のコーヒードリップバッグ10Bに比して、掛止部材3dによってより
安定的に支持されるので、袋本体2の強度等によっては、図5のコーヒードリップバッグ10Bよりもこの図7のコーヒー
ドリップバッグ10Cを使用することが好ましい。」(【0041】)
6
「図8は、さらに異なる掛止部材3eの平面図である。この掛止部材3eでは、周縁部4とアーム部5とを区切る外側切
込線L1 が掛止部材3cの両側辺3q、3rに沿って形成されているが、掛止部材3eの上辺3sに沿っては形成されて
いないため、周辺部4が掛止部材3eの両側辺3q、3rにのみ沿った帯状のものとなっている。したがって、この掛止
部材3eを使用したコーヒードリップバッグでは、図1、図5あるいは図7のコーヒードリップバッグ10A、10B、10Cに
比 して掛止部材3eが袋本体2の上部の形状を支持 する機 能が弱 くなる。そこで、袋本体2の強度 や剛 性が強 い場
合に、この掛止部材3eを使用することが好ましい。」(【0042】)
【被告製品】
被告製品】
袋本体は、上端部に開口部を有しており、通水性濾過性シート材料である不織布からなる。
Ⅱ 薄板状の紙材料からなる掛止部材が、袋本体の対向する2つの矩形面の外表面に設けられている。
b 上記掛止部材は、
Ⅰ その周縁側(外側)に形成されている把手部①と、
Ⅱ 上記把手部①の内側にあって、袋本体から引き起こし可能に形成されている把手部②と、
Ⅲ 把手部②の内側に形成されているA部分からなる。
c 上記掛止部材にあっては、把手部②の上端において把手部①と把手部②とが連続している。
d また、上記掛止部材にあっては、把手部②の下端で把手部②とA部分とが連続している。
e 上記A部分は、袋本体の外表面に貼着されている。
f 補強片は
補強片は上部の
上部の縁においてA
においてA部分と
部分と連続している
連続している。
a Ⅰ
7
2 均等侵害の
均等侵害の成否
【参考文献・
参考文献・参考判例】
参考判例】
① 最高裁平成
最高裁平成 10 年 02 月 24 日判決(
判決(ボールスプライン事件判決
ボールスプライン事件判決)
事件判決)
特許権侵害訴訟において、相手方が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)が特許発明の
技術的範囲に属するかどうかを判断するに当たっては、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて
特許発明の技術的範囲を確定しなければならず(特許法七〇条一項参照)、特許請求の範囲に記載された構成中に
対象製品等と異なる部分が存する場合には、右対象製品等は、特許発明の技術的範囲に属するということはできな
い。しかし、特許請求の
特許請求の範囲に
範囲に記載された
記載された構成中
された構成中に
構成中に対象製品等と
対象製品等と異なる部分
なる部分が
部分が存する場合
する場合であっても
場合であっても、(
であっても、(1
、(1)右部分が
右部分が
特許発明の
特許発明の本質的部分ではなく
本質的部分ではなく、(
ではなく、(2
、(2)右部分を
右部分を対象製品等におけ
対象製品等におけるものと
におけるものと置
るものと置き換えても、
えても、特許発明の
特許発明の目的を
目的を達するこ
とができ、
とができ、同一の
同一の作用効果を
作用効果 を奏するものであって、(
するものであって、(3
、(3)右のように置
のように置 き換 えることに、
えることに、当該発明の
当該発明の属 する技術
する技術の
技術 の分野に
分野に
おける通常
おける通常の
通常の知識を
知識を有する者
する者(以下「
以下「当業者」
当業者」という。)
という。)が
。)が、対象製品等の
対象製品等の製造等の
製造等の時点において
時点において容易
において容易に
容易に想到すること
想到すること
ができたものであり、(
ができたものであり、(4
、(4)対象製品等が
対象製品等が、特許発明の
特許発明の特許出願時における
特許出願時における公知技術
における公知技術と
公知技術と同一又は
同一又は当業者がこれから
当業者がこれから右出
がこれから右出
願時に
願時に容易に
容易に推考できたものではなく
推考できたものではなく、
できたものではなく、かつ、(
かつ、(5
、(5)対象製品等が
対象製品等が特許発明の
特許発明の特許出願手続において
特許出願手続において特許請求
において特許請求の
特許請求の範囲
から意識的
から意識的に
意識的 に除外されたものに
除外されたものに当
されたものに当 たるなどの特
たるなどの特段 の事情もないときは
事情もないときは、
もないときは、右対象製品等は
右対象製品等は、特許請求の
特許請求 の範囲に
範囲に記載さ
記載さ
である。
れた構成
れた構成と
構成と均等なものとして
均等なものとして、
なものとして、特許発明の
特許発明の技術的範囲に
技術的範囲に属するものと解
するものと解するのが相当
