―― 実 施 例 ―― 水島中央病院の空調設備 広島支店 小 出 真 人 鹿島建設! 新菱冷熱工業! 岡山営業所 瀬 重 信 ■キーワード/ヒートポンプ・病院施設 きる限り解消するために,新病院ではすべての空調エリ 1.はじめに アに対して天井カセット形を主体とした空気熱源ヒート 倉敷市水島地区に,周辺環境に調和した地上8階の白 色系外観の総合病院が完成した。水島中央病院は昭和 36年6月に開院し,水島工業地帯の発展とともに大き ポンプを採用した。この空調システムを採用した理由お よびシステム内容を紹介する。 く成長した総合病院である。この新築病院は,旧病院を 2.建物概要 開業しながら同一敷地内に建設されたものである。平成 建 物 名 称 水島中央病院 11年末に患者は新病院へ移転し,医療環境が整備され 所 在 たなかで質の高い医療サービスを受けている。 建 築 主 医療法人 水和会 地 岡山県倉敷市水島青葉町 総合病院 水島中央病院 旧病院の空調システムは水熱源チラーユニット,蒸気 ボイラーおよびファンコイル方式であったが,維持管 敷 地 面 積 5,489.78㎡ 理・運営上でのこの空調システムの不具合,問題点をで 建 築 面 積 2,005.46㎡ 写真−1 建物外観 ヒートポンプとその応用 2000.7. No.52 ― 26 ― ―― 実 施 例 ―― 延 床 面 積 10,457.52㎡ 35.5kW × 階 数 地上8階 塔屋1階 28.0kW × 10台 構 造 RC造 22.4kW × 3台 主 要 用 途 総合病院 14.0kW × 4台 工 期 平成10年11月∼平成12年6月 11.2kW × 1台 室内機 設計・監理 鹿島建設㈱ 広島支店 9台 ×291台 ② 空気熱源ヒートポンプパッケージエアコン 総 合 施 工 鹿島建設㈱ 広島支店 × 14組 (設備協力会社) 3−3 衛生設備 空調・衛生 新菱冷熱工業㈱ 給水 受 水 槽 100k (内40kは消防用水) 電 気 日本電設工業㈱ 高置水槽 32k 3.設備概要 一部加圧ポンプ方式 (7・8階系統) 3−1 電気設備 給湯 中央給湯方式 真空式ヒーター トランス容量計 動力 1,500kVA 760kW× 1基 貯湯槽 電灯 300kVA 3,000r × 2基 3−2 空調設備 排水 屋内分流式 下水本管接続 主要機器 消化 屋内消火栓 スプリンクラー設備 空気熱源ヒートポンプビルマルチエアコン 室外機 4.空調計画 67.2kW × 1台 56.0kW × 1台 空調方式を計画するにあたって,旧病院の熱源システ 50.4kW × 1台 ムの問題点を考慮する必要がある。運用状況および保守 45.0kW × 8台 管理における問題点を解決すべき実施計画を行い,施工 PAC PAC PAC PAC OAC PAC PAC PAC PAC 312 308 309 311 243 402 502 602 702 PAC PAC PAC PAC OAC PAC PAC PAC PAC 106 201 202 303 243 304 401 501 601 PAC PAC PAC PAC 4 3 2 1 PAC PAC PAC PAC OAC PAC PAC 101 102 103 203 243 305 701 PAC PAC PAC PAC OAC PAC PAC PAC PAC 104 151 152 107 243 205 206 207 301 ▽ RFL PAC PAC PAC PAC OAC PAC PAC PAC 302 306 307 310 243 403 503 603 4,000 q ×4 e 北側病室・食堂系統 南東側病室・ナースセンター系統 西側病室・喫煙室系統 e 北側病室・感染室系統 南東側病室・ナースセンター系統 西側病室・喫煙室系統 e 北側病室・感染室系統 南東側病室・ナースセンター系統 3,850 ▽ 7FL ▽ 6FL 3,850 厨房 人間 ドック 系統 3,850 職員食堂系統 西側病室系統 OAC OAC OAC OAC OAC 109 108 241 242 243 ▽ 8FL h ▽ 5FL 3,850 f 西外気処理系統 リハビリOT系統 DSA機械室系統 北外気処理系統 医局系統 手術室1系統 医局・理事長室系統 手術室2系統 中央材料室系統 DSA系統 手術室3・4系統 h PT室・水治療室系統 PAC 1 ×3 南外気処理系統 ▽ 3FL 東外気処理系統 泌尿器・皮膚・歯科系統 小児科系統 4,300 検査室系統 心電図系統 結石破砕系統 h 4,300 ▽ 4FL 講堂系統 経理・庶務課系統 PAC 3 当直研究室 内視鏡室 OAC 103 操作室 AC 2 AC 4 栄養指導室 事務当直室 夜間通用口 PAC 1 ×2 東外気処理系統 CT室系統 救急室系統 薬局・医事課系統 4,400 ▽ 2FL 内科系統 一般撮影系統 外科系統 西外気処理系統 ▽ 1FL ×3 図−1 ビルマルチエアコン系統図 ― 27 ― ヒートポンプとその応用 2000.7. No.52 ―― 実 施 例 ―― に至った。 音がとくに病棟階の病室に伝播し,室内環境を悪化さ 4−1 旧病院の空調システム概要 せる。 冷温熱源機器 冷房 水熱源チラーユニット ×4台 e 日常運転に対する運転手順が非常に複雑なため,専 門管理者が常駐し,しかも熱源機器の運転はすべて手 常時3台運転 暖房 A重油 蒸気ボイラー 動であり,現地においての発停ならびに運転状態は目視 熱交換器 で監視を行っている。