するのが相当
8
② 飯村敏明=
飯村敏明=設楽隆一編
設楽隆一編著「知的財産関係訴訟」
知的財産関係訴訟」96 頁以下
特許権者が均等論を主張することは少なくないが、実際に均等侵害が認められた例は限られている。均等侵害の主
張が斥けられた事例は、第 1 要件 を理由とするものが圧倒的に多く、第 4 要件を理由とするものは非常に少ないようであ
る。第 1 要件を必要とする理由は、第 2 要件、第 3 要件のみを要件とすると、置換容易性判断の基準時を侵害時としたこ
との関係で、均等の成立する範囲が広範になりすぎることにあるといわれているが、第 1 要件により均等侵害が否定され
る例が多いのは、第 1 要件が均等侵害の拡大に対する「絞り」として機能するからであろう。一方、第 4 要件により均等侵
害 が否 定された例が少ないのは、対 象 製品等が公知技術と同一またはこれから容易に推考されることが多 く、特 許 が無
効とされるべきであって、均等侵害について判断するまでもないことが多いからであろう。
…(中略)…
均等の第 1 要件は、対象製品等と特許発明の相違点が特許発明の本質部分ではないことである。
ボールスプライン事件最高裁判決後、比較的早 い時期 に言 い渡された下級審判決例では、「特許 法が保護 しようとす
る発明の実質的価値は、従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決を実現するための、従来技術に見られない
特有の技術的思想に基づく解決手段を、具体的な構成をもって社会に開示した点にあるから、明細書の特許請求の範
囲 に記載された構成のうち、当該 特 許発明特有の解決手段を基 礎づける技術的思想 の中 核をなす特徴的部分が特 許
発明における本質的部分であると理解すべきであり、対象製品がそのような本質的部分において特許発明の構成と異な
れば、もはや特許発明の実質的価値は及ばず、特許発明の構成と均等ということはできないと解するのが相当である」 と
され、あるいは、「特許法が保護しようとする発明の実質的価値は、公知技術では達成し得なかった目的を達成し、公知
技術では生じさせることのできなかった特有の作用効果を生じさせる技術的思想を、具体的な構成をもって社会に開示
した点にあるといえる。このように考えると、明細書の特許請求の範囲に記載された構成のうち、当該特許発明特有の作
用効果 を生じさせる技術的 思想 の中 核 をなす特徴的部分が特 許 発明における本 質 的部分であると理 解すべきであり、
対象製品等がそのような本質的部分において特許発明の構成と異なれば、もはや特許発明の実質的価値は及ばず、特
許発明の構成と均等であるとはいえない。」 とされている。
上記の判決例によれば、特許発明の本質的部分とは、当該部分が他の構成に置き換えられるならば、全体として当該
特許発明の技術的思想とは別個のものと評価されるような部分ということになる。
また、上記の判決例では、「発明が各構成要件の有機的な結合により特定の作用効果を奏するものであることに照ら
せば、対象 製品との相違が特許発明における本 質的部分に係るものであるかどうかを判断するに当たっては、単に特 許
請求の範囲に記載された構成の一部を形式的に取り出すのではなく、特許発明を先行技術と対比して課題の解決手段
における特徴的原理を確定した上で、対象製品の備える解決手段が特許発明における解決手段の原理と実質的に同
一の原理に属するものか、それともこれとは異なる原理に属するものかという点から、判断すべきものというべきである。」と
され、あるいは、「特許発明における本質的部分を把握するに当たっては、単に特許請求の範囲に記載された構成の一
部を形式的に取り出すのではなく、当該特許発明の実質的価値を具現する構成が何であるのかを実質的に探究して判
断 す べ きである。」と判示 され、明 細書 の記載、公知 技術、審査経緯 等を 参酌 したうえで、本 質 的部分が 認 定されてい
る。
1
2
3
第3 裁判所の
裁判所の判断
1
2
3
ボールスプライン事件判決における(1)乃至(5)の各要件を「第 1 要件」乃至「第 5 要件」というものとしている。
東京地裁平成 11 年 1 月 28 日判決(判時 1664 号 109 頁)(徐放性ジクロフェナクナトリウム製剤事件Ⅱ)等
大阪地裁平成 11 年 5 月 27 日判決(判時 1685 号 103 頁)(注射液の調整方法事件)等
9
1 結論
原審(添付資料3):
請求棄却
控訴審(添付資料2):
控訴棄却
2 構成要件B
構成要件Bの充足性
≪原判決≫
原判決≫
(「第 4
当裁判所の判断」「1
争点1(被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属するか)
について」「(2)構成要件Bについて」)
(前略)
イ
「舌片」
舌片」とは、
とは、その字義
その字義から
字義から「
から「舌のかけら」
のかけら」を意味するものと
意味するものと解
するものと解され、「
され、「舌
、「舌のか
けら」
けら」様の形状をした
形状をした部材
をした部材であると
部材であると解
であると解される。
される。
・・・舌片部について、
ウ
そして、アーム部は、その上下いずれか一端で周縁部とアーム部とが連続し、アーム部の上下
の他端でアーム部と舌片部とが連続し、周縁部又は舌片部のいずれか一方が、袋本体の外表面
に貼着されているとされ(構成要件C、D 、周縁部、アーム部及び舌片部はそれぞれ上下端部を
掛止部材が
掛止部材が上記3
上記3つの部材
つの部材から
部材から構成
から構成されるものとされている
構成されるものとされている以
されるものとされている以
上、これらの3
これらの3部材が
部材が他の部材とは
部材とは区別
とは区別し
区別し得る独立の
独立の部材として
部材として特定
として特定し
特定し得るものであることを要
るものであることを要する
ものというべきである。
ものというべきである。
通じて)連続しているものであるが、
(中略)
オ
・・・前示のとおり、舌片部とは、その形状が「舌状のかけら」様のものであると解されるところ、袋
本体の外表面に貼着されている場合とそうでない場合(周縁部が袋本体の外表面に貼着されてい
る場合)とがあるが、前者の場合には、引き起こされるアーム部の支持部として機能し、後者の場合
には、アーム部とともに引き起こされてカップ側面にかけられ、カップ側壁を舌片部とアーム部とで
挾み、かつ、カップ側壁の外面を舌片部で押えつけるように機能するものと解される(【0014】、そ
の実施態様として【0024】、【0025】、【0033】
部とは、掛止部材として、アーム部の
内
~
【0036】)。そうすると、本件特許発明にいう舌片
側に形成された舌状のかけら部材であり、アーム部の上下
の他端と連続するものであって、袋本体の外表面に貼着され
果
れないときに袋本体に貼着され、上記のような機能を
カ
被告製品の構成は、別紙被告製品目録
告製品には、
たすもの)、と解される。
部
4 及びその
件特許発明の舌片部にそれぞれ
側に形成された
片9 とをそれぞれ
4 が本件特許発明の周縁部に、
部
持部分)と
部
部材を
て「
、被
持部
5 が形成されている。
した構成部分と
捉
把手
’
えた上で、
5 が本件特許発明のアーム部に、A部分6 が本
当するとして、被告製品が構成要件Bを充足すると主張する。
これに対し、被告は、原告が主張するA部分6 と
一つの構成部分(
ば
併せ 保
面のとおりである(争いがない。)。これによれ
片9 とこれに連続して形成されたA部分6 (被告は
原告は、被告製品のA部分6 と
①’
るもの(周縁部が袋本体に貼着さ
補強 ’
’
両
把手 ① ’
内
把手 ② ’
’ 補強 ’
独立
把手 ② ’
相
’ 補強 ’ 全
保
捉 べ
分」と称している。)、
部
図
得
える
片9 とは
体として被告製品の掛止部材の
きであるから、被告製品は、本件特許発明の舌片部に
当するものを有さず、構成要件B を充足しないと主張する。
10
相
なるほど、
なるほど、A部分6
部分6’を補強片9
補強片9’と独立した
独立した掛止部材
した掛止部材3
掛止部材3’の構成部分とみ
構成部分とみ得
とみ得るとすれば、
るとすれば、把手 ②
’
可
腕
把手 ① ’
把手 ① ’ 内 位置
’
’ 把
手 ② ’ 内 位置
認
認定 反
採
把手 ① ’
把手 ② ’
相
A部分6
部分6’は、これを独立
これを独立した
独立した構成部
した構成部
分として本件特許発明
として本件特許発明の
本件特許発明の舌片部に
舌片部に当たると解
たると解する余地
する余地がある
余地がある。
がある。
しかし他方
しかし他方、
他方、被告製品の
被告製品のA部分6
部分6’と補強片9
補強片9’は物理的に
物理的に連続しているので
連続しているので、
しているので、被告の
被告の主張するよ
主張するよ
うに、
うに、これを一体
これを一体の
一体の部材としての
部材としての保持部分
としての保持部分とみれば
保持部分とみれば、
とみれば、被告製品には
被告製品には本件特許発明
には本件特許発明にいう
本件特許発明にいう舌片部
にいう舌片部は
舌片部は
存在しないことになり
存在しないことになり、
しないことになり、被告製品は
被告製品は本件特許発明の
本件特許発明の構成要件B
構成要件Bを充足しないことになる
充足しないことになる
把手 ① ’
把手 ② ’
部
5 は、袋本体から引き起こし
連続し、
部
部
5 の
4 の
側に
能に形成されている
側に
部
4 と
するものであり、その下端でA部分6 と連続し、A部分6 は
するものであることが
きない。)。そうすると、
状の部材であり、その上端で
部
められる(この
に
4 を本件特許発明の周縁部に、
アーム部にそれぞれ当たると解するのが
する被告の主張は
部
用で
5 を本件特許発明の
当である。そして、
(被告製品
の