また中央監視盤などが設置され 空調方式 冷温水1次ポンプ ×4台 ていないことにより,発停および故障などによる運転 冷温水2次ポンプ ×5台 停止の状況把握ができないのが現状で,各部門からの ファンコイルユニット クレームなどにより管理者が現地で確認をとっていた。 r 天吊り露出 床置き露出形 保守ならびに機器の管理面で,機器類の老朽化によ 4−2 旧病院システムの問題点 る部品交換,ならびに熱源機器の目視による状態監視 q の管理,および再々にわたるサービスマンの派遣によ 旧病院の運営を行いながらの工事のため,中央熱源 方式では機械室を十分に確保できない。 w る年間コストが大きくなった。 熱源機器・空調機器・搬送機器の運転時の振動,騒 t 写真−2 室外機回り 写真−3 室外機回り ヒートポンプとその応用 2000.7. No.52 ― 28 ― 病院という使用時間の異なる部門に対して個別運転 ―― 実 施 例 ―― 表−1 用途別室外機グループ分け 24時間系統 1階救急処置室系統 4階西側病室系統 4階北東側病室・感染室系統 4階南東側病室・ナースセンター系統 5階西側病室系統 5階北東側病室・感染室系統 5階南東側病室・ナースセンター系統 6階西側病室系統 6階北東側病室系統 6階南東側病室・ナースセンター系統 8時間系統(一般) 1 階 内 科 系 統 1階外来・整形外科系統 1階薬局・医事課系統 1 階 C T 室 系 統 1階外気処理系統 1 階 内 視 鏡 室 2階外気処理系統 2階リハビリOT系統 2階PT室・水処理室系統 2階心電図室系統 2階結石破砕室系統 2 階 小 児 科 系 統 2階泌尿器・皮膚・歯科系統 3 階 講 堂 系 統 3階経理・庶務課系統 3 階 医 局 系 統 3階医局・理事長室系統 3階外気処理系統 7階人間ドック系統 7階職員食堂系統 年間冷房対応系統 1階断層・一般撮影室系統 1階X線TV室操作室 2 階 検 査 室 系 統 1 階 M R I 室 重 要 室 系 統 3階中央材料室系統 3 階 手 術 室 (1) 3 階 手 術 室(2) 3 階 手 術 室( 3 ・ 4 ) 3 階 D S A 系 統 3 階 D S A 機 械 室 による制御がないため,非常時または重要部門(救 ループ分けをし,各居室で単独運転が可能なシステム 急・手術室・放射線)の運転に対する対応が十分に満 とした。 たされてなかった。救急部門対応のために熱源機器が r 日常運転において病院の運用状況に対応しうるよう に,運転方法およびメンテナンスなどの簡素化を考え ける騒音,振動に問題があり,また熱源機器の故障時 た。運転は室内機1台ごとにリモコンを設置し,温度 には全館に対する影響が大きかった。当病院では管理 設定および発停を可能にした。そして共用部,病棟部, 者が1人のため,上記のような非常時における対応が 手術室部門に対しては多機能集中管理リモコンを管理 遅れがちであった。 上採用し,温度設定,発停,状態監視を可能とした。 y 24時間運転に対応していたことで,とくに夜間にお 冷温水およびドレン配管などの老朽化が進み,小口 ヒートポンプの採用によって日常管理はほとんど不要 径の冷温水管のネジ部およびコイル接続部からの漏水 となり,目視による管理とフィルター清掃程度の管理 が多かった。そして修理にあたっては,各系統の仕切 とした。 り弁などの締まりが長年にわたって悪くなり,必然的 t 漏水などによるトラブルを避けるため,重要室なら びに重要機器などの上部に水配管(ドレン・衛生配管) 目詰まりによる能力低下が起き,各居室の空調に影響 などが通らないよう考慮し,冷媒配管という観点から を与えていた。 も解消できたと思われる。 u にその系統の空調停止をやむなくされ,またコイルの 供給燃料(A重油) に対する信頼性・安全性・自然環 y 空気熱源ヒートポンプマルチエアコンシステムは, 境悪化に対する考慮も重要な問題点として考えた。 環境負荷を低減し室内環境悪化に対する心配がほとん 以上のような問題点を改善するために,新病院システ どないシステムとして考えた。 ムの実施計画に至った。 5.おわりに 4−3 新病院システム実施計画 q 信頼性・安全性の確保は,病院の機能を継続的に維 新病院の建設にあたり,特別に検討した項目を以下に 持するための重要な要素であり,通常使用時の場合だ 示す。 けでなく非常時においても信頼性・安全性の高いシス q テムを考えた。 旧病院の設備システムにおける不具合な使用方法を w 改善する。 新館の屋上を有効利用するという観点から,空気熱 w 源ヒートポンプビルマルチエアコンの室外機置き場と 非常事態 (停電,機器異常,漏水など) での医療関係 e して考えた。 e 者・患者への対応が適切にできる設備とする。 病院では一般事務所ビルと異なり,24時間の医療 日常メンテナンスが容易にできる設備とする。 以上のテーマに対して,病院関係者と打ち合わせおよ を行う病棟ならびに突発的に発生する救急医療など, び調査をしながら細部にわたって計画した。医療環境を 各部門に応じたシステムが必要と考えた。外来・診 向上させるため,本プロジェクトにご協力いただきまし 療・放射線・手術室・病棟・共用部門などに大きくグ た関係者の皆さまに感謝申しあげます。 ― 29 ― ヒートポンプとその応用 2000.7. No.52
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