部
4 が本件特許発明の周縁部に、
ことは、上記のとおりである。)。
否
ク
検討
かについて
5 が本件特許発明のアーム部に該当する
’ 補強 ’ 独立
そこで以下、被告製品のA部分6 が、
部に当たるか
部
片9 とは
した部材として、本件特許発明の舌片
する。
(中略)
キ
ば 本件明細書に
本件明細書に記載の
記載の補強片とは
補強片とは、
とは、周縁部の
周縁部の外周部に
外周部に位置し
位置し、開口形状
を良好に
良好に維持し
維持し、袋本体の
袋本体の表裏の
表裏の矩形面が
矩形面が撓んで開口部
んで開口部が
開口部が閉ざされることを防止
ざされることを防止する
防止する独立
する独立の
独立の部
材であると解
であると解され、
され、これと舌片部
これと舌片部とを
舌片部とを連続
とを連続させ
連続させ、
させ、一体として
一体として形成
として形成した
形成した部材
した部材とすることについては
部材とすることについては、
とすることについては、本
件明細書及び
件明細書及び図面に
図面に記載も
記載も示唆もないから
示唆もないから、
もないから、本件明細書には
本件明細書には、
には、舌片部と
舌片部と補強片を
補強片を一体の
一体の構造体
とすることについての技術的思想
とすることについての技術的思想は
技術的思想は存しないものというべきである
しないものというべきである。
というべきである。
被告製品においては
被告製品においては、
においては、補強片9
補強片9’とA部分6
部分6’が一体の
一体の部材として
部材として形成
として形成されており
形成されており、
されており、かつ、
かつ、
同部材は
同部材は一体として
一体として、
として、把手部②5
把手部②5’
②5’とともに袋本体
とともに袋本体8
袋本体8’を対向する
対向する2
する2面からそれぞれ外向
からそれぞれ外向けに
外向けに互
けに互いに
反対方向に
反対方向に引っ張って、
って、袋本体2
袋本体2’の開口部8
開口部8’の開口形状を
開口形状を良好に
良好に維持し
維持し、袋本体2
袋本体2’の表裏の
表裏の
矩形面2
矩形面2’a、2’bが撓んで開口部
んで開口部8
開口部8’が閉ざされるのを防止
ざされるのを防止する
防止する機能
する機能を
機能を有する一体
する一体の
一体の構造体(
構造体(被告
のいう保持部分
のいう保持部分)
保持部分)であると認
であると認められ、
められ、A部分6
部分6’を補強片9
補強片9’から構造上分断
から構造上分断し
構造上分断し、本件特許発明の
本件特許発明の舌
片部ということはできないというべき
片部ということはできないというべき
前示のとおり
前示のとおり、
のとおり、舌片部とは
舌片部とは、
とは、掛止部材として
掛止部材として、
として、アーム部
アーム部の内側に
内側に形成された
形成された舌状
された舌状のかけ
舌状のかけ
ら部材であり
部材であり、
であり、アーム部
アーム部の上下の
上下の他端と
他端と連続するものであって
連続するものであって、
するものであって、袋本体の
袋本体の外表面に
外表面に貼着され
貼着され得
され得るも
のであるところ、
のであるところ、A部分6
部分6’と補強片9
補強片9’ (保持部分)
保持部分)は、本件特許発明の
本件特許発明のアーム部
アーム部に相当する
相当する把手
する把手
部②5’
②5’の内側に
内側に形成されたものとはいえず
形成されたものとはいえず、
されたものとはいえず、かつ、
かつ、その形状
その形状も
形状も「舌状のかけら
舌状のかけら」
のかけら」状であるともいえな
いことが明
いことが明らかであるから、
らかであるから、被告製品には
被告製品には本件特許発明
には本件特許発明の
本件特許発明の舌片部に
舌片部に相当する
相当する部分
する部分はないというべ
部分はないというべ
き
上記
の記載によれ
、
他方、
である。
そして、
である。
ケ
この点、原告は、
許発明も構成
物理
全
ほ
部分を判断する
的、構造的な
観
ば
位置 基準 各
異
両
独立
点から構成部分の一体性を判断するのであれ
体が一体ということになってし
ま 不 理
’ 補強 ’
い
合
かない、被告製品のA部分6 と
であるから、機能と
片9 の機能は
を
なるとして、
、本件特
に
構成
部分は
した構成部分であると主張する。
確
かに、本件特許発明の掛止部材においては、構造的に連続する周縁部、アーム部及び舌片
部がそれぞれ別の構成部分とされており、構成部分の
11
区
分に当たっては機能と
位置 重視
が
されて
被告製品の
被告製品のA部分6
部分6’と補強片9
補強片9’(保持部分)
保持部分)とは構造的
とは構造的に
構造的に連続してい
連続してい
るだけではなく
るだけではなく、
はなく、上記のとおり
上記のとおり、
のとおり、袋本体2
袋本体2’に一体的に
一体的に貼着されているため
貼着されているため、
されているため、一体として
一体として把手部
として把手部②5
把手部②5’
②5’
とともに袋本体
とともに袋本体2
袋本体2’を対向する
対向する2
する2面からそれぞれ外向
からそれぞれ外向けに
外向けに互
けに互いに反対方向
いに反対方向に
反対方向に引っ張り、袋本体2
袋本体2’の
開口部8
開口部8’の開口形状を
開口形状を良好に
良好に維持し
維持し、袋本体2
袋本体2’の表裏の
表裏の矩形面2
矩形面2’a、2’bが撓んで開口部
んで開口部8
開口部8’が
閉ざされるのを防止
ざされるのを防止するという
防止するという共通
するという共通の
共通の機能を
機能を有するのであるから、
するのであるから、機能的にも
機能的にも両部分
にも両部分を
両部分を切り離して
捉えることはできない。
えることはできない。
採
いるものと解されるところ、
したがって、原告の主張を
≪控訴審判決
控訴審判決≫
判決≫
否
(「第 4
侵害の成
用することはできない。
当裁判所の判断」「1
(1)
(控訴人の主張
1 文言
被告製品1の製造販売差止等請求について」「( )
)」)
当裁判所も、被告製品1は本件特許発明の技術的範囲に属しないと判断する。その
のとおり付加する
ほ
ア(イ)・・・本件特許発明の舌片部には、本件明細書には特
ろ、舌片部に関し、発明の
詳
細な説明の【
課題
反
吊
共
その
を
する記載はないとこ
】には、「
周縁部が袋本体
に舌片部を引き起こしてカップ側壁にかけるこ
互
央
能となる。この場合、袋本体は、アーム部によって対向する2面からそれぞれ外向きに
対方向に引っ張られ、袋本体の上端部の開口部が
に
段 意味 定義
手段
…
を解決するための
の外表面に貼着されている場合には、アーム部と
可
は、以下
か、原判決記載のとおりであるから、これを引用する。
(中略)
とが
理由
されることとなる。
ま
大 く広げ
き
られた状態で、カップの中
壁の外面は周縁部又は舌片部で押さえつけられるので、ドリップバッグは
ップの上部に
固定
挟ま
極 安定
た、カップ側壁は周縁部又は舌片部とアーム部とで
される。」(
段落
いに
上部
れ、かつカップ側
めて
した状態で
コ
【0014】)と記載されている。そうすると、周縁部が袋本体に貼着
された場合には、舌片部はカップ側壁にかけられるものであることが明らかである。
ば 本件特許発明の
本件特許発明の舌片部は
舌片部は、周縁部と
周縁部と連続しその
連続しその内側
しその内側に
内側に形成される
形成されるアーム
されるアーム部
アーム部の、
さらにその内側
さらにその内側に
内側に形成されるものであり
形成されるものであり、
されるものであり、アーム部
アーム部が周縁部と
周縁部と連続する
連続する端
する端のもう一方
のもう一方の
一方のアーム部
アーム部の
端と連続しており
連続しており、
しており、袋本体にも
袋本体にも貼着
にも貼着し
貼着し得るとともに、
るとともに、周縁部を
周縁部を袋本体に
袋本体に貼着した
貼着した場合
した場合には
場合にはアーム
にはアーム部
アーム部
と共に引き起こしてカップ
こしてカップ側壁
カップ側壁にかけることが
側壁にかけることが可能
にかけることが可能な
可能な部材をいい
部材をいい、
をいい、用語の
用語の通常の
通常の意味からして
意味からして、
からして、原
判決も
判決も判示するとおり
判示するとおり(
するとおり(21頁
21頁1行~3行)、「舌のかけら」
のかけら」様の形状を
形状を有するものであることが明
するものであることが明らか
である。
である。
余
釈 裏
以上によれ
、
そして、本件明細書のその
(ウ)
の記載も上記解
被告製品1の構成要件Bの充足性
を
付けるものである。
被告製品1
被告製品1のA部分6
部分6’と補強片9
補強片9’とは一体
とは一体として
一体として形成
として形成さ
形成さ
れており、
れており、仮に周縁部に
周縁部に比すべき把手部
すべき把手部①4
把手部①4’
①4’を袋本体に
袋本体に貼着した
貼着した場合
した場合には
場合には、
には、引き起こしてカップ
こしてカップ
側壁にかけることが
側壁にかけることが可能
にかけることが可能な
可能な部材とはなっていない
部材とはなっていない。
とはなっていない。加えて、
えて、被告製品1
被告製品1のA部分6
部分6’は袋本体の
袋本体の上
端部方向に
端部方向に伸びる形
びる形で補強片9
補強片9’と一体となっており
一体となっており、
となっており、本件特許発明の
本件特許発明のアーム部
アーム部に比すべき把手
すべき把手
部②5’
②5’の内側に
内側に形成されているともいえない
形成されているともいえない。
されているともいえない。さらに、
さらに、被告製品1
被告製品1のA部分6
部分6’の形状は
形状は、アーム部
アーム部
に比すべき把手
すべき把手部
把手部②5’
②5’と連続する
連続する部分
する部分から
部分から上部
から上部に
上部に向けて徐
けて徐々に幅が狭くなり補強片
くなり補強片9
補強片9’と連続す
連続す
・・・これを被告製品1についてみると、・・・
12
る部分付近
部分付近ではかなり
付近ではかなり細
ではかなり細く尖った形状
った形状となっていることから
形状となっていることから、
となっていることから、これが舌
これが舌のかけら様
のかけら様のものであるという
こともできない。
こともできない。
備
Ⅲ
ほ
同E
そうすると、被告製品1は本件特許発明における「舌片部」を
明の構成要件B(B
)を充足しないといえる
えるものとはいえず、本件特許発
か、構成要件D、
に記載された「舌片部」に関し
てもその要件を充足しないことになる。
補
イ 控訴人の主張に対する
( )
ア
足的判断
’ 補強 ’
剤 塗布
ま
’ 補強 ’ 異
’
反
控訴人は、被告製品1のA部分6 と
片9 とが連続する部分には接着
ないから一体的には貼着されておらず、
補強 ’ 独立
認定 誤
片9 とは
原判決の
たA部分6 は
片9 とは
が
されてい
なる機能も有するから
した部材であり、A部分6 は本件特許発明の舌片部に該当し、これに
は
りであると主張する。
相応 厚
被告製品1の掛止部材は
の
補強 ’
補強 ’
相応 厚
剛
’ 補強 ’
’ 補強 ’ 保
… 頁8 ~
剛
論 全趣旨
みを有し
片9 において貼着されているところ(弁
する
’
性もある板紙からなり、袋本体にA部分6 及び
の
’
)、被告製品1の掛止部材のA部分6 と
片9 とが連続する部分の一部に袋本体に貼着されていない部分があるとしても、掛止部材
が
の
6 と
みを有して
’ 補強 ’
性もあることから、A部分6 と
片9 が貼着されている以上、A部分
片9 は一体的に袋本体に貼着されているということができる。原判決が「
A部分6 と
片9 (
的に貼着されている
」(29
行
誤
…
べ
10行)、「
特許発明の舌片部ということはできないという
断に
だ
く…
’ 補強 ’
8頁 7 ~
持部分)とは構造的に連続している
けではな
A部分6 を
きである。」(2
1
行
部
4 を
部
5 と
に引き起こして
をカップ側壁にかけた場合、対向する2面の掛止部材のA部分6 と
開口部
の開口形状を
と、A部分6 と
原判決の
イ
さ
19行)とした
に袋本体の
に
持するとの
片9 とを機能的に
に
りはな
排
り
形面2
、2
一の機能を
して
が
図
補強 わざわざ切 離 必
片を
品1となるとも主張する。
片9 とは外向きの
のを
4
対
止して袋本体2 の
たすことが明らかである。そうする
用することができない。
補強
逆 ま 補強
せ ば
4】記載の実施
す
例
を上下
さ
片とを連続
にして
要もないことからこれを連続さ
れ
片を
被告製
内容
本件明細書
の発明の
発明の詳細な説明には、
には、補強片に
補強片に関し「…周縁部4
周縁部4の外周部には
外周部には、
には、第3の切込線L
込線L3で周縁
部4と区切られている
区切られている補強片
られている補強片9
補強片9が形成されており
形成されており…
されており…」(段落
」(段落【
段落【0025
0025】
25】)と記載され
記載され、
され、補強片が
補強片が貼着
された実施例
された実施例を
実施例を示す図2においても、
においても、補強片9
補強片9は切込線L
込線L3で周縁部4
周縁部4と区切られ
区切られ、
られ、切込線L
込線L1~
L3で周縁部4
周縁部4・アーム部
アーム部5・舌片部6
舌片部6も一端のみで
一端のみで連続
のみで連続するほかはそれぞれ
連続するほかはそれぞれ別
するほかはそれぞれ別々に区切られて
区切られて
いる。
いる。また、図1においても補強片
においても補強片は
補強片は周縁部4
周縁部4・アーム部
アーム部5・舌片部6
舌片部6とは切
とは切り離された部材
された部材として
部材として
しかし、本件特許において、
補強
り
部
えることはできない。
、控訴人の上記主張は
除していないし、本件明細書の【
え、舌片部の上端と
・判
’
把手 ① ’
反
’
た控訴人は、本件特許発明では、被告製品1の掛止部材のように舌片部と
ることを
認定
片9 との機能についてみると、被告製品1のA部分6 と
片9 とは連続していることから、
方向に引っ張られることから、
’
片9 から構造上分断し、本件
’ 補強 ’
把手 ① ’ 把手 ② ’ 共
’ 補強 ’
共
矩 ’a ’b 撓む 防
8’
良好 維
同
果
’ 補強 ’
切離 捉
認定 誤 く
採
た、被告製品1のA部分6 と
被告製品の
袋本体2 に一体
りはない。
ま
補強 ’
( )ま
せ
備
、
…
片は、請求項3に記載されているところ、その
項3が引用する請求項2の特許請求の範囲の記載は、前記のとおりである。そして、
13
及び請求
記載されている
記載されている。
されている。これらによれば、
これらによれば、本件特許発明において
本件特許発明において、
において、舌片部と
舌片部と補強片とは
補強片とは別
とは別々の部材とし
部材とし
て記載され
記載され、
され、これを
これを一体とすることについては
一体とすることについては何
とすることについては何らの示唆
らの示唆もされていないということができる
示唆もされていないということができる。
もされていないということができる。ま
た、本件明細書の
本件明細書の【図4】の実施例を
実施例を上下逆
上下逆さまにして補強片
にして補強片を
補強片を備え、舌片部の
舌片部の上端と
上端と補強片を
補強片を
わざわざ切り離す必要もないから、
もないから、連続させるとの
連続させるとの点
させるとの点は、本件明細書に
本件明細書に何ら示唆されているもの
示唆されているもの
でもない。
採
でもない。
控訴人の上記主張は
( )
ウ
用することができない。
不問 べ
さらに控訴人は、舌片部につきその形状は
〔
定義
〕
にす
きであると主張する。
しかし、本件特許発明 請求項1 の特許請求の範囲には明
明細書中に特
意味
版 刷
段
べ
これを
により解す
第1
頁
(エ)
さらに控訴人は、
1年10月16日に
を分
離
作
甲
①ひ
誤
)に「
けら様の形状と解することに
に「舌片部」と記載され、本件
する記載もないものであるから、その形状は当
広辞苑 新村 編
…
採
きである。そして、「片」については
発行、2541
確
ときれ。きれはし。
(
出
然
その通
、200
8
常 語
の用
の
年1月11日第6
」と記載されており、舌片部につき舌のか
りはない。控訴人の上記主張は
用することができない。
~ 団法
化学繊維検査協会大阪 析センタ
試験
提
’ 補強 ’
異
’
13の1
5(財
成した「
人日本
報告書」)を
分
ーが平成2
出し、被告製品1におけるA部分6 と
してもこれを一体とした場合と機能的に
片9 と
なるものではないから、被告製品1のA部分6
は舌片部に該当すると主張する。
甲 ~ 基
甲
’ 補強 ’ 切 離 離 物 甲
全く
ほど同
ほ んど変化
補強 ’ 去 物 甲
’ 去
甲
補強 ’
’ 去
甲
比較
補強 ’
’ 去
把手 ② ’
生 補強
’
反
大 く
甲 ~ 験
積 ほど
積
異
定
注湯
長 幅 積 測定
長 積
大 や
際 力
入 具
況 異 生
際 使 際
熱湯 注
況
大 く変化
容易
推認
甲 ~ 験結果 必ずしも、
ずしも、被告製品1
被告製品1においてA
においてA部分
6’と補強片9
補強片9’を切り離しても機能
しても機能に
機能に差がなく、
がなく、補強片9
補強片9’に袋本体を
袋本体を引っ張る機能がないという
機能がないという
ことはできない
採
13の1
分6 と
で
5を
にした控訴人の上記主張は、被告製品1(
片9 とを
と
り
した
したもの(
5)とを
すると、
部
5の実
き
のカップを用いて
合等によってもその状
ては袋本体に
に
が
さ・面
が
5の実
()
均
等侵害についての
13の
じ、
ドリップバッグの開口部の面
さ・
等は、用いるカップの
・面
きさ
を
はこれにより
したもので
、開口する
じうることが明らかである上、実
き
の
の
用に
し
するものと
から、
均
被告製品1の製造販売差止等請求について」「(2)
人の主張 2 )」)
イ
したもの(
用することができない。
3 均等侵害の
均等侵害の成否
当裁判所の判断」「1
がそれ
前の袋本体の開口部の
から、控訴人の上記主張は
(「第 4
13の3)、被告製品1のA部分
引っ張る機能はない、とするものである。
には差
13の1
じ
されても袋本体が開口していることから、
がれるものであるから、開口状
される。そうすると、
(
片9 及びA部分6 を除
は、いずれも上部面
あるところ、ドリップバッグの開口部の
れ
した
といってよい
5 の下端が袋本体に貼着していることにより開口が
対方向に
13の1
ならない特
片9 を除
片9 はあるがA部分6 が除
片9 には袋本体を
しかし、
13の2)とで、開口状態が
13の4)、被告製品1の
被告製品1においては
の
(
がない、被告製品1の
6 を除
と
し分
13の1)と、被告製品1のA部
検討
14
否
等侵害の成
(控訴
( )
ア
明細書の特許請求の範囲に記載された構成中に他人が製造する対象製品と
①
る場合であっても、
置換
置 換
のと
き
ように
達
えても特許発明の目的を
き
質
該部分が特許発明の本
することができ
えることに当該発明の属する技術の分
対象製品等の製造等の
時
⑤
時
点において
に
における公知技術と
ではな
対象製品が特許出願
、かつ、
のに当たるな
ど 段 情
の特
の事
一の
を
における通
の知
52
そこで、以上の
1号113
点に
() 質
イ
本
を有する者(当
④
時 容易 推考
意識
者がこれから出願
に
③
業
最
できたもの
的に除外されたも
三小法廷
高裁第
この
者)が、
もないときは、該製品は、特許請求の範囲に記載された構成と
参照)。
す
対象製品が特許
に
続において特許請求の範囲から
民集 巻
頁
観 立
存
するものであって、
することができたものであり、
一又は当
なる部分が
該部分を対象製品等におけるも
用
ものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解される(
判決・
、
容易 想到
同
業
手
発明の特許出願
く
く②
同 作 効果 奏
野
常 識
的部分ではな
異
均
等な
平成10年2月24日
検討
って本件事案につき
する。
① 観
的部分(上記
の
点)について
控訴人は、被告製品1と本件特許発明とでは、被告製品1の掛止部材において、本件特許発明
把手 ② ’
のアーム部に該当する
く
補強 ’
けら部材ではな
最
外周の縁(
部
補強
5 の下端において連続する部材が、
’
片と連続しない舌状のか
逆U字
把手 ② ’ 内
、舌状の部材(A部分6 )とその舌状の部材の上端において連続した
片9 )との一体構造体であって、かかる一体構造体が
部
5 の
形の
側のみに
異
ほど控訴人
控訴人の主張は
主張は、被告製品1
被告製品1においては、
においては、A部分6
部分6’と補強片9
補強片9’とが一体構造
とが一体構造となってお
一体構造となってお
り、本件特許発明の
本件特許発明の「舌片部」
舌片部」を備えるものでないこと、
えるものでないこと、及び、この一
この一体構造が
体構造がアーム部
アーム部に相当する
相当する
把手部②5
把手部②5’
②5’の内側のみにあるとはいえないこと
内側のみにあるとはいえないこと、
のみにあるとはいえないこと、すなわち
すなわち舌片部
わち舌片部が
舌片部がアーム部
アーム部の内側にあるとはいえ
内側にあるとはいえ
ないこと、
ないこと、との2
との2つの相
つの相違点があることを前
があることを前提として、
として、これら構成
これら構成が
構成が均等である
均等である旨
である旨主張するものと
主張するものと解
するものと解さ
れる。
れる。
検討
異
質
課題
既
ン
式
ン 式
長
コ ヒ 美味 セ や注湯 や 簡
抽
容易 安全
双 達
形成されているとはいえない点が構成の
なる部分であると主張する。
なる
これにつき
すると、構成の
なる部分が発明の本
的部分であるとは、発明の
めの特徴的な部分をいうと解されるところ、本件特許発明は、上記のとおり、
方
、カップイ
構成・
方
のそれぞれの
出後の廃棄が
で
所である、
なことの
ー
方を
ーの
、
ット
解決のた
に知られたカップオ
のし
すさと
略な
成しようとするものである。そのため本件特許発
明のドリップバッグは、上端部に開口部を有する袋本体と薄板状材料からなる対向する外表面に設
けられる掛止部材とからなり(
縁部、周縁部の
内
簡
略で廃棄が
容易
である)、その掛止部材は、周縁側に形成される周
側にあり袋本体から引き起こし
可
能に形成されるアーム部、アーム部の
内
側に形
成される舌片部からなる。そして、周縁部とアーム部、アーム部と舌片部は、それぞれ端部で連続
し、周縁部又は舌片部のいずれかが袋本体に貼着され、周縁部が袋本体に貼着された場合には舌
反
コ ヒ 美味 セ 注湯 や く安全
片部がカップ側壁にかけられ、アーム部によって
ップの中
央
上部に
吊
されることになる(
ー
ーが
る。
対方向に引っ張られて袋本体の上端が開口しカ
で
ット・
がし
す
である)ものであ
本件特許発明において
本件特許発明において、
において、周縁部を
周縁部を袋本体に
袋本体に貼着した
貼着した場合
した場合には
場合には舌片部
には舌片部を
舌片部をアーム部
アーム部と共
に引き起こすことも可能
こすことも可能であること
可能であること、
であること、舌片部が
舌片部がアーム部
アーム部の内側に
内側に形成されていることは
形成されていることは、
されていることは、いずれも本
いずれも本
件特許発明の
件特許発明の本質的部分であるということができる
的部分であるということができる。
であるということができる。
そうすると、
そうすると、被告製品1
被告製品1においてA
においてA部分6
部分6’と補強片9
補強片9’とが一体構造
とが一体構造となっていて
一体構造となっていて本件特許発明
となっていて本件特許発明の
本件特許発明の
そうすると、
15
舌片部を
舌片部を備えるものではなく
えるものではなく、
ではなく、この一体構造
この一体構造が
一体構造がアーム部
アーム部に相当する
相当する把手部
する把手部②5
把手部②5’
②5’の内側のみにあると
内側のみにあると
いえないとの相
いえないとの相違点は、いずれも本件特許発明
いずれも本件特許発明の
本件特許発明の本質的部分において
的部分において相
において相違するものである。
するものである。
余
ま く均
理由
そうすると、その
の点について判断する
でもな
、
等侵害についての控訴人の主張は
がないことになる。
以
16
上